goo blog サービス終了のお知らせ 

::: テアトル十瑠 :::

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

■ YouTube Selection (songs & music)


パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト

2006-12-14 | アクション・スポーツ
(2006/ゴア・ヴァービンスキー監督/ジョニー・デップ=ジャック・スパロウ、オーランド・ブルーム=ウィル・ターナー、キーラ・ナイトレイ=エリザベス・スワン、ビル・ナイ=デイヴィ・ジョーンズ、ステラン・スカルスガルド=“ブーツストラップ”・ビル・ターナー、ジャック・ダヴェンポート=ノリントン、ケヴィン・マクナリー=ギブス、ナオミ・ハリス=ティア・ダルマ、ジョナサン・プライス=スワン総督、マッケンジー・クルック=ラジェッティ、トム・ホランダー=ベケット卿、リー・アレンバーグ=ピンテル、ジェフリー・ラッシュ=バルボッサ/151分)


 子供がTVCMの大蛸が船をぶっ潰すシーンを見て心待ちにしていた映画。レンタルが始まったので早速借りてきました。前作がまんざらでもなかったオヤジも楽しみにしておりました。
 しかしなんですな、シリーズものの2作目というのは、特にこういうアクションアドベンチャー物は、主要な登場人物の紹介は既に済ましているのでその辺の楽しみはないし、後は新規に登場する人物とお話の意外性に頼るしかないので自然ハードルは高くなりますな。しかも今回は、最後が「それでは皆様、次回をお楽しみに~」って感じにクローズしちゃってて、1本の映画としては不完全燃焼してしまうものでありました。

 お話は次から次へと新しい局面が出てくるので観てる分には飽きはこない。今回新しく登場した目玉のキャラクターは、半魚人ならぬ半蛸人と形容したくなる幽霊船の船長デイヴィ・ジョーンズ。なにやら、昔活躍したアメリカの人気バンドのボーカルを思い出してしまいますが、こちらはいわゆるクリーチャー。顔が蛸で髭が蛸の足のよう。片脚の義足はエイハブ船長みたいだし、片手はカニの爪になっておりました。
 この船長とジャック・スパロウがどういう関係にあるかというと、13年前に海の底に沈んでいたブラックパールをスパロウがジョーンズに引き上げるのを頼んだという事らしい。で、その時にある約束事を交わしていたんだが、ジャックの履行期限が迫り、応じたくないジャックが回避の手段に出るという次第。
 大蛸はジョーンズが操る怪物のようで、ジャックには大蛸の危機も迫る。

 冒頭では、エリザベスとウィルが新しく赴任した統治者に捕まり、前作でジャックを逃がした罪で投獄される。但し、ジャックの持つコンパスを持ち帰ったら罪を軽減しようという条件に、ウィルはジャックに会いに行くことを許される。ウィルを待っても本当に無罪になるかどうか分からぬと、エリザベスは父親の手で脱獄しウィルに合流しようとする。こうして、また主役の3人が絡み合う。
 前作で死んだと思われていたウィルの父親も登場したし、ジョーンズにも曰わくありげな過去話がありそうだし、最終作も観ることになるでしょうが、あっと驚くような展開、頼んますよ~。

▼(ネタバレ注意)
 ジョーンズがああいう姿になったのには“失恋の痛手”という原因があったらしい。
 死者をよみがえらす力を持っているような、不思議な女ティア・ダルマ。
 最後の最後に出てきた、前作で死んだはずのバルボッサ。
 大蛸に食われてしまったのか、ジャック・スパロウ。

 『やっぱり、第1作がよかったなぁ』って、なるような気もするけど・・・。
▲(解除)

・お薦め度【★★=悪くはないけどネ】 テアトル十瑠

パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち

2006-10-28 | アクション・スポーツ
(2003/ゴア・ヴァービンスキー監督/ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイ、ジェフリー・ラッシュ、ジョナサン・プライス/143分)


 日曜日に「25年目のキス」を観て満腹感がなかったので、子供とも観れるようにこの(ちょっと古いですが)話題作を借りてきました。既にレンタルが始まっている“デッドマンチェスト”の方じゃなくて最初のヤツです。先日、レンタルショップの店内で流れていたのが面白そうで、てっきりそれが“デッドマン”だと思っていましたが、実はコチラの方でした。

 原題が【 PIRATES OF THE CARIBBEAN: THE CURSE OF THE BLACK PEARL 】。“THE BLACK PEARL(ブラックパール号)”というのが海賊船の名前です。
 何かと話題作の多いジェリー・ブラッカイマー製作の海洋アクションで、元ネタはディズニーランドの人気アトラクション“カリブの海賊”とのこと。元ネタがディズニーとは言いながら映画は決して子供向きではなく、大人も楽しめるアドベンチャー作品。スピルバーグの「フック」も観てないので久しぶりの帆船モノでした。

 17世紀のカリブが舞台。部下に船を乗っ取られ、無人島に置き去りにされた悪名高き海賊船の船長ジャック・スパロウにジョニー・デップ。当地を治めている総督の娘エリザベス・スワンにキーラ・ナイトレイ。そして、映画の冒頭で海を漂流しているところを総督の船に拾われる少年ウィル・ターナーの成人後にオーランド・ブルームが扮する。

 スパロウが小さな船でエリザベス達の住む港町に着く所は、桟橋に近づくに連れて船が沈んでいくというとぼけた登場で、その後、海賊にさらわれたエリザベスを救おうとスパロウとウィルが英国軍の船を盗むところでも、小舟をひっくり返した中に顔を突っ込んで海中を歩くなど、笑えるシーンが結構ある。

 海賊がエリザベスをさらったのは、彼女が持っている髑髏(どくろ)マークの金貨に関係があって、それは海賊達がかつて盗んだ800有余枚の内の一枚だ。その金貨を使ったものには恐ろしい呪いがかけられていて、その呪いを解くためには全ての金貨を元のトランクに返す必要があり、エリザベスが持っていたソレが最後の一枚だった。

