東京東部労働組合【公式】ブログ

全国一般東京東部労働組合の記録

添乗員の時間外割り増し賃金の計算方法(実践編・知識編)

2007年06月06日 14時37分14秒 | 添乗員・旅行業界
添乗員の方からの質問「添乗員の時間外労働賃金の計算方法を教えて下さい」
実践編・知識編特集

質問
「全国一般東京東部労働組合様
時間外労働手当ては、どのようにしたら計算できるのですか。日当です。会社は一日12時間としてツアー毎に支払っているといいます。この場合どのように計算するのですか。休日手当・深夜手当もどう計算すればいいか良くわかりません。あと、労働時間も何時から数えたらいいかわかりません。空港でショーアツプした時からでいいのでしょうか。ホテルでの終了の時間は?朝は?あと、休憩時間はないですよね。これも労働時間にいれるべきと思うのですが。申し訳ありませんが、教えて頂ければ助かります。」

お答えします。
実践編
① 「日当と一日12時間」について
私たちの考え方としては、法定労働時間は一日8時間ですから、あくまで一日8時間で計算します。
現在の旅行業界で流布されているこの「12時間」とは、あくまで旅行約款で定めている「お客に対して会社が添乗サービスを提供できる時間は12時間です」でしかありません。これは例えばコンビニが24時間営業していることと同じです。店が24時間営業していても店員を24時間働かせていいわけがありません。しかも、実際にはこの「約款」すら違反しているのが現状です。(「約款」違反で国土交通省の責任も問われなければなりません) 。

旅行約款とは、雇用契約書でもなければ、就業規則でもありません。
そもそも、多くの旅行会社や添乗員派遣会社には添乗員が適用される就業規則も36協定(これがないと1分・1時間の残業も命令できません)もなく、まともな雇用契約書もありませんので多くの場合「12時間」は会社側の勝手な言い分です。
みなし労働と同様、この「12時間」にも反対しなければなりません。
私たちはあくまで「法定」の一日8時間で計算して請求しましょう。

② 労働時間は何時から何時まで
阪急交通社の場合は、「空港では添乗員は集合時間の一時間前(出発時間の3時間前)にSHOWUPしてお客様を迎える準備をしてください」となっていますので、労働時間はここからカウントします。バスは「お客様集合時間の40分前には受付の準備」ですので同様です。
ホテルで、添乗員は朝食場所に15分前に待機することとなっていれば、その日の労働開始時間はそこから計算します。
ホテルとの打合せ時間や本社との電話相談やバス乗車時の受付「集合15分~20分前」から仕事が始まる場合は、この時間から計算します。
ホテルの夜は、部屋割り・夕食時・ホテルとの打合せ・お客様の訪室・ツアー参加者からの相談・「旅日記」作成などが全て終了した時間までを入れます。夜中の突発的労働(電話相談・病気の手配等)はその実労働時間を入れます。
バス内や飛行機内も当然実労働時間として計算します。
打合せと精算業務時間は、実労働時間(時給単価×実労働時間)で計算してください。各社バラバラの「精算手当」などは、あくまで「手当」ですので賃金ではありません。

③ 休憩時間
労基法での休憩時間とは「労働から完全に解放されている時間」を言います。また「待機時間」は実労働時間とされています。お客様の自由行動時間は、自動的に添乗員の自由時間となるわけではありません。その時間に乗務員との打合せやその日のホテルなどとの打ち合わせもあります。お客様からいつ携帯でよぴ出しがあるかも知れません。この時も実労働時間です。
労基法では、8時間の労働時間に対しては1時間の休憩時間を与えないと違法となっていますが、多くの添乗員は実際には休憩時間は与えられていませんので、その1時間分を足して計算しましょう。

④ 深夜労働と割増手当
夜10時から朝5時までの労働は全て深夜労働時間で計算します。25%以上の割り増しです。
残業時間の延長の深夜労働は50%(25%+25%)以上の割り増しとなります。
「早朝スタンバイ・深夜帰着手当」はあくまで賃金ではなく「手当」ですから、計算上は無視してください。

⑤ 休日労働手当と割増手当
労基法では、1週間に1日、又は4週間に4日の休日(法定休日の日として会社が特定する休日。一般には日曜日が多い。就業規則に明記すべき)に労働させた場合の割増賃金。割増率は基礎単価の35%以上です。
法定休日労働日における時間外労働は時間外労働手当を上乗せせず、休日労働手当のみでよいことになっています。しかし深夜労働になった場合は、深夜労働手当はつけなくてはいけないので、35%(休日)+25%(深夜)=60%以上の割増率になります。
となっていますが、そもそも法定休日を決めていない会社が多いため、私たちとしては、ツアーが7日以上連続する場合は、7日目のその日を「休日」として計算して労基署に提出しました。

