受法寺本堂建築誌

伝統木造工法により建築中です

飛鳥2号

2005年09月28日 | Weblog
内陣・協力業者・屋根瓦・基礎部についてなど第2回打合せ。

瓦については、「飛鳥2号」を用いることになっていましたが、見本を提出していただき他社品と比較検討しました。

従来の瓦の施工方法は、「土葺工法」でした。
「土葺工法」、野地板の上に練り土を置き、さらにその上に瓦を葺いていく工法です。
この工法は年月とともに土が痩せてくると瓦が滑り落ちてくるというのが欠点で、定期的に瓦の葺替(葺き土の取り替え)を行うことにより屋根を維持します。
実際に、受法寺本堂も大正12年に瓦を吹き替え、80年を経ていましたので土が痩せて瓦がずれ、そこから雨水が浸入していました。

また、「土葺工法」は、屋根の重量が大きくなり地震に弱くなります。
先の阪神大震災でも、土葺工法で屋根を葺かれた古い建物の多くは、屋根から瓦が落ちてしまう被害に遭いました。

それに対し、「引掛桟工法」は瓦の裏に引掛桟用のツメを付け、瓦桟木に一枚一枚引掛けていく工法です。 この工法は「土葺工法」に比べて重量が軽く、瓦が瓦桟木にしっかり固定されるため、比較的地震等にも強い工法です。
関東地方を中心に、関東大震災以降に地震に強い施工方法として考えられたのがこの引掛桟工法です。先の阪神大震災でも、引掛桟工法で施工されていた建物ではそのような災害はほとんどありませんでした。

「飛鳥2号」はこの、「引掛桟工法」で、写真のように従来の平瓦二枚と素丸瓦一枚の計三枚の瓦を一体化した製品です。
平瓦部の2段を再現することで、本瓦葺きの重厚感を保ちながら軽量化を達成しています。
さらに一体化したことで、丸瓦がズレる事は無く、瓦自体の強度の向上というメリットもみられます。

施工に関しても葺土を使用しない乾式工法(アスカ工法)を前提としているため、屋根重量の軽減とともに、野地の蒸れなども少なくなるなど、屋根自体の耐用年数も長くなります。
また、遠くから見ると本葺瓦のように見え、建物全体に重厚感がでます。

見本では、「飛鳥2号」と同様の他社製品を比較検討すると、雨返し部分が高く厚みがあります。叩いてみると金属的な音で高温で焼いており、高い質感を持っていることがわかりました。

タヌキを保護

2005年09月28日 | Weblog
早朝に工事現場の境内でタヌキを発見。

近年浦戸の山や里で、よくタヌキをよく見かけます。
近くの山が開発されていますが、映画「平成狸合戦 ぽんぽこ」のように麓まで下りて来ているのでしょうか。
いつもは近づくとすぐに逃げますが、今日は近づいても少しも動きません。かなり弱っているようです。
歩いても2,3歩よろよろと動くのみで、目も開けられないようです。外見は傷も無く、それほど痩せているようでもありません。

そこで、高知市の動物園「わんぱーくこうち」に連絡を取り、環境保全課に保護して頂きました。
「毒物でも食べてしまったのではないか。」とのこと。

早く元気になって、浦戸の山に帰って欲しいものです。

地盤改良工事 AMP工法

2005年09月27日 | Weblog
23日から4日間をかけての地盤改良工事が、休みをはさみ今日で終了。

本堂基礎部直下地盤の地耐力を高めるため、地盤改良工事を行いました。軟弱な地盤ででそのまま基礎部をのせると、不同沈下と言う将来地盤の沈下が不揃に起きることが懸念されます。また、大地震が起きた時、軟弱な地盤であれば液状化現象による建物の傾斜が心配されます。
これらの問題点を解決する仕組みが、緩い地盤の中にセメントなどの固化材を混ぜて、緩い地盤を固める工法です。
今回の工事は、高知の山伸工業による無排泥工法(AMP工法=機械撹拌エアーミルク混合圧送工法)です。地下2Mの固い地盤に到達した直径70cmの42本の柱(排出された土とセメントの混合物)が、しっかりと本堂を支えることになります。
詳しくは、山伸工業のホームページで確認してください。

「AMP工法」とは産業廃棄物となる排泥を全く出さない、環境に配慮した地盤改良工法です。工事費の削減、工期の短縮が可能となります、とあります。

高知発で、環境に配慮したすばらしい技術です。

スウェーデン式サウンデイング試験

2005年09月22日 | Weblog
2日間をかけて、地盤改良工事の為の機材を搬入。

建設予定地では、2004年5月2日に前もって地盤をスウェーデン式サウンデイング試験により調査しています。

円錐形のキリを取り付けた鉄の棒(ロッド)を地面に鉛直に立て、ロッドに重りを段階的に載せて、ロッドの沈み具合を測定します。
途中で締まった地層に到達して貫入不能になった点で固い岩盤に到達したことになります。
予定地の5箇所を調査し、深さ75cmから、2mで地下の固い岩盤に到達しています。

