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二度目の冬眠から覚めました。投稿も復活します。
日本画、水墨画、本、散歩、旅行など自分用の乱文備忘録です。

相国寺光源院 加藤晋奉納襖絵 

2024-03-11 | Art

京の冬の旅 非公開文化財特別公開 相国寺光源院 2024年1月8日~3月18日

 

先月ですが、京都の相国寺に行ってきました。

お目当ては、塔頭の光源院。

加藤晋さんの描いた襖絵が公開されています。
 
コロナ前から描き始め、2021年にお納めされたようですが、コロナを経てようやく落款を入れ、公開となったようです。
 
いつも日展で拝見するのを楽しみにしている、加藤晋さんの世界。広くて遠いあの山並みと里の風景。それをお寺で拝見できるのを楽しみにしていました。
 
 




(お庭は撮影できますが、室内は撮影できませんので、絵の画像は光源院さんのWebサイトからお借りしました。)
 
 
本堂に入ると、仏間と室中の間をはさむ、下の間に「春」、上の間に「夏秋冬」。
二つの世界がそこにありました。
 
「春」の間では、満開の桜に、目を奪われました。
 
行く前に画像で拝見した時には、桜の後ろの空が、襖を通り越え、その向こうへどこまでも広がっているようだと、見る前から感動していたのでした。
 
しかし、実際に絵の前に立つと、なにより桜の美しさに、思わず声がもれてしまいます。
 
 
とてもきれいでやさしい色なのです。
以前個展で板に描かれた桜の絵を拝見したときも思ったのですが、亡き人がこちらに微笑みかけてくれているようで、ちょっと泣きそうな気持になります。
 
半分、浄土をかいまみている?という感じもします。
あまりにきれいでやさしく、そうするとはかなくて悲しくなる、そういうきれいさがあるのかもしれないと思ったりしました。
 
そうはいっても、この絵のなかには、いろいろなものが息づいているのです。
里では狐の嫁入り行列が進み、桜の花蔭には小さな七福神たちがこっそり隠れています。
 
そう簡単には見つけられないのがまた、彼らのかわいいところなのです。
(光源院さんには、ネタバレのパネルも置かれていますが、これを見ては負けだと、意地でも自力で探し出す謎の意地…)。
 
拝観の方が次々にお入りになっていましたが、七福神を一人、二人と数えながら探し出していたり、懐かしい昔話の登場人物の話に花が咲いたり。
年配の方から若いカップルの方まで、こんなにみんなが楽しそうな美術館もお寺も、いままで見たことがないと思いました。
 
そして上の間の「秋冬夏」へ。
 
こちらにはさらに、昔話から出てきた多種多様な動物がいて、ますます探すのが楽しいのです。
三蔵法師の一行(自由すぎる猪八戒がかわいい)、クマ、龍、白へび、弧を描くキツネ。
かさ地蔵は私の大好きな昔話の一つです。
象がいましたが、これはお釈迦様の化身だということです。
桃太郎のキジもとてもかわいいし、子鬼たちに再会できたのも嬉しいです。
 
(門の看板に少し画像があります。)
 
それにしても、この4面の襖絵のなかに、夏秋冬と、気づけばいつのまにか季節が移り変わっているのです。
そして、四季の果てに、凍る冬の世界が広がっていたことが印象的でした。
しんと凍った池の周辺は、幽玄な世界。
白い山並みを背に飛ぶ鶴の光景はとても美しくて、鶴の恩返しのラストも思い起こしつつ、心に残っています。
 
ひとがいなくなってから、もう一度春から戻って、畳に座って、四季の変化をめぐれたことは、至福の時でした。(なんなら布団しいて寝ながらみていたいレベル。)
 
視線が低くなると、絵にはちゃんと、この世界に入れる小径が描かれていることに気づき、
気づいたときにはもう意識は中に入ってしまっていて、遠くの山並みを改めて眺めているのでした。
こんなに広くて深い世界だけれど、里の風景、山の風景、どこを切り取ってみても、そこにも深い森が深まっていくので、見飽きません。
(それにしても山々は、近い山は木々の緑色に見えますが、遠くなると薄青に見えるのはどうしてか誰か教えてほしい。)
 
そもそも日本画は、自宅やお寺などのふすま絵や掛け軸や板戸として、空間をつくり上げていたのだと、改めて思われました。絵によって空間には風も吹き、温度も変わり、威圧の空間にも癒しの空間にもなりえます。
 
見る人が入るのと逆に、絵からは「風来坊」という風神雷神見習い中みたいな二人が飛びだしていました。まだ風や太鼓を制御不能みたいなところがエネルギーいっぱいで、ほほえましいです。
 
 
光源院にはまだまだ動物がたくさん。
室中の間の襖絵は、水田慶泉(1914~1997)が12支を描いています。
 
さらには、お庭にも12支の生き物がいるのです。(なぜかチーズ岩も。)
 
 
 
牛と兎は、「あ、そうかも」と思えました...
 
 
 
 
 
光源院は、足利義輝の菩提寺であり、義輝の院号から「光源院」と名付けられたそうです。
相国寺と言えば、若冲の承天閣美術館ですが、こちらの住持、維明周奎は相国寺の115代住持も務め、若冲の弟子であったと言うこと。維明周奎の描いた梅の掛け軸も展示されていました。
 
こんなにハートフルな空間の塔頭があるとは。
もし京都でにっこりほっこりしたいと思ったら、こちらがおすすめです。
 
 
 
 


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