写真=固定残業代制度をなくす解決を果たした原告組合員3人と酒田弁護士(左端)
動画=固定残業代制度を廃止させたぞ!
固定残業代制度を廃止させたぞ!東部労組多摩ミルク支部裁判が画期的解決!
闘いをよってたかって支援してくれた皆さんに心から御礼申し上げます
全国の労働者の皆さん!労働組合で長時間労働と残業代不払いをなくそう!
東京・葛飾で飲食品を輸送している「多摩ミルクグループ」の労働者でつくる全国一般東京東部労組多摩ミルク支部のうち、同グループの株式会社エイチ・ビー・エスでドライバーとして働いている3人の組合員が、固定残業代の無効を主張したうえで未払い残業代などの支払いを東京地裁に求めた裁判で、4月12日、組合側の主張がほぼ認められる内容で解決(=和解成立)しました。
解決の主な内容は、過去の未払い残業代として組合員が納得できる額の解決金を会社が支払うとともに、今後の労働条件は賃金の半分をも占めていた固定残業代を廃止し、その大部分を基本給に組み込む賃金に是正させるものです。なお、金額等は非開示条項があるため明らかにできないことをご了承ください。
これまで原告の3組合員はビールなどの配送を担当するドライバーとして、過労死レベル(月80時間の残業)をはるかに超える長時間労働を恒常的に強いられてきました。ひどい人では残業時間だけで月206時間という殺人的な長時間労働でした。
その背景には、賃金の半分をも占める「固定時間外手当」の存在がありました。
同社の求人募集案内には単に「給与30万円」などとしか記載されていませんでしたが、実際には月給30万円のうち15万円が固定時間外手当になっていました。どれだけ長時間の残業をやったとしても定額の手当を上回る残業代は支払われませんでした。また、固定時間外手当をのぞく基本給だけで計算すると時給が最低賃金を下回るというデタラメさでした。
組合の申告を受けて向島労働基準監督署は2014年4月に同社に是正勧告を行いましたが、同社は勧告に従わず、未払い残業代を1円も支払いませんでした。このため組合員3人は東京地裁に提訴するとともに、経営者を刑事告訴しました。同労基署は送検、検察は労働基準法違反で起訴。その結果、同社と経営者は2016年2月に刑事罰(罰金刑)に処せられました。
また、多摩ミルク支部では昨年12月22~25日に違法な固定残業代の廃止や未払い残業代の支払いなどを求めて72時間ストライキに決起し、3日間連続で多摩ミルクグループの元請け会社である森永乳業東京工場前でアピール行動を実施しました。その後も12月26日に第2波の24時間ストライキ、今年1月26日にも森永乳業東京工場前アピール行動を行いました。
こうした闘いの成果として、今回の画期的な解決が実現しました。
闘いの過程で、原告の3組合員は多くても月20時間程度の残業というレベルまで大幅に残業時間を短縮させることができました。いつ過労死や交通事故を起こしてもおかしくない長時間労働をなくし、労働者の命と健康を守れたことが最大の成果です。そして、今回の解決によって、最低賃金に張り付いていた3人の時給は固定残業代の大部分が基本給に組み込まれたことで大幅に引き上げられました。さらに、今後は働いた時間に応じて残業代が払われるという当たり前の状態に是正することができました。
これもストライキ闘争やアピール行動への参加、裁判の傍聴、カンパなどでよってたかって支援していただいた皆さんのおかげです。心から感謝を申し上げます。
現在、同社だけではなく、前もって残業代を賃金に含んだり、様々な名目の手当を「残業代として支払う」などと就業規則や雇用契約書で定めたりする固定残業代制度を導入する企業が増えています。固定残業代制度が労働者に長時間労働やサービス残業を強いる「ブラック企業」の常とう手段として悪用されています。
今回の多摩ミルク支部の闘いとその成果は、労働組合で団結して声をあげれば固定残業代制度をなくすことができるということが証明できました。全国の労働者の皆さんに多摩ミルク支部に続いて労働組合で長時間労働と残業代不払いをなくすよう呼びかけます。
最後になりましたが、この裁判闘争を通して酒田芳人弁護士には多大なご尽力をいただいたことに感謝します。そして、もともと裁判の主任弁護士として活動している最中、昨年5月に急逝した吉田健さんをあらためて追悼し、全国の労働者に誇れる成果を獲得できたことを感謝を込めて報告させていただきます。本当にありがとうございました!