夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

人類滅亡まで90秒「(ウクライナ戦争が)誰の手にも負えなくなる可能性は、依然として高い」」

2023-01-25 16:02:25 | 社会

 1月24日、アメリカの「原子力科学者会報Bulletin of the Atomic Scientists」の人類滅亡までの時間は更新され、昨年より10秒短い90秒となった。
 その声明は、「今年、原子力科学者会報の科学安全委員会は終末時計の針を前に進めたが、これは主に(排他的ではないが)ウクライナでの戦争の危険性が高まっているためである。時計は現在、真夜中まで 90 秒を指している。これは、これまでで最も地球規模の大惨事に近づいている」と言う。
 
 この「終末時計」とは、「アルバート・アインシュタインとマンハッタン計画で最初の原子兵器の開発を支援したシカゴ大学の科学者によって 1945 年に設立された原子科学者会報は、2 年後に終末時計を作成した。人類と地球への脅威を伝えるためのゼロへのカウントダウンである。Doomsday Clock 終末時計は、10 人のノーベル賞受賞者を含むスポンサー委員会と協議して、Bulletin会報委員 の Science and Security Board によって毎年設定される。」というものである。
 この「終末時計」は、国家の利益に執着する政治家たちとは離れ、純粋に科学者からの物差しで測ったものとして、極めて客観的な意味を持つ。

 声明は「ウクライナでの戦争は、双方が勝つことができると確信して、2 度目の恐ろしい年に入るかもしれません 」とするが、当然、大部分はロシアの侵攻を非難している。
ロシアの侵攻により「ウクライナの主権と、第二次世界大戦の終結以来、おおむね維持されてきたより広範なヨーロッパの安全保障協定が危機に瀕している」からである。
「そして何よりも、核兵器を使用するというロシアの脅迫は、偶然、意図、または誤算による紛争のエスカレーションが恐ろしいリスクであることを世界に思い出させます. 紛争が誰の手にも負えなくなる可能性は依然として高い。」
 「ロシアはまた、チェルノブイリとザポリージャの原子炉サイトに戦争をもたらし、国際議定書に違反し、放射性物質が広範囲に放出される危険を冒しています。これまでのところ、これらの発電所を確保しようとする国際原子力機関の努力は拒絶されている。 」
「ロシアと米国の間で最後に残された核兵器禁止条約である新STARTは危険にさらされている。 」
 また、「戦争の影響は、核の危険性の増大だけにとどまらない。また、気候変動と闘うための世界的な取り組みを弱体化させる。 」
 そして要するに「ロシアのウクライナ侵攻は、核兵器使用のリスクを増大させ、生物・化学兵器使用の亡霊を引き起こし、気候変動に対する世界の対応を妨害し、その他の地球規模の問題に対処するための国際的な取り組みを妨害した。ウクライナ領土への侵略と併合はまた、これまでの理解に異議を唱え、安定を脅かす行動をとるよう他の国を勇気づけるような形で、国際規範に違反している」としている。
 NATOによるロシアの周辺までの東方拡大があり、2014年以降、ウクライナで紛争があり、ウクライナの民族主義者によってロシア語話者の多くが殺害されたとしても、ロシアによる軍事侵攻が正当化できないのは、当然のことである。したがって、客観的な立場に立つ科学者もロシアを非難するのは当然である。

本格的な和平交渉への道筋を!
 しかしそれでも科学者たちは、次の言葉でこの声明を締めくくっている。「しかし、少なくとも、米国は、戦争が助長した核のリスクの危険な増加を減らすために、モスクワとの原則に基づいた関与への扉を開いたままにしておく必要がある。リスク軽減の 1 つの要素には、誤算の可能性を減らすために、ロシアとの持続的でハイレベルな米軍間の接触が含まれる可能性がある。米国政府、そのNATO同盟国、およびウクライナには、対話のための多数のチャネルがある。本格的な和平交渉への道筋を見つけることは、エスカレーションのリスクを軽減するのに大いに役立つ可能性がある。この前例のない世界的な危険の時代には、協調行動が必要であり、一秒一秒が重要 だ」と結んでいる。

  科学者たちは、「本格的な和平交渉」の必要性を訴えているのである。

 1月25日、マスメディアは、NATO諸国によるウクライナへの新たな兵器供与のニュースを伝えている。ドイツはレオパルト2,アメリカはM1エイブラムスという最強戦車をウクライナに供与することを決めたという。それは、「本格的な和平交渉」とは正反対の、軍事力強化によるロシア軍の撃退を意図したものである。NATO諸国は、軍事力によってロシア軍を敗退させることが可能だという「希望的観測」に基づいて、兵器供与を強化しているのである。しかしそれは、声明の中での「双方が勝つことができると確信して」という言葉に示されているとおり、「双方」の一方であるNATO諸国側の不確かな「確信」に過ぎない。ロシアもまた、「勝つことができると確信して」いるのであり、総力を挙げて戦争遂行をしてくるのは疑う余地はない。
 現実は、NATO諸国もロシアも「誰の手にも負えなくなる」戦争に突き進んでいるのである。NATO諸国は、ロシアの侵略に対する正義の戦争と位置づけている。しかし「誰の手にも負えなくなる」戦争で、「90秒後」に人類滅亡が引き起こされるとしたら、NATO諸国は「ロシアが悪いのだから、人類滅亡も仕方がない」とでも言うのだろうか?

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