夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

感染爆発「肝心なことはやらない岸田政権の本性がばれ、支持率も低下し始めた」

2022-01-28 09:02:02 | 政治

 1月30日、日経新聞とテレ東の最新の世論調査が発表された。それによると、岸田政権の内閣支持率は59%で、前回12月と比べて6ポイント下落したという。また、「優先的に処理してほしい政策 」で「新型コロナウイルス対策」 が49%と前回から11ポイントも上がり、その岸田政権の対応についても、6ポイント低下したという。その要因がCOVID-19の爆発的感染拡大であることは、誰の目にも明らかである。
 これ以前の世論調査では、1月10日の時事通信が6.8ポイント増の51.7%、1月16日の読売新聞が4ポイント増の66%とそれぞれ発表されていたので、直近になって、内閣支持率が下落し始めたことを表している。それは、ここに来てようやく、岸田政権の一見、やってるふりで、肝心なことはやらないコロナ対策が国民の目に分かるように表れ始めたことを意味している。

 安倍・菅政権は、「後手後手」と言われたようにコロナ対策の失敗で支持率低下をまねき、最期は自滅した。岸田政権は、その失敗を繰り返さないようにと、首相自身が「スピード感を政策の実行へ向けていきたい」( 11日4日)と言い、「早め早めに対応」しているという印象を与えるのに懸命だった。しかし、実際には何をやったかと言えば、何もしていないのである。
 岸田首相は1月10日、コロナ対策の目玉政策として病床を3割増やすと胸を張ったが、実現したのはたかだか数パーセント増だけである。厚労省の「新型コロナ対策病床数推移」で、例えば東京都では、首相就任時の10月6日の6,651床が、2022年1月26日は6,919床、268床4.0%増えただけである。大阪府でも3,421床が3,753床、332床9.7%の増加で、とても3割増などには遥かに届いていない。新型コロナ対策病床数推移(厚労省)そもそも、コロナ病床数を増やすといっても、他の患者用の病床を転用しただけで、病症の絶対数が増えたわけではない。他の重篤な患者を断らざるを得なくなるのも当然のことで、医療体制自体は改善されないままなのは分かり切ったことである。
 感染爆発で、1月31日現在、東京都の病床使用率は50%間近にまで迫り、他の病症患者への悪影響などもあり、医療体制の逼迫は最悪な状況へと向かっている。
 国民は感染が疑われても、自宅療養という自主隔離が主になり、病院に行くことさえもできない。病気になっても患者が医療にアクセスできない状況に陥っているのである。これは、公的医療体制のひとつである保健所の人員・個所数を縮小してきた自公政権の政策が根本原因なのだが、それを岸田政権は踏襲してきた。保健所を縮小すれば、ただでさえ業務が逼迫する保健所は、国民と病院との連絡・橋渡しができなくなるのは、目に見えている。
 日本のPCRも抗原も検査数は、欧米、韓国の数十分の1にしか過ぎないが、その検査を軽視する政府の姿勢が、検査キットの不足という形で噴出する始末である。中国では、数日間に一つの都市で1000万回分、国全体では億単位の公的PCR検査を実施できているが、日本政府は1月25日に460万回分の抗原検査キットを確保したという程度で、確保数が2桁少ないのである。
 そして何よりも不手際は、ワクチン3回目接種を8か月経過後などと、言い出したことだ。その後、接種の経過後期間を短縮したが、各自治体に通知した「8か月経過後」が各自治体の整備不足をまねき、全OECD加盟国の中でも断トツの3回目接種の遅れを生じさせている。岸田政権は、ワクチン調達が順調に進んでいないので、そのことを隠し、科学的根拠ゼロの「8か月経過後」と無責任極まりないことを言っただけである。
 
岸田政権の「スピード感をもって対応してきた」は、錯覚
  国民が、何かやったような印象を受けたのは、9月頃からの急激な感染減少によって、政府がうまくやっているからだろうという錯覚に陥っただけである。すべての国で感染は上昇下降を繰り返すことで分かるように、政府が何もしなくても、下降局面に入っていただけである。それを政府の努力のせいのような宣伝に錯覚を起こしたのだ。また、前首相の菅義偉に比べれば、各段に話がうまいので、国民は本当にやってくれるだろうと幻想を抱いただけなのである。
 先に発生した欧米からは少しずれて、当然のように感染爆発は起きた。これは、専門家だけでなく、多くの人にとって予見可能なことだった。それを岸田首相は、肝心なことは「検討する」と言うだけで、実際にはやらずに4か月が経過した。それが、ここに来て、「実際には何もしない」という本性がばれ始めてきたのである。
 
