受法寺本堂建築誌

伝統木造工法により建築中です

心構え

2006年06月02日 | Weblog

竹小舞の作業も進み、南北の妻が終了しました。
 妻の下からはシートが出ています。これは土壁で仕上げると、高知の強い雨が降り続くと堂内に侵入するのを防ぐ為に取り付けたものです。

そこで今読んでいる『「てりむくり」日本建築の曲線』(立石二郎著)に、次の一節が有るのを思いだしましたました

『法然上人絵伝』巻四五の詞書に、俊乗房重源が東大寺大仏殿を再建する際の説話が載っている。
 その話の中で、重源は棟梁を選任するための試問を番匠(律令体制に属する最も下位の大工)に対して行っている。
 重源は番匠に「屋根を造るのに垂木の下に木舞を打とうと思うがどうだろう」と持ちかけた。問われた番匠は「そのような屋根の造りは見たことがありません」と答えた。
 そこで重源が「思うところがあってそうするのだから、言われた通りやってみないか」と言うと、番匠は「そんなぶざまなことをして仲間から笑い者にされたくありません」としりごみした。問われた番匠のことごとくがそのように答えたが、中に一人、引き受けても良いと言う者が現れた。
 「以前にもこのような屋根を造ったことがあるのか」と重源が問うと、「そのような経験はありませんが、教えていただければ工夫して造ってみようと思います」と答えた。すると重源は「そのようなものを本当に造ろうとしたわけではない、ただ心構えを知っておきたかったのだ」と言って、その番匠を東大寺再建の大工に選んだ。
 従来の様式や常識に固執している保守的な技術者では、たとえ上手でも新しい思想を表貌することはできない。重源は、宋から持ち帰った天竺様式と称する新しい技法や考え方に積極的に取り組める大工を探す手段として、「垂木の下に木舞を打つ」というでたらめな工法を持ち出し、番匠の器量を試したのである。

今回の本堂建築は、伝統様式に忠実ではありますが、新しい工法や技術を取り入れながら進めています。