エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

円満と平和 改訂版

2015-07-25 16:50:22 | エリクソンの発達臨床心理

 

 

 
日本の「いじめ」と「無責任」を打破するためには...。
  配慮が行き届いていて、陽気で楽しく繰り返される、日々の習慣2013-07-23 03:28:04 | エリクソンの発達臨床心...
 

 日本人が好きな徳目は、円満であることに、異論をはさむ人は、そんなにいないだろうと思います。「家族円満」、「夫婦円満」、「円満な人格」、「あの人は角が取れてきて、随分円満になってきたね」…。どれについても、文句の出ない話ではないですか?

 「円満」を一応辞書で確かめてみました。すると、「円満」とは、1)かどだたず、穏やかなこと、2)十分みちたりて欠けたところのないこと、と出てきます(岩波国語辞典 第二版,p.100)。

 しかし、私はマイナー志向だからでしょうか? かねてから、この「円満」には、「偽善のにおい」がする感じがずっとしておりました。アマノジャクと言った方が良いのかもしれませんね。「円満」の私の印象を、敢えて言葉にすれば、「表向き、角が立たないように、弱い立場、弱い部分に圧力を掛けて(「静かにしてろよ」、「黙ってろ」と脅しをかける。どこぞの政権がやってることです。もちろん、アベシンちゃんと悪魔の仲間たちのことです)、欠けたところがバレない様にしているさま」という感じになります。つまり、「円満」は「繕い」であることが、現実には多いのじゃないか知らね。「繕い」とは、そのように「真の姿とは別の、偽り、装いを作ること」ですからね。

 特に日本の組織は、同調圧力が猛烈に強く、少数意見を圧殺することが多いでしょ。でもね、民主主義であれば、「少数意見の尊重」が当たり前ですから、多数派の意見を、数の暴力で押し通すのではなくて、繰り返し話し合いがもたれて、「少数派の意見」をどうやったら、多数派の意見に取り込んでいけるのか? ということにエネルギーが注がれます。ですから、多数派も、少数派も、誠実に話し合うことによって、多数派の最初の意見とも、少数派の最初の意見とも、異なる、新しい意見が生まれる訳ですね。この新しい意見は、多数派の神輿に乗った、ちょっと頭が足りない人が「総合的に判断した意見」とは、別次元の意見になります。それはアベシンちゃんが、足りないアタマで考えた意見(極々一部の人の意見が、議会での多数を笠に着て、暴力的に押し通そうとする意見)が、大多数の人の納得できるものにならなかったけれども、多数派と少数派が、誠実に、繰り返し、話し合いを持った結果生まれた「新しい意見」ならば、最初の多数派よりも、多数の人々が納得する意見に成長、発展する意見になるのと、対照的ですから、その差は歴然としています。

 かたや、「平和」とはどういうことですかね。戦争や諍いがないことでしょうか? さっき引用した『岩波国語辞典 第二版』で「平和」を調べますとね、「戦いや争いがなく、穏やかな状態」と出てきます(p.903)。申し訳ないことですが、貧弱な語釈ですね。

 本田哲郎神父にご登場いただきましょう。本田神父によれば、「神が望まれる平和は、『抑圧からの解放をもたらす正義』(ディカイオシューネー、δικαιοσυνη)を土台とした、すべての人が『人として大事にされる』(アガペー、αγαπη)、「喜び」(カラー、χαρα)のある平和である」とします。ですから、「平和」をもたらす者は、弱い立場の人、少数者の味方になる、という旗印をハッキリさせます。そして、強い立場の人、多数派と対立したり、戦ったりすることを、厭いません。ですから、日本的な「円満」な人だとやらない、「波風が立つこと」、「立場を鮮明にすること」を敢えて行い、差別と抑圧の社会的構造にメスを入れていこうとします。そして、真の「平和」とは、戦いや争いがない状態などでは少しもなくて、抑圧されている人や、差別されている人が、その抑圧や差別と闘って、その抑圧や差別を取り除くこと、であると同時に、抑圧や差別をする人をも、その抑圧する立場、差別する立場から解放することも含まれるんですね(本田哲郎『神は貧しくされた者と共に 釜ヶ崎と福音』岩波書店)。

 このように、真の平和とは、円満の繕いを暴くところから始まり、弱い立場の人たちに味方する立場を鮮明にして、抑圧や差別をなくす行動を取ることになる訳ですね。

 

