(2003/ジム・ジャームッシュ監督・脚本/ロベルト・ベニーニ、スティーヴ・ブシェミ、トム・ウェイツ、ルネ・フレンチ、ケイト・ブランシェット、アルフレッド・モリナ、ビル・マーレイ/97分)
双葉さんが「外国映画ぼくの500本」にも挙げてらっしゃる「ストレンジャー・ザン・パラダイス(1984)」で名前は知っていたジャームッシュ。2007年に「ブロークン・フラワーズ (2005)」を観て大いに興味を持ったのに、その後なかなか機会が無くて、このたび久方ぶりにツタヤにもゲオにも置いてあるコチラをレンタルして来た。
allcinemaでフィルモグラフィーを見ると「コーヒー&シガレット 2 (1989)」というのがある。この「コーヒー&シガレッツ」は2003年製作なのに何故? と思っていたら、「コーヒー&シガレット 2」は今回の「コーヒー&シガレッツ」で紹介された11個の短編のうちの一つで、つまり「コーヒー&シガレッツ」はジャームッシュが十数年かけて撮ってきた短編をオムニバスとしてまとめて1本の長編映画にしたものなのだ。
11本の短編にはそれぞれタイトルが付いていて、ま、いわば各章に見出しが付いているようなものでしょうか。
どちらも頭頂部が淋しくなっているロベルト・ベニーニとスティーヴン・ライトが共演しているのは「変な出会い(STRANGE TO MEET YOU)」。
まんまロベルトとスティーヴンという名前の役だが、二人の関係も分からず、予約はしたけれども歯医者に行きたくないスティーヴンに替わって歯に問題を抱えているロベルトが病院に向かうというオチもデジャヴ感があって笑えないコントのような作品。
「コーヒー&シガレット 2」のエピソードである「双子(TWINS)」に出演しているのはスパイク・リーの妹と弟であるジョイ・リーとサンキ・リー。映画では双子になってるが、実際はジョイの方が四つ歳上のお姉さんだ。
カフェで寛いでいる二人にウェイターのスティーヴ・ブシェミが、二人はまるで「ヘッケルとジャッケル」みたいだとか、エルヴィス・プレスリーには双子の弟が居たんだが知ってるかなどとKY感満載で話しかけて油を売る話。リー姉弟の話ではエルヴィスは黒人から安く楽曲を買ってたくせに人種差別をしていたとなっていた。
そういえば、この短編集の殆どはコーヒーテーブルがチェッカー盤のような市松模様なんだが、このエピソードでは市松ではなかったな。
イギー・ポップとトム・ウェイツが出ているのが「カリフォルニアのどこかで(SOMEWHERE IN CALIFORNIA)」。
イギーはミュージシャンであり、ミュージシャンと医者を両立させているというトムと待ち合わせのカフェでコーヒーを飲む。どちらも禁煙に成功したが、トムは成功したからこそ何時でも気楽に煙草が吸えるのさと言って前の客がテーブルに忘れていったマールボロを吸い始める。
音楽の話で盛り上がりたいイギーと、どこか斜に構えているトム。特典映像でジャームッシュが語ることには、トムは脚本が気に入らずに撮影に入ったらしく、ホントはイギーの方が怒り出す設定だったのに逆になってしまい、でもそのまま撮り続けたらしい。
微妙な空気感はそのまま観る方にも伝わって、微妙な作品だ。
歳の割にはまだまだ少年の息子がいるヴィニー・ヴェラとジョー・リガーノの老人二人が、煙草とカフェインの害についてお互いを注意し合う「それは命取り(THOSE THINGS'LL KILL YA)」。
小遣いを無心に来るヴィニー・ヴェラの息子の役をしていたのはヴィニー・ヴェラ・Jr。
何処の街角にもありそうな会話だった。
一人で雑誌を広げながらコーヒーを飲んでいる色っぽい美女ルネ・フレンチが出ているのが「ルネ(RENEE)」。
E・J・ロドリゲス扮するウェイターはきっかけを作ろうと何度もコーヒーのお代わりを注ごうとやってくるが、ルネは自分好みの味を楽しみたいのでとクールに対応する。市松模様のテーブルクロスがフランス映画みたいだった。
「問題なし(NO PROBLEM)」は、アレックス・デスカスとイザック・ド・バンコレの黒人二人が待ち合わせのカフェで会う話。
イザックは電話をしてきたアレックスに何か問題が発生したのではと思っているが、アレックスは何も問題はない、ただ会いたかっただけだと言う。
『ホントに何も無いのか?』
『何も無いさ』
そんな会話の繰り返し。オチは特に無い。
ケイト・ブランシェットが正反対の性格の二役をしているのが「いとこ同士(COUSINS)」。
一人は旦那も子供もいるセレブな映画スターで、もう一人は売れないロック歌手。仕事でやってきた女優がホテルに歌手の従姉妹を呼んで久しぶりの邂逅を喜び合おうとするも、従姉妹は皮肉たっぷりな態度と口調で話をする。女優には驕った所が無いのに、最後まで悪ぶる歌手。
ロビーで煙草を吸おうとする歌手に女優は『ココは禁煙よ』というがクレームは来ず。だったのだが、女優が部屋に戻った途端に・・・。
ザ・ホワイト・ストライプスというバンドのメンバー、メグ・ホワイトとジャック・ホワイトが出ているのが「ジャック、メグにテスラコイルを見せる(JACK SHOWS MEG HIS TESLA COIL)」。
ジャックが天才科学者と信奉するニコラ・テスラについて、彼が発明した共振変圧器テスラコイルの放電実験を見せながらメグに話をする。実験は途中で失敗するが、その原因をメグが指摘。ジャックも納得する。メグは少し前までニコラ・テスラにもテスラコイルにも興味が無かったくせに。
BGMはストライプスの曲なんだろうか?