 海賊達にかけられた呪いというのは、全ての金貨が戻るまでは死ぬことが無い代わりに何の喜びも感じないというもの。不死身ではあるが、酒を飲んでも食事をしても美味しくはなく、女を抱いても心は癒されない。しかも、月の光を浴びると生きる屍の如き姿になってしまうという正に生き地獄の世界である。

 “死の島”と呼ばれる海賊達の宝物の隠し場所で、海賊達は最後の金貨をトランクに戻すことに成功するが呪いは解けない。金貨と共に呪われた者の血も捧げなければいけないからだが、その呪われた血はエリザベスのものではなかった。その金貨は実はウィルが漂流時に身につけていたもので、ウィルこそが呪いを解く最後の人間だったのだ・・・。

 ウィルとエリザベスの身分を越えた恋の行方。
 ジャック・スパロウはブラックパール号を取り戻すことが出来るのか?

 エリザベスを取り戻したウィル達の船とブラックパール号との海上での闘いは、平行に相対した上で横っ腹に大砲を撃ち込み合うという豪快なモノで、昔観た海洋映画を思い出しましたな。
 エリザベスは父親の後継者と目されている軍人から求婚されていたり、野蛮な海賊達の中にも間抜けでオカシイ奴がコンビで居たりと、定石通りではあるが脇の人物も面白い。
 CGを使ったゾンビのような海賊達の登場シーンは子供にも大受けでしょう。

 見終わって気になったのは、ウィルとジャックは親子ほど年齢が違うはずなのに、全然そんな風に見えない事。実年齢では14歳の差があるようですが、ジョニー・デップの海賊の割にはアクの少ない演技のせいでしょうかね。
 飄々とした一匹狼の海賊ジャック・スパロウを演じたデップは、この役で2003年度のオスカー候補になった。要領がいいのか悪いのか、運がいいのか悪いのか、なんとも不思議なキャラで、髭面で頭に巻いた赤い布、ビーズのような髪飾りがジプシーを想わせる。

 大ヒットが納得の娯楽作品。冒険物にありがちな人物設定ではありますが、テンポのいい語り、2転3転のストーリーは楽しめました。“to be continueed・・・”的なラストもご愛敬。

・お薦め度【★★★=一度は見ましょう】 テアトル十瑠

炎のランナー

2006-07-02 | アクション・スポーツ
(1981/ヒュー・ハドソン監督/ベン・クロス、イアン・チャールソン、イアン・ホルム、ナイジェル・ヘイヴァース、ナイジェル・ダヴェンポート、シェリル・キャンベル、アリス・クリーグ、デニス・クリストファー、ブラッド・デイヴィス/124分)


 もう25年前の映画になるんですなぁ。イイ映画だったという記憶はあるんだが、覚えているのはオープニングの浜辺をランニングしているスローモーション・シーンとヴァンゲリスのテーマ曲「タイトルズ」。
 数十年ぶりの鑑賞では、流麗なカメラワークと美しい構図と色彩の映像はやはり見応えがあったものの、ドラマの広がりや深みはそうでもなかった。

 1924年、パリで行われた第8回オリンピックで活躍したイギリス代表選手の話だ。ケンブリッジ大学の負けず嫌いのユダヤ人新入生ハロルド・エイブラハムと、スコットランド人宣教師でラブビーの名ウィング、エリック・リデルのエピソードが主で、エイブラハムはユダヤ人故の偏見に苦しみ、リデルは信仰と国家への忠誠心との間で悩む。どちらも、陸上短距離走の選手だ。

 ハロルドは何が何でも勝ちたい為に、アメリカ人のプロのトレーナーに師事し、ケンブリッジ大学の教授連からアマチュア精神に欠けると非難される。一方ハロルドの方は勝つために努力しないのはオカシイと自分の意見を曲げない。教授達に呼ばれて、トレーナーを外すか大学を辞めるかと選択を迫られるシーンが印象深い。権威主義的であり、ユダヤ人等に対する排他的なイギリス紳士の対応が時代を映して面白かった。

 リデルはプロテスタントの宣教師で、同じく布教活動をする妹には走るのを辞めて布教に専念するように言われる。いざオリンピックに出場となった時も、100m走の予選が日曜日に予定され、『神の安息日である日曜日には走れない。』と悩む。ここでも、イギリス代表団の国家優先の圧力がかかるが、「神よりも国王を重んじたために戦争になった。」という一人のイギリス代表団役員の常識的な意見が面白かった。リデルは、チームメイトの機転で日曜日以外の種目に出場することになり、そのレースがクライマックスに結びつく。

 この年のアカデミー賞では、作品賞他7部門でノミネートされ、作品賞脚本賞など4部門で受賞した。
 監督賞にノミネートされたヒュー・ハドソンはコレがデビュー作とのこと。しかし、これ以降の話題作は聞きません。助演男優賞にノミネートのイアン・ホルムは「エイリアン」や「フィフス・エレメント」、「ロード・オブ・ザ・リング」でお馴染みですな。

 さて、これは実話が元になっているとのことだったので、パリ大会について調べてみた。

 第8回パリ・オリンピックは、1924年5月4日から7月27日まで、フランスのパリで行われたとのこと。実に3ヶ月弱の期間です。参加国・参加地域は44。参加人数は2972人。実施種目は19競技、126種目だったそうです。
 日本も参加していて、この時はレスリング・フリースタイルフェザー級に出場した内藤克俊選手が銅メダルを獲得したそうです。

 尚、この作品のプロデューサーはデヴィッド・パットナム。「小さな恋のメロディ(1971)」「ダウンタウン物語(1976)」「ミッドナイト・エクスプレス(1978)」「キリング・フィールド(1984)」などの話題作がありました。
 ヒュー・ハドソンは、「ミッドナイト・エクスプレス」にスタッフとして参加していたようですが、そういえばアノ映画の主人公を演じたブラッド・デイヴィスがこの映画にもアメリカ選手として出ていましたな。

