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レンズ越しに見えるもの または 見えざるもの

下田幻影(終)〜和解の朝

2024-10-02 | 街:静岡











心の中で必要以上に肥大化した町、下田。前日の午後には、その肥大化した町の一端を見て、日が暮れてからはシャボン玉が弾けるように幻想から解き放たれた。翌朝の別れの刻、町はどんな顔を見せたのだろうか。多分、知ってはいけない秘密を見たことで、親密さは消え失せ、ギスギスした朝を迎えることになると思っていた。

ところが実際には、下田は普通の魅力的な町となっていた。このご時世に表現することが憚られるが、初めて一夜を共にした女性と共に迎える朝みたいなものだ。がっかりする(される)こともあれば、望外の親密さを感じることもある。それは相性としか言いようがなく、そうなってみないと分からないものだ。下田で迎えた朝、生活感のある町並みも、観光的な外面も、ペリーが来航した歴史的な地形も、すべてが普通にそこにあった。何の衒いもなく、気負いもなく、ただそこにあるものを受け入れ、歩いた朝の一時間。不思議なことに写真も、いつも通りの感触だった。何か知らないけど、和解したのかもしれない。求めよ、さらば与えらん。さようなら下田、また来る日まで。

GRⅢ

(下田幻影シリーズ)
③下田幻影(終)〜和解の朝

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