やまっつぁん日記

一応日記メインの高3のブログです。ちなみに小説も書いて載せてます。音楽紹介記事もぼちぼちやってます。

簡単な説明


 えー、ではとりあえずはじめて来た方のために軽い説明をします。
 このブログの内容は主に日記、そしてイラスト、たまに漫画、好きな動画(音楽)、更新するめどの立たない写真付き記事からできております。
 まぁ、好きなカテゴリーを選んで見てってください。
 ちなみにボーニンというのは主に4コマ漫画です。
 一日一名というのは毎日一人ずつ500色の色鉛筆一色一色から新しいキャラを作っていこうという企画になってます。
 それとコメントは大歓迎ですが、不適切だと思われるものは削除しますのでご了承ください。

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平行世界の315 -5-

2010-03-21 14:47:23 | 便利屋サイコ
「実は最近、わがフロラフリミア社で、音楽ブームを予期して楽器の開発がされました。ビル群の方にフロラフリミア楽器店第一支店が近日オープン予定です。」
 ふんふんと興味深げにうなずく二人。

 
 敬語っていうところがなんとなく仕事をしている感じがして、二人も何とか形を取り繕うとしていた。
 しかし下手にしゃべっては雰囲気が壊れる。
 というわけで、二人はうなずくことに徹していた。
 それをクロラの策略だとも知らず・・・。


「そして第一支店と合わせ、こちらの商店街のほうでも第二支店をオープンさせたいと思います。そして第二支店の候補地がここの1階となっております。」
 今後も再び、ほおほお、とうなずきそうになった二人だが、今度ばかりは「へぇ?!」と素っ頓狂な声を上げた。


 この店の1階をどうにかしたいという内容だというのは思っていたが、まさか店になるとは思っていなかった二人である。
 どうせ、物置にしたいから貸してくれとかそう言うんだろ?と思っていた二人だったのだから、驚くのも無理はない。


「もうすでに準備は整っております。後はあなた方の了承を得るのみ。もちろん売り上げの一部を差し上げますし、人件費だってお支払いします。どうでしょう?」
 そう言われたレニの頭には儲かるか否かしかなかった。


「儲かる?」
 そして口から出るその質問。
 クロラはそれを見てゆっくりとうなずく。
「それじゃぁ・・・いいかな。」
 レニが少し悩みつつぼそりと言った途端。


「そんじゃ、話は決まり!じゃぁ、準備始めるよ!あ、今の言葉は録音してあるから、取り消しはできないから!」
 クロラはいきなり早口に言った。
 口調はすっかり元通りである。


「へ・・・あれ・・・?」
 さっきまで辺りに張り詰めていた緊張感が嘘のようだ。


 いつの間にかクロラは携帯をポーチから取り出し誰かと話している。
 どうやら何か指示を出しているようだが、レニたちには何の指示を出しているのかよくわからなかった。
 そしてあっという間に話し終えるとクロラは携帯をしまう。


 その後ぎろりとレニたちを見た。
「あんたたち!ボーっとしてる暇はないよ!これから店の大掃除を行う!物置においてあるもので必要なものがあったらさっさと取っておかないと捨てるよ!」
「でえぇ?!」
 レニとチャップはいきなりの強気なクロラの口調についていけなかった。
 いや、この強気な口調こそがいつものクロラなわけだが、さっきまでの口調のギャップがありすぎる。
 

 レニとしては1階が店になるということは別にかまわなかった。
 しかし片付けなんてことをするのはいやだ。
 だが、掃除はいやでも、1階に何があるとも知れない。
 もしかしたらすごいお宝とか、かなり生活に便利なものなんかがあるかもしれないのだ。
 かといって無駄な力は使いたくないし、埃っぽいのもいやである。


 そこでふといいことを思いついた。
 力仕事といえばアレスタに頼めばいい。
 掃除といえばエネリアに頼んでしまえばいいのだ。
 今の時間は確かエネリアのバイト時間が終わる時間だ。
 アレスタだってどうせその辺ビラを配りながらほっつき歩いているだけだろう。
 

 そのアレスタとエネリアというのはこの店の従業員であり、社長であるレニのいうことは一応聞かなければならないようになっていた。
 なので、きっと事の次第を話せば渋々ながらも片づけをすることを了承してくれるだろう、という考えである。


「あ、ちょっと僕、アレスタとエネリアを呼んでくるよ!二人ならしっかり掃除とか物の選別してくれるだろうし!」
 レニが言うと、チャップはしてやられた!というような顔をした。


 チャップだって掃除は嫌いではなかったが、好きなわけではない。
 できることならやりたくないと思っていたのである。
 そこへレニだけが逃げ道を見つけた。


「あ、じゃぁ、僕も行こ・・・」
「何言ってんだチャップ!おまえが前線を仕切るんだろ!大体この店で一番ガラクタ好きなのはチャップなんだから、お前がいなきゃ話にならない!ってわけで、行ってきまーす。」
 レニはチャップの言葉を思い切り遮り、言うことだけ言うとあっという間に外へ出て行ってしまった。


「んじゃ、チャップ君。仕事しましょうか。」
 レニを見送るチャップの方にぽんとクロラの手が乗せられる。
 チャップは深々とため息をつきながらうなずいた。

平行世界の315 -4-

2010-03-19 09:52:22 | 便利屋サイコ
「ちょいと、お二人さん。いい話があるんだけど。」


 二人がいる応接間の入り口のほうから不意に声がした。
 二人の口癖に返事が返ってきたことに両方とも驚きを隠せないようだ。
 レニは目線を入り口に固定したまま、かちりとゲーム機の電源を落とす。
 
 
 そしてゆらりと部屋に現れたのは、ピンク髪の少女。
 大手電気機器会社「フロラフリミア」社長令嬢クロラ・フリミアである。
 しかし服装はお嬢様らしからぬラフな出で立ち。
 シャツにパーカー、ショートパンツとエネルギッシュな格好である。


「お、おじょーさんじゃないか!」
 クロラとレニたちが数年前の依頼で知り合って以来、彼女はちょくちょくこの店に遊びに来ている。
 しかし専ら“遊び”に来るだけであって、“仕事”を持ってくることはなかった。


 今までは。


「実はね、お二人に耳寄りな情報があるの。」
 彼女は微笑を湛えながら言った。
 ちなみに普段の彼女はこんなしゃべり方ではない。
 しかし、欲に目が眩んで少年二人はこの変化に気づくことはなかった。


「君たち、最近音楽がブームになりつつあるって言うのは知ってる?」
 クロラが聞いたことに二人はぶるぶると首を振る。
 残念ながら、この便利屋サイコという店の店員の中で、流行に敏感な男はいない。


「そう・・・。まぁ、知らなくても問題ない。その音楽ブーム世界的なものになりそうなの。」
 変なしゃべり方のまま言うお嬢様の言葉に、こくこくとうなずく二人。
なんだか彼ら二人はこのまま彼女に洗脳されていきそうな気がする。
 このまま彼女の魔の手にまんまとはまってしまう気がする。
 しかし、二人は欲に輝く瞳でお嬢の声をうなずきながら聞くだけであった。


「・・・つまりここで音楽関連の店をやっておけば、いざここら一帯にブームが来たとき真っ先に儲けることができるってわけよ。」
 儲けると聞いたところでレニの瞳の輝きは増した。
 チャップの目は細いのでいまいち輝きはよくわからないが、周りの空気がきらきらしている。
 二人ともかなり乗り気になってきているのは、はっきりと見て取れた


 しかし、情報は仕入れられたものの、音楽関連の店などどうやればいいのか二人にはわからない。
「音楽関連の店って何やるの?レニ。」
「そりゃぁ、楽器のひき方や歌を教えるとか、CDショップとか、楽器売るとか・・・でしょ?」
 目線を宙にさまよわせながら自信無さげに答えるレニ。