・お薦め度【★★★=一度は見ましょう】 テアトル十瑠

バニシング・ポイント

2006-05-20 | アクション・スポーツ
(1971/リチャード・C・サラフィアン監督/バリー・ニューマン、クリーヴォン・リトル、ディーン・ジャガー/106分)


 アメリカ西部の田舎町(実はサンフランシスコ近郊という設定)。住宅街を2台のショベルカーがゆっくりと進んでいる。町の住人は何事かと窓の外を覗く。ショベルカーは、町への侵入道路をふさぐように並んで、重いショベルを道路に降ろす。まるでバリケードのように。
 一方、この町に向かって一台の乗用車が猛スピードで走っている。運転する男は道路をふさいだショベルカーを見つけて舗装道路を外れる。しばらく行った所で車を止めた男は、車を出て何事かを考える。一体その眼は何を見ているのか・・・。

 アメリカン・ニューシネマ真っ盛りの1971年。一台の車が15時間でデンバーからサンフランシスコまで行き着くことが出来るか? そんな賭けをした男が警察の停止命令を振り切って車を暴走させるという話。
 そんな話が面白いんかいなと思ったが、評論家筋には好評な点数が多かったので観に行った映画だ。カー・アクションだけの映画ではないかという当初の予想は外れて、ニューシネマらしい結末に向かって上手に構成された面白い作品だった。
 吹き替え版をTVで一回くらい観たと思うが、今回数十年ぶりにレンタルDVDにて見直してみた。

 「イージー・ライダー」と「栄光のル・マン」を足したようなものと言えばいいんでしょうか。
 のんびりとはしてないけどロード・ムービーであり、西海岸からニュー・オーリンズへ向かった「イージー・ライダー」とは反対に、この車はデンバーから西海岸へ向かう。車種は70年型ダッジ・チャレンジャー、色は白、ナンバーはコロラドOA5599。宗教団体のような連中が出てくるのも「イージー・ライダー」に似ている。
 「栄光のル・マン」を連想したのは地面スレスレのカメラで撮った車の疾走シーンがあったからで、全体の雰囲気は全然違う。ただ、あのエンジン音は車好きの人にはたまらんでしょうな。

 主人公はいわゆる車の陸送屋。金曜日にデンバーに車を届けた折りに、サンフランシスコへ月曜までに着ければいいという車を預かる。その時にクスリを賭けて15時間で西海岸に届けると言い出すのだ。相当なスピードで走らないと着かない計算で、しかも男は車を届けたばかりで休んでもいないのにだ。

 ドイツのアウトバーンでもないので暴走すれば当然パトカーや白バイが追跡する。このカーチェイスが見所の一つだ。
 最初は白バイが追跡する。次はパトカー。男はどれも振りきる。段々と警察もムキになってきているのが分かる。

 何故この男はこんな無謀なことをするのか?
 オープニング・シーンの後、話は前々日の暴走の振り出しから再スタートし、徐々に男の正体も分かってくる。
 名前はコワルスキー、KOWALSKI。元海兵隊員、元警察官、そして・・・元レーサー。

 コワルスキーの話と平行して出てくるのが、西部のラジオ局KOW。
 警察無線も傍受しているKOWの進行役はファンキーな盲目の黒人DJ、その名もスーパー・ソウル。コワルスキーの正体が分かってくるにつれて、DJは彼を応援するような放送を始める。やがてコワルスキーの暴走は、マスコミや大衆の関心を集めるようになるのだった・・・。

▼(ネタバレ注意)
 過去のシーンや警察情報で分かってくるコワルスキーの過去とは。

 海兵隊員としてベトナム戦争に従事したこと。その時に背中に傷を負ったこと。
 マリファナをやっていた少女を逮捕した時に、彼女をレイプしようとした先輩警官に暴力を振るって辞めたこと。
 その時の少女と恋人同士になったこと。冬の海でサーフィンをして彼女が目の前で亡くなったこと・・・。

 やり場のない怒りが溜まっていただろうことが想像できるエピソードが断続的に語られる。
 スーパー・ソウルの放送も熱が入ったものになり、それは警官達の反感も買う。

 そして、コワルスキーの暴走はついに最終局面を迎えることになる。

 リドリー・スコットの「テルマ&ルイーズ(1991)」のラストを観た時にこの映画を思い出した人も多いのではないでしょうか。コワルスキーは薄ら笑いを浮かべていましたが、さてテルマとルイーズはどうだったっけ?
▲(解除)

 砂漠で音楽をかき鳴らしている宗教団体みたいなの以外に出てくるのは、ゲイのカップルのヒッチハイカー、毒蛇を獲ってるおじいちゃん、ほっ立て小屋のような家で暮らしているヒッピーのカップル等々。映画の構成上は彼等がいいアクセントになっておりました。

 尚、ヒッチハイカーの片割れは「夜の大捜査線(1967)」で軽食堂の店長をやってた男優でした。そして、宗教団体のリーダーは、「インディ・ジョーンズ/レイダース 失われたアーク(1981)」でナチスの親玉役だった俳優ではないでしょうか?

 「イージー・ライダー」と同じく、その頃はやったロックが沢山流れるのも魅力。エンドクレジットで流れていたのは、キム・カーンズ、♪Nobody Knows でした。

 リチャード・C・サラフィアン監督がこの映画の前に作ったのは、マーク・レスターが難病を克服する少年に扮した「野にかける白い馬のように(1969)」(=未見)で、全然違う趣の作品のようなので、そういう意味でもサラフィアンの名前は記憶に残るものでした。
 VP【原題:VANISHING POINT 】の後は、ジョン・ヒューストンリチャード・ハリス共演の西部劇「荒野に生きる(1971)」、ロッド・スタイガー主演の「ロリ・マドンナ戦争(1973)」など大御所が顔を出す作品が続きましたが、VP程の話題作にはなりませんでした。

 「ロリ・マドンナ戦争」はシーズン・ヒューブリーという可愛い新人が出ていたのと、サラフィアンの新作ということで観に行きました。ヒューブリーの顔も映画の内容も、何年も前に忘却の彼方へ行ってしまいましたがネ。





・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】 テアトル十瑠

ハタリ!

