佐佐木幸綱選
卒塔婆の文字少し幼し住職の息子さん父を継ぎつつあるらし 水戸市 檜山佳与子
なんともほほえましいと思いました。住職と言うカ行は特殊ですが、それを受け継いでくれるのはうれしいことです。檀家さんもほっとしますよね。説教話もきっと慣れることでしょう。
高野公彦選
地上での七日の命憐れめど我とて宇宙の中の蜩(ひぐらし) 五所川原市 戸沢大二郎
均等に降らせることは至難らしあちらは洪水こちらは日照り 新潟市 太田千鶴子
一首目、地上での蝉の生涯の短さも、宇宙を考えたら人類も同じようなものだとこの比較の壮大さは見事。確かにいえてます。人類だって、ちっぽけな存在。特に他の生物に迷惑ばかりかけています。熊が出たからと駆除してばかりでいいのか、温暖化を食い止めなくてどんどん生物の生存が難しくなっているのも、もともとは人類のせいでは?今は、もう地球温暖化といわずに、地球沸騰化というそうです。この夏は、まさに沸騰ですよね、こんな暑い夏を4か月って、私たち人間もつらいけれど、何も知らないほかの生物はもっと苦しいはずですよ。二首目、本当に思うように恵みの雨がいきわたらず、こんなに降るなんていい迷惑みたいなことがあちこちで起きているし、降ってほしいところに全然降らないというありさま。成層圏にAIのシステムで思うように雨を調節してほしい、というのも、人類の傲慢でしかないですね。きっと地球は人類に対して怒っているんでしょう。
永田和宏選
赤よりも危険を示す色となり紫色が列島覆う つくば市 山瀬佳代子
戦死者を英霊などと祀りあぐ死にたくて死んだ者など無きを 川越市 西村健児
一首目、本当に恐ろしいほどの紫色があちこちに出ます。特に線状降水帯は恐ろしいです。気候もどんどん変わってきていますね。私たちの地球はどうなってしまうのでしょう。二首目、特攻隊の事もそうですが、戦死者を美化して愛国心をあおる風潮は、ものすごく怖いです。昔、「きけ わだつみの声」を読みましたが、学徒出陣で戦争に行って亡くなった兵士たちの日記(遺書というべきか)には涙があふれてしょうがなかった。若者の未来を奪っても戦争を続ける意味があるのでしょうか。無謀な戦争を起こした軍部の責任は、本当にはまだきちんとされちないと思いますよ。軍人の卑怯去ったらありません。私たち庶民は虫けらのように殺されてしまうんです。悔しい思いで死んだ人たちは大勢います。二度と同じ過ちをしてはいけません。だからこそ、私たち日本の憲法には戦争放棄の九条があるのです。戦争の裏には利権や汚い金がうごめいています。そんなことで、人の命を奪われてなるものかですよ。