「でも、君たち。楽器弾けるの?歌うまいの?CDや楽器はどこから取り寄せるの?わかる?」
 クロラから質問攻めにされ、レニの視線は、よりあらぬ方向をさまようようになった。


「ここからが商談です。」
 クロラが不意にまた口調を変えた。
 急に改まった話し方になったので、レニやチャップも思わず畏まる。


「はい、なんでございましょ?」
 若干敬語の使い方がおかしいが、クロラはそこには触れない。
「このビルの1階は空いていますね?」
 彼女の質問に二人はこくりとうなずく。


 1階は来た当初から物置のようになっており、片づけが面倒だったため、引っ越してきたときのまま、ほったらかしにしていた。
 比較的物が少なくさっぱりしていた2階を店、残る3,4階を住居として使っている。
 1階にはシャッターもついており、本来ならそこが店となるべきなのだろうが、ずっとシャッターは閉じられたまま。
 それでこのビルの寂れた感じをさらに浮き上がらせていた。

平行世界の315 -3-

2010-03-18 12:37:52 | 便利屋サイコ
 時は遡り、7月の中旬。
 緑学校は夏休みに入ろうかとしているときだった。


「おっしゃ、ボス倒したっ!!勇者レニレベル40打倒魔王!」
 ただいま人気ゲーム機“GF”に夢中になっているのは、緑高校1年生、レニアス・クレバット君だ。
 みんなからはレニという愛称で呼ばれており、校内での認知度は意外と高い。
 というのも、彼は商店街の一角にあるこの小さなビルで「便利屋サイコ」という多少胡散臭い店を経営しているからである。
 これでも彼は、この店の自称社長(正しく言うと社長ではなく店長である)。


 元はホームレスチルドレン、家無き子だったのだが、緑学校の理科教師、クレヴァー・アルステッドというおっさんに助けられ、この古ビルを住処として提供されたのだ。
 そのクレヴァーの紹介は後々するとしよう。


「レェーニィー!!」
 そしてレニがいすに座りなおしたときだった。
 不意に店の玄関から、彼の名を呼ぶ声が。
 どたどたという走る音がし、レニがうるさそうに目を向けた先に、なんともいえないような生き物が立っていた。
 それは服を着て二足歩行をしている小学生サイズの猫といった見た目である。
 頭に生えているであろう耳を隠すかのように被った、ふわふわのニット帽が特徴的だ。
 ただ、今の季節それは大変に暑苦しいのだが。


「レニー!!」
 そして猫的な彼はゲームへと視線を戻したレニの傍により、レニが陣取っている事務用デスク(拾い物)を思い切りたたいた。
 べごんという音がし、たたいたところが思い切り凹む。
 何たる怪力であろうか。


「うわっ!いきなり何すんだよチャップ!」
 そう、その猫的な彼の名前はチャップという。
 レニのパートナーであり、この店の従業員1号だ。
「ぎゃー!シーフ、アレスタレベル38が死んだじゃないか!!」
 そして机の事を怒るかと思いきや、レニは机をまったく無視である。
 ゲームに視線を戻した彼は、ひとりでぎゃーぎゃー言いながらボタンを連打。


 チャップはと言うとレニの態度なんてお構いなしにしゃべる。
 ちなみに彼も机に関してはまったく無視である。
 机を作った人のことも考えてあげてほしいもんである。


「もー!レニ!普通仕事の報酬はお金でしょ?!マネーだよ!マニー!何で今度の報酬はゲームなの?!こないだは大量の古本だったし、いつだったかは置く場所がないくらいでかいソファーだったじゃないか!!」
「んだよ!ソファーはいい値で売れたじゃんか!いちいち過去のことを穿り返すんじゃない!」


 この店に入ってくる仕事といえばたいてい胡散臭いもので、報酬もお金とは限らない。
 店自体胡散臭いので、胡散臭い仕事しか入ってこないことについては若干致し方ないのだが。
 しかし、お金が入ってこないとなると、彼らの生活は厳しい。
 報酬が微妙なせいで彼らはかなりの貧乏であった。


「まったく!僕が暑い中必死にビラ配りしてきたっていうのに!!」
「んな帽子被ってるから暑いんでしょーが、脱げ脱げ。」
 レニはゲームに目線を固定したまま、チャップのほうを見向きもしない。


 しかし少し間を空けて言ったこの言葉だけは二人ともばっちりとシンクロした。
「あ~あ、なんかいい儲け話ないかなー!!」
 やはり考えていることは同じである。
 たいてい二人はいつも口癖のようにそう言っていた。
 ただ、言ったところでどうにもならない。


 しかしその日だけは違った。

平行世界の315 -2-

2010-03-17 09:59:19 | 便利屋サイコ
 秋の夕暮れ。
 広い運動場や、そこにある遊具が夕日を受け赤く染まっている。
 そろそろ冷えてきたこともあり、その部屋は冬支度が進みつつあった。
 

 その部屋というのは校内にあるとある一室。
 しかし、その内装は学校の一部とはとても思えないようなものだった。
 布団山積の大きなベッドやバスルーム、ニュース番組がついた大画面のテレビに、ウォシュレットのついたトイレ。
 学校ではありえない設備、まるでホテルの一室のようだ。


 そしてベッドの上の、冬への備えなのだろうか、山と積まれた布団の上には、なんともいえない奇妙な生き物が楽しそうに跳ねていた。
 その生き物は実在する生き物のどれとも似ておらず、大変説明しにくいのだが、どうにか説明すると、緑色の巨大なスライム、といったところだろうか。


 全身緑で、まん丸。
 ポヨポヨしていて、プルプルもしていて、小さければ可愛げがあるだろうが、バランスボールくらい巨大なので、逆に気持ち悪い。
 そしてその緑の表面には、ちびっ子の落書きのような顔がついていた。


 さっきから楽しそうに布団の上を跳ね回っているそいつ。
 その後ろには、そいつが着るのだろうか、袖のないスーツのジャケットのような服がかけてあった。


 よく見るとそのスーツには名札のようなものが付いている。
 きっとその名札はこの緑の物体の名前が書いてあるに違いない。
 さっそくそれを読んでみる。
 

 「緑 ポヨ」と書かれていた。
 見たままの名前である。


 これだけでも驚きだが、名札にはさらに驚くべきことが書かれていた。


「緑学校校長」。
 ただただ驚きである。


 このなんのひねりもない緑学校という名前。
 周りが自然に囲まれ緑がいっぱいだからこのような学校名なのか、そう思い始めていた矢先のことだった。
 結局校長の名前からきとんのか!!と、つい突っ込んでしまいたくなる。
 だが、今、そんな突っ込みは胸のポケットにしまっておくことにしよう。


 今度は布団の上で転がりながら、適当にテレビのリモコンを何か特殊能力らしからぬものでいじっていたポヨ。
 (ポヨという生き物は手足がない代わりに何か別の便利な能力が使えるようである)
 彼(?)たぶん彼女ではないと思う)はニュース番組くらいしか今の時間帯はしていないと知ると、ニュースをつけっぱなしにして、床に落ちていた紙を、自分の目の前へと引き寄せた・・・不可思議な力で。


 ポヨはその紙をじっと見つめ始める。
 その紙にはどうやら学校の年間行事予定が書かれているようだ。
 しばらく紙を見つめた後、ポヨは眉間(と思われる場所)にしわを寄せ、なにやらぶつぶつ言い始める。


「・・・やっぱもっとイベントがほしいな~。文化祭、体育祭に匹敵するくらい大きなイベント・・・。みんなが合同でできるような、楽しいイベント。・・・海でも空でも地中でも共通の何か・・・。」
 このポヨの呟きから推測するに、どうやらポヨは学校の新たな行事を考えているらしい。
 しかもかなり規模が大きいもののようだ。


