<シンデレラ>
「およ?」
去って行った少年は、一つ忘れ物をして行ったようだった。
ずいぶん足の大きなシンデレラだ。
彼は靴を片方だけ忘れて行った。
<その少年>
少年が去って行った方向を見つめながら、ミエはふとこんなことを思った。
そういえばこんな間近であの子のこと見るの、あの時以来だな
五ヶ月前のことが蘇る。
大きなサンバイザーで、初めて少年と向かい合った時は顔が見えなかった。
けれど先程相対した時、彼の目は見開かれていた。
あれは一体・・・?
首を捻りながら、ゴミ袋を持ったその時だった。
「あ」
「もしかして泣いてたとか?」
先程の不自然なまでの少年の態度に、合点がいくのはその理由だ。
ミエはゴミ捨て場を眺めながら、しゃがみ込んでいた彼を思う。
<何かを忘れてしまったみたい>
真夜中。
両親もムンクも眠っている。
シンデレラが忘れて行った靴は、紙袋に仕舞っておいた。
ミエの部屋には、”為せば成る”と書かれた紙が、額に入れて飾ってある。
そして天井には、星と土星の光るステッカーが貼ってあった。
真夜中だというのに、ミエの目はぱっちりと開いていた。
何かを忘れているような気がしてならない・・・。
「あっそうだ!デュオバック!完全に忘れてた!」
大型ゴミの回収時に貼るステッカーも貼られていない、
しかもあれだけ良い物ならば、すぐに誰かに持って行かれてしまうかもしれない。
けれどミエのプライドが、今すぐにゴミ捨て場に向かうのを躊躇させる。
ち、違う!私はホームレスじゃない・・!
「うぁぁ・・・」
<予感>
瞼の裏に、五年前の少年の姿が蘇る。
五ヶ月前のことも。
今日のことも。
その時、ミエにはある”予感”がした。
まさか同じクラスになったりしないよね?
なんだか胸がざわざわする。
そういえば以前、友達のユンヒが言っていたことを思い出した。
<この前>
学校帰りに、おやつ代わりのトッポギを食べながらユンヒが言った。
「ねぇ、そういえば大魔王の話だけどさー」
「なに?」 「もし同じクラスだったらどうする?」
「えっ?考えたこともなかった」
「けど・・」
そう言われて、ミエは初めてその可能性に気がついた。
あの子と 私が
「同じクラス?」
・・・え?
リアルに想像すればするほど、悲惨な結末が見えるようだった。
その日からミエの願いは、それを回避することになったのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第三話②でした。
男の子の忘れて行った靴、大きいですね〜〜
一体背が何センチくらいなのか気になるところです。
そしてお母さんの隣に寝ているムンク、可愛いですね・・
第三話③に続きます
コンビニのホットスナックでソトックソトックが販売されたくらいだから、今ならわざわざ日本の食べ物に換えなくても「トッポギ」でイケそうっすね。
トッポギ、浸透してますもんね!日本では新大久保以外は屋台ではあまり見ないかもしれないですが・・。いっそ舞台を東北にしてきりたんぽとか・・(無理