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「偽装みなし労働」不払い残業代請求訴訟における7.2不当判決について(上)

2010年07月19日 16時59分33秒 | 添乗員・旅行業界

主文(要旨)
■被告(阪急トラベルサポート)は原告に対し、12万3700円・・・を支払え
■被告は原告に対し、(付加金=ペナルティ)12万3700円・・・を支払え

これがこの判決の「結論」です。2ツアー(約20日間)に絞って請求した不払い残業代のほぼ組合側請求に近い金額です。
これだけ見れば、「みなし労働は適用されない」との判断からこの結論が導かれた、と思うのは当然です。
しかし、この判決を作成した田中一裁判官の考え方は違うのです。
今回より2回に渡って、この判決の矛盾について検証します。

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はじめに
2010年7月2日、東京地方裁判所民事第36部田中一裁判官は、全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合HTS支部が旅行添乗員に係る「事業場外みなし労働時間制」(以下「みなし労働」という)適用の是非をめぐり、組合員1名を代表として申し立てた労働審判の異議訴訟において、初審の判断とは180度異なり、「みなし労働」適用を是とする、およそ旅行添乗員の実態とはかけ離れた不当判決を下した。
同判決は、事実認定において、被告である会社が「算定し難い」としている添乗員の労働時間を認定し、それに基づいて不払いの残業代を実際に算出しておきながら、「裁判所が労働時間を算定することと労働時間が算定できるかどうかは別」との趣旨で「みなし労働」を容認、労働時間を「算定し難い」と結論づけるのである。しかも、なぜ「みなし労働」が適用されるのか、その理由について詳細を明らかにしていないのである。まさに「結論ありき」「みなし労働ありき」という、司法としての判断を放棄した非常におそまつな判決であると言わざるを得ない。

以下、同判決の矛盾を検証することで、その不当性を明らかにする。

第一 事実認定
1.田中一裁判官自身が労働時間の算定を行っていること
まず、この判決は、「みなし労働」適用を是とし、添乗員の労働につき「労働時間を算定し難い」としているにもかかわらず、田中裁判官自ら労働時間(始業・終業時間)を認定し、実労働時間を算定しているのである。
以下、判決において田中裁判官が認定した労働時間を以下の通り局面毎に列記する。
1)出発日の始業時間
お客集合時間(出発時間の2時間前)の1時間前あるいは日報上「受付スタート」と記載された時間をもって始業時間とみなすべきである。これについてはマニュアルにおいて指示がなされている。
2)飛行機内
出発後1時間、到着前1時間の合計2時間のみを労働時間とする。
3)食事
食事について、「オーダーした飲物が、完全に配られるまで席に座らない」「食事が滞りなく進んでいるか、不備がないか気を配る」などマニュアルで指示されている。このことなどから、食事中であっても使用者の指揮命令下にあり、労働時間とするべきである。
従って、団体で朝食をとる場合には1時間、各自で朝食をとる場合には30分、夕食を宿泊先でとった場合には1時間を労働時間とするべきである。
4)オプション・自由行動
マニュアルにおいて、希望者を募り案内すること、別行動の参加者には緊急連絡先を知らせておくことが指示されていた。よって、ツアー参加者と同行している場合には、これを労働時間とするべきである。
5)終業時刻
初泊の場合、ホテル到着後も参加者への連絡、解散後もお客の連絡に備えて待機しているので、到着後1時間から30分後を終業とする。
連泊の場合はホテル到着時刻、ホテルで夕食をとる場合は夕食終了時を終業時刻とする。
2.不払い時間外および休日労働割増賃金の算定を行っていること
判決では、「日報を重視して」以上の労働時間認定を行い、その上で実際の金額を算出している。以下、判決における計算方法と考え方を列記する。
1)日当は何時間分の対価か
会社は、「日当は所定8時間+時間外3時間分の対価である」と主張しているが、それを証明する証拠はない。よって、日当は8時間分の対価である。
2)割増賃金の基礎金額
原告の当時の日当16,000円÷8(時間)=2,000円が基礎賃金となる。
3)休日労働
勤務開始日から7日目は法定休日であって、その日の労働に対しては休日労働割増の支払いが必要となる。会社が主張する「変形週休制」は起算日が明らかでないので採用できない。
4)「非労働時間」はない
添乗業務は、ツアー参加者に随伴することが本質であり、ツアー参加者の要望を聞き、トラブルや苦情に対応するのが職務であるから、飛行機内での一部を除き、非労働時間は存在しない。バス車内の時間についても、安全運行の確認などがマニュアルで指示されていることから、労働時間に当たる。
5)不払いの金額
以上のことから、不払い残業代および休日労働割増賃金の合計額は123,700円となる。
6)付加金(ペナルティ)の支払い命じる
時間外および休日労働割増賃金不払いに対し、制裁として同額の付加金の支払いを命じる。
3.小活
以上の事実認定および不払い賃金の計算方法は、国内宿泊旅行について「みなし労働」適用を認めず、不払い残業代およびペナルティとして同額の付加金の支払いを同じ会社に命じた東京地裁民事第11部鈴木拓児裁判官の判断とほぼ同様のものである。このような事実認定に基づけば、「労働時間は算定できる」ことになり、「みなし労働」適用は否定されるはずである。
しかし、田中裁判官は、「労働時間の認定」と「みなし労働」適用を結びつけることはしないのである。そして根拠もなく、「みなし労働」を肯定するのである。

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ではなぜ、田中裁判官は「みなし労働」適用を是と判断したのでしょうか。
次回はその判断について検証します。

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2010-07-22 17:50:03
旅行業界は、今の相撲界と似ているところがあるかも。
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