ジャックとメグは元夫婦らしい。
会話する二人の奥のカフェの壁に飾ってあった絵はリー・マーヴィンの肖像画のように見えたな。
アルフレッド・モリナとスティーヴ・クーガンの共演が「いとこ同士?(COUSINS ?)」。
どちらも英国俳優の役で、モリナは仕事を求めてカリフォルニアに住んでいる。プロモーションか何かでやって来たクーガンにモリナが逢いたいと連絡し、二人が会う所からスタートする。
ヒット作に出ているクーガンのファンだとモリナは言い、クーガンは少しだけ尊大な態度。ところで用事はなんだい?
『実は・・』と歴史好きなモリナが自身の家系図を調べていたら、なんとクーガンが従兄弟だったことが分かった、という話。
血縁関係をネタに擦り寄られるのはかなわんと、何かと理由をこじ付けながら連絡先を教えないクーガンだったのだが・・・。
ヒットホッパーのGZA(ジザ)とRZA(リッザ)が出てるのが「幻覚(DELIRIUM)」。
RZAがミュージシャンと医者を両立させているというのは3番目のエピソードのトム・ウェイツと似ているな。
彼らに注文をとりに来るウェイターがビル・マーレイなのでGZAもRZAもびっくりするという幻覚の様な雑談が続く。
ビル・ライスとテイラー・ミードという二人の老俳優が昼休み中の清掃人に扮している最終エピソードが「シャンパン(CHAMPAGNE)」。
ミードは大昔のパリやムーラン・ルージュが懐かしいと言い、『不味いコーヒーもシャンパンと思えば楽しいだろ』と言う。
ライスは70年代のNYを懐かしみ、労働者階級の飲むコーヒーが好きだと言う。
世間から忘れ去られていく事が寂しいと言うミードは椅子の上で静かに目を瞑る。
ライスの話にニコラ・テスラの名がまた出てきたのは、ジャームッシュがニコラを好きなんだろうな。
ツタヤでレンタルしたジャームッシュの「コーヒー&シガレッツ」を観る。オムニバスだ。短いのから長いのからあるが、面白かったのはケイト・ブランシェットがいとこ同士を二役している話と、アルフレッド・モリーナとスティーヴ・クーガンがいとこ同士を演じている話。ありゃ、どっちもいとこ絡みだ。
[ 5月 8日(→twitter で 以下同じ)]
全体にゆるいコメディタッチの作りだけれど、気に入った二つの話にはスリルがあったので印象深いんだと思う。映画にはスリルが必要だモンね。
「コーヒー&シガレッツ」。今朝読み返したら、「喫茶店」という言葉がなんだかこの映画にそぐわないので、まっとうな(笑)「カフェ」に替えた。「喫茶店」・・・、やっぱオヤジだなぁ、俺って。
[ 5月 11日( 以下同じ)]
「コーヒー&シガレッツ」で書き残した事を思い出した。当初から感じていたことだが、アレに出てくるコーヒーってどれも美味しくなさそうだな。僕が煙草を吸わないせいもあると思うけど、画を見てると煙草の灰がカップに落ちてそうでいい気分はしない。特に男同士のはコーヒーもぬるそうだしネ。
双葉さんが「外国映画ぼくの500本」にも挙げてらっしゃる「ストレンジャー・ザン・パラダイス(1984)」で名前は知っていたジャームッシュ。2007年に「ブロークン・フラワーズ (2005)」を観て大いに興味を持ったのに、その後なかなか機会が無くて、このたび久方ぶりにツタヤにもゲオにも置いてあるコチラをレンタルして来た。
allcinemaでフィルモグラフィーを見ると「コーヒー&シガレット 2 (1989)」というのがある。この「コーヒー&シガレッツ」は2003年製作なのに何故? と思っていたら、「コーヒー&シガレット 2」は今回の「コーヒー&シガレッツ」で紹介された11個の短編のうちの一つで、つまり「コーヒー&シガレッツ」はジャームッシュが十数年かけて撮ってきた短編をオムニバスとしてまとめて1本の長編映画にしたものなのだ。
11本の短編にはそれぞれタイトルが付いていて、ま、いわば各章に見出しが付いているようなものでしょうか。
*
どちらも頭頂部が淋しくなっているロベルト・ベニーニとスティーヴン・ライトが共演しているのは「変な出会い(STRANGE TO MEET YOU)」。
