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ニッチ概念を原義から考える/場所placeと凹所niche

2010年09月08日 22時53分44秒 | 生態学
2010年9月8日-5
ニッチ概念を原義から考える/場所placeと凹所niche

 生態的地位とも訳されるニッチ (ecological) nicheは、もとの日常語としては、壁の凹みであって、そこに像や花瓶といった物を置くための場所を指している(太田 1994: 37)。これは辞書を引けばわかるし、生態学の教科書を見ても語源的な説明があればそうなっているだろう。

  「「ニッチ」の原義は「壁がん〔壁龕〕」であったが、直ぐそれから転じて一般に「凹所」、「安置場所」、「場所」、「適所」、「地位」、「位置」の意味になり、日常語でもそれらの意味で昔からよく使われてきた……(例えばOED, 1989)。」(太田 1994: 38)。


 現在では、凹みに関わるなんらかの(様々な)意味または性質を抽出あるいは借用して、生態学的な概念としているのである。元の物体をモデルとして使用し、他の対象に適用するということは、元の物体のなんらかの作用や性質について、他の対象において同型的に推論すると役立つかもしれないという期待がある。では実際に役立っているのか? また、どのように役立っているのか? たとえば、生物共同体をシステムとして捉えた場合に、その種構成とか、さらに詳しく種-個体数構成を予測できるのか?、である。

 
 
 壁の凹みという空所は、壁を窪ませて、そこに何かを置くという機能を実現可能とさせるような形態を提供している。実在するのは、そのような形態の壁という構築物である。壁は触れることができる。空所の空気は見えないが存在するが、固体を置けば、それが存在するように空気はそこから排除される。空気を空所からから排除するのに必要な人の力は(実際に置いたりする多くの人にとって)たいしたものではないので、いつでも自由に物を設置できる。


□ 競争排除則またはGrinnellの原理、とニッチ


[H]
Hurlbert, S.H. 1978. Evolutionayr Theory 177-184.

 
[O]
太田邦昌.1994.'Place'から'Niche'へ:ダーウィンと彼によって示唆を受けた7人の研究者達、1839-1916.生物学史研究 (58): 37-54.