(1967/ノーマン・ジュイソン監督/シドニー・ポワチエ、ロッド・スタイガー、ウォーレン・オーツ、リー・グラント、スコット・ウィルソン、マット・クラーク/109分)
先日NHK-BSで放送されていたので、久しぶりに録画して観た。
ノーマン・ジュイソン作品で最初に観たのが「華麗なる賭け(1968)」で、これは映画館で観て、とても気に入って、その後TVで「アメリカ上陸作戦(1966)」とコレを観た。アメリカン・ニューシネマ全盛の頃に正統派の雰囲気を持った監督だった。1926年生まれというから、今年80歳だ。
「屋根の上のバイオリン弾き(1971)」も映画館で観て好きだったけど、その後の「ジーザス・クライスト・スーパースター(1973)」も評判は悪くなかったのに、何故か観てなくて、それからパタッと観なくなってしまった。
シェールが主演オスカーを獲った「月の輝く夜に(1987)」もTVの吹き替え版で観たけど途中で止めた。面白くなかったのか、用事が出来て観れなかったのか忘れたが、いずれにしても内容の印象は薄い。
さて、67年のアカデミー作品賞を獲ったこの作品は、データを調べたらスタッフにお馴染みの名前が沢山並んでいてまずそちらに驚いた。
脚本:スターリング・シリファント(脚色賞受賞)、撮影:ハスケル・ウェクスラー、編集:ハル・アシュビー(編集賞受賞)、音楽:クインシー・ジョーンズ、主題歌:レイ・チャールズ。
ジョン・ポール原作の【原題:in the heat of the night】の映画化で、この本はアメリカ探偵作家クラブの新人賞を受けた本らしい。
南部の田舎町。いつものように夜のパトロールに出かけた警察官サム(オーツ)は、道端に死体を発見する。車を降りて身元を確認すると、工場建設が始まっている近々進出予定の企業の経営者だった。財布が無くなっており、物取りと思われた。
連絡を受けてやって来た署長ビル・ギレスビー(スタイガー)は、流れ者の犯行の可能性もあると、駅などの捜査を急がせた。
サムが、玉突き場が閉店しているのを確認した後、駅に来てみると、真夜中というのに一人の黒人が居た。怪しいと睨んだサムは、その男を壁に向かわせて財布を覗いてみる。大金が入っていた。黒人がこんな大金を持っているわけがない。
犯人だと確信したサムは、尋問もせずにその男を署に連行した。
実はその男は、フィラデルフィアの殺人課の刑事ヴァージル・ティッブス(ポアチエ)だった。故郷での法事の帰りで、乗り換えの列車を待っているところだったのだ。
ヴァージルの署長に連絡が取れたビルは、謝る風でもなかったが、フィラデルフィア署の捜査の手助けについても固辞した。しかし、ヴァージルが殺人課の優秀な刑事であると聞き、参考意見を聞こうと、死体を見せに行く。
死体安置所になっている葬儀屋も、刑事であろうと黒人には冷たかった。
翌日、被害者の財布を持っていた男が見つかり、犯人と決めつけられたが、ヴァージルは『彼は真犯人ではない。財布を拾っただけだ。』と言う。
丁度その場にいた被害者の妻は、ヴァージルを捜査の担当にするように署長に言い、町長にも掛け合った。企業の誘致が欲しい町長は、署長にヴァージルを捜査に入れるように進言する。『上手くいけば、手柄は君のものだし、失敗したらヤツのせいにすればいい。』
被害者と競合の間柄になる、この町の有力者エンリコット。被害者の車を調べたヴァージルは、昨夜被害者がエンリコットの家にも寄った形跡があると言い、エンリコットを怒らせてしまう。黒人に取り調べを受けるなんて。
事件の捜査を進めるヴァージルには、エンリコットの息がかかった数人の男達の嫌がらせも始まった。それは、黒人への偏見が根強い地域の、リンチをも予感させる激しい嫌がらせだった・・・。
この後、危険を省みずに捜査を続けるヴァージルに次第に親しみを感じていくビルを、名優ロッド・スタイガーが演じていて印象深い。ポアチエの方が美味しい役のはずなんだが、最初は黒人への偏見をあからさまにする憎々しい男だったのに、終盤では哀愁も感じさせたりして、ポアチエを返り討ちにしたような印象ですな。ビルは、ラストシーンではヴァージルに敬意を払うようにまでなる。
スタイガーはこれで、アカデミー主演男優賞のみならず、G・G賞、全米批評家賞、NY批評家賞も獲ったようです。
終盤では犯人にさせられそうになるサム役のウォーレン・オーツはじめ、田舎町の軽い感じの警官達とワンマン署長とのやりとりも雰囲気が出て、時に吹き出しそうになるシーンもある。
真犯人が最後に出てきて、意外な人物ではないですが、ミステリーと社会派ドラマがうまく解け合って、ハラハラドキドキもさせてくれる作品でした。
1967年は「卒業」や「俺たちに明日はない」が公開された年で、その他、ポアチエにとっては「招かれざる客」も公開されていた。「冷血」も作られていて、スコット・ウィルソンはコチラでは真犯人役だった。
尚、ヴァージル・ティッブスを主人公にした続編が2本作られていますが、社会派ドラマの色合いは薄くなり、刑事物としての評判もそれ程よろしくないようです。
先日NHK-BSで放送されていたので、久しぶりに録画して観た。
ノーマン・ジュイソン作品で最初に観たのが「華麗なる賭け(1968)」で、これは映画館で観て、とても気に入って、その後TVで「アメリカ上陸作戦(1966)」とコレを観た。アメリカン・ニューシネマ全盛の頃に正統派の雰囲気を持った監督だった。1926年生まれというから、今年80歳だ。
「屋根の上のバイオリン弾き(1971)」も映画館で観て好きだったけど、その後の「ジーザス・クライスト・スーパースター(1973)」も評判は悪くなかったのに、何故か観てなくて、それからパタッと観なくなってしまった。
