テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。

彼岸花

2020-01-30 | ドラマ
(1958/小津安二郎監督・共同脚本/佐分利信、田中絹代、有馬稲子、山本富士子、浪花千栄子、久我美子、佐田啓二、高橋貞二、笠智衆、桑野みゆき、渡辺文雄/118分)


2018年の正月にはテレ東で「娘の結婚」が、今年はTBSで「あしたの家族」と、或る一家の娘の結婚に纏わるスペシャルドラマが放送されたけど、どっちも良い作品だった。あれってやっぱ小津の名残りかねぇ。娘の結婚なんてものはやっぱり家族にしたら今でも一大事で、人間の繋がり方にも色々とバリエーションがあって、1時間では収まらないドラマが出来るんだね。

小津安二郎の「彼岸花」もやはり或る一家の娘の結婚に纏わる騒動がテーマだった。1958年=昭和33年の作品で小津初のカラー作品らしい。「彼岸花」は別名「曼珠沙華」。花言葉は花びらの色によって違うらしいんだが、クレジットの文字が赤と白だった事がヒントかも知らんな。

この作品の一家は商社に重役として勤める佐分利信と田中絹代の夫婦と娘が二人。結婚問題が浮上するのが長女の有馬稲子で、次女には桑野みゆきが扮していた。
 ウィキにあらすじが書いてあったので少し修正を加えて引用する。

<大手企業の常務である平山渉(佐分利信)は、旧友の河合(中村伸郎)の娘の結婚式に、同じく学校同期仲間の三上(笠智衆)が現れないことを不審に思っていた。実は三上は自分の娘・文子(久我美子)が家を出て男と暮らしていることに悩んでおり、いたたまれずに欠席したのだった。後日、三上の頼みで平山は銀座のバーで働いているという文子の様子を見に行くことになる。
 その一方で平山は長女・節子(有馬稲子)の良縁に思いをめぐらしていたが、突然会社に現れた谷口(佐田啓二)から節子と付き合っていること、結婚を認めてほしい旨を伝えられて愕然とする。さらに平山の馴染みの京都の旅館の女将・佐々木初(浪花千栄子)も娘・幸子(山本富士子)に良い縁談をと奔走していたが、幸子には一向にその気がなかった。
 平山は三上の娘・文子や旅館の娘・幸子には理解を示す一方で、自分の娘・節子の結婚には反対する。平山の妻・清子(田中絹代)や次女・久子(桑野みゆき)も間に入って上手く取りなそうとするが、平山はますます頑なになる・・・>

主人公は父親の平山で、娘もその恋人も大して活躍はしない。冒頭で旧友の結婚式で祝辞を言って良識ある大人を演じながら段々と化けの皮が剥がれていく面白さ。家族には頑なながら、京都の旅館の女将母娘にはやはり物分かりの良いオヤジっぷりを見せるも結局は翻弄されてしまう。化けの皮が剥がれる、というよりは家族愛と自負していた娘への想いが一人相撲だった事に愕然とする父親の悲哀をユーモラスに描いたと言った方が良いのかな。又は、家長として尊敬されているはずだったのに知らぬ間にないがしろにされていた悲哀と言いますか。
 後半ではそんな夫の振る舞いに悩ませられながらも最後まで辛抱強く事態を見据えていく母親(亡き母がファンだった田中絹代が好演)の心情にもハラハラさせられる。終わってみれば夫婦が主人公だったと言っていいでしょうな。





ただ、父親としては平山の気持ちが分からんでもない。見合い話を進めてはいたけれど別段無理強いする気はなかったんだし、付き合っている男がいたのならそう言えばよかったんだ。あれだな。やっぱり娘からの言葉が足りないのがカチンときたんだろうな。勿論、娘も男からのプロポーズを待っていたのなら親に話せる状況ではなかったかも知れないけど。
 その関係でいえば、娘の彼氏も配慮が足りないよね。彼女に対してもそうだし、彼女の親に対してもだ。広島への転勤が急だったとしても、せめて彼女を通して話をするべきだったよな。
 結局平山は最後まで娘婿と膝を交えて話をする事も無かった。エピローグで娘夫婦の住む広島まで会いに行くところで映画は終わり。ハッピーエンドだけど、やっぱり気にはなるってのはバランスが悪いのかも知れないな。
 佐田啓二扮する谷口は節子が勤める会社の同僚だった。

まぁ、それにしてもこの映画で僕が好きなのは浪花千栄子と山本富士子だな。二人共映画で観るのは初めてと言っていいくらい珍しいんだけど、何処か堅苦しい感じがする東京連中の会話の後に、スラスラと流れるように繰り出される京都弁の心地良さ。そして正面カメラにも動じることなく自然体の浪花千枝子と、何処から撮っても美しい娘役の山本富士子。終盤で見せる娘の母親への愛情も説得力があったなぁ。

三上の娘の勤めるバーに行くのに平山は若い部下(高橋貞二)を連れて行くんだが、誘われたサラリーマンの応対ぶりが如何にも昭和っぽくて笑わせる。バーのママには馴れ馴れしいのに、上司の前では先生に同伴された中学生みたいに大人しいんだ。昨今の若者にはどんな風に見えるのかなぁ。
 三上の娘・文子(久我美子)が同棲している男はピアノを弾くバンドマン。演じたのが若くてスラっとしている渡辺文雄だった。

序盤の結婚式の後、平山達同級生が料亭で酒を酌み交わす一幕があるが、その中でそれぞれの子供の男女の数を確かめ合うシーンがある。亭主が元気な夫婦には女の子が多く、女房が強い夫婦には男の子供が多い、なんて下世話な法則を確認し合っている親父ども。何時の時代にも酒の席にはこういう話は出るんですなぁ。

お薦め度は★三つ。一見の価値有り。
 観る度に良くなっていくけれど、今時の映画ファンに大いにお勧めするには僕にも理解できない部分もあるしネ。
 あと、娘と彼氏のエピソードがすんなりと受け入れられない所もマイナス点かな。確かに主人公は親夫婦だから娘の方は省略しても良いんだけど、そんな中でも描かれた彼氏のエピソードが不自然な感じがした。





・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 テアトル十瑠

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