はなな

二度目の冬眠から覚めました。投稿も復活します。
日本画、水墨画、本、散歩、旅行など自分用の乱文備忘録です。

○カルピスの包み紙 茨城県立近代美術館常設

2019-06-05 | Art

志村ふくみ展のあとで所蔵作品展へ。

「日本の近代美術と茨城の作家たち 春から夏へ」会期:2019.4.17~6.16

 

茨城のゆかりの画家たち。

中村彝 横山大観  小川芋銭  下村観山  木村武山  那波多目功一  中西利雄  安井曾太郎  山本文彦  朝倉文夫  能島征二ほか(一部を除いて写真可)

 

以前に来た時は中村彝ルームがあったような記憶があるけれど、今回も4点。

どれもなんだか差し迫ってくるものがある。

そんななかで、彝の「カルピスの包み紙のある静物」(大正12年)。

カルピスの水玉模様が敷物になっているのが、すっと清涼感が通り抜け、親しみを感じたりする。紙で包まれたガラス瓶のカルピスは、子供のころにお中元で送られてきた、夏休みのイメージ。いつしか紙パックになったよね。

おや、包み紙、今の白地に水色の水玉と、色が逆のような。せっかくなので調べて見ると、カルピスが発売されたのが大正8年。当初はミロのヴィーナス模様の紙箱だったのが、大正11年に水玉模様になった。そのころは絵の通りに、青地に白い水玉の紙。今の白地に逆転したのは1949年。

彝は出始めたばかりの商品の紙を描きいたのだ。ちょっと爽やかで軽やかな風が送り込まれている。

私はカルピスばかりに気がいっていたけれど、解説を読むとしんとした気持ちになる。

すなわち、この大正12年、病中にある彝は死を思わせる髑髏の絵を多く描いていた。その矢先に関東大震災。絵は破壊されたが、そんななかで生き残った彝は、芸術のために生かされたのだと感じ、短い命を輝かせる花の絵を描くようになる。

改めてこの絵の花を見ると、紙と共に鮮やかな色と息を放ち、彝の包むような目線が見えるようだった。

彝は翌年亡くなる。