 ここらの学校の文化祭、体育祭といえば、この街はもちろん、他の街も巻き込んで大変な騒ぎになる。
 というのも、この陸都市「デジスト」と姉妹都市のような感じで、海底、地中、空中にもそれぞれ街があり、そこと合同で学校の「祭り」をやるのだ。
 そうともなれば、ここら一体、地上も地中も海も空も祭り一色。
 特にこのデジストは大変な賑わいに包まれる。


「続いてのニュースです。」
 まだ続いていたポヨの呟きが不意に止まり、テレビがついていたのを思い出したように、視線がテレビ画面へと向けられる。


「今世界的な音楽ブームの煽りを受け、このデジストでも急激に、路上でバンドの演奏を行う若者たちが増えてきています。楽器店などでも・・・見てください!長蛇の列ができています!」
 少し興奮気味に話すアナウンサー。
 画面には、デジストのとある楽器店に並ぶたくさんの人たちが映し出されている。
 その画面に時折どこかで見たような金髪の少年や、猫のような男の子、メイドのようなロボットが映し出されていたが、ポヨはその画面を見ているようで、もう見てはいなかった。


 ポヨはテレビに視線を向けたまま、何かをひらめいたような笑みを浮かべている。
「音楽祭だ!!」
 不意にポヨは叫んだ。


「確かバンドを部活としてやってる生徒もいたし、僕もバンド作ってるし・・・。それにこれならどこでやっても大丈夫だし、みんな楽しめる!・・・うん、いけるっ!!」
 ポヨは目を見張るほどの早口でそう言うと、壁にかかっていたスーツを目にも留まらぬスピードで着込み(着るというより、はまるという感じだったが)部屋を飛び出していった。

平行世界の315

2010-03-16 22:12:55 | 便利屋サイコ
 ここはどこかの世界のとある街。
 
 
 街の名前は「デジタルストリート」。
 略して“デジスト”と呼ばれている。
 本来はもっと違った名前だったそうだが、いまやこの街の本当の名を知る者はいない。
 

 デジタルというだけあり、街には空を飛ぶバイクやスケボー、車などが飛び交い、近代的な高層ビルが立ち並んでいる。
 しかしそれは街の西半分だけのことだ。
 

 残る東半分はというと、“山”というか“自然”といった感じである。
 山のほかには田んぼや畑、それらの隙間に小さな民家が寄せ集まるようにして建てられている。
 

 そしてこの街の真ん中には巨大な商店街が通っており、そこを境に近代都市と田舎がひとつの街に同居しているという、かなり変わった場所だ。
 

 そしてこの街の変わったところといえばもう一つある。
 それは山の前に建つ巨大な建物。
 

 その名は“緑学校”。
 そう、名前の通り学校である。
 


 山と同じくらいある、とんでもない大きさのその建物は小、中、高、大学一貫校。
 山3つ分ほどもある広大な敷地を有している。
 学校と名のつくものはその敷地内にすべてそろっているといっても過言ではない。
 というよりか、街には小さな学習塾などはあるものの、学校はこれ一つしかないのだ。
 つまりこのデジストという街に住む子供たちは、休日以外毎日この学校に大集合するわけである。
 

 そして学校がひとまとめにされているとなると、メリットも多々あるが、デメリットも数多く存在した。
 そのうち一番多い問題というのが通学に関することである。
 家と学校を毎日往復するなんて無理だ、家が学校から遠すぎる、というような人も出てきた。
 

 そこで!
 そのような子供たちのために寮ができたのだ!
 さらに学校の援助で都会のマンションでも一人暮らしができてしまう!
 

 どこに住んでも、何を学んでも、将来職に就ければOKというのが学校の方針。
 もう自由なのだ!
 

 「好きなことを学んで、好きな仕事に就いちゃいな!」という「合言葉」を元に、緑学校の学生たちは夢に向かってがんばる。
 はっきりとした夢のない生徒もとりあえずがんばる。
 たまに不良になったりもする。
 たまにとても貴重な経験もする。
 たまに人間以外の生き物にも遭遇する。
 

 そんな楽しい学校が舞台!


 この学校でも今の世間の流れを受け、音楽ブームが到来しようとしていた・・・。

便利屋サイコ - 3-6 -

2010-02-24 17:09:36 | 便利屋サイコ
 がんばれ僕の足!
 家に帰ったら奮発してシップを買ってあげるから!
 貧乏な僕らはなかなか薬やシップなんてものは買わないけど今度ばかりは何かがんばれるものがないと足が動いてくれそうにない。
 

 そして何とか走っているときに不意に分かれ道がやってきた。
 僕は普段右か左か迷えば右と決めていたので、本能的に右へと曲がる。
 

 しかしチャップとアレスタは違っていた。
 二人は少し迷ったように立ち止まっていたが左に曲がったのだ!
 

 足を止め振り返ったときはアレスタとチャップは僕らが後ろをついてきているものと信じているようでどんどんと走っていき、声を出そうとした瞬間、僕らが走ってきた道から魔導人たちがやってくるのが見えた。
 つまり僕は、一緒に右へと曲がったエネリア、メイとともに、右の道を走るほかなかった。


 後ろからは変わらない足音。
 そう足音の量が変わっていないのだ。
 つまり、後ろを追いかけてきていた2体が2体とも僕らを追いかけてきている!


 チャップとアレスタは体力もあるし、足も早いからあきらめてこちらに来たのか?
 僕はもういっそ立ち止まってしまおうかという気持ちを払い、走り続けた。
 最初から能力を使って飛ぶように移動していれば疲れることはなかったのに、といまさらのように思い、後悔する。


 家に帰ったら少しは外に出て走るようにしよう。
 僕は荒い呼吸をしながらそう思った。


 そして、僕が前を見据えると、再び何か人影があることに気づく。
 その人影はどこかの部屋のから出てきたのか、横を向いていて、顔がよく見えない。
 しかし、その影がフェイクやおっちゃんたちではないことは確かだった。
 近づくにつれその人影の詳細が見えてくる。


 その人影は真っ黒なスーツに身を包んだ女性だ!
 そしてその人は異常なものを身に着けているのが次第に明らかになっていった。
 彼女は肩に大型銃を担ぎ、肩に大量の銃の弾をたすきがけしている。
 腰のベルトにも銃が取り付けられているのが確認できた。


 そして彼女はゆっくりと前に踏み出し、不意にくるりとこちらを向く。
 僕らはあわてて足に急ブレーキをかける。
 彼女は暗めの青い目で僕らを見つめ、目の前に立ちふさがった。


 そしてメイを指差し女は言う。
「その子以外に用はない。後は壊せ。」
 

 それが後ろに迫っていた魔導人に向けて言った言葉なのだと理解するのに僕は少し時間がかかった。

便利屋サイコ - 3-5 -

2010-02-23 21:44:59 | 便利屋サイコ
 なぜか僕を先頭に置き、僕らは部屋を出た。
 とりあえず左右を見渡してみる。


 相変わらずぼろぼろの廊下の先には特に人影はない。


「あ!」
 そこへチャップが小さく声を上げた。


 チャップを見ると、チャップが廊下の先を指差している。
 そこにはさっきまで何もいなかったはずなのに、人影があった。


 だが、その人影はおっちゃんでも兄ちゃんでも、ましてやフェイクでもない。
 きっとアレはフェイクが言っていた魔導人だろう。
 

 でもその影と僕らからは結構距離があった。
 すぐに物音を立てないように移動すれば気づかれないだろう。
 

 こう考え僕は慎重に一歩足を踏み出した。
 しかしそのとき、なんと廊下の板が盛大に軋んだのだ!!
「わ!」
 思わず声を出してしまう僕。
 

 後ろを振り返るとこちらを指差す人影が見える。
 

 気づかれた!


