やまっつぁん日記

一応日記メインの高3のブログです。ちなみに小説も書いて載せてます。音楽紹介記事もぼちぼちやってます。

平行世界の315 -2-

2010-03-17 09:59:19 | 便利屋サイコ
 秋の夕暮れ。
 広い運動場や、そこにある遊具が夕日を受け赤く染まっている。
 そろそろ冷えてきたこともあり、その部屋は冬支度が進みつつあった。
 

 その部屋というのは校内にあるとある一室。
 しかし、その内装は学校の一部とはとても思えないようなものだった。
 布団山積の大きなベッドやバスルーム、ニュース番組がついた大画面のテレビに、ウォシュレットのついたトイレ。
 学校ではありえない設備、まるでホテルの一室のようだ。


 そしてベッドの上の、冬への備えなのだろうか、山と積まれた布団の上には、なんともいえない奇妙な生き物が楽しそうに跳ねていた。
 その生き物は実在する生き物のどれとも似ておらず、大変説明しにくいのだが、どうにか説明すると、緑色の巨大なスライム、といったところだろうか。


 全身緑で、まん丸。
 ポヨポヨしていて、プルプルもしていて、小さければ可愛げがあるだろうが、バランスボールくらい巨大なので、逆に気持ち悪い。
 そしてその緑の表面には、ちびっ子の落書きのような顔がついていた。


 さっきから楽しそうに布団の上を跳ね回っているそいつ。
 その後ろには、そいつが着るのだろうか、袖のないスーツのジャケットのような服がかけてあった。


 よく見るとそのスーツには名札のようなものが付いている。
 きっとその名札はこの緑の物体の名前が書いてあるに違いない。
 さっそくそれを読んでみる。
 

 「緑 ポヨ」と書かれていた。
 見たままの名前である。


 これだけでも驚きだが、名札にはさらに驚くべきことが書かれていた。


「緑学校校長」。
 ただただ驚きである。


 このなんのひねりもない緑学校という名前。
 周りが自然に囲まれ緑がいっぱいだからこのような学校名なのか、そう思い始めていた矢先のことだった。
 結局校長の名前からきとんのか!!と、つい突っ込んでしまいたくなる。
 だが、今、そんな突っ込みは胸のポケットにしまっておくことにしよう。


 今度は布団の上で転がりながら、適当にテレビのリモコンを何か特殊能力らしからぬものでいじっていたポヨ。
 (ポヨという生き物は手足がない代わりに何か別の便利な能力が使えるようである)
 彼(?)たぶん彼女ではないと思う)はニュース番組くらいしか今の時間帯はしていないと知ると、ニュースをつけっぱなしにして、床に落ちていた紙を、自分の目の前へと引き寄せた・・・不可思議な力で。


 ポヨはその紙をじっと見つめ始める。
 その紙にはどうやら学校の年間行事予定が書かれているようだ。
 しばらく紙を見つめた後、ポヨは眉間(と思われる場所)にしわを寄せ、なにやらぶつぶつ言い始める。


「・・・やっぱもっとイベントがほしいな~。文化祭、体育祭に匹敵するくらい大きなイベント・・・。みんなが合同でできるような、楽しいイベント。・・・海でも空でも地中でも共通の何か・・・。」
 このポヨの呟きから推測するに、どうやらポヨは学校の新たな行事を考えているらしい。
 しかもかなり規模が大きいもののようだ。


 ここらの学校の文化祭、体育祭といえば、この街はもちろん、他の街も巻き込んで大変な騒ぎになる。
 というのも、この陸都市「デジスト」と姉妹都市のような感じで、海底、地中、空中にもそれぞれ街があり、そこと合同で学校の「祭り」をやるのだ。
 そうともなれば、ここら一体、地上も地中も海も空も祭り一色。
 特にこのデジストは大変な賑わいに包まれる。


「続いてのニュースです。」
 まだ続いていたポヨの呟きが不意に止まり、テレビがついていたのを思い出したように、視線がテレビ画面へと向けられる。


「今世界的な音楽ブームの煽りを受け、このデジストでも急激に、路上でバンドの演奏を行う若者たちが増えてきています。楽器店などでも・・・見てください!長蛇の列ができています!」
 少し興奮気味に話すアナウンサー。
 画面には、デジストのとある楽器店に並ぶたくさんの人たちが映し出されている。
 その画面に時折どこかで見たような金髪の少年や、猫のような男の子、メイドのようなロボットが映し出されていたが、ポヨはその画面を見ているようで、もう見てはいなかった。


 ポヨはテレビに視線を向けたまま、何かをひらめいたような笑みを浮かべている。
「音楽祭だ!!」
 不意にポヨは叫んだ。


「確かバンドを部活としてやってる生徒もいたし、僕もバンド作ってるし・・・。それにこれならどこでやっても大丈夫だし、みんな楽しめる!・・・うん、いけるっ!!」
 ポヨは目を見張るほどの早口でそう言うと、壁にかかっていたスーツを目にも留まらぬスピードで着込み(着るというより、はまるという感じだったが)部屋を飛び出していった。

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