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ウクライナ危機「ロシアの本格的侵攻などあり得ない。政治的理由で脅威は煽られる」

2022-01-27 10:47:46 | 社会
 
フランス2 国境沿いで演習中のロシア軍兵士

 2021年からロシア軍は、ウクライナ国境沿いに大規模な兵力を集中的に展開させている。西側メディアによれば、10万もの部隊を集積させているという。これに対して西側は、ロシアがウクライナ侵攻を画策しているという。しかしロシアのプーチンは、軍事侵攻を否定し、これ以上のNATOの東方拡大を辞めることを要求しているだけだという。つまり、ウクライナのNATO加盟は、ロシアにとっての極めて大きな脅威であり、加盟しないことを「法的な枠組み(主にアメリカとの公的な文章に残る外交交渉記録のこと)」で保証しろと言うのである。当然のように、西側、即ちEUはその要求を「主権国家の(NATO加盟という)選択をロシアに干渉させない」として拒否している。この問題にアメリカ・ロシアは首脳、外相会談を行ったが、それらの交渉では解決せず、アメリカは、1月26日にロシアの要求に文書で回答した。その詳細は公表されていないが、ロシアの要求であるウクライナをNATOに加盟させないことや東欧からのNATO軍の撤退は拒否したとメディアは伝えている。
 この状況で、アメリカと英国は、ロシアの侵攻が迫っていると、首都キエフの大使館員家族や自国民の避難、渡航自粛要請を始めた。本当に、ロシアはキエフを含むウクライナに大規模な侵攻をするのだろうか?
 