シェールが主演オスカーを獲った「月の輝く夜に(1987)」もTVの吹き替え版で観たけど途中で止めた。面白くなかったのか、用事が出来て観れなかったのか忘れたが、いずれにしても内容の印象は薄い。
さて、67年のアカデミー作品賞を獲ったこの作品は、データを調べたらスタッフにお馴染みの名前が沢山並んでいてまずそちらに驚いた。
脚本:スターリング・シリファント(脚色賞受賞)、撮影:ハスケル・ウェクスラー、編集:ハル・アシュビー(編集賞受賞)、音楽:クインシー・ジョーンズ、主題歌:レイ・チャールズ。
ジョン・ポール原作の【原題:in the heat of the night】の映画化で、この本はアメリカ探偵作家クラブの新人賞を受けた本らしい。
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南部の田舎町。いつものように夜のパトロールに出かけた警察官サム(オーツ)は、道端に死体を発見する。車を降りて身元を確認すると、工場建設が始まっている近々進出予定の企業の経営者だった。財布が無くなっており、物取りと思われた。
連絡を受けてやって来た署長ビル・ギレスビー(スタイガー)は、流れ者の犯行の可能性もあると、駅などの捜査を急がせた。
サムが、玉突き場が閉店しているのを確認した後、駅に来てみると、真夜中というのに一人の黒人が居た。怪しいと睨んだサムは、その男を壁に向かわせて財布を覗いてみる。大金が入っていた。黒人がこんな大金を持っているわけがない。
犯人だと確信したサムは、尋問もせずにその男を署に連行した。
実はその男は、フィラデルフィアの殺人課の刑事ヴァージル・ティッブス(ポアチエ)だった。故郷での法事の帰りで、乗り換えの列車を待っているところだったのだ。
ヴァージルの署長に連絡が取れたビルは、謝る風でもなかったが、フィラデルフィア署の捜査の手助けについても固辞した。しかし、ヴァージルが殺人課の優秀な刑事であると聞き、参考意見を聞こうと、死体を見せに行く。
死体安置所になっている葬儀屋も、刑事であろうと黒人には冷たかった。
翌日、被害者の財布を持っていた男が見つかり、犯人と決めつけられたが、ヴァージルは『彼は真犯人ではない。財布を拾っただけだ。』と言う。
丁度その場にいた被害者の妻は、ヴァージルを捜査の担当にするように署長に言い、町長にも掛け合った。企業の誘致が欲しい町長は、署長にヴァージルを捜査に入れるように進言する。『上手くいけば、手柄は君のものだし、失敗したらヤツのせいにすればいい。』
被害者と競合の間柄になる、この町の有力者エンリコット。被害者の車を調べたヴァージルは、昨夜被害者がエンリコットの家にも寄った形跡があると言い、エンリコットを怒らせてしまう。黒人に取り調べを受けるなんて。
事件の捜査を進めるヴァージルには、エンリコットの息がかかった数人の男達の嫌がらせも始まった。それは、黒人への偏見が根強い地域の、リンチをも予感させる激しい嫌がらせだった・・・。
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この後、危険を省みずに捜査を続けるヴァージルに次第に親しみを感じていくビルを、名優ロッド・スタイガーが演じていて印象深い。ポアチエの方が美味しい役のはずなんだが、最初は黒人への偏見をあからさまにする憎々しい男だったのに、終盤では哀愁も感じさせたりして、ポアチエを返り討ちにしたような印象ですな。ビルは、ラストシーンではヴァージルに敬意を払うようにまでなる。
スタイガーはこれで、アカデミー主演男優賞のみならず、G・G賞、全米批評家賞、NY批評家賞も獲ったようです。
終盤では犯人にさせられそうになるサム役のウォーレン・オーツはじめ、田舎町の軽い感じの警官達とワンマン署長とのやりとりも雰囲気が出て、時に吹き出しそうになるシーンもある。
真犯人が最後に出てきて、意外な人物ではないですが、ミステリーと社会派ドラマがうまく解け合って、ハラハラドキドキもさせてくれる作品でした。
1967年は「卒業」や「俺たちに明日はない」が公開された年で、その他、ポアチエにとっては「招かれざる客」も公開されていた。「冷血」も作られていて、スコット・ウィルソンはコチラでは真犯人役だった。
尚、ヴァージル・ティッブスを主人公にした続編が2本作られていますが、社会派ドラマの色合いは薄くなり、刑事物としての評判もそれ程よろしくないようです。
・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】
観客も返り討ちにされたような感じですね。最初は「なんでポワチエが主演男優賞候補にならないの?差別じゃないの?」とか思って見てると、最後はスタイガーの上手さに「やっぱりこっちが受賞で文句なしだな」みたいな。
作品賞受賞はちょっと意外だった記憶があります。「俺たちに明日はない」と「卒業」の前評判が高かったので。
多分、拮抗していたんだろうと想像しますが、アカデミー賞は時々“意外な作品賞受賞”が見られるようですよね。
テーマに関していうと、確かに「俺たちに明日はない」や「卒業」よりはこちらの方が票を集めやすかったような気がします。
ロッド・スタイガーとシドニー・ポワチエが駅かどこかのベンチで座って話をしているシーンがスチール写真を含め、印象に残っています。
今や黒人の刑事なんて当たり前だけど、当時はね~~
そういう意味でもオスカーを取り易かったのかも・・
『お前は頭がいい。白人の鼻をあかしたいと思ってるはずだ。今回は絶好の機会じゃないか・・・』なんて言って。