2005-12-25 | アクション・スポーツ
(1961/ハワード・ホークス製作・監督/ジョン・ウェイン、エルザ・マルティネリ、ハーディ・クリューガー、レッド・バトンズ、ジェラール・ブラン、ミシェル・ジラルドン/159分)


 ヘンリー・マンシーニの「♪子象の行進」が忘れられない「ハタリ!」。夕べNHK-BS2で放送していたので懐かしくて録画した。アフリカが舞台の動物相手の仕事をしている人々の話で、内容は忘れてしまっていたが監督がハワード・ホークスだからハズレはないだろうと観てみたら、残念ながら個人的には大ハズレでした。
 前回は子供の時で、動物モノが大好きだったので多分楽しく観たのだろうけど、さすがにこの年では(どの年じゃ?)それだけでは楽しめませんでしたな。映像的には申し分ないんですが、ストーリーが・・・。

 ジョン・ウェイン扮するアメリカ人ショーンとその仲間は、世界中の動物園から依頼があったアフリカの動物を生け捕りにする仕事をしていて、ブランディ(ジラルドン)はかつてのリーダーの忘れ形見だ。ブランディの父親はサイを捕獲中の事故で亡くなったようで、映画のスタートでもサイの捕獲中に仲間の一人が大怪我を負う。ショーン達にはサイはジンクスとなっているようだった。

 大出血の怪我人を町の病院に運んで、なんとか輸血者も見つかり、一安心して帰ってくると、ショーンのベッドには見知らぬ女性がパジャマ姿で寝ていた。彼女(マルティネリ)は動物園側から依頼されてやって来たカメラマンで、生け捕りのシーンをカメラにおさめにやってきたのだ。

 アフリカは初めての女性カメラマン、ダラス。翌日、草食動物の捕獲に付き合うが、それは想像以上の激しいもので、彼女はそれまでの生意気な態度を反省し、ショーン達に謝るのだった。

 ショーンには、かつて結婚を約束していた女性がアフリカの生活になじめずに別れてしまったという過去があり、こと女性に関しては心を開けない男になっていた。
 ダラスは、自分に冷たいショーンを懐柔したいと思って、ショーンの仲間のポケッツ(バトンズ)に悩みを打ち明ける。ポケッツは、ショーンが冷たい態度をとるのは有望だと言う。嫌いな女性なら慇懃に接するだけだから、逆の態度をとるということは嫌いではないハズだと教えてくれるのだった・・・。

 この後、ショーンとダラスの恋の行方、そしてブランディを巡る猟仲間(クリューガーとブラン)の駆け引きがメインテーマとなって話は進む。

 原作がハリー・カーニッツ。全くの偶然なんですが、前回の「おしゃれ泥棒」の脚本家ですな。今回は原作の方で、脚本は「三つ数えろ(1946)」や「リオ・ブラボー(1959)」でもホークスと組んだリー・ブラケットです。

 キリンやバッファローなどの捕獲シーン(ラストはサイに再挑戦です)は、「ジュラシック・パークⅢ」の草食恐竜の捕獲に負けないくらい迫力満点でしたが、それ以外の部分は前出の男女間のアレコレなどが大した盛り上がりもなく並べられただけで、2時間40分は長すぎましたな。

 原題の【 HATARI! 】は、確かマサイ語で『危ないぞ!』とかいう意味ではなかったでしょうか。

 アフリカを舞台の猛獣狩りの映画というとジョン・フォードの「モガンボ(1953)」というのもありましたが、アレもタイトルは記憶にあるが中身ははてさて・・・という作品です。出演者は、 クラーク・ゲイブルエヴァ・ガードナーグレイス・ケリーでしたな。

 尚、「ハタリ!」はアメリカ映画ですが、エルザ・マルティネリはイタリア、ジェラール・ブランはフランスの俳優です。ブランは、トリュフォーの「あこがれ(1958)」やシャブロールの「いとこ同志(1959)」など、ヌーベルバーグで活躍していました。ミシェル・ジラルドンはよく知らないんですが彼女もフランス人のようです。スタイルもいい美女ですが、あまり聞かない女優ですね。

・お薦め度【★★=悪くはないけどネ、感覚は旧い】 テアトル十瑠

グリーン・デスティニー

2005-12-17 | アクション・スポーツ
(2000/アン・リー監督/チョウ・ユンファ、ミシェル・ヨー、チャン・ツィイー、チャン・チェン/120分)


 チャン・ツィイーのラブ・シーンとカンフーが見られるというので、TVの吹き替え版を録画して観た。録画時間はCMを入れて1時間50分。映画データでは120分の作品なので、30分程度はカットされていたのでしょう。暫くは観ることは無いと思うので、今回観た部分で記事を書きますが、完全版ではなかったことを予め記しておきます。

