(2006/クリス・ヌーナン監督/レニー・ゼルウィガー、ユアン・マクレガー、エミリー・ワトソン、ビル・パターソン、バーバラ・フリン/93分)
出版が決まった喜びで上気する頬を冷まそうとするかのように、自宅へ帰る途中の公園通りを馬車を疾走させ、窓から顔を出して風に当てるミス・ポター役のレニーの顔を見てたら、テイタム・オニールを思い出してしまった。順調にいけばテイタムもレニーのように、成人後も主役級の女優に成れたはずなのになぁ・・・。
“ピーター・ラビット”で有名なイギリスの女流絵本作家ポターの半生を描いた作品。「ミス・ポター」は正式にはヘレン・ビアトリクス・ポターというらしい。写実的な小動物にパステルのような色使いをしたメルヘンチックな絵が可愛らしい“ピーター・ラビット”は知っているが、作者については全く知らなかった。
20世紀初頭のロンドン。
裕福な家庭の娘、ビアトリクス・ポターには両親と弟がいて、コックやメイドも大勢抱えて何不自由なく暮らしていた。既に三十路に入っていたが、親の勧めるお見合いの相手にはさっぱり興味が湧かず、もう何年も自分の好きな絵を出版することだけに心を砕いていた。子供の頃から小さな動物をモデルに絵を描くのが好きで、とりわけ10歳の頃に両親に連れられて行った湖水地方の農場で出会った色々な動物や風景には魅了され、彼らを主人公にした物語を考えるのが好きだった。幾つも出版社に通ってはみたものの色好い返事は無く、半ばあきらめ気味だったが、中年の兄弟が経営するウォーン社に絵を持ち込むと、弟の方が帰り際に『出版してみましょう』と言ってくれた。
商人の家の出である母親(フリン)は芸術にはとんと興味はなく、娘の絵の才能についても、いかほどのものか考える余地を持っていなかった。
しばらくして、ウォーン社からノーマン(マクレガー)がビアトリクスを訪ねてきた。ノーマンは先日会った兄弟の弟だ。彼がビアトリクスの担当になったらしい。
絵本について、カラー印刷をすると子供には買えない値段になってしまうので、ビアトリクスは絵は白黒でもしようがないと思っていたが、ノーマンは絵の枚数を3分の1にしてカラー印刷でいきましょうと言う。原画の色を生かさなければ勿体ないし、その枚数なら子供向けの値段に抑えられるというのだ。
話をする内に、ノーマンが編集の仕事を担当するのは今回が初めてである事、それはノーマンの兄達が彼の挫折を見越しての判断であり、ノーマン自身も兄達の思惑は分かっている事を知る。それでも、ビアトリクスの絵に惚れ込んでいるノーマンに引っ張られるように印刷所にも行き、カラー印刷での出版に踏み切るのだった。それはビアトリクスにとっては母親を、ノーマンにとっては兄達を見返すチャンスなのだから・・・。
伝記物ですが、序盤に出版が決まる下りを持ってきてストーリーに入り込み易くしながら、尚かつヒロインの子供時代のエピソードを上手く挿入して、彼女の人生の流れを感じられるような構成にしているのが良いですね。しかも幾つかのエピソードは後半の伏線にもなっている。
財産や地位で安易に結婚を決めてしまおうとする旧い感性の母親と、愛情を結婚のよりどころにしたいというヒロインとの葛藤は良くあるパターンですが、旧い時代の話なので心情は理解しやすいし、ヒロインの自立とラブ・ロマンスを軸に持ってきたのも分かり易いですね。
但し、こうポターさんの善の部分だけを取り上げてこられると、一歩引いて観てみようかという気分が起きるのは歳のせいでしょうか
旧い時代の雰囲気が出ている画調よろしく、湖水地方の美しい映像も大いに癒されます。
(先月の、この映画に関してのつぶやきも転載しておきます)
録画していた「ミス・ポター」を観る。「ピーター・ラビット」でお馴染み、と言われても、こちとらそんなにお馴染みではない。なんとなくピーターの絵は知っているけど、絵本はちゃんと読んだことはないしなぁ。シルバニアファミリーとか思い出しちゃうんだけど、どうやら無関係のようだ。
[Jun 17th webで]
「ミス・ポター」、映画の方は面白かった。英国の話だからついJ・オースティンなんかを思い出す。芸術家として自立したい女性と、家庭に収まる結婚を勧める母親という図式はなんとなく共通している感じがするもんね。実写の中で動く絵。出しゃばらないCG。実話らしいありがちな話だけど好きだ。
[Jun 17th webで]
出版が決まった喜びで上気する頬を冷まそうとするかのように、自宅へ帰る途中の公園通りを馬車を疾走させ、窓から顔を出して風に当てるミス・ポター役のレニーの顔を見てたら、テイタム・オニールを思い出してしまった。順調にいけばテイタムもレニーのように、成人後も主役級の女優に成れたはずなのになぁ・・・。
“ピーター・ラビット”で有名なイギリスの女流絵本作家ポターの半生を描いた作品。「ミス・ポター」は正式にはヘレン・ビアトリクス・ポターというらしい。写実的な小動物にパステルのような色使いをしたメルヘンチックな絵が可愛らしい“ピーター・ラビット”は知っているが、作者については全く知らなかった。
*
20世紀初頭のロンドン。
