美術修行2010年10月17日(日)/フォーラム「私たちの近代美術館をつくるために」
2010年10月17日(日)。「大阪に集まった12の名画 -大阪市立近代美術館コレクション:モディリアーニ、マグリットから佐伯祐三まで」展/大阪歴史博物館の常設展観覧料600円。フォーラム終了後に再入場した。
今回は比較的近くから観察できる。福田平八郎の《漣》の青い部分は、一様で、階調がかかっているわけではなかった。一様な地と文だけの模様。ひょっとして視点は、下面では上方から、上面はより下方から、中間はその間から、という合成なのだろうか。
2010年10月17日(日)13:00~15:33。フォーラム「私たちの近代美術館をつくるために」/大阪歴史博物館4階講堂/最寄り駅は地下鉄谷町四丁目。
聴衆は当初で110名くらいか。後に少し増えた。以下は、わが興味中心的な要約で、表現も発言通りではない。司会進行は、おかけんた氏(タレント、現代美術コレクター)。
13:05、菅谷富夫氏(大阪市立近代美術館建設準備室研究副主幹)による「近代美術館整備の経過と現状」。
場所は、中之島の国際美術館の来たにある駐車場(駐車場だけではなく、その北の砂地の場所も含まれることを、二回目に常設展を見たときに確認した)。
近代美術館あり方検討委員会(加藤種男氏は委員の一人)からは、10の挑戦として提言があった。
http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/yutoritomidori/0000065467.html
近代美術館あり方検討委員会からの提言 -10の挑戦-
ホワイト・キューブからアーバン・パッサージュへ
1.ひとが集い憩える新たな美術空間・パッサージュを
2.保有する二つの資源 -国内屈指のコレクションと中之島- の活用を
3.オンデマンド展やリクエスト展といった斬新な視点に立った展覧会活動を
4.美術館を核に中之島を学びの場に
5.美術館の現場に市民・NPOがリードし活動する協働のプラットフォームを
6.地域を活性化させるアート活動を積極的にサポートできる体制を
7.ブランド・マネジメントの視点を持った市民・NPO主体の運営体制を
8.作品をしっかりと展示・収蔵できる充実した施設と、多彩な交流スペースを
9.博物館群統合から生まれる連携と再編成で合理的運営を
10.水と交流の都市軸復活をめざして、まちづくりを発信できる中之島の美術館を
〔アーバン・パッサージュへ、オンデマンド展、ブランド・マネジメント、とはなんだろうか。〕
単なる作品鑑賞の場ではなく、居心地のよいホットする楽しいところ。学校と連繋として教育活動もする。外の活動にも参加し、また受け皿になる。
収集品は、寄贈約3,400点と購入約1,000点で、合わせて約4,400点〔後に8階で訊いたところでは、購入総額は153億円。寄贈品の受け入れ当時の評価総額は??億円(失念)。〕
「元気な大阪」をめざす政策推進ビジョンにおいて、中核施設に位置づけ。2016-2017年に建物完成予定。
講演1.「美術館建設は未来への投資」
石坂泰章氏(株式会社サザビーズジャパン代表取締役社長)
・観光資源になること。金沢21世紀美術館の例を挙げた。
・雇用創出。創造的な人を引きつける。『アエラ』1994.5.23の51頁の調査報告書を紹介。
・コレクションの厚み。市の中心部にあるという良い立地条件。フラっと行ける所。
予想落札価格(100万ドル) 当時の購入価格
モディリアーニ〔1917〕 40-60〔36-54億円〕 19億円
ボッチョーニ〔1911〕 12-18
デ・キリコ〔1916〕 4- 6
マグリット〔1957〕 15-20
ダリ〔1934年頃〕 3.5-4.5
本格的な美術館は、大阪市に税収入をもたらす。世界を相手に競争し、入館者200万人をめざす。
下記のガルブレイスの言葉を引用した。
「必需品が行き渡った社会では、人々の関心は楽しみや美しさに向かう。デザインや音楽、絵画などである。〔後略〕」(日本経済新聞 2004.1.28)。
講演2.「来るべき美術館/作家の視点から」
13:53~ 森村泰昌氏(美術家)
美術家とは夢物語を語る人。
では、そもそも美とはどんなことか。
海に夕日は美しいといった美もあるが、簡単ではない場合もある。
17世紀のオランダのレンブラントの「夜警」を例。小林秀雄の本『近代絵画』(昭和29年の雑誌に掲載)。二つのまったく違った美の対立を小林は語っている。<みんなの美>とレンブラントの特殊な美。しかし今では、全世界の人が見に来るだろうような、みんなの美である。特殊な美として表れるが、突出したものなので、少数派。それが、みんなが納得するには時間がかかる。もう一つの例として、生前は1枚か2枚しか売れなかったゴッホ。