 この問題に、仏公共放送のフランス2は、1月24日に、西側軍事専門家の意見として、「今のところ、ロシアの本格的軍事進攻はない」と紹介した。これより前の22日に、ドイツ海軍総督のアヒム・シェーンバッハ司令官は、ウクライナ情勢に関する発言が物議を醸したことの責任をとり、辞任した。 「ロシアがウクライナを侵攻しようとしているなど、ばかげた発想だ 」(CNN 1月24日)と言ったのだ。この発言と、上記のフランス2の放送を重ね合わせれば、軍事的には、ロシアが本格的侵攻するのはあり得ないということである。つまり、ロシアはウクライナ全土を占領するほどの部隊を国境沿いに集積させているのではないと、軍事専門家は見ているということである。そもそも、ロシアが本格的侵攻するのには、10万程度の兵力では不可能なことは素人でも分かる。アメリカはイラクに対する湾岸戦争(「砂漠の嵐」作戦)で、50万人以上の地上部隊を投入し、その侵攻のために数百機の最新鋭戦闘機を出撃させているのである(防衛省 防衛研究所)。ウクライナはイラクと異なり、西側の最新兵器で武装している。10万人程度の地上部隊で、ウクライナへの本格的侵攻などできないのは、明白なのである。
 そもそも、プーチンがウクライナ侵攻を決断すれば、短時間で攻撃は開始されるはずだ。わざわざ数ヶ月前から、これから侵攻するぞと部隊を見せつけ、ウクライナ政府に反撃の準備と、NATO加盟国がウクライナへの軍事支援をするための時間を与えるなど、あり得ない。
 とは言っても確かに、ロシアがウクライナに軍事的介入を行うシナリオがまったくない、というわけではない。それは、ウクライナ東部のロシア人(西側メディアは親ロシア(pro-Russian)派と表現するが、彼らは国籍はどうあれ、アイデンティティとしてロシア人だと認識している)勢力支配地域には非公式のロシア軍が、クリミア半島には正規のロシア軍が、既に展開していることから分かるように、その増強を図るということである。つまり、目にはっきりとは見えず、やっていないと否定できる程度の軍事介入を行うということである。また、これも既に画策されていることだが、ウクライナ政府へのサイバー攻撃、キエフの親ロシア派政権樹立への謀略等である。逆に言えば、ロシアにはそのぐらいの戦術しかないのである。なぜなら、ウクライナに目に見える形で軍事侵攻すれば、西側はロシアの侵略を大々的に喧伝し、正当な防衛を盾に、既に準備を整えたあらゆる形の軍事作戦が可能になり、言わば「西側の思うツボ」にはまるからだ。
 バイデンは、もしロシアが侵攻したら、プーチンも制裁対象にするのかと問われ「そうなるだろう」と答えた。アメリカは敵対する国家に対して、その首脳だけは、制裁対象とすることは避けている。例えば、中国の習近平個人は制裁対象になどしていない。そんなことをすれば、制裁対象との首脳会議など不可能になり、国際会議も同席できず、外交関係が断絶しかねない。相手国からは、宣戦布告に等しいと見做される。
 これはどういうことなのかと言えば、バイデンとその側近は、プーチン個人を制裁対象にするようなことは現実には起こらない、つまりロシアが明らかな形で侵攻することはない、と見ていることを意味している。
 要するに、軍事専門家も本格的侵攻に否定的であり、アメリカ政府もプーチンがそれを強行することはありも得ないと、内心は考えているということである。
 政治的理由によって、脅威は協調される
 政治家が敵対する国の、この場合はロシアの、実態以上の脅威を強調するのは、政治的理由があるからである。アメリカと英国が他の国より先に、ロシアの侵攻を差し迫ったものと強調し、大使館員家族の避難を始めたのも、米英の軍事同盟を強固にしたいという政治的狙いがある。その動きには、当のウクライナ政府外務省が「時期尚早で過剰な警戒だ」 とコメントしたほどだ。NATO加盟国の中でも、フランスのマクロン、ドイツのショルツ、イタリアのドラギは米英には同調せず、マクロンが仏、独、ロシア、ウクライナの高官会談をパリで開催したように、交渉での解決を模索している。一般に軍事的緊張は、軍事力増強を目指す右派政権に国民の支持が増大するなど、タカ派に有利に働くが、この三国の政権は中道派であり、英国保守党政権などとは、外交姿勢が異なる。それは、オーストラリア右派モリソン政権が、アメリカ原潜を導入を決定するなど、対中国軍事包囲網を強化しているのに対し、ニュージーランド中道左派労働党アーダーン政権が慎重なことと共通している。概して、右派は敵対する国に軍事力中心の強硬路線で臨み、左派は外交を重視するのである。さらに言えば、軍部は自らの予算の増大と軍事力の役割を主張するために、敵対する国の脅威を強調するのである。中国による台湾軍事侵攻が差し迫っているという情報が、常にアメリカ軍司令官から出てくるのは、そのためである。
 アメリカバイデン政権と英国ジョンソン政権が、ロシアに強硬姿勢を見せるのには、さらに訳がある。バイデンは国内支持率低下に見舞われ、ここは共和党タカ派も巻き込み、対中国、対ロシア強硬路線を内外に示す必要がある。それによって、支持率低下を抑えなくてならないのだ。ジョンソンは、ロックダウン中に行った官邸内飲食パーティー、自身の誕生日パーティーで、与党内からも辞任を迫られている。何とか少しでもその問題から世論の目をそらし、外交の方に向けさせなければならない。
 
プーチンの狙い
 それらのことは、ロシア側も同様であると言っていい。プーチンが、西側に強硬なのも政治的理由による。プーチンはNATOの脅威を強調するが、それが最近になって急激に高まった訳ではない。プーチンの狙いは、上記の辞任したドイツ海軍総督が「本当に求めているのは、敬意だ」と言ったように、ロシアを旧ソ連並みの大国として扱い、対等な相手として交渉しろ、と西側に要求しているのである。長年の懸案であるNATOからの包囲というロシアにとっての安全保障上の脅威については、西側はほとんど考慮して来なかった。それが重要な問題であることを西側に気づかせ、対等な相手として交渉しろと、要求しているのである。決して戦争を望んではいないが、国境沿いに大部隊を集結させ、軍事力を誇示することで西側を慌てさせ、交渉のテーブルにつかせるという戦術である。勿論そこには、それを国内に示すことで、ロシアのナショナリズムを盛り上げ、国民の支持をより強固にしたいという強い願望がある。
 しかし、プーチンの狙いは裏目に出たのかもしれない。確かに、西側は交渉には応じているが、プーチンの軍事力誇示がかえって西側の結束とロシアのイメージを悪化させ、NATOの撤退どころか、軍事力が強化されるのは間違いないだろう。
 アメリカの回答がロシアに伝えられているが、27日現在、ロシア側はまだ反応を見せていない。プーチンは、側近と頭を悩ませているに違いない。

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オミクロン株「日本のピークは2月初旬。1日最大8~13万人の感染確認数が出る」