「走れ!」
 後ろにいたアレスタがそう号令をかけ、僕らは火がついたように走り出した。


                     :


 僕はめちゃくちゃに傷んでいる廊下をこけないように無我夢中で走った。
 左右はほとんど石壁、ときおり部屋の破れてぼろぼろのふすまが見える。
 後ろからはガチャガチャという、金属がぶつかり合うような音を響かせながら、何かが追ってきていた。
 振り返る余裕はなく、しっかりとは確認できないが、きっと魔導人だ。


 そして代わり映えのしない廊下を進んでいくと前方に壁が見えた。
 分かれ道だ!
 僕はどちらに曲がろうか悩み始めたそのとき、後ろからどしゃっという音が。


 走る足を少し緩め、まさかと思って振り返るとそこには盛大に煙を撒き散らし倒れているチャップの姿、そして走ってくる魔導人の姿をはっきりと確認できた。
 魔導人は2体。
 男の型のものと女の型のもの。
 手にはそれぞれ金属の棒のようなものを握っている。


 僕は舌打ちをしてチャップを能力で持ち上げた。
 走って体力を使っているのに、そこに能力の負担までかかったもので僕はへたり込んでしまいそうだ。
 でもそこを何とか耐える。
 

 そしてチャップが自分の足で立てそうなことを確認して、チャップをゆっくりと下に下ろすと、今度は手を魔導人へと向けた。
「そりゃああぁぁ!!」
 そして僕は気合をこめ、魔導人を廊下の端まで吹っ飛ばす。
 でも体力の消耗からか思うような力が出ず、魔導人を壊すにはパワー不足だった。


「今のうちに早く!」
 でも能力のおかげで魔導人と距離はかなりかせぐことができた。
 僕はみんなに声をかけ、再び走り始める。


 今度は走る順番なんて関係ない。
 アレスタが先に行ったりチャップが先に行ったり、とごちゃごちゃに固まって走った。
 後ろからはまだ魔導人の追いかけてくる足音がする。


 というかさっきよりも音のする間隔が短くなった気がした。
 もしかして、やつらペースを上げたのか?
 僕の気持ちはどんどんあせり、動悸が早くなる。
 その分息も乱れて体力の消耗も激しくなるし、スピードも落ちる。


 獣人族のチャップ、そしてそれと人間のハーフであるアレスタは、体力的にまったく問題がないようで、どんどん先に進んでいくが、普段運動しない僕や、女の子のメイはスピードが落ちていった。
 そんな僕ら二人を気遣いエネリアは少しスピードを落として僕らの横に並ぶ。


「大丈夫ですか?よければ私がお二人を担いで走ってもいいのですが・・・?」
 僕はそのエネリアの提案にはものすごい勢いで首を振った。
 そんな恥ずかしい姿をチャップやアレスタに見られてはたまらない。


 これでも僕はサイコの社長だ。
 もっとしっかりしないと!


 僕は気を持ち直し、自分の足を励ました。

便利屋サイコ - 3-4 -

2010-02-22 22:43:23 | 便利屋サイコ
 これまでのあらすじ

 レニたち一行はクレヴァーたちの職員旅行で宿泊する予定の旅館の下見に連れて行ってもらえることとなった。
 しかし、旅館は荒れ放題、現れた女将らしき人もまったく話を聞こうとしない。
 部屋に案内されたものの、不信な場所が多々あり、まずクレヴァーとジーニアの二人が女将に話を聞きに部屋の外へと出て行ったが、二人はいくら待っても帰ってこなかった。


「・・・帰って・・・こない。」
 アレスタがつぶやいた。


 二人が出て行ってもう1時間が経とうとしている。
「どうしたんでしょうか・・・?」
 エネリアも不安そうな表情を作っている。
 

 僕は大きくため息をついた。
 言いようのない不安がのしかかってくる。
 みんながうつむき、チャップなんか涙ぐんでいた。


「おい、オメーら!」
 すると不意に部屋の中に大声が響いた。
 顔を上げると部屋の中心にフェイクの姿が。


「ったく、めそめそしてんじゃねーよ。」
 そういえばこの部屋にはさっきまでフェイクの姿がなかった。
 コイツは今まで一体どこにいたんだろう?


「よく聞け、お前ら。」
 そしてフェイクはいつになく真剣な顔で話し始めた。
 部屋にいる全員がフェイクの顔を見つめる。


「俺たちはここに・・・閉じ込められた。」


「・・・閉じ込められたぁ?!それってどういうことさ?!」
 少し間を開け、フェイクの行った言葉をよく考えてみた上で僕はフェイクに食って掛かった。


「おいおい、俺に言われたって知らねぇよ!ただどういうわけか、宿の外に出られねぇんだ。外に出たと思ったら建物中に強制的に瞬間移動させられてる。きっとワープ装置かなんかを使ってるんだろうな。」
 フェイクは僕を突き飛ばすと腕を組んでそう言った。


「じゃぁ、僕らはどうなるの・・・?」
 チャップはすでに泣き出す寸前、震える声でフェイクに言った。


「知らねぇって。とにかく、ワープさせる機械かなんかをぶっ壊すほかねーわな。それと同時におっちゃんと兄貴の捜索もしなくちゃなんねぇ。」
 フェイクはそう言うと僕らを見渡した。
「メイとエネリア、アレスタはともかく、おめぇら二人はどうしたもんか。」
 そしてめんどくさそうな目で僕とチャップを見る。


「実はな、いまこの建物内にはどういうわけか、魔導人だらけだ。この部屋はどうやら安全地帯みたいだが、外に出て魔導人に見つかればどうなるか予測できねー。ここは慎重に行動しねーと。」


 ここでフェイクは言葉を切りしばらく僕らの間に沈黙が下りた。
 全員口をつぐんだままだ。


 が、しばらくして再びフェイクが口を開いた。
「よし、まずは俺が先に建物内をもう一度捜索してくることにしよう。そんで10分経っても戻ってこねぇようなら、お前らが動くしかねぇ。」
 フェイクはそう言うが早いか、僕らの話も聞かずに天井の隙間へと入って行ってしまった。
 メイが立ち上がり、止めようと声を上げたが、もうその声は届かなかったようだ。
 僕らは再び、何も言わず待つことになった。


                   :


「10分・・・経ちました。」
 不意にエネリアがそう言ったので僕は顔を上げた。


 どうやらエネリアはさっきフェイクが出て行ってから今まで時間を計り続けていたらしい。
「つまり・・・?」


「私たちが動かなければならないということです。」
 僕が言うとエネリアは意を決したように立ち上がった。


「え、本当に僕らが行かないといけない?」
 僕はできるだけこの場を動きたくなかった。
 もしかしたらフェイクやおっちゃんたちが帰ってくるかもしれない。


 そして何より危険な場に行くのがいやだった。
「皆さんが行かないというのなら私だけでも行きます。」
 エネリアはそう言うと、部屋の出口のふすまへと向かっていく。


「待って!・・・私は、行く。」
 するとそれまで黙っていたメイが声を上げた。
「それなら俺も行くよ!」
「じゃ、じゃぁ、僕も!」
 するとアレスタや、さっきまでめそめそしていたチャップまでもそう言い立ち上がった。


「レニはどうするの?ここで、待つ?」
 みんなふすまへ向かって行く中メイが僕の方を振り返る。


「も、もちろん、行くよ!」
 危険な場に突っ込んでいくよりも、知らぬ場所に一人の方が僕はいやだった。

便利屋サイコキャライラスト紹介

2009-12-16 14:41:09 | 便利屋サイコ
 というわけで、このブログでは今まで一人づつ紹介していましたが書くほうも見るほうも面倒なので、一つにまとめます!
 
