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藤吉捕物覚書「三つの足跡」

2012年08月23日 | ミステリ
藤吉捕物覚書「三つの足跡」は足跡トリック&密室トリック(というほどではないですが)を扱っていて、
さらっと読むとカーの「修道院殺人事件(白い僧院の殺人」のパクリかと思えるほどよく似ています。
発表年代を調べるとなんと「三つの足跡」は「修道院殺人事件」の9年も前に書かれています。
カーが林不忘を読んでいたとはとうて考えられないですし、
可能性としてはこの2つかと。

1 9年の時間差で2人の作家が同じトリックを考案した
2 共通のネタ元があった

乱歩「探偵小説四十年」(上)では、
著者本人が藤吉ものは翻案と言っていたと記されています。
(ただし雑誌「苦楽」に送った2編について)

なーんだ、そうなのか。

異常なほどミステリ純度の高い初期作品は(ただし小説としては面白くない)、
顎十郎さえしのぐと思うのですが、翻案ならば納得できるような気がします。

都筑道夫が林不忘「一人三人全集」に寄せたエッセイで、
「内容的にはデテクティヴ・ストーリーでありながら、
時代小説らしさを意識したあまりに、推理小説らしさを希薄にして・・・」と書いています(「日本の名探偵」の再録より)。
都筑道夫はミステリとしてはいまひとつ、という評価のようですが、
翻案だったということを知っていたからかもしれません。
また、林不忘イコール牧逸馬ということから考えると、
当時の海外ミステリ(とくに実話)のネタは同時代の誰よりも深い知識があったに違いありません。

いっぽうカーの「修道院殺人事件」は、乱歩の「カー問答」の中で第2ランクを与えられ、
「カーの発明したトリックの中でもっとも優れたものの一つ」という栄誉まで受けています。
が、このトリックはカーのオリジナルなのでしょうか?
乱歩が「カーの発明した」と書いているだけで、本当のところは分かりません。
カーがあり得ない状況を説明するときには、犯罪実話を引き合いに出すことがありますが、
じつは「修道院殺人事件」のメイントリックは、犯罪実話からの流用ということも考えられます。

もしそうならば、「三つの足跡」と「修道院殺人事件」は
同じネタを使って書かれていた可能性もある、すくなくとも絶対にないとは言えないでしょう。
カーの独創的な点は、そのメイントリックの中で、犯人と発見者を別にした点で
「藤吉」の「三つの足跡」のほうが元ネタに近い形だったのではないのでしょうか。
今となってはそのネタ元がいったい何だったのか調べる術はないのでしょうね。
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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (cold_sleeper)
2012-08-28 23:58:25
何気無しに書かれてますがスゴイ発見だと思います。
モタモタといまだ長谷川海太郎が煮詰まりません。
お恥ずかしながらディクスン・カーは
一冊も読んだことがないです。
返信する
Unknown (spin out)
2012-09-01 22:12:33
お越しいただき光栄です。

証拠もなにもない、ただの妄想です。
こうだったら面白いかな、ぐらいの。

藤吉捕物は、妙に読みづらいのが不思議です。
全部読み終えたら、感想など書いてみたいと思います。
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