趙子龍の副将・陳叔至、記す
どうしたわけか、軍師は、今日はめずらしく兵舎に入り浸っておられる。
そして、ひとりでなにやら、あちこち動き回っているのだ。
視察、ということなのであろうか。
おや、お節介の親父さん(糜竺)がやってきたぞ。
軍師に頼まれたわけでもないのに、兵舎のあちこちを案内をしているようだ。
ここの柱は腐りかけている、とか、床に穴が開いている、とか、最近の大がかりな徴兵により、兵舎の卓が足りないので、食事の順番待ちで、兵卒たちの不満が高まっている、とか。
軍師は、それをひとつひとつ聞いて(しかしお節介親父の報告を記帳しているのは、孫乾どのなのであるが)うなずいて、立ち止まって兵卒たちの談笑に耳をかたむけたり、武器の手入れの仕方をじっと見学したり、馬の調練を小一時間にわたり見つめていたり、あるいはなにをするでもなく、てきとうに座って、じっと人の流れを見たりしている。
しまいには、兵舎の食堂へやってきて、兵卒たちと一緒に配給の列にならび、同じ卓上で、すいとんをすすりはじめた。
あれはなんだ、遊んでおるのか、そうなのか?
※
孔明は困っていた。
新野の面々が自分に反発しているのは知っている。
そうなるであろうと覚悟して隆中の庵を出てきた。
とはいえ、さすがに焦りがある。
もう新野に来て一か月にもなろうかというのに、いまだ親しく話せるのは麋竺だけ、という状況はまずいのではないか?
しかも、麋竺は劉備に近すぎる。
妹が劉備の夫人になっているので、うかつに麋竺に愚痴をこぼすと、そのまま劉備の耳に入って、過度な心配をかけかねない。
ではどうするか。
腹に言葉をためるのはよくない。
そうだ、書いてみよう。
思いを文字にすると、頭がすっきり整理されるものだ。
さっそく孔明は、手記を書いてみることにした。
※
臥竜先生こと、諸葛孔明、記す
困っている。
先日よりわが君に言いつけられた主騎の件のことだ。
例の、妙に名前の立派な男が、生意気にも辞めるのをいやだ、といっているのだ。
なんとか、かれが辞める方向に持っていくべく、理由を探っているのであるが、どうにもそれが見つからぬ。
主騎になろうとしているのは、趙雲、あざなを子龍という。
びっくりするくらい立派な名前の男だ。
軍師に招聘される以前に、徐庶から聞いていたのだが、かれは常山真定のきちんとした家系の子息であるということだ。
貴賎入り混じった雑多なわが君の陣営のなかでも、「貴」にやや近い、というわけだ。
はじめて名前を聞いたときは、粋がったヤクザ者が、自分に格好のいい名前を適当につけて威張っている類いかと思っていた。
だが、出自を聞けば、品があるような、ないような……いや、正直にいえば、かなり品は良いほうであろう。
徐庶も男ぶりの良いほうであったが、これほどではなかった。
世の中には、美形、という言葉がぴったり納まる男もいるものなのだな。
しっかり肉のついた、しかし無駄なところのひとつもない体つき。
甘い顔立ちだが眼光が鋭いので舐められることもなさそうだし(下手に絡めば、気づくとあの世に行っていそうだ)、背もわたしよりすこし高いくらいか。
それでいて武芸達者で、文字も読めるどころか、関羽どののように、兵法だけではなく四書五経までも修めているとなれば、完璧ではないか。
いや、完璧というほどでもないか。
徐庶が言っていたことであるが、ずいぶん人付き合いの悪い、愛想のない男だということだが。
不愛想なのは、まあいいとして、他に問題はまったくないというのに、なぜ将軍職を兼務して、わたしの主騎になろうとしているのか。
ひらめいた。
人格の問題があるにちがいない。
生真面目そうに見えるが、ああいうのに限って、女遊びが派手だとか、賭博好きとか、飲兵衛だとか、重大な欠陥があるのでは。
おそらく、なにかしらの問題を抱えているために、これまで目立たない立場でくすぶっていた。
本人もそのことを悩んでいて、今回、いくらか浮上するために、わたしの主騎になろうとしているのではないか。
なるほど、腑に落ちた。
野心家か。わたしを利用しようとしているとは。
