ゆらゆら、と天井で光る星が滲む。
というのも、それほどミエが目を血走らせているからであった。
昼間起こった衝撃な出来事により、ミエは到底眠ることなど出来ないでいた。
[その日の夜、ファン・ミエは・・]
[まるで全身がプカプカと浮いているような・・]
脳裏に、もう何十回と巡らせた場面がプレイバックする。
「ぬわぁぁぁ!!いやいやいや!!」
ミエは叫びながらガバッと身を起こした。
ドアの向こうで母親が「うるさいわよ」と怒っているが、それどころではない。
汗がとめどなく流れてくる。
「うわあああ!!違う違う違う違う!!」「何が?」
「あんた寝ないなら勉強しなさいよ!」
ミエはしばらく母とそんなやりとりを繰り返した。
昼間起こった出来事に、脳がまったく対応できていないのだ・・。
<幻想と現実>
[キス?]
それは大人の響き。
美女と野獣のクライマックスで披露されたそれを、小学生だったミエは見せてもらえなかった。
だからそれはどこか遠い世界のお伽話の中の出来事のようなものだと思っていた。
[いつかするだろうな]、と漠然と感じてはいたけれど。
少し大きくなってくると、友達らがにわかにそれに興味を持った。
その群れの中にいたミエもまた、その情報に触れながら育つ。
[小さい頃から、耳から入ってくる情報に踊らされてきた人生なので]
[高校に入ったら彼氏ができるかもしれないし] きっと背が伸びてるはず
[だったらファーストキスは・・]
大学生になった”大人”の自分が、お伽話の中のそれにようやく出会うのだ。
[こんな風に・・]
[ラブラブな・・]
[ラブ・・]
[ラ・・]
ふわふわと温かいその愛の中にある”ファーストキス”が、まるでシャボン玉のように突然消えた。
脳裏に焼き付けられた現実の光景が、ミエの”ファーストキス”のネタばらしをする。
二人きりでもなく、大人でもなく、汚い道路の上で、
目の前にいたのは驚いた顔をしたあいつだった。
「ぬわあああああ!!!!違うっつーに!!」
ミエは”こんなはずじゃなかった”を振り払うように、手近にあった枕をぶん投げた。
ブンッ!
ボンッボンッ!
ボスッボスッボスッボスッボスッ!!
繰り返される奇声と物音に、両親は「何があったのか」とざわめいた。
そしてひとしきり暴れ終えたミエは、バッタリとベッドに倒れ込む。
<私の感想はこうです>
激しい怒りの後は、何だか気分が落ちていく。
そしてその落ちた先で、訳のわからないおかしみが波立った。
ふ・・
そう思って自分を慰めつつ、己を騙してなかったことにしようと思った。
けれどそこまで振り切れていないことなんて、本当は自分が良くわかっている。
・・じゃないよねーーーー!!
[ファン・
衝撃は衝撃だったわけで]
今まで出来事の衝撃でほとんど意識していなかったが、
そこでミエは触れた唇の感触を改めて思い出した。
むにゅっ
なんだか妙な気分だった。
ミエは唇を押さえながら、思いのほか柔らかだったその感触を、もう一度思い出していた・・。
第八十二話②でした。
高校生のミエと、大学生のミエ!!めちゃ可愛いですね
チョル版も見てみたい・・!
第八十二話③に続きます
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