2022-01-21 18:17:24 | 政治

Our World in Data 2022年1月21日 
 
 南アで発見されたオミクロン株が世界中で猛威をふるっている。しかし、その特徴をよく見ると、一筋の光明が見えてくる。それは、他の変異株と比べて、感染が爆発的に急激拡大するが、そのピークも早く訪れることである。
 上のグラフは、南部アフリカ諸国と最も関係が深く、その人的交流からアフリカ以外では最も早く感染が拡大した英国と、その後に感染拡大した主要国の100万人あたりの7日間移動平均感染確認数である。
 始めにオミクロン株が発見された南アは、11月中旬から感染爆発し、12月16日前後にピークを迎え、その後は現在に至るまで感染確認数は減少を続けている。
 英国は、12月15日前後に感染爆発し、1月7日前後にピークを迎え、南ア同様に減少を続けている。英国に続いてその後に感染が拡がった、アメリカ、カナダ、フランス、イタリア、スペインなどは、12月20日前後に感染爆発し、既にピークを迎えていることが、グラフ上で、直近で線が下降していることから分かる。但し、フランスは、パリを含むイルドフランス地域圏から感染爆発したので、その地域はピーク過ぎている(フランス保健省)が、地方に拡がっているので、グラフ上では、下降線になっていない。
 そこから言えることは、感染爆発からピークまでは概ね1か月以内ということである。
 12月20日前後に感染拡大した国が、既にピークを過ぎ、減少傾向になったことは、英国、フランス政府がそれまでの行動規制の緩和措置予定を発表したことでも裏付けられる。英国ジョンソン首相は「全国的にピークを過ぎたようだ 」と19日に発言したし、フランスでは、2月2日から段階的に、イベント人数制限、在宅勤務や、屋外でのマスク着用の義務 が撤廃される。

日本では
沖縄の感染確認数 折れ線は7日間移動平均(NHK 2022年1月21日)
 
 ピークまでは概ね1か月以内ということは、米軍基地からオミクロン株が流出した思われる、本土より早く感染拡大した沖縄でも同様である。沖縄では、グラフでは1月1日前後に(正月休みの関係で、実際には年末に感染爆発したものが、正月明けに確認されている)拡大し、1月18日(折れ線グラフ最高到達点)にピークを迎えている。およそ1か月以内でピークを迎えているのである。(但し、今後東京、大阪などの大都市住民が観光で感染流出させた場合は再度感染は拡大する。)このことは、オミクロン株が、その国の行動規制や医療体制その他に関係なく、急激な拡大の後、およそ1月でピークに達し、その後は減少傾向に至るということを示している。
 
 日本では、1月5日前後に全国に爆発的感染拡大が起きたので、上記の仮説でいけば2月上旬にピークを迎えることになる。そして1日の感染確認数は、上記の先に感染爆発した国では、過去の最多確認数の3~5倍になっていることから、日本全体で8月20日の最高値26000人の3~5倍、約8万人から13万人程度になると思われる。なぜなら、コロナウィルスの変異株毎の感染力はどこの国でも大きな違いはないからである。欧米で、オミクロン株がデルタ株の感染力より3~5倍あれば、日本でも同様に3~5倍あるのである。
 東京では、「専門家」が1月24日の週で、1万8千人程度になると予測しているが、恐らくその後も上昇し、2月5日頃には、過去最高値約6000人の3~5倍、1万8千人から3万人の上の方の値である3万人に近づくだろう。
 コロナウィルスはの感染拡大は、すべての国で何度も波を繰り返す。その波は、その国の生活習慣(人と人との物理的接触習慣やマスクに対する好悪)、ワクチン接種、医療体制、検査体制、行動規制の強弱によって、大きさが異なる。日本を含め、アジア人は、欧米人ほど人人とは物理的に接触しない(親愛の情を示すためのキス、ハグ等のこと)し、マスクに対する嫌悪感も小さい。そのことが、アジアでは、欧米ほどの感染者数を出していないことの要因と思われる。だから、日本では、その数字は欧米の3分の1以下である。しかし、日本のオミクロン株第6波による被害の大きさも、欧米の3分の1以下になるとは限らない。何よりも、日本中ではワクチン3回目接種率が、OECD38ヶ国中最も低い1.5%程度で、50%前後の欧米と同様とは考えられないからである。
 日本の第6波は、2月初旬にピークを迎え、その後は減少していくだろう。しかし、その間の人的社会的被害は、甚大なものになる恐れは十二分にあるのである。
 
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コロナ「ワクチン忌避派の自由と、護身のための銃所持派の自由とはどこが違うのか?」