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「希望」の発展型としての 「本気の関わり」 改訂版

2015-07-25 16:16:13 | エリクソンの発達臨床心理

 

 年寄りが老賢者であることを止めて久しいですね。日野原重明先生や柴田とよさんなどのごく少数のお年寄りと、福祉と医療の世話になる、大多数の高齢者に分かれてしまいました。

 The life cycle completed 『人生の巡り合わせ、完成版』、p62の第2パラグラフから。

 

 

 

 

 

 間違いなく、老人の役割は、見直す必要がありますし、考え直す必要がありますね。その見直しと考え直しのために、私どもはここから私どもの表を見直してみたいと思います。ですから、表に戻りましょう。老人の位置取りは、表の縦と横とでは何かしらね? 年齢的に言ったら、老人は表の右上に位置取られますから、その最後の耳触りの悪い方の特色は、despair 「良いこともあったけれども、“人生に何の望みもありゃしない”という感じ」と私どもは言いましたね。それから、左下の角もちょっと見ときましょうか。私どもが思い出すのは、そこを戻れば、最初の耳触りのいい要素が、hope 「困難があっても、信頼し続けること」でしたね。スペイン語では、少なくとも、esperanza エスペランザ 「希望」と desesperanza デスペランザ 「絶望」を、このhope「困難があっても、信頼し続けること」は繋ぎます。また実際に、どの言語でも、hope 「困難があっても、信頼し続けること」は、≪私≫の最も根源的な性質です。もしも、このhope 「困難があっても、信頼し続けること」がなかったら、人生は始まりませんし、意義深い終わりにもなりませんからね。私どもは、空欄になっている左上の角に上がるにつれて、分かってくるのは、そこに上がって来るには、私どもは最後に抱き得る形のhope 「困難があっても、信頼し続けること」に対して一言必要で、このhope 「困難があっても、信頼し続けること」は、最初の垂直線を登るにつれて成熟するものだ、ということです。これにふさわしい言葉は、faith 「低きに立たされている人たちから、本気で学ぶつもりで、関わること」になります。

 

 

 

 

 

 実に上手く出来たライフサイクルですね。なるべく生活の実感に近づける翻訳を試みました。特にfaith は時間を掛けました。「信仰」とやったら、もう意味をなさないと感じます。信仰と関係のない生活をしている日本人がほとんどだからですね。

 でもそれだけじゃぁ、ないんですね。「信仰」と一般に考えられていること、たとえば、日曜礼拝に行ったり、そこで献金したり、祈りのチェーンに加わったり、お御堂のおミサに参加したりすることが「信仰」という印象をもつのが、一般的かもしれません。しかし、「信仰」と訳されることが多い、元のギリシア語のピスティス πιστις「信頼」は、そういうこととは、全く関係がありません。  

  ですから、今回も本田哲郎神父の助けを借りました。本物のクリスチャンだと感じるからですね。クリスチャンと言っても、私に言わせれば、偽物が多いし、かく言う私も簡単に偽物になります。ですから、いつだって、あの方を見上げていたいんですね。それも本田哲郎神父や西村秀夫先生や野村實先生に見習いながら…。

 faithは、日曜礼拝に行くことでもなければ、おミサに参加することでもない。それは「低きに立たされている人たちから、本気で学ぶつもりで、関わること」です。

 

 

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十字架のシンボルと天にも昇る悦び

2015-07-25 11:40:08 | アイデンティティの根源

 

 ルターは心の中に完全な方を見つけることから、救われることを強調した、と言います。

 Young Man Luther 『青年ルター』p214の第2パラグラフ5行目途中から。

 

 

 

 

 

 ルターは、ひとりびとりに分かるような神を、定式化しようと思ったら、神の子の十字架の苦しみ、というシンボルを通してだけ、それが可能になりました。それは、ひとりびとりの実存を、後の時代に、キルケゴールの実存主義やフロイトの精神分析において探求されたのと同じ方向で、再定義するものでした。つまり、その方法とは、ひとりびとりを、自分自身がギリギリ意識できる縁まで連れていく方法です。その縁には、宗教的に、天にも昇る悦びを味わう縁も含まれます。

 

 

 

 

 

 キリストの十字架の苦しみというシンボルは、宗教的に、天にも昇る悦びを味わう縁まで、私どもを連れて行ってくれると言いますね。何故なんでしょうか? 

 今後のエリクソンの読み解きを待つことにいたしましょう。

 

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