(2017/パオロ・ヴィルズィ監督・共同脚本/ヘレン・ミレン、ドナルド・サザーランド、クリスチャン・マッケイ、ジャネル・モロニー/112分)
youtubeの予告編を見て予定リストに入っていた映画ですが、結末が予想とは違っていて、備忘録を書くにあたっては(ストレートじゃなくても)そこに触れないわけにはいかないので、今回は未見の方には“ネタバレ注意”としましょうか。
末期癌に侵されている奥さんと認知症を患っている旦那さんの老夫婦が、子供たちがまだ小さい頃によく使っていた古いキャンピングカーに乗って旅に出るという話。
奥さんのエラにはヘレン・ミレン。
その日、癌治療の為に入院する予定だったエラだが、息子が迎えに来ることを知りながら約束をすっぽかしてしまう。オープニングがエラの家に到着する息子の車からの映像で、BGMに流れてくる曲がキャロル・キングの「♪It's Too Late」というのが懐かしいやら、可笑しいやら。
鍵もかかっていない家の中に入り『母さん』と呼ぶももぬけの殻。書斎にも父親の姿は無い。
昔から知っている燐家のおばさんリリアンから「そういえば、朝早く車のエンジンの音がしたわよ」と言われ、初めて両親がオンボロ車に乗って出かけたのを知るのです。
ドナルド・サザーランド扮する夫のジョン・スペンサーは元大学の文学部教授。
直前に自分がやろうとしていた事さえすぐに忘れてしまうような認知症で、旅の途中では休憩をしていたガソリンスタンドにエラを忘れて一人で車を出したりしちゃいます。
ヘミングウェイを敬愛していて、認知症にもかかわらずヘミングウェイの作品は暗唱できるし、初めて会うレストランのウェイトレスに頼まれもしないのに聞かせたりして困惑されたりして・・。
夫婦が暮らしているのはアメリカ北東部のマサチューセッツ。エラはジョンの為にフロリダのキーウェストまで行き、そこにあるヘミングウェイが晩年を過ごした家を見せたいと思っているのです。
予告編を観て、老夫婦の人生を振り返りながら、併せて終活に纏わるアレコレ、更には家族ならではのしみじみとするエピソードが語られる話だろうと思っていて、終盤で例えばエラが亡くなるなんてことがあっても、それは匂わせるだけというハート・ウォーミングな後味と思っていたんですけどねぇ。
安楽死までが、テーマとして出てくるとは思いませんでした。
最後のエラの行動には賛否有るでしょうね。日本では無理心中って犯罪ですから。
ただ、それまでのエピソードの積み重ねがあるので心情的には(認知症の家族を持っていた経験からしても)個人的には・・許せる・・かな。
アメリカ人のお話だから米国映画のようですが、作ったのはイタリア人とフランス人。
意外な終盤のテイストは、そんなお国柄が反映したんでしょうか。
結末を観てしまうと、エラのそれまでの行動の裏にある心情を見直さなければならなくなってしまうのも事実で、ヘレン・ミレンが明るく演じているのもかえって悲しい気分になるなぁ。
旅の途中、キャンピングカーの横で家族の思い出が詰まったスライドショーを夫婦で見ているシーンが泣かせますね。
尚、マイケル・ザドゥリアンのベストセラー小説『旅の終わりに』が原作だそうです。
一週間以上前に観た映画なので記憶も幾分薄れているのですが、ひとつ大事なエピソードを思い出しました。
それはジョンが自身の病気を認識していて、自分の最期はヘミングウェイのような死に方を望んでいるとエラに話をすることです。
その為にエラはキャンピングカーに積んでいる猟銃の扱いに気を付けているのですが、このジョンの言葉には自身の安楽死を望む気持ちが現れているんですね。つまりエラの最後の行動は無理心中ではなく、安楽死の手助けと作者は考えているんだと思います。
ヘミングウェイのような猟銃での凄惨な死を避けたのが、エラの愛情だったのかも知れません。
youtubeの予告編を見て予定リストに入っていた映画ですが、結末が予想とは違っていて、備忘録を書くにあたっては(ストレートじゃなくても)そこに触れないわけにはいかないので、今回は未見の方には“ネタバレ注意”としましょうか。
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/b7/e0189f07b215fb26a32733b8538dfba1.jpg)
