素人裸足稲作日誌 ~晴耕雨読ライフ~

イキイキ・伸び伸び、充実した『晴耕雨読』な生活を恋女房と二人慎ましく過ごしながら米作り・野菜作りに汗を流しています。

17の夏 その2

2011-08-01 21:47:24 | 日記
クロは中学3年のときの同級生だった。
体操部に所属しており、時折体育の時間に見せる鉄棒競技での大車輪には至極感動させら
れたものだ。
だが、放課後、体育館で熱心に練習しているクロの姿を見た記憶がオイラにはあまり無く
それは、オイラが帰宅部だったからクロの必死な練習風景を見る機会に恵まれなかったのか、
クロが天性の才能を持ち合わせており練習を極限まで省略しても嫌味なく身体を動かせたのか、
果たしてどうなんだろう?いずれにしても体育の時間においては飛びぬけた成績のカッコイイ
同級生だった。他の科目のそれはどうだったかは、想像にお任せする。
クロには「ファン」の女が一人いた。一人。お世辞にも可愛いとは言えぬエモイワレヌ女だった。
クロにタオルや、弁当、飲み水を差し入れたり、手紙を渡したりしていたが、クロ自身は
迷惑を極めており、嫌いならそのような貢ぎ物を受け取るな、と忠告もからかい半分にしてやったが
クロにはそれが出来なかったみたいだ。何か弱みでも握られていたのかもしれない。
クロとは意外と気があった。別々の高校に進み、疎遠にはなっていたが、この自転車旅行の
話で久々に盛り上がり、ともにいい思い出を作ろうと計画を進めたのであった。

イナは当時通っていた高校の同級生だった。
毎日、津市寄りの自宅から、四日市寄りの学校までほぼ鈴鹿市を横断して1時間以上かけて
自転車で通うという共通の境遇にお互い似た匂いを嗅ぎ取り、事の外意見が合った。
イナは陸上部で長距離をやり、いつも遅くまでトラックを走り続けていた。オイラのいた
山岳部も体力増強の為に学校周辺を1日20km前後走りこんでいた。目的の異なるクラブで
行なっている事はほぼ同様のものだった。ここでも似た匂いが立ち込めていた。
自転車で京都行くけど行く?行く!二つ返事だった。

オイラは、高校に入ってからというもの、土曜日日曜日はほとんど山に登っていた。
好きでなった山岳部員なのだから当然の行動であるのだが、俗世間を離れ、大自然にどっぷり
浸かり、山を下りて湯にまたどっぷり浸かる。極楽極楽であった。男だけの縦社会にも
上手く順応でき、快適な登山ライフを満喫していた。山で得た強靭なパワーを少し違った場面で
試してみたいと自転車での旅を思いついたのである。もう少し色気のあるプランを練ったなら
その後の人生も大きく変わっていたかも知れぬが、少年オイラには、この旅がキラキラ輝いて
青春を途方も無く加速させてくれるものになると確信があったのである。

京都を目指す3人が集まった。気合もスタミナも十分の3人のはずだった。その3人が今、
予定時間を倍以上オーバーし、琵琶湖大橋の根元で茫然自失で立ち往生している。
行く手に待ち構えるものは、果たして?


続く。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする