hanana

二度目の冬眠から覚めました。投稿も復活します。
日本画、水墨画、本、散歩、旅行など自分用の乱文備忘録です。

●日展 2022年

2022-11-28 | Art

何年ぶりかの投稿。ほとんど書き方を忘れてしまっていました。

私事でほとんど展覧会に行けない一年近くを過ごしていましたが、やっと復帰。またぼちぼちと展覧会メモを残していこうと思います。

復帰後のはじめの展覧会は、国立新美術館の日展へ。時間がなく、日本画だけ見てきました。

いつものとおり膨大な作品数ですが、今年はちょっと会場が狭くなった?。作品と作品の間隔が狭くなったような気がします。

好きな作品を見た順に載せていきます。

石崎清和「震れる 」

英題は「begin to open」。今まさに開こうとする瞬間、つぼみが微細に震えたのが伝わり、見るほうも心の奥が小さく振動する。

線だけで残してあるところ、色をつけてあるところ。描く人が見た、木の先端の息づかいに忠実に色をつけているのかな。

寒い季節なのだろうけど、つぼみの先端にぽっと熱量がある。

 

「赫赫 」福本百恵

タイトルに「赤」が4つもある!。

以前に青山の新生堂で個展を拝見したときも、福本さんの鳥愛があふれていた。

とにかく、鳥たちがとびきりいい顔をして画中に我を誇っているのですからね。

オカメインコかわいすぎる。

赤×群青色の額もすてきです。

 

「刻廻る 」城野奈英子

枯れるヒマワリが、神々しい域にある。

美しいスポットがいくつもあり、色を織り成す着物と帯が舞っているよう。

 

「共に泳ぐ。」 鵜飼義丈 

このおおらかさ。

芦雪だ若冲だと喜んでいたら、むしろ国芳の「武蔵の鯨退治」か。

近寄ると、なんと小さい泡がかわいいの。たれパンダとかこぶたとかシーサーとかに見えてくる。

それにしても日本画の黒っていいと改めて思う。これだけのボリュームなのに、日本文化的なコミカルさ。下の鯨に入れ込んである黒も美しくて、少しの白とのバランスにほれぼれ。

 

「野仏図」伊東正次

「Buddha in the field」とある。いまだ求道者の苦悩の中にあるような。背後に見えるのは石仏なのかはっきりとはわからない。巡礼者たちにも見える。

生きていくことも苦しいと思うときがあるここ数年の疫病やら戦争やら。そんなことを思うともなく思いながら見ていると、草叢にチョウ、さなぎ、カタツムリが息づいているのが目に入る。古くから描かれてきた草虫図の小さな命を思い出したりもする。

しかし、細かい!3m以上ある大きい作品を埋めている細かな筆致がそのまま行のよう。

 

「白夜」稲田亜希子

ムンクが青くなったらこうなるのかもしれないと勝手に思う。不可思議な気配を放つ黒い太陽と空。

座る女性たちはむしろゴーギャンの北欧版のようにも感じられてくる。タヒチのぬくもりが、ここでは冷たさと白夜の陰鬱さになっている。

(脱線)きのこの山が好きなので、キノコを見つけると嬉しくなる。

 

「月ノ光図」山田まほ

毎年楽しみにしている山の図。

月光がざわめいている!ザワザワと。

解説には「月山」と。死者が月光に遊ぶのか、と腑に落ちた気がする。畏怖の念が画中に満ちている。

大きい絵ゆえ見上げると、はるか上に月光。冷たい輝きが美しくて、見入ってしまった。

 

「山門から 東海道(亀山宿)」山本隆

青邨のように太い墨線と、鬼瓦含め瓦が好きなところ。

遠くに見える海と墨の線のせいか、久しぶりに新井林響など思い出した。旅に出たくなりますね。

 

「葡萄」鍵谷節子

ぶどうって生命力があって、魅惑的。

 

「エトピリカを待つ岬」山田毅

拒絶するかのような厳しい北海道の自然。霧多布。

灯台が見える。漁具のガラスの浮き球や縄が落ちている。圧倒的な自然の中に人の暮らしの気配がある。アイヌのひとの世界観に耳を傾けたくなる。

気づくと、空の美しさ。青が澄んでいる。少しホッとする。雪が解けて春の訪れへの期待感を表現できれば、と解説にあった。

 

「ほたる火」本多功身

どこか外国のアジアの集落かなと思ったけど、故郷なのかもしれない。農具の小屋、川に橋も見える。青のなかの灯りの黄色に懐かしみが誘い出されてしまう

 

「翡翠の里」石原進

龍が玉を持っている。ツル、カメ、百合、梅も画中に。吉祥てんこ盛り。どことなくかわいらしくも神秘的。

翡翠色に流れるのは糸魚川。糸魚川が国内一の翡翠の産地とは知らなかった。

背景に描かれた山は明星山といい、山に住む龍がこの里を守ってくれているのだそう。

行ってみたくなってちょっと調べてみると、川の翡翠は勝手に採取してはだめだけど、海岸に打ち上げられたのは大丈夫だそう。

 

「秋色」池内璋美

毎年、細密な点描に圧倒されますが、この作品もすごい。横2.2mもあるのですから。

よくよく眺めていると、上のほう、下のほうと、少しずつ点描の配合?を変えて色調を変えているのが見える。描かれた世界も深淵ですが、画の表面の深さにも恐れ入りました。

 

「春宵」曲子明良

闇にうかぶ白い花びら。

闇も単なる黒でなく、岩絵の具の質感とともに見飽きませんでした。

 

遺作となった三作が並ぶコーナーは特に心に残ったところ。どの作品にもどきんとするものがありました。

 

「黎明」池田道夫

大きい作品の前に立つと、深く大きな暗闇の隙間に、わずかな明け始めの光が目に入る。拙い言葉ゆえ形容のしようもありませんが、心打たれました。きれいとか越えて。

 

むかし、絵を見ていて初めて涙がちょっと出てしまった作品があるのですが、その作品を思い出しました。エミリ・ウングワレの絶筆と言われている作品です。

エミリ・ウングワレは90歳近くで亡くなる2週間前の3日間に、先述の作品含め20作を超える作品を描き上げたといいます。彼女の作品は、絵というよりも、彼女そのものであり、彼女の世界そのものであり、エミリらオーストラリアの先住民の「ドリーミング」「ソングライン」といわれるものそのもののようなのですが、この最後の作品に至って、絵と彼女との間に乖離が全く感じられないことが衝撃でした。「エミリ、絵にはいっちゃった…」と。

 

次に見た作品にも勝手ながら同じことを感じていました。

「郷」安堵蒼樹

あぜ道の向こう、里山のふもとの民家。高山辰雄を思い出したりも。

高山辰雄の月夜とちがい、山の向こうの空は青い。青稲の水面に空が映っているのがきれいで、うれしくなりました。

そして、こちらも「遺作」と書かれているのに気づいたとき、この画家さんは、本当にこの道の奥へ、絵の中へと、入っていったのかと。

画家にとっては、あちらの世界に入るのも絵の中に入っていくのもついには等しくなるのかしら、とそんなことを思いました。


お隣の一作、遺作とある作品には、ものすごいエネルギーの放出に、目を見張りました。

「岩走る」東俊行

岩の上を走り砕け散る水のエネルギーと、突き刺すように鋭角を描く、しかし動かぬ巨岩。その岩の内なるパワーがすごい!。

岩や水にさされた金色もとても美しかったです。

この全開のエネルギーに、我が意を得たりと、笑いながら書き終えたかもしれません。

 

三作とも、究極的な域のなにかが絵にあったように勝手に感じました。

遺作と言って絶筆とは限らないし、その画家の方の思いもわかりません。遺作と知って拝見するので、こんな風に感じてしまうのかもしれません。

ともあれ、日展で印象深い作品に出合い、お名前が記憶に残り、毎年拝見するのですが、突然、展示の作品名についた黒いリボンでその方が亡くなられたことを知ることになります。来年はもう作品を拝見できないのだと、寂しく感じます。

 

「青空騒ぐ(風神)」土屋禮一

個展で彩雲の絵を拝見したことがありますが、空に見飽きません。

 

風神雷神の画題は楽しくて大好きです。

日展では必ず誰かが「風神雷神」を描くよう、持ち回りお当番で決めてくれないかな(笑)。

 

「秋と大地のはざま」加藤晋

毎年とりわけ楽しみにしている方の絵です。

まず彼岸花の鮮やかさに見惚れますが、いたのですよ、ここにも。なぜここに?みたいな生き物が潜んで。

大きな画中に、いろいろな生き物たちが小さく隠れているので、探すのが本当に楽しいです。

しかもどの子もとてもハートフルでかわいいのです。

象、くま、きつね、子鬼、、、まだまだいるのだけれど、ネタバレになるのでここまでに。

そしてどのシーンを切り取っても、どこもがとてもきれいな場所。歩き入ると、押し返されることなく入らせてくれて嬉しい。入るとその時その時いつでも、ほっこりするお話が流れている。

しれっと隠れる龍の目がかわいいです。この先には私の大好きなキジもいたりします。

絵の端っこに小さくいた、めちゃくちゃかわいいウサギの目線の先の絵の外にも、まだまだこの世界が続いていきます。

最後に、遠くの薄青色の山と白い空が、心にしみいってきました。どこまでも優しい、というのはこういうのかと思いました。

毎年思いますが、この方の絵はつくづくどこかに常設してほしいです。美術館はもちろん、むしろ何度も訪れる病院の待合、市役所の市民課のホール、そんなところに、椅子とともにおいて、来る人を包んでほしいです。

 

「象潟は雨」川崎鈴彦

川崎家の系譜展を見に行ったので、感慨深いです。

水墨画のように、自由に自然に筆を動かし続けている感じ。

奇をてらうでもない、自然との向き合い方が印象的だった川崎家の系譜。重なる気がしました。

 

「明日の昔」岸野圭作

こちらも墨と水の軌跡に見入りました。

ふわふわのぼかしと、水の痕跡がいいのです。

 

「春誘う」佐伯千尋

青い新枝と梅の花が瑞々しい。

 

「雨告ぐ花」若崎文絵

アジサイがとてもきれい。

 

「田を行く」岩田國佑

どこもまでも平たいのに、単調でない絵になるのがやっぱり画家さんってすごい。。

小さく集落が見える。

 

ワイエスを思い出した家と色調。ガラス越しの風景なのか、映り込んでるのか、不思議。

 

「勝ちダルマ」野原都久馬

達磨すご!。

圧!!

 

「春のひととき」渡辺知聡

ネコとけてる~~♥

日向があたたかくて、心も温まりました。

 

絵を見ているといろいろなエネルギーを移してもらえます。

絵が好きな人に産んでくれて、お母さんありがとうって思います。これは人生の楽しみですね。