 ちまちま更新していくのでちょこちょこ見てってください。

・レニアス・クレバット
 通称レニ。
 この話の主人公であり、店の社長(実質的には店長)。
 社長といっているくせにあまり仕事をしない。
 チャップがパートナー。
 物を手を触れずに動かしたり、瞬間移動したり、テレパシーを送れたりとエスパーで実用的な能力を持つ。
 実用的能力”者”のため戦闘ではあまり役に立たない。
 まぁ戦闘自体しませんがね。



・チャップ
 レニのパートナーであり便利屋の従業員1号。
 従業員1号という割には普段は留守番、または機械いじりばかりしている。
 手先は器用だがかなりどんくさい。
 獣人族と呼ばれる種族で、力は人一倍あるが普段はへろへろである。
 聴覚や嗅覚、視力は人間と比べとてもよく、体力もあるがへろへろである(大事なことなので二度、言い・・・いや、書きましたよ)。
 彼の能力は今のところ本人も含めわかっていない(要するに作者が出し惜しみしているわけではない)。



・黒上 冥(クロガミ メイ)
 サイコの従業員。
 どういう経緯で従業員となったかは今のところ不明(これは出し惜しみである。といっても何も考えていないのがほんとのところ)。
 能力は自分が触れているものの形を変える力。
 ちょっとアレな仕事担当(ちょっとアレな仕事については1話を見てください)。 



・フェイク・フラッド
 メイのパートナーであり、すでにこの世の方ではない(たぶん)。
 名前も偽名ではないかとレニに疑われている。
 ふざけた性格だが、便利屋内で一番長く生き・・・や、死んでるのかこいつ。
 まぁとにかく、一番年上だと思われる。
 そのためそれなりに知識はあるが世間のはやりなんかには疎い。
 というか店のメンバーはほぼ全員流行には疎い。
 メイと一緒の仕事を担当し、給料ももらっているくせに、従業員ではないと言い張る。
 レニとはあまり仲はよろしくないがそんなに悪いわけでもない。



・アレスタ・クエイク
 店の従業員で、この見た目のせいかパートナーがいない。
 彼は獣人族と人間のハーフで、奇妙な色合いのカバーのようなもので手足を隠している。
 隠しているカバーも十分大変な見た目だが、外したら外したらでもっと大変らしい。
 いつもは町でチラシ配りをしつつ、パートナー探しをしている。



・クロラ・フリミア
 フロラフリミアという大会社社長の娘。
 何者かに誘拐されたときレニやチャップたちに助けられ知り合う(1話参照のこと)。
 知り合った以降はよく店に遊びに来るようになりレニ達の世間の情報収集源。
 生命力を操るという力を持つ。
 


・エネリア
 フロラフリミア社製の高級メイド型ロボット。
 レニたちがクロラを救出した例の仕事の報酬の一つとしてもらった。
 かなりの高性能で、家事に特化しており、モンスターを退治することもできる。
 見た目より性能を優先しているため、ロボット特有の線が顔に見える。
 まだ知られていない機能も多く、どのような力を使えるのかはあまりわかっていない。
 普段は店ではなく別の場所で働いていることが多い。




・クレヴァー・アルステッド
 ホームレス状態だったレニとチャップに便利屋サイコとなる古ビルを無償で貸してくれている、親切なおっさん。
 無駄に声が大きく、大雑把な性格。
 いつも茶色いくたびれたコートを着ており、髪もボサボサ。
 見た目には関心がない。
 能力は今のところ不明。

 

・ジーニア・クレス
 クレヴァーのパートナー。
 レニやチャップからは兄ちゃんと呼ばれている。
 能力ははっきりとはわかっていないが、今までにちらりとは出てきている。
 クレヴァーと違い身だしなみにもそれなりに気を使っている。
 普段はクールに場を見守るが、ひとたび怒るとたいそう怖い。


便利屋サイコ - 3-3 -

2009-12-16 14:21:23 | 便利屋サイコ
・・・3話のこれまでのあらすじ・・・

 便利屋サイコの店員、そしてクレヴァーとジーニアで、主人公レニは温泉旅館へ旅行に出かけることになった・・・。
 
 ・・・3話のこれまでの話をまとめるとそれだけです。
 それでは本編どうぞ。

                  :

「それでは、明日この時間にっ。」
 バスの運転手の若いお兄さんは逃げるようにすでに乗客のいない空バスに乗り込むと、あっという間にオレンジがかった空のかなたへ消えてしまった。
 

 そして僕は目の前にそびえる古びた家屋に言葉をなくす。
 その日本家屋は傾いた木製、今にも崩れそうな門の前には傷んだ看板。
 

 その看板には「宿 極楽」と書かれていた。
 見るからに極楽ではなさそうである。
 どう見ても何か出そうである。
 

 言葉をなくし立ちすくむ僕らを置き、ただ一人・・・いや二人、おっちゃんとフェイクだけが楽しそうだ。
「おぉ、これはすごいとこだな!ま、んなことより湯だ!」
「ここは居心地よさそうだな!」
 二人はずかずかと門をくぐり敷地内へ入っていく。
 

 僕はまったく気が乗らないが帰る方法はない。
 僕らは仕方なく二人の後を追った。

 
                  :


 宿の玄関らしき場所に着いた僕ら。
 だが、そこには誰もいない。
 大体がどこもかしこもどういうわけかぼろぼろだ。
 フェイクは相変わらずだったが、さすがにおっちゃんは不安そうな表情を浮かべる。


 玄関は開いており中も見えるがそこもぼろぼろ。
 床が抜けたりふすまに大穴が開いていたり。


「こ、これは何かあったんじゃないのか?警察にでも連絡・・・」
「いらっしゃいまし。」
 ジーニアの兄ちゃんが携帯を取り出したとき、不意に声がした。


 見るといつの間にか建物の中に着物を着た女の人が立っている。
 その人は黒髪をお団子のように後ろにまとめており、テレビで見た旅館の女将さんのような見た目。
 きっと女将さんだろうとは思うけれど、赤を基調とした着物に、真っ白な肌、動かない表情。
 なんだかとても不気味だ。


「あ、あの、これは・・・」
「クレヴァー様ご一行ですね。お部屋を用意しております。どうぞこちらへ。」
「いえ、あの・・・!」
 おっちゃんが話しかけるもすべて無視。
 女性はさっさと廊下を進んでいく。


「どうするの?」
 僕が聞いたが、みんな不安そうな顔を浮かべるばかり。


「おい、なにやってんだ、早く行こーぜ~。」
 フェイクただ一人元気だ。
 僕はとりあえず女将さんらしき女性の後を追った。


                  :


 案内された部屋は他のぼろぼろの部屋と比べるとずっときれいだった。
 障子やふすまはしっかりとあったし、床だって抜けてないし、畳だってきれいな黄緑色。


 そして案内を終えた女性は一礼すると相変わらずこちらからの声は無視し、去っていってしまった。


「お、おい!何だここ?!何でこんなぼろぼろなんだ?それにさっきの人だって話聞かねーし!」
 アレスタがたたみの上に胡坐をかき、ドンと机をたたいた。


 机の上には置いてあると思っていた茶菓子の姿はない。
 ・・・お持ち帰りしようと思ってたのに。
 部屋奥の窓はどういうわけか既にカーテンが閉められている。
 でも外の様子からしてきっと外を見たところでいい光景は広がっていないだろう。


「ま、アレスタ、落ち着いてくれ。とりあえずは俺とクレヴァーでこの中を見てくる。それからさっきの女将らしき人にも話しを聞く。ま、この様子じゃ旅行は中止だな。もう帰るつもりでいてくれ。話しを聞いたらタクシーか何か呼ぶことにするから。」
 兄ちゃんが言った。