さらに聞いた話だと、かなりの変わり者でもあって、城外に屋敷を構えることもなく、兵舎の一室をおのれの家として改造して住み着いているとか。
わたしより五つ年上のはずであるが、いまだ妻子もない、という。
戦乱で亡くした、ということでもないようだ。
わが君いわく、
「いくらなんでも親不孝になるから、家庭をかまえて子供をつくれ、とすすめたのだが、『わが君が天下を取られるまでは、わたしに家族はいりません』というのだよ。困ったものだなあ」
ということだ。
困った、といいつつ、わが君はうれしそうだったが……
それは言い訳で、じっさいは女関係が派手すぎて、整理しきれず、どこから手をつけていいのかわからないので、いままで、ずるずるときているのではなかろうか。
あの容姿だもの。女が放っておくわけがない。
これまた、腑に落ちた。
そうに決まっている。
よし、そのあたりを調べ上げ、わが君にご報告申し上げ、主騎の撤回をお願いしよう。
女房に逃げられたわたしが言うべきことではないかもしれないが、女人を大切にしない男に未来はないのだよ。
ところで、さきほどから、趙子龍のうしろでちょろちょろしている、あの男は何者なのであろう。
覚えにくい顔だな。
特徴らしい特徴がほとんどない。
つぎに会ったときに覚えていられるであろうか。
それに、なにやら、こちらを睨むようにして見てくるが、わたしは、なにかしたか?
まあいい。あれは捨て置くとして。
それにしても、兵舎で出る食事はひどいものだ。
これは、すいとん?
粉が練りこまれていないので、口当たりが悪いうえ、ところどころダマになっているし、そもそもの小麦の質がわるい。
これでは兵たちも力がでまい。
たしかにすいとんは行軍時には便利な食べ物だ。
兵卒が用を足す回数が減るからだが、しかし、いまは戦中ではないのだ。
いまくらい、もうちょっとマシな食事を食べさせてやってもいいはずなのに。
ふむ、見回りもよいものだな。
また改善すべき点が見つかってしまった。
あとで、さっそくわが君にお願いして、兵たちの食事をまともなものに変えてやろう。
うん?
食堂の片隅に、趙子龍もいるな。おぼえにくい顔の男と一緒に。
ほかの将軍たちが、兵士とは別な場所で食事を摂っているのに、あの男は兵卒といっしょになって、おなじ食事を摂っている。
とはいっても、兵卒たちと肩を並べているだけで、かれらと打ち解けているという様子もないな。
自分からかれらに話しかける、ということもしない。
周囲の兵卒たちも、かれの存在に慣れているようだ。
しかし、目立つ男だな。
これだけ男がうようよいるなかで、八尺の男というのはあまりいないし、服装が粗末なくせして容姿が立派だから、妙な感じだ。
小山の連なりに、いきなり高い山がぽんとある、というふうだ。
そうだ、あの服装の趣味、じつによろしくない。
なんだ、あの地味な色合いの服。
官給品をそのまま、なんの工夫もなく仕立てているものと見た。
将軍職にあるならば、それなりに染めてある、ちゃんとした服を着ればよいものを。
わたしとちがって、服装に頓着しない性質なのだな。
ああ、わかったぞ。
ほかの将軍は、みな妻子持ちだ。
だから、たとえ本人に洒落っ気がなくても、ほどほどに見栄でよい着物を着せてもらっている。
しかし、妻子持ちでないあの男は、気の毒に、ああいう、何も考えないで良い簡素な服に袖を通すしかないわけか。
白がかれに似合わないわけではないが。
うむ、わたしであれば、あの男に浅葱色などの淡い衣を着せるであろうな。
いやいや、そんなことは、あの男の周りにいるであろう女たちの考えることで、わたしの考えることではないな。
嗚呼、それにしてもなんて不味い食事だ。
それでも腹ペコの兵卒たちは嬉しそうに食べている。
気の毒で涙が出てきそうだ。
なに、そもそも、贅沢に慣れているわたしの口に合わないだけではないですか、と嫌味を言ってくるやつがいるぞ。
贅沢云々は関係なく、こんな粗悪なすいとん、まずいに決まっている。
おまえたちはどうして平気なのだ。
平気じゃない?
