志村ふくみ展のあとで所蔵作品展へ。
「日本の近代美術と茨城の作家たち 春から夏へ」会期:2019.4.17~6.16
茨城のゆかりの画家たち。
中村彝 横山大観 小川芋銭 下村観山 木村武山 那波多目功一 中西利雄 安井曾太郎 山本文彦 朝倉文夫 能島征二ほか(一部を除いて写真可)
以前に来た時は中村彝ルームがあったような記憶があるけれど、今回も4点。
どれもなんだか差し迫ってくるものがある。
そんななかで、彝の「カルピスの包み紙のある静物」(大正12年)。
カルピスの水玉模様が敷物になっているのが、すっと清涼感が通り抜け、親しみを感じたりする。紙で包まれたガラス瓶のカルピスは、子供のころにお中元で送られてきた、夏休みのイメージ。いつしか紙パックになったよね。
おや、包み紙、今の白地に水色の水玉と、色が逆のような。せっかくなので調べて見ると、カルピスが発売されたのが大正8年。当初はミロのヴィーナス模様の紙箱だったのが、大正11年に水玉模様になった。そのころは絵の通りに、青地に白い水玉の紙。今の白地に逆転したのは1949年。
彝は出始めたばかりの商品の紙を描きいたのだ。ちょっと爽やかで軽やかな風が送り込まれている。
私はカルピスばかりに気がいっていたけれど、解説を読むとしんとした気持ちになる。
すなわち、この大正12年、病中にある彝は死を思わせる髑髏の絵を多く描いていた。その矢先に関東大震災。絵は破壊されたが、そんななかで生き残った彝は、芸術のために生かされたのだと感じ、短い命を輝かせる花の絵を描くようになる。
改めてこの絵の花を見ると、紙と共に鮮やかな色と息を放ち、彝の包むような目線が見えるようだった。
彝は翌年亡くなる。