2022-01-19 10:53:14 | 政治
 
 セルビアのジョコビッチがオーストラリアから入国拒否に遭い、出国した。ジョコビッチが、一度のコロナ感染を盾に、一定の免疫はできているとしてワクチン接種拒否を貫いているためだ。オーストラリア政府と司法は、例えどんなに優秀なスポーツ選手でも、規則上駄目なものは駄目と、当然の判断を下した。そもそも、ジョコビッチはワクチンが進まないセルビア(セルビアはワクチン2回接種率47%)の忌避派の「代表選手」のようなもので、その行動も陽性となってからも人に会い続けるなどcovid-19の危険性を軽視している人物である。

 世界では、欧米を中心にワクチン接種義務化の動きが進んでいる。アメリカのバイデン大統領は、従業員100人以上の企業に新型コロナウイルスのワクチン接種を実質的に義務付ける制度を進めようとしている(米連邦最高裁が1月13日に差し止めた)。フランスでは、レストランや文化・娯楽施設、長距離交通機関の利用はワクチン接種完了者に限るなどの法を準備中である。これらの動きに対して、ワクチン忌避派は反発し、個人の自由を叫び、義務化に反対する抗議デモが繰り広げられている。
 ここで言うワクチン忌避派とは、医学的科学的理由によるワクチンが打てない人びとのことではない。当然のように、アナフィラキシーショックやその他の医学的理由によってワクチンを打てない人びとは少なからず存在する。また、ワクチンに恐怖を覚えるなどの精神的理由による人びとも忌避派には入らない。
 ワクチン忌避派とは、陰謀論を唱える人、医学・科学・合理主義を否定する人、そして何よりも、個人の自由がいかなる場合にもすべてに優先すると考えるなど思想的に忌避する人びとのことである。思想的なことに起因するので、国や政党支持の差異によってワクチン供給量とは無関係に接種率に大きな差があるのは、そのためである。
 それは、ヨーロッパで東欧(「共産主義」から解放され、「自由主義」になったこと)が、ワクチンが他のヨーロッパ諸国同様に供給されているにもかかわらず、接種率が低く、アメリカで共和党支持者の多い州でも接種率が低いことなどに現れている。
 銃を保持する自由
 アメリカでは、2020年には、銃乱射事件が610件と過去最高を記録(Gun Violene Archive調査)し、銃犯罪による死者の数は1万9411人に達したという。しかしそれでも、 ギャラップ調査によると42%の国民が銃を保持し、銃規制の動きは鈍い(エコノミストOnline2021年8月20日)。
 アメリカで銃規制がなされないのは、伝統的な自由主義のためである。銃を保持するかどうかは、個人の自由意思に任せるべきで、国家が規制すべきではないという考えのためである。それには勿論、アメリカ開拓時のネイティブアメリカンとの戦いでの銃の役割や、銃を使用した犯罪から自分たちを守るために銃が必要だという考えも大きく影響している。
 銃の規制が銃使用の犯罪や誤射による死亡、傷病を減少させるのは極めて合理的な発想である。だから、アメリカ以外のほぼすべての国では、原則的に一般人の銃所持は禁止されている。それができないのは、銃所持という個人の自由が、人々の生命や健康に悪影響があろうとも、その規制に優先するという考えを持つ人びとが多いからである。その構図は、ワクチン忌避と同じものである。忌避派はワクチンを接種しないということが、感染拡大を招き、人々の生命や健康に悪影響があろうとも、するかしないかは個人の自由であって、国家が規制をすべきでないという。その義務化には断乎反対するというものである。それは、すべてのワクチン反対デモに「自由」という文字が掲げられていることにも表れている。
 アメリカで言えば、銃規制反対派も、ワクチン忌避派も、共和党支持者に多く、民主党支持者に少ない。ヨーロッパでも、ワクチン忌避派はドイツAfD支持者、フランス国民連合RN支持者などの極右に多い。
 ではなぜ、政治的右派が個人の自由を重要視するのか? それは、右派が自分たちの自由を守ることを何よりも優先するからである。個人の自由はおうおうにして、他者の自由を侵害する。ワクチン忌避も一般人の銃の所持という自由も、他者の生命を守る自由、健康を維持するという自由を侵害する。ヨーロッパの極右が移民や難民を排除したがるのは、彼らが自分たちの自由な生活を脅かすと考えるからである。彼らは何よりも、自分たちの自由を優先する。逆に、基本的立場を平等主義におく左派は、自分たちの自由も他者の自由も同じ価値だと見做す。ヨーロッパの左派が移民、難民を受け入れるべきだと主張するのは、移民、難民の生命・健康への自由も自分たちの自由と同じ価値だと考えるからである。
 万人にとっての自由など、ありもしない幻想に過ぎない。せいぜい最大多数者にとっての自由があるだけである。コロナ危機の当初、アメリカで、「マスクをするかしないかは個人の自由だ」というデモ隊に対し、「あなた方に、感染を拡大させる自由はない」というプラカードを掲げる人びとがいたが、その主張はまったく的を射ている。大金持ちが、何らの規制もなしに、カネ儲けに走る自由は、富の著しい不平等を生じさせ、一般庶民がまともに生きる自由を奪う。右派は、そういった自分たちだけの自由を希求するために、万人にとっての自由という幻想をまき散らす。その同じ手法が、ワクチン忌避派にも銃の自由保持派にも使われているのだ。
 