まんまロベルトとスティーヴンという名前の役だが、二人の関係も分からず、予約はしたけれども歯医者に行きたくないスティーヴンに替わって歯に問題を抱えているロベルトが病院に向かうというオチもデジャヴ感があって笑えないコントのような作品。
「コーヒー&シガレット 2」のエピソードである「双子(TWINS)」に出演しているのはスパイク・リーの妹と弟であるジョイ・リーとサンキ・リー。映画では双子になってるが、実際はジョイの方が四つ歳上のお姉さんだ。
カフェで寛いでいる二人にウェイターのスティーヴ・ブシェミが、二人はまるで「ヘッケルとジャッケル」みたいだとか、エルヴィス・プレスリーには双子の弟が居たんだが知ってるかなどとKY感満載で話しかけて油を売る話。リー姉弟の話ではエルヴィスは黒人から安く楽曲を買ってたくせに人種差別をしていたとなっていた。
そういえば、この短編集の殆どはコーヒーテーブルがチェッカー盤のような市松模様なんだが、このエピソードでは市松ではなかったな。
イギー・ポップとトム・ウェイツが出ているのが「カリフォルニアのどこかで(SOMEWHERE IN CALIFORNIA)」。
イギーはミュージシャンであり、ミュージシャンと医者を両立させているというトムと待ち合わせのカフェでコーヒーを飲む。どちらも禁煙に成功したが、トムは成功したからこそ何時でも気楽に煙草が吸えるのさと言って前の客がテーブルに忘れていったマールボロを吸い始める。
音楽の話で盛り上がりたいイギーと、どこか斜に構えているトム。特典映像でジャームッシュが語ることには、トムは脚本が気に入らずに撮影に入ったらしく、ホントはイギーの方が怒り出す設定だったのに逆になってしまい、でもそのまま撮り続けたらしい。
微妙な空気感はそのまま観る方にも伝わって、微妙な作品だ。
歳の割にはまだまだ少年の息子がいるヴィニー・ヴェラとジョー・リガーノの老人二人が、煙草とカフェインの害についてお互いを注意し合う「それは命取り(THOSE THINGS'LL KILL YA)」。
小遣いを無心に来るヴィニー・ヴェラの息子の役をしていたのはヴィニー・ヴェラ・Jr。
何処の街角にもありそうな会話だった。
一人で雑誌を広げながらコーヒーを飲んでいる色っぽい美女ルネ・フレンチが出ているのが「ルネ(RENEE)」。
E・J・ロドリゲス扮するウェイターはきっかけを作ろうと何度もコーヒーのお代わりを注ごうとやってくるが、ルネは自分好みの味を楽しみたいのでとクールに対応する。市松模様のテーブルクロスがフランス映画みたいだった。
「問題なし(NO PROBLEM)」は、アレックス・デスカスとイザック・ド・バンコレの黒人二人が待ち合わせのカフェで会う話。
イザックは電話をしてきたアレックスに何か問題が発生したのではと思っているが、アレックスは何も問題はない、ただ会いたかっただけだと言う。
『ホントに何も無いのか?』
『何も無いさ』
そんな会話の繰り返し。オチは特に無い。
ケイト・ブランシェットが正反対の性格の二役をしているのが「いとこ同士(COUSINS)」。
一人は旦那も子供もいるセレブな映画スターで、もう一人は売れないロック歌手。仕事でやってきた女優がホテルに歌手の従姉妹を呼んで久しぶりの邂逅を喜び合おうとするも、従姉妹は皮肉たっぷりな態度と口調で話をする。女優には驕った所が無いのに、最後まで悪ぶる歌手。
ロビーで煙草を吸おうとする歌手に女優は『ココは禁煙よ』というがクレームは来ず。だったのだが、女優が部屋に戻った途端に・・・。
ザ・ホワイト・ストライプスというバンドのメンバー、メグ・ホワイトとジャック・ホワイトが出ているのが「ジャック、メグにテスラコイルを見せる(JACK SHOWS MEG HIS TESLA COIL)」。
ジャックが天才科学者と信奉するニコラ・テスラについて、彼が発明した共振変圧器テスラコイルの放電実験を見せながらメグに話をする。実験は途中で失敗するが、その原因をメグが指摘。ジャックも納得する。メグは少し前までニコラ・テスラにもテスラコイルにも興味が無かったくせに。
BGMはストライプスの曲なんだろうか?