二人だけに光を当てるのではなく、注文主の市民全員に光を当てて描いていたら、フラットな凡庸な絵になっていただろう。アムステルダム市民は、レンブラントという突出した人を選び、任せた。わたしたちがすべきことは、様々な意見を出し合うことではない。特別な形で提案できる人物を選ぶことが大事。誰に美術館の構想を任すのか。少数精鋭のプロジェクト・チームを作るのがよいと思う。多くにすると平均値になるので、五人くらいか。美術館の精鋭部隊を作って、構想を任せる〔ことを森村氏は主張した〕。14:22了。
講演3.「市民の美術館にむけて」
14:24~ 加藤種男氏(アサヒビール芸術文化財団事務局長)
建設に100億円かかるとすると、年間20億円の効果で5年で償却できる。効率の良い投資である。すでにある博物館をグループ化して経営すれば、運営費増は少ない。メディア芸術関連とで一つのものを一つの建物に作れば、コストは半分、管理コストも削減できる。
しかし、美術館はそれだけで儲かるものではない。人間が生きていくうえで無くてはならない美を展示する。社会的投資である。
経済的投資の場合は、投資者に利益が戻る。戻るのは、経済的価値で、安全で短期に戻るが、社会的投資は、そうとは限らない。利益はすぐには戻らないし、大阪市民やその他に利益があ。金以外のなにが、また、いつ返ってくるか、わからない。
ここからは妄想だが、瀬戸内海は東アジアのなかで重要だから、関西空港(瀬戸内空港と考えたい)からすぐに島々をクルージングしてもらう。最後に中之島で近代美術を味わってもらう。14:48了。
(10分休憩。)
15:01、質疑応答。
質問:特異な才能をどう判定するのか?
森村氏:わからない。一種の賭けなんですよ。見る目を持った人はいる。……〔田中一村の例が出た。〕……みんなが色々やっているなかで、特異な人が出てくる。エロス(魅力あるいはオーラ)がないと人は来ません。
(中略)
加藤氏:できてみてはじめてわかるということがあるので、みんなで応援してくれ。
15:31。時間の都合で質問は〆切、と司会者。15:33終了。
質疑応答や議論の時間を少なくとも、あと30分、できれば1時間欲しかった。
大阪市立近代美術館整備計画は、
http://www.city.osaka.lg.jp/yutoritomidori/page/0000020944.html
ここで、「ホワイト・キューブからアーバン・パッサージュへ-近代美術館あり方検討委員会からの提言-」(pdf, 262.21KB、25頁、2010年1月)が入手できる。
特異な人が現われるとか傑作を描けるような環境づくりについては、別のところで検討しているらしい。
2010年10月17日(日)。「大阪に集まった12の名画 -大阪市立近代美術館コレクション:モディリアーニ、マグリットから佐伯祐三まで」展/大阪歴史博物館の常設展観覧料600円。フォーラム終了後に再入場した。
今回は比較的近くから観察できる。福田平八郎の《漣》の青い部分は、一様で、階調がかかっているわけではなかった。一様な地と文だけの模様。ひょっとして視点は、下面では上方から、上面はより下方から、中間はその間から、という合成なのだろうか。
2010年10月17日(日)13:00~15:33。フォーラム「私たちの近代美術館をつくるために」/大阪歴史博物館4階講堂/最寄り駅は地下鉄谷町四丁目。
聴衆は当初で110名くらいか。後に少し増えた。以下は、わが興味中心的な要約で、表現も発言通りではない。司会進行は、おかけんた氏(タレント、現代美術コレクター)。
13:05、菅谷富夫氏(大阪市立近代美術館建設準備室研究副主幹)による「近代美術館整備の経過と現状」。
場所は、中之島の国際美術館の来たにある駐車場(駐車場だけではなく、その北の砂地の場所も含まれることを、二回目に常設展を見たときに確認した)。
近代美術館あり方検討委員会(加藤種男氏は委員の一人)からは、10の挑戦として提言があった。
http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/yutoritomidori/0000065467.html
近代美術館あり方検討委員会からの提言 -10の挑戦-
ホワイト・キューブからアーバン・パッサージュへ
1.ひとが集い憩える新たな美術空間・パッサージュを
2.保有する二つの資源 -国内屈指のコレクションと中之島- の活用を
3.オンデマンド展やリクエスト展といった斬新な視点に立った展覧会活動を
4.美術館を核に中之島を学びの場に
5.美術館の現場に市民・NPOがリードし活動する協働のプラットフォームを
6.地域を活性化させるアート活動を積極的にサポートできる体制を
7.ブランド・マネジメントの視点を持った市民・NPO主体の運営体制を
8.作品をしっかりと展示・収蔵できる充実した施設と、多彩な交流スペースを
9.博物館群統合から生まれる連携と再編成で合理的運営を
10.水と交流の都市軸復活をめざして、まちづくりを発信できる中之島の美術館を
〔アーバン・パッサージュへ、オンデマンド展、ブランド・マネジメント、とはなんだろうか。〕
