テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

ボーン・スプレマシー

2018-04-28 | サスペンス・ミステリー
(2004/ポール・グリーングラス監督/マット・デイモン(=ジェイソン・ボーン)、フランカ・ポテンテ(=マリー)、ジョーン・アレン(=パメラ・ランディ)、ブライアン・コックス(=アボット)、ジュリア・スタイルズ(=ニッキー)、カール・アーバン(=キリル)、ガブリエル・マン(=ダニー)、クリス・クーパー(=コンクリン)/108分)


 記憶喪失になった元CIA工作員がなぜか組織に追われる身に・・という程度が僕が持っていたボーン・シリーズの事前情報で、「ボーン・スプレマシー」はシリーズの2作目と知ってはいたけれど、時間つぶし程度の期待しか持ってなかったので、1作目を飛ばして数年前に買っていたDVDを観た。短いカットのモンタージュが五月蠅くてまるで劇画みたいだったけど、それなりにスリリングで楽しめたので、やはり主人公が何故こんな境遇に至っているのか知りたくて、同じ日に1作目の「ボーン・アイデンティティー」をレンタルしてきた。
 1作目の方が面白いだろうという予想は外れて、それはまさに序章的な内容で、ストーリー構成もまるで古典的な推理小説のように終盤まで伏線の回収を持ち越しているのでダラダラとした流れになっていた。その後改めて「ボーン・スプレマシー」の2回目を観たんだけどやはりソコソコ面白かった。但し、筋が分かりやすくなった分、カットの切り替えの早さとかアップショットの多さとかが気になり、それはTVで注意喚起される『フラッシュの点滅に御注意ください』を思い出すくらいに煩わしく、映画館の大きなスクリーンで観たら気分が悪くなったかもと思わせた。なんとかならんのかねぇ、アレ。も少し落ち着いたモンタージュでもスリルは生まれるでしょうに。

 さて、「ボーン・スプレマシー」の話。
 冒頭はベルリンでCIAがロシアの情報屋から金でファイルを買おうとしているシーンで、本部やらロンドン支部やらが監視体制を整えてモニタリングしている中、突然現れた何者かに渦中のCIA職員も情報屋も殺され、お金も奪われてしまう。
 一方、CIAから逃れてインドで恋人と平穏に暮らすジェイソン・ボーンの所にも一人の殺し屋が現れ、スリル満点のカーチェイスの果てに恋人は殺し屋の銃弾を受け帰らぬ人となる。ロシアからやって来た殺し屋は恋人と共に車もろとも河に落ちたボーンも死んだと判断した。
 1作目の終盤で自分は組織から外れるのでこれ以上追うな、追ってきたら返り討ちにすると言っていたらしいボーンは、恋人への復讐も兼ねて組織に立ち向かう事にするのだが、冒頭のベルリンの事件で現場に意図的に残された指紋から容疑者としてボーンが浮かび上がり、CIA対ジェイソン・ボーンの知恵比べがスリリングに展開していく。更に謎のロシア人たちの関わり具合がボーンのフラッシュバックと共に細やかな謎解きになっていき面白い。ただ、何度も言うがモンタージュが忙しない。手持ちカメラの揺れと、アップショットの多さと、短すぎる切り替え。あれが監督のリズムなのかもしれないが、年寄りには苦だな。

 ストーリーは細かく書かない方が良いだろうから、登場人物の紹介で大雑把に兼ねることにする。
 主人公はマット・デイモン扮するジェイソン・ボーン。2002年の「アイデンティティー」の初登場シーンでは、背中に2発の銃弾を受けフランス、マルセイユ沖100キロの海上で意識を失くして漂っている所を漁船に引き上げられる。自身の名前も思い出せない程の記憶喪失状態だったが、体内に埋め込まれていたスイス銀行の貸金庫の口座を頼りに恐る恐る銀行に行くと、貸金庫には沢山のお金と彼の顔写真が載った色々な国のパスポート、そして拳銃があった。不思議と彼はそれらの使い方を熟知していた。

 フランカ・ポテンテ扮するマリーは、1作目で訳も分からずCIAに追われている事に気付いたボーンと偶々知り合った放浪娘。車はあるが金がなく途方に暮れているのを税関で見ていたボーンが金をあげるからと口説いて車に乗せてもらう。その後、共に苦難に立ち向かう間に惹かれていく。
 この2作目では、既に書いたように冒頭で殺されてしまうが、彼女へのボーンの思いは何度も映し出される写真で描写され、モチベーションとなっていることが分かる。

 ジョーン・アレン扮するパメラ・ランディは今作冒頭のベルリンでの情報屋との取引の指揮を執っていたCIA職員。現場に残された指紋から“トレッド・ストーン”計画なるものを知り、ボーンについても知っていく。

 ブライアン・コックス扮するアボットもCIAの幹部。2年前に終了した“トレッド・ストーン”計画の責任者だったが、今回の事件で再びボーン絡みで“トレッド・ストーン”が再認識され、パメラに協力せざるを得なくなる。なお、“トレッド・ストーン”計画とは、殺し専門のエージェントをCIA内部に育てる計画だったが、ボーンが行方不明になった事で中止になったのだった。

 CIAの工作員ニッキーにはジュリア・スタイルズ。1作目にも出ていたが、ヨーロッパに居た工作員の健康面を管理していた女性職員だ。

 ロシアからやって来る神出鬼没のスナイパーには短髪がエキセントリックなカール・アーバン。殆どしゃべらないけれど殺し屋がただの冷血漢というよりはクールな感じがするというのは何時の頃からだろうか。ドロンの「サムライ」あたり?

 ガブリエル・マン扮するダニーもニッキーと同じCIA職員でアボットの部下。1作目にも出ている。

 クリス・クーパー扮するコンクリンは前作の終盤で死ぬので、今作ではボーンのフラッシュバックの中に出てくる。ボーンの直属の上司だった男だ。


 冒頭より記憶喪失のボーンを悩ませるフラッシュバックには、ボーンが携わった事件の匂いがするが、終盤に向かってCIAとの駆け引きの中で段々とその謎解きが絡んでいく所が今回の巧い所。それは冒頭のベルリンの事件とも関連があることが分かってくる。
 そんな中で、ボーンが自身の過去の罪を告白に行くロシアの少女がいる。イリナ・ネスキという役だが、扮するオクサナ・アキンシナが美しくて気になって、さて次回にも出てくるのかなと思ったけどどうやら出演は無いみたい。残念!

 気分が悪くなるかもとまで思わせたカットの切り替えの早さには閉口したので、お勧め度は★二つ。
 シリーズ3作の中では評価が高い3作目も今回と同じポール・グリーングラスが監督なのでちょっぴり心配ではありますが、観たいと思います。







[2018.04.30 追記]
 1回目をPCで、2回目はTVで、そして今日3回目をPCで観たらカットの高速切り替えにも慣れたのか、更に面白く感じてお勧め度を変更しました。3回目の前に「アルティメイタム」も観たんですけど、やっぱ2作目が一番でした。


ネタバレ備忘録はこちら。

・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 テアトル十瑠

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