 おっちゃんは大きくため息をつきさも残念そう。
「あぁ、今日は温泉でゆっくりするつもりだったのになぁ・・・。まさか宿が崩壊寸前なんてことになってるとは・・・。」
 よっこらせとおっちゃんが立ち上がる。


「それじゃ、行ってくるから、しばらくここで待ってるんだ。」
 そして兄ちゃんとおっちゃんの二人は部屋を出て行った。

便利屋サイコ - 3-2 -

2009-11-22 11:55:24 | 便利屋サイコ
 翌日時間通り迎えに来たおっちゃんたちに連れられ、僕らは空バスに乗り町を後にした。
 空バスというのは青空観光というお利口な名前の観光会社が営業しているバス。
 青空というだけあり、晴れ渡る青空の下そのバスは結構高いところを飛んでいた。


 いやぁでも町の上空にびりびりしたバリアみたいなものが張ってあるなんて知らなかったなぁ。
 そのバリアで空からモンスターが町に侵入をすることを防いでいるらしい。
 この空バスは専用の空路を通り、ちゃんと空の乗り物用に開放されているホールを通って町の外に出たんだ。


「うぉぉ!すげえよ、レニ!下見てみろよ!全部緑だぜ!!」
 アレスタが窓を開けてはるか下の地上を覗き込んでいる。
 僕も窓を開け下を見るといっぱいの緑が見えた。
 どうやらこれが本物の森らしい。


 僕らの町で自然といえば人口山くらいしかなかったからな。
 山以外は全部機械ばっかり。
 でも一歩町を出れば自然のままの森が広がっているんだ。


「おい、こら!窓閉めやがれ!風入ってくるだろが!!」
 バスの後ろから怒鳴り声が響いた。
 振り返るとバスの後部座席に風で貼り付けにされているフェイクの姿が。


「うるさい!文句言うな!連れて来てやってんだから!!」
 僕は怒鳴り返す。
 本当はフェイクなんて連れて行きたくなかった。
 何が楽しくて幽霊なんかと一緒に温泉に行かないといけないんだよ!
 大体幽霊が温泉に浸かれんの?
 こいつはあんま連れてきたくなかったんだけどな。


 そうだ、温泉に浸かれないといえばエネリアだ。
 エネリアは機械だから水に使ったらさすがに高性能でも何か支障をきたすだろう。
 それでもエネリアはまだ町の外を見たことがないし、たまには違うところに行くのもいいだろうということで連れてきた。


 そういえばメイはどうしてるんだろう?
 僕は少し腰を浮かした。
 メイは前のほうの席に座って窓の外を見ていた。
 そういえばメイって外出とか遠出することが多いけど、乗り物酔いしやすかったっけ。
 一応薬を飲んでるけどまだ効いていないみたいだ。
 口元を手で押さえているのが見えた。


「おし、みんなちゃんと全員いるな?」
 しばらくすると運転手さんと一緒に車の前方を見ていたおっちゃんと兄ちゃんが運転席から帰ってきた。


 さっき兄ちゃんから聞いたけど町を出て少し離れたところが一番モンスターに襲われやすいいらしい。
 人間を襲おうとする習性があって、町には近づかないけど、街から出てくる人々を襲おうと待ち構えているんだとか。
 おっちゃんたち二人が出てきたところを見るとどうやら一番危険な場所は抜けたようだ。


 ちなみに万が一モンスターに襲われると。まずバスに設置された防衛機器が働いて、バリアが張られるらしい。
 ほかにもさまざまな武器を搭載していて、モンスターに襲われたとしてもまずバスを壊されることはないんだとか。


「ここから宿のある町までは結構ある。しばらく休んでおくといい。」
 兄ちゃんはそう言うとおっちゃんと並んで前のほうの席に座る。


 僕は慣れない早起きで眠気がひどかったので、窓を閉めて仮眠をとることにした。

便利屋サイコ - 3-1 -

2009-11-21 21:47:20 | 便利屋サイコ
「お~い、レニ、いるかぁ~?」
 僕がいつものようにチャップと二人で店番をしていると店の外から聞きなれたばかでかい声がした。


 そして返事も待たずずかずかと入り込んできた人物はクレヴァーのおっちゃんとジーニアの兄ちゃん。
 また暇を見つけて遊びに来たのかと僕はいやな顔をした。


 おっちゃんことクレヴァー・アルステッドはホームレス生活をわびしく送っていた僕とチャップにこの便利屋という住まいを提供してくれた神様のような人だ。
 さらに生活費もいくらか負担してくれている。
 でも、仕事はめったに持ってきてくれず、来たとしてもだいたい仕事の邪魔をするだけだ。
 僕としてはいくら感謝しても足りないような人ではあれど、あまり来てほしいと思う人でもなかった。


 ちなみにそのおっちゃんの後ろについてきた兄ちゃんことジーニア・クレスはおっちゃんのパートナーだ。
 おっちゃんよりもずっとしっかりしていて、賢くて、頼りになる、ほんとにお兄ちゃんみたいな存在。


「なぁに?おっちゃん、なんか仕事でも持ってきてくれたの?」
 チャップが兄ちゃんに会えてうれしそうな顔をしながら無邪気に聞いた。
 ったくチャップはほんと仕事に興味ないよね。
 ひまでさえなければいいんだからさ。


「おぅ、今日はな、仕事じゃないんだが、いい話を持ってきたんだ。」
「いい話?!」
 僕は勢いよく立ち上がる。
 仕事じゃなくてもいい話は大歓迎だ。


「・・・すっかり態度が変わったな。」
 兄ちゃんがポツリとつぶやき、おっちゃんはガハガハと笑った。


「そうなんだ。実は俺たちの会社の職員旅行っつーのがあって、温泉に行くことになったんだよ。それで俺とジーニアがその旅行の実行委員みたいのに選ばれてな。明日宿の下見に行くことにしたんだ。」
「それで、よかったらお前たちも一緒にどうだ?職員旅行に一緒に連れて行くことはできないが、下見は俺とクレヴァーだけだからな。それならお前たちも連れて行ける。」
 その言葉に僕は息を呑んだ。


「そ、それって、僕らもしかして・・・タダで行けるの?」
「おぅよ。ちゃ~んとこっちが負担してやる!」


 僕はチャップと顔を見合わせた。
 もう僕は口角が上がって仕方ない。
 チャップも口が開いたままだ。
 僕ら二人は手をとりくるくる回り始めた。


「チャップ、温泉だって!」
「そうだよレニ~!僕ら行くの初めてじゃない?」
「ほんとだ!今まで温泉なんていったことないよ~!!」
 狂喜乱舞する僕らの横でおっちゃんはまたガハガハと笑った。
 兄ちゃんは苦笑いしてたけどね。


「そんじゃ、急かもしれないが明日の朝出発だ。ちゃんと店の仲間全員誘ってやれよ?」
「それから、実を言うと俺たちは宿の場所しか知らないんだ。会社の古くからの御用達らしいんだが、ここ十数年行ってなかったらしくてな。つぶれてはいないそうなんだが、資料もない。あまり俺は気乗りしてないんだが・・・」
「なに言ってんだ、ジーニア!天にも昇る心地の湯らしいじゃないか!いい宿に決まってるだろ?」
「そうか・・・?」


「まぁとにかく、明日の朝・・・そうだな、8時くらいに迎えに行くから、それまでに準備しておけよ!」
 おっちゃんはそういうと仕事がまだあるからといって兄ちゃんと二人帰っていった。


 1泊だけだけど、これはすごく思い出に残るだろう!
 僕らはいそいそと準備を始めた。
 確か今日はメイ(とフェイク)も仕事から帰ってくる日だ。
 これならみんなそろって温泉旅行にいけるだろう。
 なんて間がいいんだろうか!