奥さんのエラにはヘレン・ミレン。
その日、癌治療の為に入院する予定だったエラだが、息子が迎えに来ることを知りながら約束をすっぽかしてしまう。オープニングがエラの家に到着する息子の車からの映像で、BGMに流れてくる曲がキャロル・キングの「♪It's Too Late」というのが懐かしいやら、可笑しいやら。
鍵もかかっていない家の中に入り『母さん』と呼ぶももぬけの殻。書斎にも父親の姿は無い。
昔から知っている燐家のおばさんリリアンから「そういえば、朝早く車のエンジンの音がしたわよ」と言われ、初めて両親がオンボロ車に乗って出かけたのを知るのです。
ドナルド・サザーランド扮する夫のジョン・スペンサーは元大学の文学部教授。
直前に自分がやろうとしていた事さえすぐに忘れてしまうような認知症で、旅の途中では休憩をしていたガソリンスタンドにエラを忘れて一人で車を出したりしちゃいます。
ヘミングウェイを敬愛していて、認知症にもかかわらずヘミングウェイの作品は暗唱できるし、初めて会うレストランのウェイトレスに頼まれもしないのに聞かせたりして困惑されたりして・・。
夫婦が暮らしているのはアメリカ北東部のマサチューセッツ。エラはジョンの為にフロリダのキーウェストまで行き、そこにあるヘミングウェイが晩年を過ごした家を見せたいと思っているのです。
予告編を観て、老夫婦の人生を振り返りながら、併せて終活に纏わるアレコレ、更には家族ならではのしみじみとするエピソードが語られる話だろうと思っていて、終盤で例えばエラが亡くなるなんてことがあっても、それは匂わせるだけというハート・ウォーミングな後味と思っていたんですけどねぇ。
安楽死までが、テーマとして出てくるとは思いませんでした。
最後のエラの行動には賛否有るでしょうね。日本では無理心中って犯罪ですから。
ただ、それまでのエピソードの積み重ねがあるので心情的には(認知症の家族を持っていた経験からしても)個人的には・・許せる・・かな。
アメリカ人のお話だから米国映画のようですが、作ったのはイタリア人とフランス人。
意外な終盤のテイストは、そんなお国柄が反映したんでしょうか。
結末を観てしまうと、エラのそれまでの行動の裏にある心情を見直さなければならなくなってしまうのも事実で、ヘレン・ミレンが明るく演じているのもかえって悲しい気分になるなぁ。
旅の途中、キャンピングカーの横で家族の思い出が詰まったスライドショーを夫婦で見ているシーンが泣かせますね。
尚、マイケル・ザドゥリアンのベストセラー小説『旅の終わりに』が原作だそうです。
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一週間以上前に観た映画なので記憶も幾分薄れているのですが、ひとつ大事なエピソードを思い出しました。
それはジョンが自身の病気を認識していて、自分の最期はヘミングウェイのような死に方を望んでいるとエラに話をすることです。
その為にエラはキャンピングカーに積んでいる猟銃の扱いに気を付けているのですが、このジョンの言葉には自身の安楽死を望む気持ちが現れているんですね。つまりエラの最後の行動は無理心中ではなく、安楽死の手助けと作者は考えているんだと思います。
ヘミングウェイのような猟銃での凄惨な死を避けたのが、エラの愛情だったのかも知れません。
・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 ![テアトル十瑠](http://8seasons.life.coocan.jp/img/TJ-1.jpg)
![テアトル十瑠](http://8seasons.life.coocan.jp/img/TJ-1.jpg)
>癌治療の為に入院する予定だったエラ
これをよく考えると、かなり末期であると予想もされるわけで、終盤まで彼女の病状を伏せていたという把握はちと違ったかなと思います。
全体の印象は変わらないわけですが。
>エラの愛情
何だか僕がレスで書いたことがそのまま書かれていまして、恥ずかしい次第。
内容の理解に関しては違わないのに、幕切れの付け方への感想が真逆になるのが興味深い。映画観の違いでしょうか?
エラの元カレが黒人で、そしてジョン以上の認知症だったというのも時代ですねぇ。