⑥ 計算式
時給単価(日当8千円の場合は、8時間で割った一時間1千円)を出します。
一日8時間か週40時間を超えた労働時間×時給単価×125%を出して、その一ヶ月毎(締め日の翌日から締め日まで)で集計します。同じく深夜労働時間と休日労働時間の手当も含めた総計をだします。
以上の過去2年分の合計額が未払い賃金の請求額となります。
できるだけ詳細な労働時間の記録を請求額に添付して請求書を作成します。

⑦ 裏づけとなる資料と記録と記憶
添乗指示書、アイテナリー、業務日報、報告書、「旅日記」、賃金明細書、車内販売指示書、添乗員マニュアル、オプションツアーの時間指定、集金指示書、ショッピング立ち寄り指示書、お客さまへのチラシ、パンフレット、内勤者はタイムカード等々あらゆるものが貴重な資料と証拠となります。できうる限り原本かコピーなどで保存しておくことをお勧めします。対客電話時間も携帯電話の「履歴」が立派な証拠となります。会社からの業務連絡電話等、不測の事態は、時間記入された携帯電話の「履歴」やメモを残しておきます。携帯の「履歴」はできるだけパソコンで保存しておきましょう。無理な方はメモに記録して保存しましょう。

個人の日記や記録ノートも大切です。場合によれば家族の証言も採用される場合もありますので、ぜひご家族の協力も求めて下さい。

(過労が原因の労働災害・労働傷病・労働障害の時も上の記録が重要になります。)

全国の添乗員のみなさん!
阪急トラベルサポートの添乗員のみなさん!
全国一般東京東部労組に加入し一緒に未払い残業代を取り戻しましょう。
HTS支部の闘いを応援しましょう。。
署名運動を成功させましょう。

以下、知識編です。


*************************************************
知識編
残業代・割増賃金とは次の3種類です。(労基法37条と政令)
(1)時間外労働手当(残業手当)
 1日8時間、1週40時間(法定労働時間)を超える労働に対する割増賃金です。割増率は基礎単価の25%以上です。
(2)休日労働手当
 1週間に1日、又は4週間に4日の休日(法定休日の日として会社が特定する休日。一般には日曜日が多い。就業規則に明記すべき)に労働させた場合の割増賃金。割増率は基礎単価の35%以上です。
 法定休日労働日における時間外労働は時間外労働手当を上乗せせず、休日労働手当のみでよいことになっています。しかし深夜労働になった場合は、深夜労働手当はつけなくてはいけないので、35%(休日)+25%(深夜)=60%以上の割増率になります。
(3)深夜労働手当
 午後10時以降翌日午前5時までの労働(深夜労働)に対する割増賃金。割増率は基礎単価の25%以上です。多くの添乗員の場合、残業時間の延長時間となるため50%以上増しになります。

<割増賃金の基礎単価の算出方法>
割増賃金を計算するため、割増賃金の基礎単価として1時間当たりの賃金を次のとおり算出します。
①時間給制であれば、その時間給単価を1時間当たりの賃金とします。
②日給制の場合には、1日の給与を1日の所定労働時間数で割って、1時間当たりの賃金とします。
③月給制の場合は、月給を1ヶ月の平均所定労働時間数で割って1時間当たりの賃金とします。
 この場合の割増賃金の計算の基礎になる月給は、労働の対価として支払われる給与の総額をいいますので、基本給だけでなく、諸手当も含まれますが、下記のものは除外されます。
 割増賃金の計算の基礎になる賃金から除外されるもの
 1.家族手当 2.通勤手当 3.別居手当 4.子女教育手当 5.住宅手当 6.臨時に支払われた賃金 7.1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

<時効>
 残業したのに支払われていない残業代は本来、その総額が返還されるべきです。しかし現在、労働基準法では第115条で「この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅する。」となっており、不払い残業代も賃金の一部である以上、この規定に制約され、請求時からさかのぼって2年間に限って請求できることになっています。

