hanana

二度目の冬眠から覚めました。投稿も復活します。
日本画、水墨画、本、散歩、旅行など自分用の乱文備忘録です。

●畠山美術館「琳派とその後継者たち」

2016-06-12 | Art

畠山美術館「琳派とその後継者たち」
2016.4.2~6.12 


ほかの美術館に貼られていたポスターの渡辺始興の絵が美しくて、先日根津美術館のあと行ってきました。
サンダルで疲れていた足に、こちらのお玄関でのスリッパ履き換えは、かなり嬉しかったりする。

渡辺始興「四季花木図屏風」(画像は全て以前来た時に買った「輿衆愛玩 琳派」より)



赤と白が印象的。計算された色の配し方。

花はポスターで見ていた印象と違い、とても力強い。

菊などは胡粉が盛り上げてある。(年配のご夫婦が「らくがん」みたいだねと通り過ぎていった)


右端のつくしやワラビから始まり、左へと、春から秋に季節が移り。花は全て堂々と咲き誇っていた。
葉に虫食いの穴がすてき。

リアル。

アザミも、美しく、かつ写実的。

始興が御用絵師として仕えていた、近衛家熈の意向だろうか。
近衛家熈(このえ いえひろ)(1667~1736)は、後で俵屋宗達の解説にも出てくるけれど、五摂家の近衛家当主。書、絵、茶ばかりか、自然科学にも精通した博識文化人。本草学にも詳しいそう。始興の写実的な屏風も納得です。


点数が少ないのに、心に残る作品率が高い畠山美術館。
俵屋宗達「蓮池水禽図」はとりわけ心に残りました。本物を見られることに感謝。

この5点ほどのコーナーは、スリッパを脱いで上がり、座して掛け軸を見られる貴重な畳敷きの間。正座すると、ちょうど目線が鴨の目のあたりに重なる。気持ちは水面から始まり、そして上へ見上げていくと、蓮の葉が淡く、水辺の空気にほわ~と溶けこんでいきそうに。心にも広がってくるものがある。

たらしこみの美しさにも感嘆。葉の濃淡、つぼみの閉じた口のところ等、見るともなく見てるだけで心地よく、次に進みがたく。

つい先日、東博で宗達の同じような掛け軸を見たときはこれほどの感動でもなかったので、絵を見るのは、展示の仕方やその日の気分によるものが大きいのかも。

 

次は尾形光琳が二点。光琳の人物も意外な面白さがある。

尾形光琳「小督局図」

平家物語。高倉天皇の寵愛を受けた小督局は、平清盛に疎まれ嵯峨野に隠れ住むことになりますが、その琴の音を頼りに高倉天皇の家臣が見つけ出した場面。

草深い佇まいと、月と雲の夜の情景。そこへ駆けつけた家臣の馬の躍動感にハッとした。絵の左右の静と動が空間を揺らす。

 

尾形光琳「禊図」

伊勢物語。在原業平は、帝の寵愛する女性への思いを断ち切るために、御手洗川で禊ぎを受ける。

 

 木や水の流れも素晴らしいのですが、神官と業平の表情が興味深く。場面の一部として抑えた中にも、業平の恋に打ちひしがれる目がなんとも。光琳の人物をもう少し見て見たくなる。

 

尾形光琳では「白梅模様小袖貼付屏風」も。小袖が開いて張り付いている。

梅の枝が流麗に踊っているようだった。花は丸く簡単に描かれ、下地の文様とちょうど調和してたのしい。

 

酒井泡一「水草蜻蛉図」

 

生け花のような美しい構成。薄墨の線は潔く、蜻蛉、花や蕾は愛情深く。

澄んだ藍色が心にしみます。茎には淡い緑、芒の穂にかすかな橙、、水草の花(コウホネ?)にも黄色と、わずかに色がさされてもいる。過ぎることなく、足りないこともなく、その微妙さに感じ入る。

 

ほかにも鈴木守一「立葵図」、尾形光琳「紅葵花蒔絵硯箱」も、美しい。

俵屋宗達「芥子図屏風」は小さめですが、金と黒の格子に芥子が描かれた、迫力がある屏風。黒は銀が変色したのかもしれませんが、金と黒の格子の凄み。芥子も、花が終り実になったものも交じり、自然のありのままのリアリティが訴えかけてくる。

 

お庭も、暑い一日にはとっても爽やかでした。

楽しい時間でした。