キム・チョルがもしミエのことを好きだとして、その先は一体どうすればいいんだろう?
考えたことのないその問いを、ミエは今初めて目の当たりにしている。
<自然ということは>
ミエはブンブンと頭を振り、とりあえず考えるのを止めにした。
いやいや!ビデオ観よっ!
気づけばビデオの内容は佳境で、バスジャック犯からの連絡のシーンだった。
とりあえず字幕を追うミエ。
主人公がバスと並走し、事態が目まぐるしく進行して行く。
この辺りから、ミエはビデオの内容に引き込まれて行った。
おお・・
その様子を隣で見ているチョル。
食い入るように画面を追うミエ。
なんて分かりやすいんだろう。
口を開けっぱなしで画面に釘付けのミエを見て、
チョルは(よだれ垂れそう)と思って少し笑う。
そんな折、画面の中で大爆発が起こった。
ドカーン!!
「うわぁっ!」
驚いた拍子に、ミエがチョルの袖口を掴んだ。そのままグイグイと引っ張る。
「わっわっ!バスが!どうしよう!バスが!」
先程までの不自然なミエではなく、今のミエはとても自然な”ファン・ミエ”だ。
本能のままに大声を上げ、肩に触れ、前髪が目に入って痒いのか瞼を擦る。
「チクチクするー」
そんなミエに、チョルもまた自然に手が伸びた。
「子供じゃねーんだから・・」
「観終わったら前髪切れよ。目に入ってんぞ」
そんな自然なチョルに、ミエもまた自然に返す。
「ふぁ〜い」
「もう見えてるってばー」
そんなミエを見つめるチョルの眼差しは温かかった。
それは妹の前で見せるような、心を許した人に向けるような、チョルの自然な顔・・。
そんな自分に、チョルはビックリした。
映画は終盤に差し掛かり、バスのスピードが50マイルを切る。
バスのタイヤは大きな音を立てた。
「うわっ!あれヤバ・・」
ミエがチョルの肩に手を伸ばしたのと、チョルが「食いもん持ってくる」と立ったのが同時だったので、
ミエはドスンとソファから落ちてしまった。
とうもろこしが、電子レンジの中で温められている。
ウイーンという電子音を聞きながら、チョルは一人キッチン台に手を置いて固まっていた。
後ろでミエがブー垂れている。
「ちょっと!ひどいじゃんー!頭打ったし!」
チョルは考えていた。
先程感じた気持ちが何なのか、どうしてあんなにも自然にミエの髪に手が伸びたのか。
そしてそんな自分に、自分が一番驚いていた。
ついさっきの自分の行動と、ミエの顔が浮かぶ。
柔らかな髪に触れた時の、胸がこそばゆくなるような感情も・・。
チョルは「まさか」と思っていた。
そおっと、その感情が向かう先の彼女の方を見る。
「ビデオ一時停止するー?」
「ふわぁぁ〜」
そこには、自然すぎるほど自然に寛ぐミエがいた。
「何?とうもろこし?」
「田舎の時からずっととうもろこしだよねぇ。美味しいけど!」
チョルはやはり思っていた。
「まさか」と。
まさか自分が、ファン・ミエを————・・・・。
第八十話④でした。
おわーーー!!!これぞ「自然」!!
そしてもう自然に、チョルのテリトリーの中にミエがいるんですね〜〜〜
面白くなってまいりました!!
チョルの家でくつろぎまくってるミエが爆笑ですw
第八十一話①に続きます