 有名な武術家リー・ムーバイ(ユンファ)が、師匠から受け継いだ名剣を北京に向かうという女弟子ユー・シューリン(ヨー)に預ける。“グリーン・デスティニー”と名付けられたその剣には邪悪なモノを引きつける所があり、世に出回らぬ方がいいと考えたからだ。北京の著名な武術家の屋敷に届けられた名剣は、その夜の内に盗まれる。
 盗んだのは貴族の娘、イェン(ツィイー)。元々武術に興味のあったイェンは、ある武術家の弟子となって腕を磨いていたのだが、その武術家とはリー・ムーバイの師匠を毒殺し、秘伝の巻物をも盗んだ通称“毒ギツネ”と呼ばれる者だった。イェンが顔を隠して盗みに入った夜に一戦を交えたユーは、翌日別件で会うことになったイェンが昨晩の盗人だと薄々気付いた。しかし、イェンが地位のある家の娘であったので、すぐには問い質すことはしなかった。
 イェンには、かつて旅の途中に盗賊に襲われ、その時に知り合った若者ロー(チェン)と暫く生活を共にしたという過去がある。剣士としても優秀なものを持っていたイェンだが、ローが優秀な武士になって迎えに来るというのを信じて、元の生活に戻ったのだった。
 言われるがままの親が奨めた結婚を間近に控えた夜、ローがイェンの元に現れるが、何故かイェンは彼の愛を拒む。その夜は引き下がったローだが、イェンの祝言の日に彼女を掠奪しようと騒ぎを起こし、両家の面目をつぶしたということで、二人は町を出ることになる。一旦は“グリーン・デスティニー”を返却したイェンだったが、その後もう一度盗みに入り、それを持って町を出るのだった。
 消息が分からなくなっていた“毒ギツネ”が現れたというので、北京でユー・シューリンと共に戦うリー・ムーバイ。“毒ギツネ”に協力するイェンの武術に師匠の技に近いモノを感じ取り、弟子になれと言うのだが・・・。

 ストーリーを書いてみたらなんだかイェンが主人公のようになってしまった。映画の紹介記事ではリー・ムーバイが主人公になっているのに、今回の放送がチャン・ツィイーの出番以外をカットしたのでしょうか、ツィイーが主人公のように感じました。“グリーン・デスティニー”という剣も、「犬夜叉」の鉄砕牙のような魔性の力を感じさせる所もなく、小道具としては何の魅力も発揮しませんでしたな。

 リー・ムーバイとユー・シューリンはお互いに惹かれ合っていながら、師匠の仇を晴らすまではという暗黙の想いがあったのでしょうか、なかなか告白しません。この辺の描き方も弱くて、主人公でいながら、この二人のドラマとしては盛り上がりませんでした。

 ローを演じていたチャン・チェンは、ジャニーズ系中国人のようで、今風のいい男でしたな。ただ、映画の構成としては、ローとイェンの昔話の挿入により全体が間延びした感じになってしまいました。
 ローとイェン、リー・ムーバイとユー・シューリン。要するに、二つのカップルのどちらかにきっぱりと重きを置いて作った方が良かったんでしょう。アクション・シーンも色々と盛り込まれていながら、「カンフーハッスル」なんかで見飽きてしまっていて、CMを飛ばしながら見ても途中でだれる部分もありましたな。
 あれを見ていたら、「椿三十郎」や「用心棒」が観たくなりました。動だけではなく、静と組み合わせることによって、緊迫感は出てくると思うのですがねぇ。

 チャンちゃんは、よろしゅうございましたね。なんだか彼女だけが光っていたような映画でした。可愛いのと、意志を秘めたような面構えと、アクションシーンの緊張感も表現できているし、更にはお色気も出せるし、ハリウッドが興味をもったのが分かるような気がしました。

 ところでこの作品、2000年のアメリカやイギリスで色々な賞にノミネートされ、また受賞もしたようですが、ちょっとこの辺は?ですな。話自体が半分マンガみたいな設定だし(TVゲームから派生した企画かと思ってました)、ドラマとしても食い足りないし、スタッフの賞がらみは許せるとしても作品賞や監督賞というのは・・・ねぇ!?

・お薦め度【完全版でないので、保留】 テアトル十瑠

タワーリング・インフェルノ

2005-11-01 | アクション・スポーツ
(1974/監督:ジョン・ギラーミン、アーウィン・アレン/スティーヴ・マックィーン、ポール・ニューマン、ウィリアム・ホールデン、フェイ・ダナウェイ、フレッド・アステア、O・J・シンプソン、リチャード・チェンバレン、スーザン・ブレイクリー、ロバート・ヴォーン、ロバート・ワグナー、ジェニファー・ジョーンズ/165分)


 anupamさんが「ポセイドン・アドベンチャー」について書かれたので、予定を繰り上げてアップしてみました。

 「原子力潜水艦シービュー号」「宇宙家族ロビンソン」「タイム・トンネル」。子供の頃、これらSFテレビドラマでわくわくさせてくれたプロデューサー、アーウィン・アレンが、「ポセイドン・アドベンチャー(1972)」に続いて作ったパニック超大作だ。前作でもやったはずだが、今回はジョン・ギラーミンと並んでアクション部分の監督としてクレジットに名を連ねている。3時間近くの大作で、出演したスター俳優達も前作を遙かに凌ぐ豪華なものだった。

 サンフランシスコに新しく建てられた138階建ての超高層ビル、“グラス・タワー”の完成披露パーティーが行われた夜に大火災が発生するという話。

 出演者は、ビルの設計者にP・ニューマン。その妻(or婚約者)にF・ダナウェイ。ビルのオーナーがW・ホールデンで、その娘婿が、昔「ベン・ケーシー」と並ぶヒューマン・ドラマ「ドクター・キルデア」で若くてハンサムな医師を演じたR・チェンバレン。
 映画では悪役が多いみたいで、今作でもビルの施工に絡んで業者に設計品質以下の材料を使わせてピンハネをするという男の役。この品質の悪い、確か電気コードのようなものが原因で火災が発生するんだった。

 マックィーンは一番の儲け役で、地元消防署の隊長役。宙ぶらりんとなったヌード・エレベーターのドーム状の屋根の上で落ちそうになっている人を助けたり、とにかく頼りがいのあるタフガイを演じている。危ない局面を何とかクリアした後にもう一度ビルの中に入っていくというシーンもあり、正にスーパー・ヒーロー的活躍だった。
 ニューマンは設計者としてマックィーンに協力しながら、自らも逃げ遅れた少女を助けたりする。

