前回は日本の国民的二大名探偵のことを書きました。
新本格ブーム以降は、さまざまな名探偵が目白押しで、南野もそのすべてを把握できているわけではありません。ただ、それ以前の、一時期絶滅寸前まで追い込まれた本格ミステリー(というか、当時は本格推理小説)の名探偵はさほど多くはありません。
その中で、明智小五郎と金田一耕助は別格の有名どころなのですが、今回はそんな中のちょっとマイナーな名探偵、神津恭介について語りましょう。
この神津恭介というのは、高木彬光の創作した探偵で、相棒の松下研三君とともに難事件の解決を目指します。
この神津恭介シリーズは、いつもひとりの金田一耕助や、少年探偵を使う明智小五郎とはちがって、ちょっと足りない相棒(というか、助手?)の松下君とともに行動する点がちょっとちがってます。まあ、相棒が記述者タイプというのは、シャーロック・ホームズとワトソン博士にはじまって、よくあるパターンで、今の日本でも御手洗潔と石岡君とか、京極堂と関口君とか(これは四人一組だからちょっとちがうか?)が有名かつ超人気です。
まあ、そういうのの日本での走りです。と思ったら、由利先生がいたか。(由利燐太郎、三津木俊介のコンビ。金田一耕助登場まで、横溝正史のメイン探偵。代表作「蝶々殺人事件」「真珠朗」)
とにかく、そういう系統の探偵です。
で、このタイプはだいたい超わがままかつ超個性的で、凡人の相棒をふりまわすタイプが多いですが、神津恭介はかなり性格的にはまともです。
けっして相棒をからかったり、馬鹿にしたり、しかめっ面で膨大な蘊蓄を垂れ流したあげく、「君なんか友人じゃない、ただの知人だ」とか言ったりはしません。ましてや医者の相棒の忠告を無視してコカインを注射したり、依頼人を見るや、「あなたは~ですね。なぜなら、そのあなたのもっているなんとかが、なんとかだからです」とかわけのわからないことを言いだしたりはするわけもありません。
かといって、明智小五郎のように、異常な行動力で犯人と戦うことを楽しむタイプ(あのひとぜったい楽しんでますよね。とくに相手が怪人二十面相のときは)でもありません。
そういう意味では金田一耕助に近いかもしれません。
かなり人当たりのいい、マイルドな探偵です。
ただ見た目や肩書きが金田一耕助とは大違いです。
超絶美男子で、東大卒、七カ国語を話せて、ピアノも得意。学生時代に「神津の定理」とかを発見しちゃう大天才。
おまえ、いいかげんにしろよ!ってなもんです。
いっつもよれよれの格好をしていて、プー同然のところをパトロンに拾われて、私立探偵になった金田一耕助とはえらい違いです。
今、こんな設定の探偵を出したら、読者から袋だたきに遭うでしょうね。
なんじゃ、その房設定は?って感じで。
かつての本格ミステリーの大御所、高木彬光先生もキャラ作りはあまりうまくなかったようです。
で、この探偵、どんな事件を解決したかって言うと、やはり最高傑作は「人形はなぜ殺される」でしょう。
デビュー作の「刺青殺人事件」も名作と誉れ高いのですが、南野はやはり「人形」が上だと思います。
全体に流れるオカルティックな雰囲気が好きです。
人形という小道具の使い方や、魔術的な演出がいいのです。
そしてあの有名なトリックでしょう。
南野はあまりアリバイトリックは好きではないのですが(めんどくさい)、このトリックはまさに目から鱗。
こんなど派手なアリバイトリックもあったんだ。
思わず、うなってしまいます。
この先生も亡くなってだいぶ経ちますけど、いつの間にか新刊があまり買えなくなっているのは、さびしいかぎりです。
もっと読み継がれてもいい作家だと思います。
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新本格ブーム以降は、さまざまな名探偵が目白押しで、南野もそのすべてを把握できているわけではありません。ただ、それ以前の、一時期絶滅寸前まで追い込まれた本格ミステリー(というか、当時は本格推理小説)の名探偵はさほど多くはありません。
その中で、明智小五郎と金田一耕助は別格の有名どころなのですが、今回はそんな中のちょっとマイナーな名探偵、神津恭介について語りましょう。
この神津恭介というのは、高木彬光の創作した探偵で、相棒の松下研三君とともに難事件の解決を目指します。
この神津恭介シリーズは、いつもひとりの金田一耕助や、少年探偵を使う明智小五郎とはちがって、ちょっと足りない相棒(というか、助手?)の松下君とともに行動する点がちょっとちがってます。まあ、相棒が記述者タイプというのは、シャーロック・ホームズとワトソン博士にはじまって、よくあるパターンで、今の日本でも御手洗潔と石岡君とか、京極堂と関口君とか(これは四人一組だからちょっとちがうか?)が有名かつ超人気です。
まあ、そういうのの日本での走りです。と思ったら、由利先生がいたか。(由利燐太郎、三津木俊介のコンビ。金田一耕助登場まで、横溝正史のメイン探偵。代表作「蝶々殺人事件」「真珠朗」)
とにかく、そういう系統の探偵です。
で、このタイプはだいたい超わがままかつ超個性的で、凡人の相棒をふりまわすタイプが多いですが、神津恭介はかなり性格的にはまともです。
けっして相棒をからかったり、馬鹿にしたり、しかめっ面で膨大な蘊蓄を垂れ流したあげく、「君なんか友人じゃない、ただの知人だ」とか言ったりはしません。ましてや医者の相棒の忠告を無視してコカインを注射したり、依頼人を見るや、「あなたは~ですね。なぜなら、そのあなたのもっているなんとかが、なんとかだからです」とかわけのわからないことを言いだしたりはするわけもありません。
かといって、明智小五郎のように、異常な行動力で犯人と戦うことを楽しむタイプ(あのひとぜったい楽しんでますよね。とくに相手が怪人二十面相のときは)でもありません。
そういう意味では金田一耕助に近いかもしれません。
かなり人当たりのいい、マイルドな探偵です。
ただ見た目や肩書きが金田一耕助とは大違いです。
超絶美男子で、東大卒、七カ国語を話せて、ピアノも得意。学生時代に「神津の定理」とかを発見しちゃう大天才。
おまえ、いいかげんにしろよ!ってなもんです。
いっつもよれよれの格好をしていて、プー同然のところをパトロンに拾われて、私立探偵になった金田一耕助とはえらい違いです。
今、こんな設定の探偵を出したら、読者から袋だたきに遭うでしょうね。
なんじゃ、その房設定は?って感じで。
かつての本格ミステリーの大御所、高木彬光先生もキャラ作りはあまりうまくなかったようです。
で、この探偵、どんな事件を解決したかって言うと、やはり最高傑作は「人形はなぜ殺される」でしょう。
デビュー作の「刺青殺人事件」も名作と誉れ高いのですが、南野はやはり「人形」が上だと思います。
全体に流れるオカルティックな雰囲気が好きです。
人形という小道具の使い方や、魔術的な演出がいいのです。
そしてあの有名なトリックでしょう。
南野はあまりアリバイトリックは好きではないのですが(めんどくさい)、このトリックはまさに目から鱗。
こんなど派手なアリバイトリックもあったんだ。
思わず、うなってしまいます。
この先生も亡くなってだいぶ経ちますけど、いつの間にか新刊があまり買えなくなっているのは、さびしいかぎりです。
もっと読み継がれてもいい作家だと思います。
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