hanana

二度目の冬眠から覚めました。投稿も復活します。
日本画、水墨画、本、散歩、旅行など自分用の乱文備忘録です。

●福島県立美術館のコレクション展 酒井三良、速水御舟、山口華陽他

2019-04-26 | Art

3月末のことになりますが、福島県立美術館の若冲展(5月6日まで)へ。

そのあとで、二階のコレクション展も見ましたので、先にその備忘録。

といっても、新幹線の時間があり、日本画の部屋の半分くらいしか見られなかったのだけど、心に残る作品ばかりでした。(画像は福島県立美術館のHPから)。

 

展示目録

なかなか見る機会のない酒井三良(1897(明治30)-1969(昭和44) )が二点。見るとひかれる三良の絵、今回もやっぱりよかった。

そういえば三良は会津の出身。2016年の藝大美術館の「いま、被災地からー岩手・宮城・福島の美術と震災復興ー」展のときに見入った三良の「雪に埋もれつつ正月はゆく 」は、こちらの美術館から来ていたのでしたか(日記)。

*今回は展示されていません

ふるさとの風土と当たり前の日々の暮らし。これはまだ22歳の時の作。

でも、並み居る有名な画家の作品のなかで、あの展覧会の冒頭に展示され、フライヤーにも使われていたのはこの絵だった。展覧会を企画したひとたちのいろいろな思いがこめられているのだと思う。

 

今回は、意外にも沖縄を描いた作品だった。

「沖縄風俗」1955 再興第40回院展 

三良は27歳のときに沖縄を訪れ、精力的に取材。30年後にこの作品を描いた、と解説に。

和紙に墨の風合いがいい感じ。母子?姉妹?の頬は赤く、頭上のかごには作物と鍬。しっかりとした生活感。

通りすがりの旅人ではあるけれども、光景としてだけではなく、二人の気持ちや性格に思いを巡らせてスケッチしたように思える。

 

もう一作の 「松籟 」は、どこを描いたのかはわからない。でもこちらも、その土地の風土、気象のなかに、ひとと暮らしが描かれている。風土とひとは切り離されるものではなく、一体となり三良の視線に入っている。地元は違えど、そこで生きるひとに、三良は共感を覚える。

 「松籟 」1964 再興第49回院展

英題は「Sound of Pinewood」。墨に松の緑が印象的。風が松にたてさせる音に白波の音が重なる感じ。1946~54年まで五浦の大観の別荘に住んでいたけれど、茨城の海べかな?

三良は奥村土牛とよく旅行に出かけ、小川芋銭(「雪に埋もれつつ正月はゆく 」は、たまたま会津に来ていた芋銭の一言で、院展に初めて出品したのだそう)と親しかったというから、なんだかわかるような気がする。

所蔵品検索してみると福島県立美術館には多くの所蔵品がある。もし三良展が開催されたらまた来なくては。

 

 

それから、遠目にも神秘的な精気を放つ、山口華楊(1899~1984)「畑」1925


26歳の作。
画像だとよく見えないけれど、マメ、とうもろこし、なす、西瓜、鶏頭、ペンペングサ。実ものの野菜はこんなに神秘的で魅力的。
マメの花やなすの花にはとくに見入ってしまった。凄みがあるほどの写実だけれど、輪郭はそっとぼかされている。


 速水御舟は、妻を描いた「女二題」の、”その壱”と”その弐”(1931)


以前に世田谷美術館の御舟展で見た記憶があるけれど、これもこちらの所蔵でしたか。
御舟が見つめ抜いた花や皿といったモチーフと同じ観察眼でもって、妻をモデルに画に挑んでいる。
少ししか見たことがないのだけど、御舟の人物は、いつも実験と模索の過程にあるように見える。(人物に限らないか。。)
身づくろいをする姿態、手の動き、なにより、床に座った腰から脚つきのラインと肉感に、御舟の興味は多く集中している気が。
このあと、「花の傍」1932では西洋の椅子に座った女性を描いているけれど、もはや御舟の意図は別のところに移っている。

御舟の「晩秋の桜」1928 は、小枝まですべて写し取ったのではと思うほど。地を活かした墨のみの作品。



中島清之(1899~1989)「胡瓜」1923 も印象的。葉の質感やしわ、立体感、手触りまで写実を極めて、一時の御舟かと思うような執拗さ。

他にも、山本丘人(1900~1986)「月夜の噴煙」1962、 池田遥邨「大漁」、 再会した安田靫彦「茶室」、 小茂田青樹「薫房」1927 も心に残る作。
 


 後ろ髪をひかれる思いで美術館を後にしましたが、西洋画の部屋にはワイエスが4点展示されていたのに‥。もっと時間をのこしておくべきだった涙。


福島駅の構内に桃の花が咲いていました。ほんものです。

帰りの新幹線のおやつは、福島駅で買った桜あんのゆべし。

これとってもおいしい!!。箱ごと買ってくればよかった。