じゃあ、なぜ黙っている。
ふむ、料理番の男が、糜芳どののコネで雇われている男なのか。
麋竺どの弟君は、なかなかに困ったお方だな。
なんと。料理番に文句をつけると肉包丁を持って追いかけてくる、というのか。
それはいかん。
わたしが、気付いたからには、なんとかしてやろう。
料理番には、食事を改善するよう注意する。
それでもまだ食事内容が変わっていなかったら、そいつは馘だ。
その代わり、新野でいちばん料理の上手い料理人を探してきてやろう。
食事は、睡眠と並んで、人生における最重要事項だからな。
士気にもかかわることであるし。
……おやおや、兵卒たちがこれだけ喜ぶ、ということは、よほど我慢に我慢を重ねていたのだな。
約束は、かならず守ってやろう。
いま、趙子龍がこちらを見ていなかったか?
気のせいか。
いま気づいたが、かれは、この食事に我慢できる男、ということだ。
かれは食事のひどさに気づいていながら、黙っていた、ということか。
麋家と揉めたくなかったのかもしれないが、どちらにしろ、やはり愚鈍でやる気がない男なのであろう。
やはり、かれが主騎になる、というのは、わが君に頼んでやめにしてもらおう。
わたしのこれからの、自由な毎日のためにも。
つづく
(2005/09/18 初稿)
(2021/11/24 改訂1)
(2021/12/17 改訂2)
どうしたわけか、軍師は、今日はめずらしく兵舎に入り浸っておられる。
そして、ひとりでなにやら、あちこち動き回っているのだ。
視察、ということなのであろうか。
おや、お節介の親父さん(糜竺)がやってきたぞ。
軍師に頼まれたわけでもないのに、兵舎のあちこちを案内をしているようだ。
ここの柱は腐りかけている、とか、床に穴が開いている、とか、最近の大がかりな徴兵により、兵舎の卓が足りないので、食事の順番待ちで、兵卒たちの不満が高まっている、とか。
軍師は、それをひとつひとつ聞いて(しかしお節介親父の報告を記帳しているのは、孫乾どのなのであるが)うなずいて、立ち止まって兵卒たちの談笑に耳をかたむけたり、武器の手入れの仕方をじっと見学したり、馬の調練を小一時間にわたり見つめていたり、あるいはなにをするでもなく、てきとうに座って、じっと人の流れを見たりしている。
しまいには、兵舎の食堂へやってきて、兵卒たちと一緒に配給の列にならび、同じ卓上で、すいとんをすすりはじめた。
あれはなんだ、遊んでおるのか、そうなのか?
※
孔明は困っていた。
新野の面々が自分に反発しているのは知っている。
そうなるであろうと覚悟して隆中の庵を出てきた。
とはいえ、さすがに焦りがある。
もう新野に来て一か月にもなろうかというのに、いまだ親しく話せるのは麋竺だけ、という状況はまずいのではないか?
