池袋でバブリーだった会社でアルバイトをしていた。しょっちゅう華やかなところに飲みに連れて行ってもらい、忘年会なんかはタクシーで横浜まで繰り出したりもした。その会社が業績の低迷から、三ノ輪橋方面(厳密には尾久)に引っ越した。そこに暫く通ったけど、会社は更に傾き倒産した。社長は今考えれば僅か30歳。嘘みたいだけど、マグロ漁船に載せられたという。池袋では楽しそうな社長の顔ばかりが浮かぶが、三ノ輪橋の時は辛そうな顔が多かった。そんな三ノ輪橋に足を踏み入れたというところまでが前回だ。
僕も歳を重ね、若い頃の恩人、知人の多くも鬼籍に入ったと思われる。東京は遠い街になってしまった。これから起こるであろうことは殆どなく、箪笥の隅にしまったような古い思い出だけが溢れてくる。これからも東京に来ること自体はあるだろうけど、三ノ輪橋はこれが最後かもしれない。さらば三ノ輪橋。恐らくこれが最後だ。人に誇れる写真ではないけれど、たまに今回撮った写真を眺めよう。そして僕は確かにその地にいたことを想うとしよう。その現実感は徐々にそして確実に薄れていくだろう。
X-PRO2 / XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS
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