<残業時間の立証証拠>
 業務日報など会社側資料で残業時間が立証できればそれでもよいし、それら会社側の資料が一切ない場合でも、本人が毎日、残業時間を日記風に記録していた場合は十分闘えます。
 さらにそれもない場合はどうするか。その場合は記憶をさかのぼらせて呼び起こし、残業時間を一日ごとに作り、要求する期間の合計を出す。

<労働時間の把握は会社の責任>
 労基法32条は法定労働時間を定め、「使用者は労働者に…(それを)超えて、労働させてはならない」と義務づけていますが、同条を遵守するためには、使用者は日々、個々の労働者毎に「8時間を超えて、労働させて」いるか否かについて常に把握していなければならないからです。ちなみに、労基法108条は使用者に賃金台帳の作成を義務づけており、同台帳には「賃金計算の基礎となる事項…を賃金支払いの都度遅滞なく記入しなければなら」ず、月給制の場合には「賃金の支払いの都度」労働時間を記録する義務があるとなっています。

<遅延損害金、付加金の請求>
 賃金などが支払われない場合、本来支払われるべき日の翌日から遅延している期間の利息に相当する遅延損害金年利6%(商法第514条)の請求ができます。退職者の場合は年利14.6%(賃確法第6条)です。また、時間外・休日・深夜労働の割増賃金等の未払金を裁判上請求する場合には、本来支払われるべき額と同額の付加金を請求できます(労基法第114条)。
****************************************

コメント (69)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« JOMOグループ「アジア商... | トップ | 6月8日週刊金曜日に署名運動... »
最新の画像もっと見る

69 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
6月15日(金)に集まりましよう (本部担当スタッフ)
2007-06-07 05:02:12
呼びかけます。
元添乗員のみなさん!
現役添乗員のみなさん!
いつもいつも応援してくださる皆さん!
一度集まりませんか。
コーヒーでも飲みながら、ぜひ、みなさんの苦労話しやご意見を聞かせて下さい。

日  6月15日(金)
時間 午後12時
場所 NPO法人労働相談センター
地図参照 http://www.rodosodan.org/ikikata.htm

返信する
国土交通省は「貸切バス事業者に対する重点監査の実施結果について」を発表 (本部HTS支部担当スタッフ)
2007-06-07 05:04:19
6月1日、国土交通省は「貸切バス事業者に対する重点監査の実施結果について」を発表しました。
国土交通省ホームページ参照
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/09/090601_2.html
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/09/090601_2/01.pdf

これによると、ツアー観光バス会社の8割が「過労防止義務違反」の法令違反をしているとのことだ。主な過労防止義務の中身は、拘束時間・休憩期間・連続運転である。添乗員の悪劣な労働条件をも裏付けるものです。すさまじい内容です。過労死や大事故が続発することは間違いありません。

本来であれば、その最大の原因を作る、かつ一番悪いのは、法律に違反しても、無理無体な低い金や低コストを、バス会社に強要し続ける注文主である旅行会社にあることは火を見るより明らかです。

国土交通省は何故そこまでメスを入れないのでしょうか。ツアー観光バス会社の事故も、本来逮捕されるべきは旅行会社のはずです。

私たちはドライバーの皆さんや中小経営者とも連携して進んでいきましょう。
返信する
Unknown (旅行綜研添乗員)
2007-06-07 05:14:42
全国の添乗員や元添乗員が「みんなで添乗員の残業代を取り戻そう」を合言葉に、一斉に労働基準監督署に申告できたらいいのに。
15日は私は仕事で参加できませんが、皆様ができるだけ多く参加されるとうれしいですね。
返信する
ありがとうございました (添乗員)
2007-06-07 16:50:14
計算の方法を質問させてもらった者です。
丁寧なご回答に恐縮しております。
早速参考にして自分なりに計算してみます。
本当にありがとうございました。
返信する
計算します (やめて1年の添乗員)
2007-06-07 17:54:27
退職して1年になりますが、時効は過去2年だそうなので、今からなら1年分は残ります。

私も計算してみます。

それからどうしたらいいか、また相談にのって下さいませ。
返信する
Unknown (Unknown)
2007-06-07 22:30:35
駅の立ち食いそば屋・牛丼屋・ファーストフード等で文句を言っているお客っていますか?アンケートってありますか?
同じ格安店です。なぜ添乗員だけがアンケート等で文句をいわれなければいけないのか?
時給に換算すると格安店等の中でいちばん安い賃金で働いているのが添乗員です。
他の格安店は実働8時間・時間外有り、日本の添乗員の職業とは世界で一番賃金の低い職業ですか?
世界の恥ですね・・・日本の旅行業界は・・・。
返信する
東京都の最低賃金は時給719円 (国内添乗員)
2007-06-07 22:44:42
時給719円より安い添乗員の賃金。