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コロナ「ワクチン3回目接種率 英国52% 韓国43% 仏40% 日本0.9%という現実」

2022-01-15 11:39:57 | 政治
 
 Our Wold in Data (daily cases)
 1月14日、日本の感染確認数は2万人を超えた。もはや、オミクロン株の爆発的感染が始まったと言っていい。この感染爆発は、上のグラフのように、それまでなだらかな曲線で上昇していた感染確認数が数日で急角度を描き、数倍に膨れ上がる減少のことである。
 オミクロン株の爆発的感染は、分かっている範囲の国では、南アで11月中旬(15日頃)から、英国で12月初旬(10日頃)から始まり、両国ともピークを過ぎた感があり、感染確認数は減少し始めている。その他の国では、アメリカ、フランス、イタリア、カナダ等で12月下旬(21~25日頃)からで、現在はピークに向かって進んでいると思われている。また、ドイツなどは、10月下旬から12月中旬にかけてのデルタ株による感染拡大が終わった後に、1月1日からオミクロン株による感染上昇に見舞われている。
 日本では、12月中旬から緩やかに感染が拡大していたものが、1月5日前後から突然急拡大したが、これも諸外国のオミクロン株の爆発的感染と同じ傾向である。
 3回目接種と検査体制の拡充以外に有効な対策はない
このオミクロン株の感染拡大防止には、ワクチン3回目接種と、それまでの変異株より無症状者が多いことからなおさらの検査体制の充実が有効なのは、世界的に異論はない。もはや行動規制には人びとは飽き飽きしているので、中国のように、問答無用というような行動規制はできないのであり、特に日本では、国民の自主的な感染防御行動に期待するしかないのであり、国の対策の主眼は早期のワクチン3回目接種と検査体制の拡充による感染者の早期発見におくしかないのである。
 3回目ワクチン接種を、2回目終了後8か月などと馬鹿げたことを言いだした政府は、日本以外にはない。6か月を待たず、早い方がいい、というのが世界標準である。さすがに、遅いという批判に答えた岸田政権は、前倒しと言っているが、それでも65歳以上高齢者接種が本格化するのは3月である。1月14日の段階で日本の3回目接種終了者は人口の0.9%に過ぎない。11月13日で、英国52.7%、韓国43.1%、フランス40.2%、アメリカ23.5%に比べてあまりにも遅い。
 一部専門家が1月末には、東京で1万人の確認数になると言っているが、それで収まる保障はない。3回目接種が進んでいる欧米ですら1日で数十万人規模の感染とエッセンシャルワーカーのダウンによる社会的大混乱が起きているのである。1月5日前後に感染爆発が起きた日本は、1月末か2月初旬には感染ピークを迎えることになる。3月からの高齢者、それ以降の一般本格接種では、予想される甚大な被害の後である。
 また、政府は検査の拡大と言っているが、1月14日の7日間平均検査数は人口1000人あたりで、英国25.99,フランス22.34,アメリカ5.43,韓国3.78に対し、日本はわずか0.59である。
 (データはすべてOur Wold in Dataによる)
 岸田政権になって、予防対策は、それまでの安倍・菅政権の後手後手対策よりは早くなったという印象を持つ者は多いだろう。しかし、それは安倍・菅が気は確かか言いたくなるほど対策を始めるのが遅かったという「異常行動」と比較しての話である。岸田首相は、政権支持率を意識して、迅速対応を盛んにアピールしている。しかし、実際に行っているのは、やはり安倍・菅並みに遅いままなのである。
 
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