 ロバート・ワグナーはホールデンの下で働くベテラン広報部長。オフィス・ラブの最中で、この夜もパーティーの合間をぬって彼女とビルの一室にしけこんでいた為に火災に気が付かず、逃げ遅れてしまう。この二人の最期は悲壮感が漂っていて、火災の怖さを思い知らされました。

 フレッド・アステアは年老いた結婚詐欺師で、彼に声をかけられる老婦人がジェニファー・ジョーンズ。この二人の結末も哀切なものとなった。

 ロバート・ヴォーンはパーティーに呼ばれた上院議員で、数年前に全米を騒がした殺人事件の被告O・J・シンプソンはビルの保安主任の役だった。

 「タイタニック(1997)」でもそうだが、この手のパニック映画にはエゴをむき出しにする人間が出てくるもので、ここでは前出のチェンバレンが引き受ける。
 火災は81階で発生したために、それより上の階にいる人は降りることが出来ない。そこで、隣接する高層ビルにワイヤーロープを渡し、滑車付の篭で一人ずつ避難しようとするんだが、チェンバレンが抜け駆けをしようとして非業の最期を迎えてしまう。「蜘蛛の糸」のような話です。

 それにしてもこういう映画は、完成したばかりのビルだとか、処女航海の船だとかがアクシデントに見舞われるのが多いですよね。「ダイ・ハード」の“ナカトミ・ビル”も完成したばかりという設定だった。

 当時は原作本も読みました。2段組のハードカバーで、こちらも面白かった。
 脚本は、スターリング・シリファント。音楽はジョン・ウィリアムズ。どちらも「ポセイドン・・・」と同じ。スタッフも豪華でした。

 尚、この年のアカデミー賞で撮影賞(フレッド・コーネカンプ)、編集賞、歌曲賞を受賞したとのこと。歌は、モーリン・マクガヴァンが唄った「タワーリング・インフェルノ/愛のテーマ “We May Never Love Like This Again”」。『あぁ、そんなのもあったなぁ』

・お薦め度【★★★★★=大いに見るべし!】 テアトル十瑠

張り込み

2005-07-22 | アクション・スポーツ
(1987/ジョン・バダム監督/リチャード・ドレイファス、エミリオ・エステヴェス、マデリーン・ストー、エイダン・クイン、ダン・ローリア、フォレスト・ウィッテカー)


 一時期ご贔屓監督だったジョン・バダム。「サタデー・ナイト・フィーバー(1977)」ではあんまり注目しなかったんだけど、83年の「ブルーサンダー」「ウォー・ゲーム」そしてこの作品の頃は好きだった。「ショート・サーキット(1986)」もまあまあだったけど、最近はあんまり噂を聞かなくなった。
 「ニキータ(1990)」のリメイク「アサシン(1993)」も観たけど、それを含めて90年代以降の作品が印象に残らなくなったのは、バダムの演出力よりコチラ側の年齢のせいもあるのかも知れない。
 NHK-BSで昨夜放送していたのを録画したもの。18年ぶりに観た。

*

 警官殺しなどで服役中のエイダン・クインが従兄弟の手引きで刑務所から脱獄する。FBIはクインが元恋人のマリア(ストー)の所にも来るはずだと、彼女の住んでいるシアトルの警察に張り込みを依頼する。
 張り込みをするのは、昼間がダン・ローリアとフォレスト・ウィッテカーのチーム。この案件の直前に犯罪者を取り逃がしたクリス(ドレイファス)とビル(エステヴェス)のチームは、夜間を担当することになった。
 ビルは奥さんとラブラブだが、一方のクリスの方は張り込みの初日に奥さんが家出をしてしまう。

 張り込み対象の女性のデータが身長168cm、体重140kgというのでやる気を無くしていたが、実際はスマートな女性だったので俄然張り切り出すクリス。盗聴器を仕掛けるために電話会社の人間になりすまし、マリアの家を訪れたクリスは彼女に一目惚れをしてしまう。
 数日後、夜食の買い出しに行ったスーパーで偶然にマリアと出会ったクリスは、自転車がパンクしてしまった彼女を家まで送り届け、ついでに夕食をご馳走になる。次第に惹かれ合っていくクリスとマリアは、ある事をきっかけについに結ばれてしまう。
 一方、徐々にシアトルに近づいてくるクインは、途中でパトカーと銃撃戦となり、車もろとも川に落ちてしまう。この事故により、張り込み業務から解放されることになったクリスは、彼女に刑事であることを打ち明けようとするのだが・・・。

 ドレイファスとエステヴェスの二人組を凸凹コンビという言い方をしている映画サイトがあったが、この二人はどう見ても凹凹コンビだ。二人とも髭を生やしていて、『なんだか似たような格好しやがって、他にやりようがなかったんかい』と20年前に感じたことを思い出した。ドレイファスは小型P・ニューマンみたいでした。
 この二人の張り込みはまるで覗きみたいで、おまけにドレイファスがストーと絡むシーンではラテン系のBGMが流れて来て、ウキウキ気分になる。ちょっとドジで間抜けな所が、観ているコチラはヒヤヒヤさせられた。

 漁業と林業が盛んな港町シアトルの雰囲気も良く出ていて、オープニングの脱獄シーンやカーチェイスもあって、大ヒットしたのも納得の娯楽作品です。

 この映画がデビュー作だったマデリーン・ストーは色気たっぷりで、その情熱的な眼差しでクリスへの想いを表現していた。最初は、ジャックリーン・ビセットにそっくりな女優だなあと思いましたな。当時のパンフレットでは“年齢不詳”となっていたが、ネットのデータでは1958年8月生まれ、今も女優を続けているらしい。トニー・スコット監督の「リベンジ(1990)」でもケヴィン・コスナー相手に哀しい人妻を演じていた。