しかも、麋竺は劉備に近すぎる。
妹が劉備の夫人になっているので、うかつに麋竺に愚痴をこぼすと、そのまま劉備の耳に入って、過度な心配をかけかねない。
ではどうするか。
腹に言葉をためるのはよくない。
そうだ、書いてみよう。
思いを文字にすると、頭がすっきり整理されるものだ。
さっそく孔明は、手記を書いてみることにした。
※
臥竜先生こと、諸葛孔明、記す
困っている。
先日よりわが君に言いつけられた主騎の件のことだ。
例の、妙に名前の立派な男が、生意気にも辞めるのをいやだ、といっているのだ。
なんとか、かれが辞める方向に持っていくべく、理由を探っているのであるが、どうにもそれが見つからぬ。
主騎になろうとしているのは、趙雲、あざなを子龍という。
びっくりするくらい立派な名前の男だ。
軍師に招聘される以前に、徐庶から聞いていたのだが、かれは常山真定のきちんとした家系の子息であるということだ。
貴賎入り混じった雑多なわが君の陣営のなかでも、「貴」にやや近い、というわけだ。
はじめて名前を聞いたときは、粋がったヤクザ者が、自分に格好のいい名前を適当につけて威張っている類いかと思っていた。
だが、出自を聞けば、品があるような、ないような……いや、正直にいえば、かなり品は良いほうであろう。
徐庶も男ぶりの良いほうであったが、これほどではなかった。
世の中には、美形、という言葉がぴったり納まる男もいるものなのだな。
しっかり肉のついた、しかし無駄なところのひとつもない体つき。
甘い顔立ちだが眼光が鋭いので舐められることもなさそうだし(下手に絡めば、気づくとあの世に行っていそうだ)、背もわたしよりすこし高いくらいか。
それでいて武芸達者で、文字も読めるどころか、関羽どののように、兵法だけではなく四書五経までも修めているとなれば、完璧ではないか。
いや、完璧というほどでもないか。
徐庶が言っていたことであるが、ずいぶん人付き合いの悪い、愛想のない男だということだが。
不愛想なのは、まあいいとして、他に問題はまったくないというのに、なぜ将軍職を兼務して、わたしの主騎になろうとしているのか。
ひらめいた。
人格の問題があるにちがいない。
生真面目そうに見えるが、ああいうのに限って、女遊びが派手だとか、賭博好きとか、飲兵衛だとか、重大な欠陥があるのでは。
おそらく、なにかしらの問題を抱えているために、これまで目立たない立場でくすぶっていた。
本人もそのことを悩んでいて、今回、いくらか浮上するために、わたしの主騎になろうとしているのではないか。
なるほど、腑に落ちた。
野心家か。わたしを利用しようとしているとは。
さらに聞いた話だと、かなりの変わり者でもあって、城外に屋敷を構えることもなく、兵舎の一室をおのれの家として改造して住み着いているとか。
わたしより五つ年上のはずであるが、いまだ妻子もない、という。
戦乱で亡くした、ということでもないようだ。
わが君いわく、
「いくらなんでも親不孝になるから、家庭をかまえて子供をつくれ、とすすめたのだが、『わが君が天下を取られるまでは、わたしに家族はいりません』というのだよ。困ったものだなあ」
ということだ。
困った、といいつつ、わが君はうれしそうだったが……
それは言い訳で、じっさいは女関係が派手すぎて、整理しきれず、どこから手をつけていいのかわからないので、いままで、ずるずるときているのではなかろうか。
あの容姿だもの。女が放っておくわけがない。
これまた、腑に落ちた。
そうに決まっている。
よし、そのあたりを調べ上げ、わが君にご報告申し上げ、主騎の撤回をお願いしよう。
女房に逃げられたわたしが言うべきことではないかもしれないが、女人を大切にしない男に未来はないのだよ。
ところで、さきほどから、趙子龍のうしろでちょろちょろしている、あの男は何者なのであろう。
覚えにくい顔だな。
特徴らしい特徴がほとんどない。
つぎに会ったときに覚えていられるであろうか。
それに、なにやら、こちらを睨むようにして見てくるが、わたしは、なにかしたか?
まあいい。あれは捨て置くとして。
それにしても、兵舎で出る食事はひどいものだ。
これは、すいとん?
