テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

スラムドッグ$ミリオネア

2011-06-26 | ドラマ
(2008/ダニー・ボイル監督、ラヴリーン・タンダン共同監督/デヴ・パテル(=ジャマール・マリク)、マドゥル・ミッタル(=サリーム・マリク)、フリーダ・ピント(=ラティカ)、アニル・カプール(=プレーム)、イルファン・カーン(=警部)、アーユッシュ・マヘーシュ・ケーデカール(=ジャマール幼少期)、アズルディン・モハメド・イスマイル(=サリーム幼少期)、ルビーナ・アリ(=ラティカ幼少期)/120分)


「スラムドッグ$ミリオネア」をレンタルで観る。面白い。斜めの構図とドキュメンタリータッチの映像のすっごい躍動感。脚本と編集の巧さ。1回で充分★四つ有りだが、もう一回で満点になるかは微妙。前半の子供時代のエピソードは辛くて観たくないけどね。恋愛劇に見せてるけど狙いは違うよなぁ・・。
 [6月22日 twitterで]

*

 2006年、インド最大の都市ムンバイ。
 日本でも人気のあった視聴者参加型クイズ番組「クイズ・ミリオネア」に出場したスラム育ちの若者が、周囲の予想を覆して正解を続け、ついに1000万ルピーを獲得する。2000万ルピーをかけた最終問題を残して番組は翌日に繰り越しとなるが、若者の不正を疑った警察はTV局から出てきた彼を拘束する。スラム育ちでまともな教育も受けていないはずの18歳の少年に、医者や弁護士でも1万6千ルピー止まりのクイズ番組でこんなに正解を続けられるわけがない、というわけだ。

 映画の冒頭が、いきなり若者が拷問を受けているシーンで、黄色い画調で描かれた汚い部屋と汗の匂いが届いてきそうなアップショットが「ミッドナイト・エクスプレス」を思い出すが、後でこれが警察署内での取り調べだと分かって愕然とする。水の入ったポリバケツに顔を突っ込まれたり、天井に吊されたり、あげくの果てには電気まで流される。
 そんな拷問にもめげず、若者が不正を認めないので、警察は通常の聞き取りを始める。昨晩のクイズ番組のビデオテープを流しながらの一問、一問の検証。何故若者は答えられたのか?
 その答えとして、若者はそれまでの彼の人生を語るのだった・・・。

 若者の名前はジャマール・マリク。イスラム系のスラムドッグ(スラム育ちの負け犬)。歳の近い兄の名はサリーム。幼少時代に彼らは宗教迫害によって母親を亡くし孤児となるが、同じく孤児となった少女のラティカを含めた三人が主人公。
 警察での取り調べのシーンとジャマールが明かす過去の話が交互に語られ(そこに昨晩のクイズ番組でのジャマールと司会者プレームの駆け引きも挿入される)、微妙なずれを見せつつも、過去のエピソードがクイズの答えを導き出した事が分かる。過去話は徐々に現在に近づき、そこにはジャマールのラティカに対する一途な愛があることも分かる。

 ロングショットで捉えたムンバイやインドの風景がドキュメンタリーのようで、点描される街の様子も臨場感抜群。インド独特の音楽もムードたっぷりで、時にサスペンスフル、時に疾走感、躍動感が倍加される感じ。大河ドラマのようなラブロマンスと、兄弟の愛情と確執を描きながら、背景にあるインド社会の問題点まで描き出したエンターテインメントであります。

 監督のダニー・ボイルの名前を初めて認識した映画ですが、フィルモグラフィーを見ると「普通じゃない (1997)」を観ておりました。キャメロン・ディアスが出ている以外は全然中身には覚えがありませんが。
 本国のみならず、アメリカ、日本でも話題になったらしい「トレインスポッティング (1996)」も、ディカプリオ主演の「ザ・ビーチ (1999)」も未見。
 <スコットランドの、今の若者をリアルに描いているが、D・ボイルの斬新な映像センスはそこかしこに溢れ、まったくもってユニークな作品に仕上がっている>と「allciname-online」に解説された前者は少し観たくなりましたな。

 現在公開中のボイルの新作「127時間」は、「ミリオネア」と殆ど同じスタッフで作られており、好評のようです。

 「ミリオネア」の原作は、ヴィカス・スワラップの『ぼくと1ルピーの神様』。ストーリーはかなり変更されてるらしいです。
 2008年のアカデミー賞で、作品賞、監督賞、脚色賞(サイモン・ボーフォイ)、撮影賞(アンソニー・ドッド・マントル)、作曲賞(A・R・ラーマン)、歌曲賞、音響賞(調整)、編集賞(クリス・ディケンズ)の8冠獲得。
 その他、全米批評家協会賞、NY批評家協会賞、LA批評家協会賞、ゴールデン・グローブ、英国アカデミー賞などでも多数受賞したそうです。

*

 ジャマールの語る少年時代は1995年頃と思われますが、彼らが暮らすスラムの様子はフィリッピンなどのそれと同じで、特に宗教迫害によって母親が死に、幼い兄弟二人きりになった後の生活は、ゴミ置き場のゴミを漁るような暮らしで惨たらしい。
 更に、そんな孤児を言葉巧みにかり集め、彼らに物乞いをさせて、受け取った施与を残らず取り上げる悪党も登場し、彼らが子供を如何に扱うか。それは筆舌に尽くしがたい酷いモノで、今も世界中で似たような事が起こっていると思うと胸が苦しくなりますね。

 特に印象に残ったシークエンスは、上記の悪党共のアジトから脱出するシーンと、1000万ルピーをかけたクイズでの司会者とのやりとり。

 幾つか空想のシーンも入っていますが、終盤のラティカの居なくなったヤクザの屋敷をジャマールが訪ねるシーンは、紛らわしいです。




その後のTwitterでのつぶやき。

・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】 テアトル十瑠

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