単なる作品鑑賞の場ではなく、居心地のよいホットする楽しいところ。学校と連繋として教育活動もする。外の活動にも参加し、また受け皿になる。
収集品は、寄贈約3,400点と購入約1,000点で、合わせて約4,400点〔後に8階で訊いたところでは、購入総額は153億円。寄贈品の受け入れ当時の評価総額は??億円(失念)。〕
「元気な大阪」をめざす政策推進ビジョンにおいて、中核施設に位置づけ。2016-2017年に建物完成予定。
講演1.「美術館建設は未来への投資」
石坂泰章氏(株式会社サザビーズジャパン代表取締役社長)
・観光資源になること。金沢21世紀美術館の例を挙げた。
・雇用創出。創造的な人を引きつける。『アエラ』1994.5.23の51頁の調査報告書を紹介。
・コレクションの厚み。市の中心部にあるという良い立地条件。フラっと行ける所。
予想落札価格(100万ドル) 当時の購入価格
モディリアーニ〔1917〕 40-60〔36-54億円〕 19億円
ボッチョーニ〔1911〕 12-18
デ・キリコ〔1916〕 4- 6
マグリット〔1957〕 15-20
ダリ〔1934年頃〕 3.5-4.5
本格的な美術館は、大阪市に税収入をもたらす。世界を相手に競争し、入館者200万人をめざす。
下記のガルブレイスの言葉を引用した。
「必需品が行き渡った社会では、人々の関心は楽しみや美しさに向かう。デザインや音楽、絵画などである。〔後略〕」(日本経済新聞 2004.1.28)。
講演2.「来るべき美術館/作家の視点から」
13:53~ 森村泰昌氏(美術家)
美術家とは夢物語を語る人。
では、そもそも美とはどんなことか。
海に夕日は美しいといった美もあるが、簡単ではない場合もある。
17世紀のオランダのレンブラントの「夜警」を例。小林秀雄の本『近代絵画』(昭和29年の雑誌に掲載)。二つのまったく違った美の対立を小林は語っている。<みんなの美>とレンブラントの特殊な美。しかし今では、全世界の人が見に来るだろうような、みんなの美である。特殊な美として表れるが、突出したものなので、少数派。それが、みんなが納得するには時間がかかる。もう一つの例として、生前は1枚か2枚しか売れなかったゴッホ。
二人だけに光を当てるのではなく、注文主の市民全員に光を当てて描いていたら、フラットな凡庸な絵になっていただろう。アムステルダム市民は、レンブラントという突出した人を選び、任せた。わたしたちがすべきことは、様々な意見を出し合うことではない。特別な形で提案できる人物を選ぶことが大事。誰に美術館の構想を任すのか。少数精鋭のプロジェクト・チームを作るのがよいと思う。多くにすると平均値になるので、五人くらいか。美術館の精鋭部隊を作って、構想を任せる〔ことを森村氏は主張した〕。14:22了。
講演3.「市民の美術館にむけて」
14:24~ 加藤種男氏(アサヒビール芸術文化財団事務局長)
建設に100億円かかるとすると、年間20億円の効果で5年で償却できる。効率の良い投資である。すでにある博物館をグループ化して経営すれば、運営費増は少ない。メディア芸術関連とで一つのものを一つの建物に作れば、コストは半分、管理コストも削減できる。
しかし、美術館はそれだけで儲かるものではない。人間が生きていくうえで無くてはならない美を展示する。社会的投資である。
経済的投資の場合は、投資者に利益が戻る。戻るのは、経済的価値で、安全で短期に戻るが、社会的投資は、そうとは限らない。利益はすぐには戻らないし、大阪市民やその他に利益があ。金以外のなにが、また、いつ返ってくるか、わからない。
ここからは妄想だが、瀬戸内海は東アジアのなかで重要だから、関西空港(瀬戸内空港と考えたい)からすぐに島々をクルージングしてもらう。最後に中之島で近代美術を味わってもらう。14:48了。
(10分休憩。)
15:01、質疑応答。
質問:特異な才能をどう判定するのか?
森村氏:わからない。一種の賭けなんですよ。見る目を持った人はいる。……〔田中一村の例が出た。〕……みんなが色々やっているなかで、特異な人が出てくる。エロス(魅力あるいはオーラ)がないと人は来ません。
(中略)
加藤氏:できてみてはじめてわかるということがあるので、みんなで応援してくれ。
15:31。時間の都合で質問は〆切、と司会者。15:33終了。
質疑応答や議論の時間を少なくとも、あと30分、できれば1時間欲しかった。
大阪市立近代美術館整備計画は、
http://www.city.osaka.lg.jp/yutoritomidori/page/0000020944.html
ここで、「ホワイト・キューブからアーバン・パッサージュへ-近代美術館あり方検討委員会からの提言-」(pdf, 262.21KB、25頁、2010年1月)が入手できる。
特異な人が現われるとか傑作を描けるような環境づくりについては、別のところで検討しているらしい。