今回は2mに到達する深さまで、地盤改良の工事をします。



発掘調査

2005年09月16日 | Weblog
高知市教育委員会より、発掘調査がありました。当初は筋掘りを計画していましたが、市も今年になって予算が不足しており、今回は一箇所だけ本堂跡地の北西部を1.5Mを掘り進みました。
0.9Mの焦土(炭の跡)から、18世紀ごろの遺物である陶磁器が見つかり、1.1Mの浅い掘り込み土器だまりから、土師質土器の皿・杯(つき)の破片が見つかっています。詳しくは報告書がでますので、その時に載せます。
また、驚いたことは1.5Mで掘ってから水がたまったことです。基礎は十分上げ、防水シートを張るなど、湿気対策をとることになっています。

土佐のお寺 春野町西畑の弘願寺

2005年09月14日 | Weblog
春野町西畑の弘願寺ご法座に、ご門徒と共に参拝させて頂きました。
弘願寺は一度は大津波で本堂を流失し、220年前に現在地に寺基を移転し本堂を建立
されています。昭和56年に本堂屋根修復・平成15年に床下修復などを重ねながらも
220年前の姿をよく残し、昨年は、映画「ハルウララ」のロケ地として撮影されるな
ど、春野の山々に抱かれ仁淀川を眼前にして、自然がいっぱいの堂々とした伽藍です。

起工式に思う

2005年09月12日 | Weblog
起工式に思う

起工式は地鎮祭といわれることもあり、地の神を鎮め工事の安全を祈るというものだが、適切でないので「本堂建立起工奉告慶讃法要」とした。『阿弥陀如来さまお慶びくださいと告げ奉る』趣旨である。仏前で読経しながら、建築に携わるさまざまな、建築家・技術者・技能者のことを脳裏に描いて思った。この工事はオーケストラに譬えることができるのではないかと。
 建築家(いわゆる設計士)が設計図を描く。仕様書も含めて工事全体を70枚もの設計図書に描いてある。交響楽でいえば作曲家が五線紙に描いた楽譜(総譜)だ。譜面には音符や奏法だけでなく曲想まで表現されている。一方こちらには伝統的な寺院建築様式を踏まえて、独自のコンセプトが籠められた設計が精密に作図されている。 施工する建築会社で指名された。
現場監督は、工事を実現する全責任を負い、設計図を読み解釈し、現場事務所に詰めていて、オーケストラの指揮者のように工事を指揮する。その指揮によって大工や左官や屋根葺き職人など、多種多様な専門の技能者が技量を発揮する。ステージで弦楽器、管楽器、打楽器のそれぞれが、旋律をうたいリズムを刻み和音を響かせるようなものだ。大工の棟梁は、さしずめ主旋律を奏でる第一バイオリンの首席奏者といってよかろう。 このようにして荘重華麗な演奏が響流し、聴衆は深い感動を呼び起こされる。寺に参詣した門信徒は建築の造形美に出会って、それと同じように感動し、敬虔な信心の目覚めが促されるだろう。
 阿弥陀仏が建立した美しい浄土では、み教えを説くお声が音楽のように聞こえてくると、お経に説かれている。南無

起工式

2005年09月12日 | Weblog
紅白の幕の張られたテントの中で起工式を午前10時より執り行い、建築事務所代表者上田堯世様・香長建設松本義彦様・澤匠近沢春彦様を始め工事関係者、門徒総代・世話人が23名が出席。
お勤め(「らいはいのうた」)の後、鍬入れ式、住職・上田所長・松本会長が挨拶し、共に起工式に到ったことを慶び、無事に来年9月末の竣工の日を迎えんとする決意を新たにしました。

表白
敬って西方の教主阿弥陀如来の尊前に白して言さく
本日茲に恭々しく尊前を荘厳して有縁参集の人々と共に受法寺本堂建立起工慶讃法要を厳修し奉る
つらつら惟るに当寺草創より既に500星霜その間末世の濁世にありて数多の門信徒の崇敬を集め称名念仏の声弥々高く法城を護持し来たりしなり
しかるに積年の天災や地変虫害は坊舎を著しく損傷しめ遂に崩壊状態陥り儀式の執行と法義の宣布の機能を保持し得ざるに到れるなり茲に於て住職門徒相計り幾多の困難を克服して莫大なる浄財を投じて一大宝閣を建立せんとする
慶ばしい哉この歓喜仏祖に告げ奉りかつ門信徒及び有縁の諸人共にこれを分ち合うものなり
願はくは更に門信徒の懇念を結集し匠の業に携わる技術者並びに技能者の総力を凝縮して如来照護のもと事業恙なく進捗し、めでたく竣工の日を迎えんとことを敬って曰す

グランドライン 

2005年09月01日 | Weblog
上田堯世設計士さん・香長建設の現場監督楠瀬進さん・木工事の澤匠の近澤さんを交えて着工後初めての打合せが、現場事務所(車庫を改造)で行われ、建物のグランドライン基準点の決定・起工式の日程などを話し合いました。
当地は来る南海大地震では、1~2mの浸水が予想されていますが、他の建物との関係もあり、グランドラインは、現在の玄関前を基準点として浜縁で1560mm、外陣で1670mmとなります。