裕福な家庭の娘、ビアトリクス・ポターには両親と弟がいて、コックやメイドも大勢抱えて何不自由なく暮らしていた。既に三十路に入っていたが、親の勧めるお見合いの相手にはさっぱり興味が湧かず、もう何年も自分の好きな絵を出版することだけに心を砕いていた。子供の頃から小さな動物をモデルに絵を描くのが好きで、とりわけ10歳の頃に両親に連れられて行った湖水地方の農場で出会った色々な動物や風景には魅了され、彼らを主人公にした物語を考えるのが好きだった。幾つも出版社に通ってはみたものの色好い返事は無く、半ばあきらめ気味だったが、中年の兄弟が経営するウォーン社に絵を持ち込むと、弟の方が帰り際に『出版してみましょう』と言ってくれた。
商人の家の出である母親(フリン)は芸術にはとんと興味はなく、娘の絵の才能についても、いかほどのものか考える余地を持っていなかった。
しばらくして、ウォーン社からノーマン(マクレガー)がビアトリクスを訪ねてきた。ノーマンは先日会った兄弟の弟だ。彼がビアトリクスの担当になったらしい。
絵本について、カラー印刷をすると子供には買えない値段になってしまうので、ビアトリクスは絵は白黒でもしようがないと思っていたが、ノーマンは絵の枚数を3分の1にしてカラー印刷でいきましょうと言う。原画の色を生かさなければ勿体ないし、その枚数なら子供向けの値段に抑えられるというのだ。
話をする内に、ノーマンが編集の仕事を担当するのは今回が初めてである事、それはノーマンの兄達が彼の挫折を見越しての判断であり、ノーマン自身も兄達の思惑は分かっている事を知る。それでも、ビアトリクスの絵に惚れ込んでいるノーマンに引っ張られるように印刷所にも行き、カラー印刷での出版に踏み切るのだった。それはビアトリクスにとっては母親を、ノーマンにとっては兄達を見返すチャンスなのだから・・・。
伝記物ですが、序盤に出版が決まる下りを持ってきてストーリーに入り込み易くしながら、尚かつヒロインの子供時代のエピソードを上手く挿入して、彼女の人生の流れを感じられるような構成にしているのが良いですね。しかも幾つかのエピソードは後半の伏線にもなっている。
財産や地位で安易に結婚を決めてしまおうとする旧い感性の母親と、愛情を結婚のよりどころにしたいというヒロインとの葛藤は良くあるパターンですが、旧い時代の話なので心情は理解しやすいし、ヒロインの自立とラブ・ロマンスを軸に持ってきたのも分かり易いですね。
但し、こうポターさんの善の部分だけを取り上げてこられると、一歩引いて観てみようかという気分が起きるのは歳のせいでしょうか
旧い時代の雰囲気が出ている画調よろしく、湖水地方の美しい映像も大いに癒されます。
*
(先月の、この映画に関してのつぶやきも転載しておきます)
録画していた「ミス・ポター」を観る。「ピーター・ラビット」でお馴染み、と言われても、こちとらそんなにお馴染みではない。なんとなくピーターの絵は知っているけど、絵本はちゃんと読んだことはないしなぁ。シルバニアファミリーとか思い出しちゃうんだけど、どうやら無関係のようだ。
[Jun 17th webで]
「ミス・ポター」、映画の方は面白かった。英国の話だからついJ・オースティンなんかを思い出す。芸術家として自立したい女性と、家庭に収まる結婚を勧める母親という図式はなんとなく共通している感じがするもんね。実写の中で動く絵。出しゃばらないCG。実話らしいありがちな話だけど好きだ。
[Jun 17th webで]
・お薦め度【★★★=一見の価値あり】
駆け足気味な印象をもたれたのは、時代との関連に注目されたからではないか、そんなことも思ったりしています。
ま、コメントを読んだ後の第一感ですけどネ。
>サイト内検索
BIGLOBEさんも、やっと付けられるようになったみたいですな。
母親との葛藤は時代との対決でもありましたね。
それを鏡のように映すのが男性とのロマンスなのかもしれない、などとも思ったような記憶もあります。
>レニー・ゼルウィガー
僕はスクリーンの表記に従って、レネー・ゼルウェガーとしていますが、外国人の表記は本当に悩ましい。
IMDbには発音記号を付けてもらいたいくらいです。
それから、サイト内検索をお気に入りリンク集の下に付けましたので、古い記事を探す時にご利用ください。どの程度の精度かまだ調べてませんが。^^;
そうですか。少なくとも32歳以降は順風満帆、いやいやソレまでだって何不自由なく、母親の嫌みさえ気にしなければ穏やかな人生を送られたんですね。
そう考えると、悲恋も人生の美しい彩りのようにも思えたりして
強さと賢さが好きでした~。^^
レニーもユアンもエミリーも
何となく観ていて安心メンバーでしたし
こんなにスラスラ成功していいものか、と
思わなくはなかったですけど(笑)
ビクトリアスさんは実際この後も
ゆっくり好きなようで暮されたようで
こんな感じに順風だったようですね。
幸せな女性ですこと~~~
随分と心の広い宵乃さんですねぇ^^
険悪だったかどうかは分かりませんが、娘にとっては“百害あって・・・”な母親としてしか描かれてなかったように見えます。
ノーマンの後の彼氏についても結婚には反対したようですしネ。
>ピーターのイラストが動き出すシーンはちょっとした感動でした。
そうですね。
カボチャの馬車で出かける両親を想像するシーンも可愛かったですね。
ピーターのイラストが動き出すシーンはちょっとした感動でした。
個人的にはビクトリアスの母親が好きです。
この作品にメルヘンチックな雰囲気があったので、あの母親も”意地悪な魔女”というキャラクターに見えてしまったようです。実際はもっと険悪だったんですかね~?