 93年に、ほとんど同じスタッフとキャストで続編が作られたが観ていない。評判もいまいちだったと思う。

 エミリオ・エステヴェスは、マーティン・シーンの息子でチャーリー・シーンの兄貴ですな。
 エイダン・クインは両親がアイルランド出身ということで、「マイケル・コリンズ(1996)」に出ていた。
 タレ眼が印象的なフォレスト・ウィッテカーは、この時は脇役だったが、この映画の翌年の88年、イーストウッドの「バード」で主人公チャーリー・パーカーを熱演して、カンヌ国際映画祭の男優賞を受賞した。「マイケル・コリンズ」の監督ニール・ジョーダンの「クライング・ゲーム(1992)」でも重要な人物を演じていた。

・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて、B級映画ファンの】 テアトル十瑠

栄光のル・マン

2005-07-01 | アクション・スポーツ
(1971/リー・H・カッツィン監督/スティーヴ・マックィーン、ヘルガ・アンデルセン、ジークフリート・ラウヒ、ロナルド・リー=ハント)


 封切り時には見逃していて、74年のリバイバルで観たと思う。それでも30年ぶりの再会だ。
 カー・レースを観ることはTVででもほとんどないが、そんな私でもこれは大好きな映画の一つ。ご贔屓の一人、マックィーンが出ているせいもあろうが、映画としてもとても良くできていると、再見して改めて思った。
 「栄光のル・マン」という邦題も、今ならただの「ル・マン」でしょう。原題が【LE MANS】だし、“栄光の”というのがダサク聞こえるくらい、クールでプロフェッショナルな雰囲気を持った映画だから。

 映画が始まってから十数分はなんのセリフもない。いわゆる、セミ・ドキュメンタリーのようなタッチで、自らレースチームを持っていたマックィーンが、フランスの耐久レース“ル・マン”にカメラを持ち込んで作った作品らしい。なんと、撮影用のポルシェを70年のレースに正式にエントリーして、24時間走りきったそうだ。なるほど納得。だからあれ程までの迫力ある映像が生まれたわけだ。観戦スタンドやコース沿いの観客の映像、色々な角度からの車の疾走シーンなどが上手く編集されていて、それだけでも見飽きることが無い。

 主な登場人物は、ポルシェチームのマイク・デラニー(マックィーン)。サラ(アンデルセン)は去年のこのレースで事故死したレーサーの未亡人。マイクとも知り合いで、去年の事故にはマイクも絡んでいるようだが、詳しくは描かれていない。ポルシェと優勝を争うフェラーリチームのエーリッヒ・ストーラー(ラウヒ)はこのレースで引退する予定で、レース途中で奥さんにソレを打ち明ける。その他、ポルシェチームのマネージャーもセリフのある人物だった。

 レース初日の早朝からル・マン(パリの南西約250キロのところにあるサルテ州の州都)の田舎町の様子が点描されていく。日が昇ると共に町が起き出し、レース場に車や人々が集まってくる。前夜から野宿をしている人も目を覚ます。この辺の映像の編集が素晴らしい。



 会場のアナウンスがレースの説明をする。要約すると、<レースは6クラスが同時に行われ、午後四時にスタートし、翌日の午後四時までに走った距離で争われる。一台のマシンに複数のレーサーが交替で乗り、一人が続けて4時間以上運転することは出来ず、一人で延べ14時間以上運転することも許されない。直線での最高時速は350キロを越す。コースは一年の内363日は一般道として使用されている道路で、このレースの行われる二日間だけ立入禁止となる。>

 ドラマらしい展開はほとんどないにもかかわらず、静かな緊迫感が持続していきます。疾走する車を地面すれすれのカメラで追っている映像は、美しいだけでなく迫力も充分。
 雨用のタイヤに何時交換するかなど、技術的なことも気になるし、最後はポルシェ対フェラーリの戦いに絞られていく。カー・レースなど見ない私も、ラストのデッドヒートは手に汗握りましたな。

▼(ネタバレ注意)
 レース直後から雨が降り出してスリップ事故が心配になるが、事実事故が発生します。この事故のシーンは30年経っても忘れていなかった。ただ、スローモーションを使った最初の事故はマックィーンだと思っていたので、そこは勘違いでした。夜になっても雨は止まない。一般道で普通に走っていても、夜の雨はイヤなのに、時速200キロを優に超えてるんですから、ハラハラします。
 その後、マックィーンも“事故る”が、どの事故のシーンも迫力があって怖いくらいです。

 フェラーリのストーラーも、奥さんに『このレースで引退する』なんて言ってるので、悲劇を予感してしまい気になります。私には、サラよりはストーラーの奥さんの方が美人に見えましたな。

 事故の後、サラがマイクに尋ねる。『命を懸ける仕事は他にもあるでしょうに。他人より速く走って、それが何なの?』
 『イイ加減な人生はたくさんある。レーサーは走っている時は真剣勝負だ。そして、それ以外は待ち時間なのさ。』とマイクは答える。カッコ良すぎる。本当はレーサーだって、“待ち時間”に色んな鍛錬をしているんだが、確かに他のスポーツとは一線を引かざるを得ない、命がけの仕事ではあるような気がする。
▲(解除)

 監督以下この映画のスタッフは、この映画以外にはあんまり聞かない。マックィーンのソーラー・プロが製作したらしいので、実質マックィーンの映画と言っていいのかも知れません。目立ちませんが、音楽はミシェル・ルグランです。

 マックィーンは同じ年に「栄光のライダー」という、コチラはバイク・レースのドキュメンタリーを作っている。この時41歳。何か思うところがあったんですかねえ。わずかこの9年後、50歳の若さでこの世を去ってしまった。

 これ以外に知っているカー・レース映画は、J・フランケンハイマーの「グラン・プリ(1966)」とか、P・ニューマンが製作・主演した「レーサー(1969)」。そして「モンテカルロ・ラリー(1969)」はケン・アナキンのドタバタコメディですな。いずれも未見です。