サイコ設定資料

2009-11-12 17:26:55 | 便利屋サイコ
 さて、いつもキャラばかりでしたが、今回は店の外観と間取りを一部紹介したいと思います。

 某漫画にだいぶ影響を受けております。
 ちなみに絵のほうにモザイク的なものがかかってますが、それは某漫画の名前となってます。
 あからさまなのでわかる人にはどの漫画かわかるでしょう。
 できるだけ人のものはまねしたかないですが、その漫画も便乗ものだしね、便乗されてもいいじゃんみたいな。
 まぁ知らない人から見ればへぇ、そうなんだ、で終わるし。

 というわけで苦情は一切受け付けません。
 では、いってみよう!!



 はい、まだ一階のところに書いてあるコメントの意味がわからないでしょうが、そのうちわかるので今はほっといてください。
 ちなみに短編でレニが隔離されてたのは4階です。

 ま、パッとしない見た目ですな。



 某漫画の間取りをちょっとアレンジしたみたいなつくり。
 まぁ、その、ほんと苦情は受け付けませんよ。
 
 ちなみにアレスタはたいていソファで寝てます。
 メイは3階の布団。
 そしてレニとチャップは和室で。
 
 エネリアは休む必要は余りありませんが夜は活動停止して発電してます。
 フェイクの夜の様子は不明。
 まぁ幽霊ですからあいつは寝る必要ないでしょうね。
 
 そういえば余談ですが私ひらがなでそふぁって書いてあるのが可愛くてしゃーないんですよ。
 何でしょうか、この気持ち。
 なんでそふぁって書くとこんなにいい感じなんですか。
 わかります?
 え?わかんない?
 あなたという人がわからない?
 うっさいな、人の好みは人それぞれだよ、バーロー!
 というわけで共感できる方、コメントお待ちしています。

ショートサイコ2

2009-11-09 14:34:48 | 便利屋サイコ
「レニサン。おわん取りに来ました」
 エネリアがそう言うとおかゆと薬のからを載せた盆を手に取る。
「それではこれから私買い物にいってきますので。」
 そしてエネリアはお大事にと一言言うと静かに部屋から出て行った。
 

 そう、ボクは病気になってしまったのである。
 

 最近ニュースでもよく取り上げられ死者が出たりなんかもしているあの病気だ。
 どうしてこんな変な名前なんだろうと思ってしまうようなあの病気だ。
 そして隔離しないといけないようなあの病気だ。
 あえて名前は出さないが。
 

 どうやら新型のあの病気は下痢や嘔吐なんかの症状もあるらしいが僕は比較的軽いようでそういう症状はなかった。
 だけど食欲はあまりなく頭が痛いしのども痛いし、鼻水は止まらないし、くしゃみやせきは出るし、もう最悪だ。
 僕は無事この病気を治すことができるのだろうか。
 

 僕は布団の中にもぐりこみながら考えた。
 もし僕が死んだらどうなるのかな?
 今僕が店の社長だから次の社長は誰になるんだろう?
 

 チャップかな?
 いや、チャップは社長って器じゃないしな。
 チャップなんかに店を任せたら瞬く間に赤字になってつぶれちゃうだろう。
 

 それじゃぁメイ?
 でもメイは人と話すのが苦手だからなぁ。
 接客ができなきゃこの商売やってけないよ。
 

 じゃぁ接客ができるといえばアレスタ?
 でもあいつはすぐ情にほだされるからなぁ。
 依頼内容に怒って客を追い返したり、はたまた感動的な話だったら無償で依頼を引き受けかねない。
 

 じゃぁフェイク?
 いやいや、あいつ幽霊だし、風吹いたらすっ飛ぶし、論外論外。
 

 残るはエネリアか・・・。
 でもエネリアはまだここに来て日が浅いからなぁ。
 まだ知らないことも多いだろうし・・・。
 

 でも第1候補はエネリアだ。
 次期社長は彼女しかいない!
 

 そうして僕が寝返りをうったところだった。
 かたりと微妙に僕の隔離されている部屋のふすまが動いた。
 

 ここは普段使っていない4階を急遽掃除して作った部屋。
 ここに何か用があるヤツはいないはず。
 

 そう考えているとまたかたっとふすまが動き、少し隙間ができた。
 だがその隙間から相手の姿をうかがうことはまだできない。
 

 誰だろう?
 もしかして僕の知らない人物がどうにかしてここに進入してきたのだろうか?
 う、なんかそう考えるとちょっと怖いぞ。
 

 僕はじっとふすまを見つめた。
 また、かたりと動く。
 僕に用があるのだろうか?
 でも用があるなら声をかけるのが筋だろう。
 

 またもふすまが動く。
 でも相手の姿は見えない。
 僕はだんだんいらいらしてきた。
 用があるならさっさとしろよ!
 

 僕は体力が低下しているから少し気が引けたけど、布団から起き上がり能力を使って一気にふすまを開けた。


「!!!」
 驚いて飛び上がったそいつは紛れもなくチャップ。


「あぁ?」
 僕は思わずヤンキーのような声を出す。
 なんだチャップのヤローこそこそと!
 何たくらんでたんだ!


 僕がにらみつけていると、チャップは少しもじもじしたあと僕の顔を指差した。
 何?僕がいないと寂しいって?
 だからって隔離されてるとこにくんなよな♪


 僕が少しにやつくとチャップは顔の前で手を振った。
 うん?僕の考えていることはチャップの考えていることと違うと?
 じゃぁなんだよ!


 チャップは僕の顔を指差す手はそのままにもう片方の手で自分の口元を押さえた。
 口元?
 僕も自分の口元に手をやる。
 

 ・・・マスク?
 うんうんとうなずくチャップ。
 

 何、コイツ。
 わざわざマスクがほしいがために感染のリスクを犯してまでここに来たの?
 ばかじゃねーのか。
 

 僕はとりあえず病気が移ったらまずいので新品の封を開けていないマスクをチャップの顔に投げつけて、ぴしゃりとふすまを閉じた。
 

 そしてふすまの向こうではどたどたと去っていく足音が聞こえる。
 かなり浮かれた足音だ。
 そんなにマスクっていいものか?
 

 息苦しくて邪魔で湿気て気持ち悪いけどな。
 僕は複雑な気分になりながらももう一度布団にもぐりこんだ。
 

 ちょっと疲れた、もう寝よう。
 そしてしばらくたち僕がうとうとしかけてきたときだった。
 

 またもふすまがカタカタいい始める。
 またチャップか。
 さっきと同じ手口とはコイツなめとんのか!
 