私の日当を実労働時間で割ると、最低賃金法違反となります。

会社は「安売り」でも儲かる仕組みはここにあるのです。

ナンジャーコリャーです。

会社経営陣を逮捕して下さい。

獄門磔にして下さい。
返信する
パリのガイドが立ち上がった (パリ日本語ガイド協会会員)
2007-06-08 06:44:23
パリのガイドが立ち上がりました。パリの中心街、ルーヴル、ヴェルサィユ宮殿前などで、継続して添乗員さんたちに連帯のメッセージを配っています。
その全文は以下の通り。

世界を駆け巡るツアーーコンダクターの皆様、

 本格的なツーリスムのシーズンに入り皆様方には時計に追われる日々が続いているかとお察し致します。お疲れ様です。日頃、皆様方と協同で仕事をする機会のある我々ガイドに取りまして、お客様の安全の責任を担っている皆様のご苦労の程はひしと肌で感じているしだいです。朝夕のお客様のケアー、レストランケアー、チェックイン、またそれらに加えた現地英語ガイドの通訳等々、皆様の任務は多岐に渡っております。しかし現実には、仕事の量と質に応じてペイが上がれば結構なのですが、ペイは上昇するどころか下降し、サービスの量だけが増えているのが現状ではないでしょうか?
 ところが日本のエージェントは、こともあろうに、ツアーコンダクターに私達の仕事を奪うような企画をし始めております。つまり、皆様方に歴史建造物(モニュメント)の中や歴史的な市街地でガイディングを任せるというフランス共和国の法を無視した企画です。これは私達の存在を無視し、皆様方に更なる負担をかける企画になります。
 フランス国内での労働は、外国人ならば、フランス国の労働許可証を保持している者のみが出来るものです。ましてや、フランス国が数百年の努力を重ねて育て上げてきた歴史・文化建造物(モニュメント)ではフランス国が与えたガイド資格を持っている者のみがガイディングできるという法律があります。つまり、ツアーコンダクターによるガイディングは法律上、<違反行為>なのです。
 したがって、日本エージェントのこのような目論見はフランス共和国の法を二重に踏みにじるものであります。
 エージェントの下請け制度の中で巧みに雇用されている皆様方には勿論責任はありません。そして、私達ガイドもまた下請け制度の中で労働条件が悪化の一途を辿っているツーリスムジャパンの現状に黙ってはおれません。
 ツアーコンダクターの皆様!
 私達との協同連帯の下に、日本エージェントのこの恥ずべき企画には断固とした反対と抵抗の意志を表わして行こうではありませんか。その為には司法の手を借りてでも何らかの行動を起こすつもりでおりますので何卒ご理解のほど宜しくお願いいたします。お互いの利益と共存を勝ち得るために!!     
パリガイド通訳協会全会員一同


返信する
パリ日本語ガイド協会会員さんへ (本部スタッフ)
2007-06-08 10:33:30
パリ日本語ガイド協会会員さんへ
コメント拝見しました。ありがとうございます。

フランスの法を守らず、違法・犯罪行為を添乗員に強制させ、かつフランスの仲間たちの職を奪おうという日本旅行会社とそのフランスでの関連会社の不正と真正面から立ち向かい闘っておられるフランスの仲間たちに心からの敬意と連帯の気持ちを送ります。

「パリの中心街、ルーヴル、ヴェルサィユ宮殿前などで、継続して添乗員さんたちに連帯のメッセージを配っています。」とのこと。皆様がビラ配布している様子が目に浮かびます。本当にご苦労さまです。

私たちも今後とも、「添乗員に違法・犯罪行為のガイドを強制するのはやめさせろ。フランスの仲間たちの仕事を奪うな。日本の旅行会社はフランスの労働法を守れ」と強く要求しつづけなければいけません。

旅行業界経営陣や国土交通省にこそその責任があります。

共にがんばりましょう。
返信する
Unknown (Unknown)
2007-06-08 22:45:46
これは、みなし労働をかたっての詐欺です。行政機関をも欺いた事になるはず。裁判を起こして賠償請求をしたほうがいいのでは?

裁判費用は添乗員達からカンパを集めましょう。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

添乗員・旅行業界」カテゴリの最新記事