(2005/ヴィム・ヴェンダース監督/サム・シェパード、ジェシカ・ラング、ティム・ロス、ガブリエル・マン、サラ・ポーリー、エヴァ・マリー・セイント、ジョージ・ケネディ/ 124分)
カンヌで役所広司が男優賞を受賞した事で「PERFECT DAYS (2023)」が話題になったヴィム・ヴェンダース監督。久々に「パリ、テキサス」を観ようと近所のゲオに行ってみたが、なんと置いてなくて、それならばと未見だったコレを借りてきた。
「アメリカ、家族のいる風景」
なんかドキュメンタリーみたいなタイトルですが立派な商業映画であります。
オープニングがグランドキャニオンを背景に一人のカウボーイが馬を走らせているシーンで、なんだ西部劇かと思っていると、やがてカメラは西部劇を撮影中の映画クルーの様子を捉え、先ほどのカウボーイがこの西部劇の主演スターであり、撮影途中の現場から黙って抜け出したことが分かる。
ハワード・スペンス。
サム・シェパード扮するこの中年男が主人公ですな。
西部劇スターとして全国的に顔も名も知れた俳優だが、西部劇が廃ると共に彼の名を忘れる人も増えていった。酒、女、薬に暴力沙汰とマスコミにゴシップ・ネタを提供し続けた芸能人でもある。脱走後に一息つく所でポツリと『なぜ死ななかったんだ?』と呟くシーンもあり、彼なりに悩んでいたことも分かる。
途中で偶然出会った男と服を交換し、ブーツと馬を譲り、近くの町でキャッシュカードから有り金をおろしてバスで向かった先は年老いた母親のいる故郷だった。
30年ぶりだった。
父親は10年前に亡くなり実家も牧場も売り払って、落ち着いた一軒家で母は暮らしていた。バスのターミナルから電話をしていたので母はハワードに部屋を用意していて、部屋の壁には幼い頃の彼の写真も飾られていた。
ベッドで転寝をする。夜になるとまたぞろネオンが恋しくなってきた。
新しい家は少し高台にあり、庭からは街の灯りが煌めいて見えていた。ちょっと外の空気を吸ってくるとハワードは喧騒の中に入って行ったが、帰って来たのは翌日の雨の朝、母親の顔見知りの警官に連れられてであった。
母親の用意した軽い朝食に手を付けない息子に母は聞く。
『あなた家族の写真は持ってないの?』
『家族?』
『そうよ。あなたの子供、私の孫の写真よ』
青天の霹靂。女に困ったことはなかったが、子供の話は聞いたことがなかった。
母の話はこうだった。
ハワードがモンタナで映画を撮ってしばらくした頃、一本の電話が入った。女性からだった。おなかに赤ん坊がいて、それはハワードの子供なんだが彼と連絡がつかない。そちらには来ないか?と。
確か、モンタナの町からだったわ。
次の日、ハワードは父親が残していった車を借りてモンタナに行くことにした。
モンタナ州ビュート。
ウェイトレスをしていたドリーン。
赤ん坊が出来たのなら彼女に違いない。彼女はまだ其処にいるのだろうか・・・。
お薦め度は★三つ。一見の価値あり。
ヴェンダース監督は小津さんを崇拝しているらしいがタッチは全然違っているのが面白い。移動撮影なんか不必要なくらいの使い方(俳優の周りをぐるっと回ったり)だもんな。
中盤以降に描かれる数十年前の彼女との再会も、初めての成人した子供との邂逅もありきたりじゃなくて良かったし、終盤のハッピーエンドもお涙頂戴にはなってなくて良かった。
ただなぁ。冗長と感じる部分が何か所かあったな。その為に薄味になったショットもあった。
ハワードの母親にはエヴァ・マリー・セイント、劇中の西部劇の監督にはジョージ・ケネディが扮していた。
尚、サム・シェパードはこの映画の脚本も書いていて、ヴェンダース監督とは「パリ、テキサス」以来20年ぶりのタッグだったらしい。