粉が練りこまれていないので、口当たりが悪いうえ、ところどころダマになっているし、そもそもの小麦の質がわるい。
これでは兵たちも力がでまい。
たしかにすいとんは行軍時には便利な食べ物だ。
兵卒が用を足す回数が減るからだが、しかし、いまは戦中ではないのだ。
いまくらい、もうちょっとマシな食事を食べさせてやってもいいはずなのに。
ふむ、見回りもよいものだな。
また改善すべき点が見つかってしまった。
あとで、さっそくわが君にお願いして、兵たちの食事をまともなものに変えてやろう。
うん?
食堂の片隅に、趙子龍もいるな。おぼえにくい顔の男と一緒に。
ほかの将軍たちが、兵士とは別な場所で食事を摂っているのに、あの男は兵卒といっしょになって、おなじ食事を摂っている。
とはいっても、兵卒たちと肩を並べているだけで、かれらと打ち解けているという様子もないな。
自分からかれらに話しかける、ということもしない。
周囲の兵卒たちも、かれの存在に慣れているようだ。
しかし、目立つ男だな。
これだけ男がうようよいるなかで、八尺の男というのはあまりいないし、服装が粗末なくせして容姿が立派だから、妙な感じだ。
小山の連なりに、いきなり高い山がぽんとある、というふうだ。
そうだ、あの服装の趣味、じつによろしくない。
なんだ、あの地味な色合いの服。
官給品をそのまま、なんの工夫もなく仕立てているものと見た。
将軍職にあるならば、それなりに染めてある、ちゃんとした服を着ればよいものを。
わたしとちがって、服装に頓着しない性質なのだな。
ああ、わかったぞ。
ほかの将軍は、みな妻子持ちだ。
だから、たとえ本人に洒落っ気がなくても、ほどほどに見栄でよい着物を着せてもらっている。
しかし、妻子持ちでないあの男は、気の毒に、ああいう、何も考えないで良い簡素な服に袖を通すしかないわけか。
白がかれに似合わないわけではないが。
うむ、わたしであれば、あの男に浅葱色などの淡い衣を着せるであろうな。
いやいや、そんなことは、あの男の周りにいるであろう女たちの考えることで、わたしの考えることではないな。
嗚呼、それにしてもなんて不味い食事だ。
それでも腹ペコの兵卒たちは嬉しそうに食べている。
気の毒で涙が出てきそうだ。
なに、そもそも、贅沢に慣れているわたしの口に合わないだけではないですか、と嫌味を言ってくるやつがいるぞ。
贅沢云々は関係なく、こんな粗悪なすいとん、まずいに決まっている。
おまえたちはどうして平気なのだ。
平気じゃない?
じゃあ、なぜ黙っている。
ふむ、料理番の男が、糜芳どののコネで雇われている男なのか。
麋竺どの弟君は、なかなかに困ったお方だな。
なんと。料理番に文句をつけると肉包丁を持って追いかけてくる、というのか。
それはいかん。
わたしが、気付いたからには、なんとかしてやろう。
料理番には、食事を改善するよう注意する。
それでもまだ食事内容が変わっていなかったら、そいつは馘だ。
その代わり、新野でいちばん料理の上手い料理人を探してきてやろう。
食事は、睡眠と並んで、人生における最重要事項だからな。
士気にもかかわることであるし。
……おやおや、兵卒たちがこれだけ喜ぶ、ということは、よほど我慢に我慢を重ねていたのだな。
約束は、かならず守ってやろう。
いま、趙子龍がこちらを見ていなかったか?
気のせいか。
いま気づいたが、かれは、この食事に我慢できる男、ということだ。
かれは食事のひどさに気づいていながら、黙っていた、ということか。
麋家と揉めたくなかったのかもしれないが、どちらにしろ、やはり愚鈍でやる気がない男なのであろう。
やはり、かれが主騎になる、というのは、わが君に頼んでやめにしてもらおう。
わたしのこれからの、自由な毎日のためにも。
つづく
(2005/09/18 初稿)
(2021/11/24 改訂1)
(2021/12/17 改訂2)