テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

<訃報:巨匠が相次いで死去~ベルイマン、そしてアントニオーニ>

2007-08-02 | <memo>
 一昨日、ベルイマンの訃報が流れたと思ったら、昨日はアントニオーニだった。

 ベルイマンは89歳。
 共同ニュースの記事は「ベルイマン氏が死去 世界的な映画監督」と題して、こう伝えた。

<スウェーデンを代表する世界的な映画監督イングマル・ベルイマン氏が30日、死去した。89歳。スウェーデン通信などが家族の話として伝えた。死因は明らかにされていない。57年の「野いちご」でベルリン映画祭金熊賞を受賞。「叫びとささやき」(72年)「鏡の中の女」(76年)「ファニーとアレクサンデル」(82年)で名監督としての地位を確立した。>

 2003年に20年ぶりに作ったという新作「サラバンド」が今年公開されて、あちこちのブログでもタイトルは目にしていたが、本人の言葉通り遺作となったようです。

 ベルイマン映画は「野いちご」しか見ていない。追悼の意味で、急遽何か見たくなってTUTAYAに行ってみたら、以前見つけておいた「処女の泉(1960)」は貸し出し中で、「第七の封印」だけがあったので今回はこれを借りてきた。

 56年の作品で、物語の舞台は14世紀。
 十字軍の遠征から疲れ果てて帰路に就いた騎士が主人公。ヨーロッパではペストが蔓延していて、従者と二人で故郷に向かう彼の前に死神が現れる。勿論、死神は騎士の命を取りに来たんだが、騎士は死神にチェスを持ちかけ、もしも騎士が勝てば命は取られない、との約束を取り付ける。チェスはすぐに終わるわけではなく、その後騎士と従者は旅を続け、時々死神が現れ、チェスの続きをする。
 牧師の家に生まれたベルイマンの作品には、常に神の存在に対する色々な問いかけがなされているようだが、これは死神や悪魔と通じたとして火炙りにされる娘が出てきたり、寓話の形を取りながらも真っ正面から取り組んだ作品のようである。

 キリスト教とは無縁の私には意味が分からない展開もあり、個別作品として紹介出来る段階ではない。但し、時に黒澤を思い起こす程、映像には力がありましたな。

 旅芸人夫婦の奥さん役、ビビ・アンデルセンが若い!
 そういえば、この映画には参加してなかったが、ベルイマン映画でお馴染みのスヴェン・ニクヴィストも去年亡くなっていたのでした。


<映画「太陽はひとりぼっち」イタリアの監督が死去

 現代人の孤独や絶望感を描いた「太陽はひとりぼっち」や「赤い砂漠」で知られるイタリアの映画監督ミケランジェロ・アントニオーニ氏が30日、ローマの自宅で死去した。94歳だった。死因は不明。関係者が明らかにした。
 ボローニャ大卒業後、ロッセリーニやビスコンティといった名監督の下でシナリオを執筆。1950年に「愛と殺意」で監督デビューした。60年の「情事」で、人間にとっての愛の不毛や存在の不確かさをとらえ、以降もこのテーマを掘り下げる作品群を発表した。
 特にカンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受けたアラン・ドロン主演作「太陽はひとりぼっち」(62年)や、米アカデミー賞の監督、脚本賞にノミネートされた「欲望」(66年)で名声を高め、フェリーニ、パゾリーニ両監督とともに、イタリア映画を支えた。ベルリン、ベネチア、カンヌの世界三大映画祭で最高賞を獲得したことでも知られる。
 80歳を超えても「愛のめぐりあい」(95年)を手掛け、95年度米アカデミー賞の名誉賞を受賞した。
 代表作はほかに「さすらい」「砂丘」「ある女の存在証明」など。>(共同ニュースより)

 ベルイマンより記事が大きいですな。

 以前、「期待はずれだったアレやコレ」と題して、アントニオーニの「情事」がつまらなかった旨の記事を書いたけど、先日見た「太陽はひとりぼっち」もモニカ・ヴィッティ扮するヒロインの心情が掴めずに、退屈なシーンの多い映画だった。
 アンニュイな雰囲気に惹かれる人が多いようだが、私には情緒不安定な女性という印象。とらえどころがなくて、それこそ退屈な人物だった。

 ベルイマンに云わせると、「欲望」と「(1961)」以外のアントニオーニ作品は見なくていいそうである。
 そして、<アントニオーニはこの商売を実は全然学ばなかったんだ。彼は個々のイメージに集中していて、映画というものはイメージのリズミカルな流れである、運動であるとちっとも気づいていない。>とも言っている。

 「太陽は・・・」を見ていて、間の悪いショットの切り替えや意図の不明な構図があって、それはヒロインの心情が分かりにくいせいだと思っていたけれど、それだけでもなさそうである。


 98年に亡くなった黒澤も88歳の高齢だった。巨匠と呼ばれる人には、強い生命力がお有りになるのだろうと改めて思う今日この頃であります。
 お二人のご冥福をお祈りいたします。
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4 コメント

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今朝の朝日新聞に・・ (anupam)
2007-08-02 21:18:54
ふたりの晩年を対比させる大学教授のコラムがのっていました。
アントニオーニ作品を「退屈な展開の中に驚くようなキラっときらめく一瞬がある」というような書き方をしていて、は~~こういう言い方もあるのか~と思いました。
若いころ、見ていたところでは、「退屈」の部分しか目につかなかったけど。
今見ると「キラ!」がわかるのかな
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10秒の煌めきのために・・・ (十瑠)
2007-08-02 22:27:02
30分も退屈な時間を過ごすなんて、私には出来ませんな

「欲望」はDVDも出ているし、人気もあるみたいなので、いつか見てみましょう。

ベルイマンはも少し後の、そう、anupamさんが母上とご覧になったという「叫びとささやき」などの70年代の作品が見たいですね。
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ベルイマン (TARO)
2007-08-03 02:41:54
私はベルイマン大好きなので、やはりちょっとショックを隠せないものが・・・

「第七の封印」もですが、モノクロ時代の作品は主にキリスト教がらみの主題なので、日本人にとっては少々難解ですよね。やはり「叫びとささやき」「秋のソナタ」「ファニーとアレクサンデル」あたりの、宗教主題が後退してる作品は、そのぶん判りやすく、純粋な映画的愉悦(?)みたいなものに浸れるような気がします。
「サラバンド」はテレビで見るべき作品かと。
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おはようございます (十瑠)
2007-08-03 08:09:00
「サラバンド」の記事は、以前少しだけ(ネタバレしない程度に)読ませていただきました。

キリスト教絡みの話には、神の存在に対する意識以前に、宗教的儀式などに対する知識がないと理解できない部分もあると思うので、私には難しいですね。

国や言葉は違っても、夫婦関係などの人間を扱ったテーマの方が入りやすいということですか。
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