ジャックとメグは元夫婦らしい。
会話する二人の奥のカフェの壁に飾ってあった絵はリー・マーヴィンの肖像画のように見えたな。
アルフレッド・モリナとスティーヴ・クーガンの共演が「いとこ同士?(COUSINS ?)」。
どちらも英国俳優の役で、モリナは仕事を求めてカリフォルニアに住んでいる。プロモーションか何かでやって来たクーガンにモリナが逢いたいと連絡し、二人が会う所からスタートする。
ヒット作に出ているクーガンのファンだとモリナは言い、クーガンは少しだけ尊大な態度。ところで用事はなんだい?
『実は・・』と歴史好きなモリナが自身の家系図を調べていたら、なんとクーガンが従兄弟だったことが分かった、という話。
血縁関係をネタに擦り寄られるのはかなわんと、何かと理由をこじ付けながら連絡先を教えないクーガンだったのだが・・・。
ヒットホッパーのGZA(ジザ)とRZA(リッザ)が出てるのが「幻覚(DELIRIUM)」。
RZAがミュージシャンと医者を両立させているというのは3番目のエピソードのトム・ウェイツと似ているな。
彼らに注文をとりに来るウェイターがビル・マーレイなのでGZAもRZAもびっくりするという幻覚の様な雑談が続く。
ビル・ライスとテイラー・ミードという二人の老俳優が昼休み中の清掃人に扮している最終エピソードが「シャンパン(CHAMPAGNE)」。
ミードは大昔のパリやムーラン・ルージュが懐かしいと言い、『不味いコーヒーもシャンパンと思えば楽しいだろ』と言う。
ライスは70年代のNYを懐かしみ、労働者階級の飲むコーヒーが好きだと言う。
世間から忘れ去られていく事が寂しいと言うミードは椅子の上で静かに目を瞑る。
ライスの話にニコラ・テスラの名がまた出てきたのは、ジャームッシュがニコラを好きなんだろうな。
*
ツタヤでレンタルしたジャームッシュの「コーヒー&シガレッツ」を観る。オムニバスだ。短いのから長いのからあるが、面白かったのはケイト・ブランシェットがいとこ同士を二役している話と、アルフレッド・モリーナとスティーヴ・クーガンがいとこ同士を演じている話。ありゃ、どっちもいとこ絡みだ。
[ 5月 8日(→twitter で 以下同じ)]
全体にゆるいコメディタッチの作りだけれど、気に入った二つの話にはスリルがあったので印象深いんだと思う。映画にはスリルが必要だモンね。
「コーヒー&シガレッツ」。今朝読み返したら、「喫茶店」という言葉がなんだかこの映画にそぐわないので、まっとうな(笑)「カフェ」に替えた。「喫茶店」・・・、やっぱオヤジだなぁ、俺って。
[ 5月 11日( 以下同じ)]
「コーヒー&シガレッツ」で書き残した事を思い出した。当初から感じていたことだが、アレに出てくるコーヒーってどれも美味しくなさそうだな。僕が煙草を吸わないせいもあると思うけど、画を見てると煙草の灰がカップに落ちてそうでいい気分はしない。特に男同士のはコーヒーもぬるそうだしネ。
・お薦め度【★★=悪くはないけどネ】
はっきりした記憶がないな~
「セブン・デイズ・イン・ハバナ」もオムニバスだったけど
こちらは微妙に話がつながっていることがだんだん
わかってきて、そのあたりは面白かったけど
途中、ちょっと寝ちゃった。
ゆるいのもいいけど
ゆるすぎると
寝ちゃう・・
<微妙に話がつながっている>といえば、「彼女を見ればわかること」とか「ラブ・アクチュアリー」なんかもそんな感じですかな。
>途中、ちょっと寝ちゃった
「コーヒーと煙草」にもそんなゆるい話はありますぞ。
でも、一見の価値ありエピソードも複数有り。
何かを得ようとか思わずに観て欲しいって、ジャームッシュ自身が言ってますた。