hanana

二度目の冬眠から覚めました。投稿も復活します。
日本画、水墨画、本、散歩、旅行など自分用の乱文備忘録です。

●摘水軒記念文化振興財団コレクション展 後期ー花鳥動物画

2016-06-07 | Art
柏市民ギャラリー「摘水軒記念文化振興財団コレクション展 後期ー花鳥動物画」
2016.6.1~6.16http://tekisuiken.or.jp/foundation.2010/shusai/shusai.html
 
前期も北斎の生首図(よく描けすぎて気持ち悪いので載せない。。)等、魅力的な内容でしたが、後期もとても良かったです。若冲の極彩色の絵も、ゆっくり前で見られます。

最高なのが、円山応挙「猛虎図」葛飾北斎「鷹図」か並んでいるところ。
展示間隔がせまいので、二作が同時に目に入り、楽しい。

応挙の虎はいつもキュート。でも、上方を見据え、足元の荒波、風の動きとともに、壮大な一枚。
 

北斎の肉筆が見られるのは嬉しい
暗い背景に堂々たる鷹。応挙の虎と同じくらいの大きさで描かれています。飛び立とうとしているのか。
なによりも顔。鷹の気持ちが、おそらく「夢みる鷹」なのです。北斎ってたまにファンタジーに入っている。

そして応挙の虎に視線を戻すと、今までユーモラスに見えていた虎が、夢みる鷹と比べたらちゃんと野生してる。強いんだぞ。


そして、その隣に岡本秋暉の「芙蓉孔雀図」(画像がないので、参考に、展示されていた「花鳥図」の孔雀)、さらにその隣に若冲の「旭日松鶴図」。
 
 
若冲を「濃密で息苦しさを覚える」という評論をよく聞きますが、それを実感しました。
応挙の虎や北斎の鷹も、その世界が掛け軸の外へもどんどん広がっていますが、若冲は広がりを拒否してるよう。
この絵は、京都大徳寺の明代の絵をもとに描かれたそうですが、もとの絵は、もっと広々とした雰囲気の絵なのだそうです。
隣の秋暉の芙蓉孔雀図と比べても、花鳥図で細密に描かれているのは同じですが、秋暉は優美で繊細。比べると若冲は、特異な感じ。この世界で固まっている感。鶴も松も梅も、自分の生命力を濃密にたぎらせ、吐いた気で、気圧が高く濃くつまっている。
 
 
この展覧会の作品、どれも見ごたえ満載でした。摘水軒記念文化振興財団所は、たまに展覧会で目にしますが、一同に会するのは貴重。設立した千葉県の旧柏村の名主、寺島家には、江戸時代から多くの文人が訪れたそうです。 今回5点が展示されている岡本秋暉も訪れたそうです。
 
そういえば、この展覧会の解説、ゆるく脱力系で、読んでいて楽しかった。どなたが描かれたのでしょう。

どれもよかったですが、特に気に入ったものを以下にメモ。
与謝蕪村「虎図」
中村芳中「鹿図」宗達のような自由さ。
鳥野尾藤安「柳下馬図」柳の線に勢いはないけど、馬は精密。でも模様がオカピ?
狩野探幽「手長猿候図」牧谿猿です。お腹に小ざる。
森狙仙「猿候図」プライスコレクションにあったような、虫を見上げる視線がかわいい。
黒田稲皐「親子牛図」ふわりとした情景。鳥取では親しまれている絵師だそうです。
「 牡丹猫図」無銘、野生をのぞかせるイエネコってかんじ
 
山本梅逸「豹図」
出会う作品どれもが、異色な梅逸。「豹の活者」を見たと書き添えられているので、本物を見る機会があったのでしょう。それにしてもこの眼。見世物にされた豹のストレスというのか、好奇心満載の梅逸が未知なる生き物を目にした時の歓喜というのか。

・「牡丹獅子図」酒井抱一
 
豪華な屏風です。目力がすごい。発注者の地位と財力、抱一の自信が覗くよう。
 

長谷川等意「洋犬図」
 
意味ありげな。グレイハウンド犬。一匹は立派、一匹は痩せてあばら骨が。朝顔にも市井の雰囲気。 なんだろう?

岡本秋暉「波に鰹鳥図」 荒れる波うねる波。鰹鳥の爪が迫力、凝集された黒に緊迫感。
 

長澤蘆雪「狗犬図」後ろ向きの一匹の背中がポイント
 

吉川一渓の「白狐図」怪しげで寂し気で美しい世界。
 
 
これが無料とは。点数は33点ですが、すべての作品が楽しい展示でした。
市民ギャラリーの新規移転に伴う記念展です。広くはありませんが、柏市は高島野十郎を確か7~8点所蔵しているので、ここで常設していただけると嬉しいです。柏市民でないのにすみません。。