カンヌで役所広司が男優賞を受賞した事で「PERFECT DAYS (2023)」が話題になったヴィム・ヴェンダース監督。久々に「パリ、テキサス」を観ようと近所のゲオに行ってみたが、なんと置いてなくて、それならばと未見だったコレを借りてきた。
「アメリカ、家族のいる風景」
なんかドキュメンタリーみたいなタイトルですが立派な商業映画であります。
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オープニングがグランドキャニオンを背景に一人のカウボーイが馬を走らせているシーンで、なんだ西部劇かと思っていると、やがてカメラは西部劇を撮影中の映画クルーの様子を捉え、先ほどのカウボーイがこの西部劇の主演スターであり、撮影途中の現場から黙って抜け出したことが分かる。
ハワード・スペンス。
サム・シェパード扮するこの中年男が主人公ですな。
西部劇スターとして全国的に顔も名も知れた俳優だが、西部劇が廃ると共に彼の名を忘れる人も増えていった。酒、女、薬に暴力沙汰とマスコミにゴシップ・ネタを提供し続けた芸能人でもある。脱走後に一息つく所でポツリと『なぜ死ななかったんだ?』と呟くシーンもあり、彼なりに悩んでいたことも分かる。
途中で偶然出会った男と服を交換し、ブーツと馬を譲り、近くの町でキャッシュカードから有り金をおろしてバスで向かった先は年老いた母親のいる故郷だった。
30年ぶりだった。
父親は10年前に亡くなり実家も牧場も売り払って、落ち着いた一軒家で母は暮らしていた。バスのターミナルから電話をしていたので母はハワードに部屋を用意していて、部屋の壁には幼い頃の彼の写真も飾られていた。
ベッドで転寝をする。夜になるとまたぞろネオンが恋しくなってきた。
新しい家は少し高台にあり、庭からは街の灯りが煌めいて見えていた。ちょっと外の空気を吸ってくるとハワードは喧騒の中に入って行ったが、帰って来たのは翌日の雨の朝、母親の顔見知りの警官に連れられてであった。
母親の用意した軽い朝食に手を付けない息子に母は聞く。
『あなた家族の写真は持ってないの?』
『家族?』
『そうよ。あなたの子供、私の孫の写真よ』
青天の霹靂。女に困ったことはなかったが、子供の話は聞いたことがなかった。
母の話はこうだった。
ハワードがモンタナで映画を撮ってしばらくした頃、一本の電話が入った。女性からだった。おなかに赤ん坊がいて、それはハワードの子供なんだが彼と連絡がつかない。そちらには来ないか?と。
確か、モンタナの町からだったわ。
次の日、ハワードは父親が残していった車を借りてモンタナに行くことにした。
モンタナ州ビュート。
ウェイトレスをしていたドリーン。
赤ん坊が出来たのなら彼女に違いない。彼女はまだ其処にいるのだろうか・・・。
*
お薦め度は★三つ。一見の価値あり。
ヴェンダース監督は小津さんを崇拝しているらしいがタッチは全然違っているのが面白い。移動撮影なんか不必要なくらいの使い方(俳優の周りをぐるっと回ったり)だもんな。
中盤以降に描かれる数十年前の彼女との再会も、初めての成人した子供との邂逅もありきたりじゃなくて良かったし、終盤のハッピーエンドもお涙頂戴にはなってなくて良かった。
ただなぁ。冗長と感じる部分が何か所かあったな。その為に薄味になったショットもあった。
ハワードの母親にはエヴァ・マリー・セイント、劇中の西部劇の監督にはジョージ・ケネディが扮していた。
尚、サム・シェパードはこの映画の脚本も書いていて、ヴェンダース監督とは「パリ、テキサス」以来20年ぶりのタッグだったらしい。
・お薦め度【★★★=一見の価値あり】
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