・お薦め度【★★★★★=大いに見るべし!】 テアトル十瑠

アフリカの女王

2005-06-25 | アクション・スポーツ
(1951/ジョン・ヒューストン監督・脚本/ハンフリー・ボガート、キャサリン・ヘプバーン、ロバート・モーレイ)


 DVD鑑賞第一弾は、かねてからの記事通り(☆ジョン・ヒューストン)、この作品になりました。

 第一次世界大戦勃発時のアフリカ。
 コンゴ奥地のドイツ領東アフリカに教会を建て、布教活動をしているロージー(ヘプバーン)とその兄。
 チャーリー(ボガート)は、そういうアフリカ奥地に住む人々に郵便物などを運ぶ会社に勤めている男で、運搬する船の名前が“アフリカの女王【原題:The African Queen】”だ。
 ドイツ軍がアフリカ原住民を兵隊としてかり集めに来た為に、布教相手も教会も無くしてしまったロージーは、チャーリーの船でこの地を抜け出し、川を下ることになる。チャーリーの話によれば、川の先にある湖が戦争の要所で、“ルイザ”というドイツ軍の船が威光を放っていて、イギリス軍の進攻を妨げているという。
 それならばと、ロージーは小さな“アフリカの女王”で“ルイザ”を沈めてしまおうと提案する。チャーリーは、湖に行くまでにはいくつかの急流があり、辿り着く前に沈んでしまうと反対するのだが・・・。

 ボガートがユーモアたっぷりで、出だしの宣教師兄妹との“お茶”のシーンから笑わせてくれる。全体としても、中盤までは少し滑稽な珍道中風の描き方でありました。
 冒険活劇だが、冒険シーンは今となればそれほど手に汗握る感じにはならない。激流のシーンも合成だ。
 時々挿入される大きなクロコダイルがウジャウジャしているシーンは、アフリカの風景の点描程度で、これも緊迫感を煽るまでは至ってない。ま、こちらは監督としてもそういう意図はもともと無かったのだろうと感じました。象やカバも点描されます。

 川下りでは、スリルではなく、二人の名優の人物描写が楽しみです。堅苦しいかと思えば、大胆でお転婆なオールドミスと、飲んべえなのに意外に物知りで頼りになる船長。ケンカしたり仲良くなったり、この二人の関係の変遷が面白い。
 「旅情」といい、ヘプバーンの“行かず後家”ぶりはやっぱり面白いですな。

 登場人物は、ほとんどロージーとチャーリーの二人だけで、全体としては小品というイメージが残りました。終盤の、船が沼に迷い込んで立ち往生するシーンは、ちょっと停滞気味になっちゃった。
 それと音楽の使い方が、今となってはちょっとダサイというか古くさい。ま、そういう時代だったと思って観るべし・・・ですか。

▼(ネタバレ注意)
 ロージーの兄は、冒頭でドイツ軍が原住民の家を焼き払ったりするのを見て気がふれ、まもなくして亡くなる。

 ロージーが川で水浴びをした後、なかなか船の上に上がれないというシーンは、ヘプバーンのユーモラスな一面が出て笑ってしまいました。寝床を分けるシーンでは「或る夜の出来事」を思い出します。
 チャーリーとロージーは中盤で結ばれるわけですが、この辺りも男女の受け止め方の違いが面白い。ボギーが目で演技してます。

 ラストは、現実的に考えれば、ドイツ軍もあの辺にうようよ生き残っているわけで、のんびり岸辺に泳ぎ着けば万歳!というわけにはいかないよなぁと思いました。ロマンスとして考えればあれでよいのかも知れませんがね・・・。
▲(解除)

 カテゴリー区分が迷う映画です。冒険活劇だけどロマンスも入ってるし・・・しょうがない、ロマンス活劇だからやっぱアクションでいきましょう。

 ボギーは「カサブランカ(1943)」に続く2回目のノミネートで、アカデミー主演男優賞を獲りました。その他、主演女優賞、監督賞、脚色賞(ヒューストン、ジェームズ・アギー共作)にもノミネートされた。
 撮影は、後に監督にも進出したジャック・カーディフです。

 少人数で軍隊に戦いを挑むという設定で、ピーター・イェーツの「マーフィーの戦い(1971)」を思い出しました。コチラはP・オトゥールが飛行機でドイツ軍と戦う話でした。確か。





・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】 テアトル十瑠

■ YouTube Selection (予告編)


■ Information&Addition

※gooさんからの告知です:<「トラックバック機能」について、ご利用者数の減少およびスパム利用が多いことから、送受信ともに2017年11月27日(月)にて機能の提供を終了させていただきます>[2017.11.12]
*
●映画の紹介、感想、関連コラム、その他諸々綴っています。
●2007年10月にブログ名を「SCREEN」から「テアトル十瑠」に変えました。
●2021年8月にブログ名を「テアトル十瑠」から「テアトル十瑠 neo」に暫定的に変えました。姉妹ブログ「つれづる十瑠」に綴っていた日々の雑感をこちらで継続することにしたからです。
●2025年2月にブログ名を「テアトル十瑠」から「::: テアトル十瑠 :::」に変えました。
●コメントは大歓迎。但し、記事に関係ないモノ、不適切と判断したモノは予告無しに削除させていただきます。
*
◆【管理人について】  HNの十瑠(ジュール)は、あるサイトに登録したペンネーム「鈴木十瑠」の名前部分をとったもの。由来は少年時代に沢山の愛読書を提供してくれたフランスの作家「ジュール・ヴェルヌ」を捩ったものです。
◆【著作権について】  当ブログにおける私の著作権の範囲はテキスト部分についてのみで、また他サイト等からの引用については原則< >で囲んでおります。
*
テアトル十瑠★ バナー作りました。リンク用に御使用下さい。時々色が変わります。(2009.02.15)