 僕はまたむくりと起き上がると一気にふすまを開けた。
 そしてビクッと驚いたのはチャップではなく、メイだった。
 

 僕はあっけに取られる。
 まさかメイもマスク族?
 僕が口元を抑えるとメイはプルプルと首を振り僕の後ろを指差した。
 

 そこには僕が暇つぶしに持ってきた漫画本数冊。
 そういえばテキトーに持ってきたから何冊か見慣れないのがあったっけ。
 あれってメイのだったのか。
 僕は悪いと思いながら本をメイに向かって飛ばした。


 こういうとき僕の能力って便利だ。
 動かなくていいもの。
 

 メイは漫画を受け取りうれしそうな顔をすると静かにふすまを閉め、去っていった。
 

 ふぅ、これで特に部屋には面白いものはない、マスクもさっきチャップに上げたので全部。
 これで誰も来ないだろう。
 そう考えてうとうとし始めたときだった。
 

 またもふすまの前に誰か来た。
 今度はふすまカタカタはなかったけれど、そいつはわざとらしく部屋の前でくしゃみを連発する。
 

 なんだ、コイツは。
 何が望みだ。
 

 や、誰かはもう分かっている。
 ケド、相手したくない。
 

 でも時間を空ければ空けるほどくしゃみはひどくなっていく。
 なんか明らかに今のくしゃみじゃないだろみたいな声も混ざり、鼻をすするわざとらしい音も。
 このままじゃうるさくて眠れないので仕方なく僕はふすまを開けた。
 

 ふすまの前にいたのは案の定アレスタ。
 僕は迷惑そうな顔をしているのに対し、アレスタはパッと表情を明るくする。
 

 そしてアレスタはどこからか紙を取り出し僕に見せた。
“ティッシュくれ”と書かれている。
 

 そう僕の後ろにはティッシュの山があった。
 何かとティッシュは必要だろうということで、この建物内にあった新品ティッシュをほぼ総動員していたんだ。
 たぶん下に残っていたティッシュがきれたんだろう。
 エネリアは今買い物に行っていないし、まぁこの判断は納得できるかな。
 

 僕は仕方なく新品ティッシュをわたした。
 アレスタは“お大事に”とかかれた紙を見せ去って行く。
 

 僕はふすまを閉めもう一度横になった。
 

 さすがにもう誰も来ないだろう。
 あと僕の部屋にあるのは布団と使いかけティッシュ(ばい菌付きと思われる)とゴミ袋のみ。
 ゴミ袋の中もばい菌だらけ。
 こんなものをほしがる人はいない。
 これでやっと眠れる。
 僕はそう思い目をつむった。
 

 そしてしばらく後、もう聞きなれたカタカタ音が耳に届いた。
 いい加減にしろよとふすまをみるとふすまに開いた小さな隙間からもやのようなものが入ってくるのが見えた。
 まさか、おい、やめろよ!
 僕は顔を青くして固まった。
 僕は耳をふさぎ口を閉じたが抵抗むなしく、もやが耳に入っていく。
 すると頭の中に声が響いた。
 

 “レニ、俺には今大いなる災厄から逃れるために病気の体が必要だ。すまん、今度ジュースおごってやる。”
 ジュースくらいじゃいやだと思ったか思わないかのうちにすぐ近くから僕に入り込もうとするやつの名を呼ぶ声が。
 

 そして開くふすま。
 その後ふすまの先にいたメイの口から聞こえたのは“仕事の場所”。
 そしてその場所は今台風が近づいてきている場所の名だった。


                                    :


「レ・・・サ・・・。レニサ・・・。・・・レニサン!!」
 はっと目を開けるとそこには僕の顔を覗くエネリアの顔。


「あ、やっと起きてくれましたか。もうすっかりよくなりましたね!」
 僕は何がなんだか分からないけどとりあえずエネリアに日にちを聞いた。
 エネリアの口から返ってきた日付は僕が隔離されて3日後。
 ・・・そんなに長い間僕の意識は飛んでいたのか。


 そしてエネリアは背後から何か取り出し、僕に差し出した。
「差し入れの手作りバナナジュースです。」
 去っていくエネリア。


「そーいやあいつって意外と料理できたよな。」
 そうつぶやいて飲んだジュースは認めたくないけど、うまかった。


あとがき
 またも、よう分からんものを書いてしまった。
 キャラを理解している人じゃないと最後らへんは何のことやら分からないぞ!
 まぁ、あの、よく分からないというかたはこれからキャラ紹介見るなり、便利屋サイコの本編の方を見るなりしたってください。

 それからあの病気といっていますが、必ずしも皆さんが思い浮かべるであろうあの病気とは限りませんよ。
 書いてある症状が間違っていたとしてもあの病気はどの病気か書いてないんだから責任は持ちませんよ。
 まぁそんなこと誰も気にしないでしょうけど。
 まぁなんにせよ病気には気をつけましょう。
 そして、隔離されている部屋には必要な看病をするとき以外近づかないようにしましょう。
 怒られま・・・いやいや、うつったら大変ですからね!

チャップの日記

2009-11-08 18:32:48 | 便利屋サイコ
 僕は不意に日記を書こうと思い立った。
 ゴソゴソと店内をあさってみると案外簡単に手ごろなサイズのノートが見つかる。
 
 これなら暇なときに日記を書いて時間がつぶせるし、書いた内容を読み直すのも楽しいだろう。
 早速僕はペンを握り文を書き始める。
 


『今日はいつものようにレニと二人で店番をしていました。
 レニはいつものようにどっかりとソファに座って漫画ばっかり読んでました。
 僕もいつものように座って、拾ってきた機械を直してました。
 今日直したのはCDプレイヤーです。
 でもCDがないので使えません。
 今度ってこれを売ってCDを買おうと思いました。』
 


 あ、売ったら今度はCDが聴けないや。


 
『それはやめてまた何か別の捨てられた機械を拾って直してそれを売ろうと思います。』
 


 それから他のみんなのことも書いておこっかな。



『今日メイとフェイクはいつもみたいにあまりよろしくない仕事に出かけていきました。
 明日の夕方まで帰ってこないらしいです。
 僕には二人みたいに運動神経がよくないから二人がうらやましいです。
 

 それからアレスタはまたビラ配りに行っています。
 相変わらずパートナーは見つからないみたいです。
 僕は性格が悪くてもレニみたいなパートナーがいてよかったと思いました。
 

 後、エネリアはいつもどおりバイトに行っています。
 今日は掃除のバイトだといっていました。
 

 僕もバイトを昔はしていたけど、いろいろ失敗して、報酬より弁償金の方が高くなったので、僕はバイト禁止になりました。
 手先は器用なのに何で僕はどんくさいのかな?』


 
 ・・・う~ん、これくらいかな。
 僕は自分の書いた日記を読み直してみる。
 なかなかにいい文だ!
 僕はこれに満足すると、“道具入れ”の中に日記を突っ込む。


「レニ~、ちょっと僕これから捨てられた機械探しにいってくるから~。」
「ん~。そういえばこないだ直したパソコンが爆発したらしいから、また新しいの探してきて~。」
「了解~。」

                                    :

・・・チャップのやつさっき何にやにやしながら書いてたんだ?
 ちょっと見てやろっかな。


 僕は漫画を机に伏せておくと、チャップの“ガラクタ箱”へと近寄った。
 相変わらずよく分からないものばかり入っている。


 あれ?これCDプレイヤーだ。
 これけっこうキレイだな、売って食費の足しにするか。
 僕は僕の“道具入れ”にCDプレイヤーを飛ばすと、一番上に乗っていた小さな手帳を手に取った。


 どうやらチャップはさっきこれになにやら書いていたみたいだ。
「どれどれ・・・?」
 ・・・読んで思った。
 小学生の作文か!!

                                    :

 僕は偶然機械を探しに行った帰りに知り合いに会って、CDプレイヤーのことを話した。
 そしたらいらないCDをくれるらしい。
 僕は喜んで機嫌よく家に帰り、“道具入れ“の元へ駆け寄った。


 すると日記の位置がさっき僕がおいたのとは違うところにおいてあるのに気づいた。
 そしてCDプレイヤーの姿がなかった。
 

 僕はレニの“ガラクタ箱”を見やる。
 まさかとは思うけど、と考えながら僕はその箱を覗き込んだ。
 そしてその中には信じられないことに僕が今まで直した後すぐなくなってしまった数々の機械が眠っていた。


 その後ぼくが久々にキレたのは言うまでもない。



あとがき
 日記が書けなかったので急遽書き下ろした短編。
 これでまた新たなキャラの一面がわかってもらえれば。

 言っときますけどチャップキレたらやばいからね。
 パワーは普通のレニみたいな人間の差じゃないからね。
 たぶんチャップキレたらアレスタより強いと思うよ、うん。
 パワーだけなら便利屋一だと思うよ、普段はへろへろだけど。