お祭り 歴史探索の旅   ~尾陽雑記抄~

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昭和の名灸師 深谷伊三郎 「家伝灸物語」

2008年03月27日 00時08分05秒 | 歴史探索
民俗学系ブログに相応しくない内容かもしれませんが

 昭和の名灸師として名高い方に「深谷伊三郎」氏が居られます。この方は多くの臨床で病める人を救い、学会では灸の研究で高い評価を得ています。灸で治療する「深谷灸法」の礎を築き、また、「名家灸選」という江戸時代の文献を研究され、そちらでも高い評価を得ています。

深谷伊三郎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

産まれた歳(明治33年)が我が祖父に近いこと、また僕と同じく法学部出身ということで、言うに言えぬ親しみをこの方に持ってしまいます。
 さてこの方、もう一つ各地に残る「家伝灸」の現地調査を手がけ、その記録をとっておられました。その一部は三景より深谷伊三郎 著「家伝灸物語」として世に出ています。しかしながら、深谷師の没後にノートを後継者の方々がまとめたもので、深谷師が生前に書き下ろしたものではないのは残念ですが、その内容には、興味深いものもあります。

 「江戸の文献の研究」「全国各地家伝灸の現地調査」に尽力した医学会の大家の足跡は、(ジャンルは違えど)僕が歩んできた道と重なる面もあり、今後僕にどのように進めばよいかを示しているのかもしれません。

 全国まで守備範囲をのばしている訳ではありませんが、私も各地に伝わる笛を調査する身、深谷師にどこか親近感を持ってしまいます。

 なぜ今、家伝灸の話をするかというと、民俗学を研究している間に「家伝灸」というものに僕も1つぶつかった事があります。家伝灸の多くは有痕灸(ワザと化膿させて免疫力を高める灸法 今もお寺に残る弘法様の灸などが有名)ですが、僕が知っているのは、背中をさすり、くぼむ所に切りもぐさで、灸をするというもの。肺病、小児結核など他にも治験があり、当時の本職 医師 鍼灸師に勝るとも劣らぬ力を持っていたのでしょう。
 その方は、明治生まれ、大正年間にどこぞかで灸を学び、戦中戦後まで生き延びました。民間療法の域を出ないでしょうが、その方の施術が優れているのか?それとも当時の民間人は自己治癒力に優れ、医者にかからずとも、自分で病を治したのかもしれません。


 無名の民間人が当時の医師ですら手を焼いた結核、脳卒中の後遺症など難病を治す、その逸話に胸のすく想いがしたものです。

 「昔の文献の研究」「現地調査」どのようなジャンルでも、研究というものは、そのようなものかもしれません。深谷師の足元に及ばぬものの、そういう生き方に尊敬の念を懐きます。


 さて、深谷師も大学時代、結核にかかり、その病を灸によって治し、その後、鍼灸の道に入ったそうです。結核を鍼灸の力で治して頂き、その後鍼灸界に入った治療家は、戦前多かったようです。
 深谷師を治した灸の使い手が僕の知っている人…というオチではありません、あしからず。


  かつての病人が病人を治す。今も同じでしょうか?


追記 タイトルから鍼灸関係の方がここに来られるかもしれません。
深谷伊三郎 著 家伝灸物語は一般の本屋で手に入らないと思います。「三景」という鍼灸関連備品を扱うところで売っています。
内容は 1 つぼによる病気の治療法 2 臨床の手引き 3家伝灸物語という三部構成となっています。病気の解説、そして治療に使うツボ、そのツボのとり方がわかりやすく書かれています。
臨床家の方には当たり前すぎる面もあるかもしれませんが、僕のような門外漢、初心者にはわかりやすい内容です。どう見ても医学書ですので、民俗学とはまったく関係ない本ですので、民俗学畑の方は、その辺をご理解ください。


三景、お江戸の鍼灸道具屋さん



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