会津天王寺通信

ジャンルにこだわらず、僧侶として日々感じたことを綴ってみます。

仏教伝道協会が師先生を講師に招いて講演会  柴田聖寛

2022-02-24 16:02:40 | 読書

 師茂樹先生

 私の懇願によってわざわざ会津にまで講演に来てくださった、吉田慈順師と共に仏教の共同研究をなさっている師茂樹先生の『最澄と徳一 仏教史上の最大の対決』(岩波新書)が昨年10月に発売され、思想・宗教を扱った書としては珍しく、ベストセラーとなっています。
 これまであまり論じられることがなかった法相宗の僧徳一を高く評価し、その論争相手としての伝教大師最澄について、独自の見方から解釈をされているからです。そこで師先生が強調されたのが「共許(ぐうご)」という伝教大師最澄の思想でした。
(公財)仏教伝道協会(BDK)は来る3月5日午後1時半から仏教伝道センタービル8階(東京都港区4-3-14)とオンラインを併用してBDKシンポジウム「現代社会の分断と調和を考えるー最澄と徳一の論争を手掛かりに」を開催される運びになったのは、伝教大師様の「共許」という思想を、現代にどう生かすかを議論しようというのが趣旨で、だからこそ、講師に師先生が招かれるのだと思います。「個人主義が拡大する現代社会における『分断』と『調和』」というテーマが掲げられていますが、師先生も『最澄と徳一 仏教史上の最大の対決』で書かれていますように、「日本仏教を形作った『共許』」を再認識し、それを広く世界に知ってもらうことが、争いのない世界をするためには、絶対に必要なことであるからです。
 会場は定員60人です。できれば当日私も参加させてもらえればいいのですが、無理な場合にはオンラインの100人に応募するつもりでおります。「共許」という思想を理解する上で師先生が引用されているのは、伝教大師最澄が徳一との論争で著わされた『守護国界章』の文章です。「天台宗が重視する『涅槃経』の五味(喩え)と(法相宗で重視される『解深密教』)の三時の教えは、それぞれ聴衆の能力に応じて雷鳴のごとくと彼、三車説(を唱える法相宗)と四車説(を唱える天台宗)とが両輪となって(衆生)を運載する。方便の教えと真実の教えが声を揃えることで国境が守護され、偏った教えと完全な教えとが轍を異にする(=両輪となる)ことで幅広い民衆を救うことができるのだ。」
「もし(お互いの)意図を理解して相互に承認すれば(相許)、あちらとこちらで利があるだろう。もし(自身の説に)執着して相互に諍えば、あちらとこちらは(ともに)道を失うであろう」
 今の時代に求められているのは、世界の人々が対立と分断を深めることではなく、違いを違いとして認めつつも、お互いに尊重し合って、危機に対処するためにも手を携えていくことではないかと思います。

            合掌

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