<ミエはずっと我慢していた>
さてここから、ミエの勉強部屋事情を見ていこうと思う。
[その日の夜]
大魔・・転校生が引っ越して来たその日の夜、
ミエはずっとあることについて考えていた。
あること、とはズバリ、ミエが使っている勉強机のことなのである。
[超開きにくい]
引き出しを開けようにも、立て付けが悪くてガタガタと引っ掛かる。
ミエはずっとそれが不満なのだ。
「ミエ、ご飯だよ!」
呼ばれたミエが食卓につくと両親は早速、
今日越して来た”お友達家族”の息子の話をしていた。
「あの子がやったんじゃないんですって」
「そうだろうとも。とっても優しい子だったじゃないか」
「ミエ、アンタも変な目で見ずに、あの子と仲良くしなさいね。分かった?」
そう言われたミエだったが、ミエの頭の中は机と椅子のことでいっぱいだった。
<少しも受け入れられない>
「私も!デュオバック買って!」
「机もタンスも椅子も、全部古いじゃん!周りにあんなの使ってる子誰もいないよ!」
*デュオバックとは・・韓国で知らぬ者はいないと言われるほど有名な良い椅子。ちょっと高い。
必死に訴えたミエだったが、両親には少しも受け入れてはもらえないのだった。
「騙し騙し使っていくか」 「あーーもう!」
「デュオバック買ってくれたら勉強頑張るから!」「騙されないでよ」「ハハハ」
「お父さん頑張って働いて絶対買ってやるからな」「あなた、余計なこと言わないで!」
一人娘に甘い父親と、割と常に厳しい母の間で、ミエは夕飯を頬張る。
一方、そのデュオバックの持ち主といえば・・
「食べてから片付けなさい!」「おい!メシだぞ!」「お兄〜早く〜!」「早くしろ!」
デュオバックを持つ少年は絶賛片付け中だった。
それぞれの夜が更けて行く。
<タンスの用途>
夜も更け、月が真上近くに上がる。
キイッ、とミエは窓を開ける。
「ふんふんふん〜♪」
鼻歌を歌いながら、タンスに半身乗せたミエが夜空を見上げる。
双眼鏡を覗き込みながら。
すると・・
「ねぇ!」
「あなた、ファン・ミエだよね?」
向かいの窓から、ミエに話かけてくる女性がいた。
「ヤッホー!私のこと覚えてる?」
それはキム・ソンジョン(21)大学生 であった。
ミエは彼女の昔の姿をぼんやりと思い出す。
田舎で出会った一家の長女、背の高いスンジョン姉さんだ。
「あ・・こんばんは!スンジョンお姉さん!」「ハハッ、中坊が一丁前に敬語使ってんじゃん!」
「うん・・あ、ハイ!」 「プハハッ!」
姉さんは笑いながら、ミエが持っている双眼鏡を見てこう聞いた。
「てか何してんの?UFOでも探してんの?」
「へ?なんで?」
「なぜなら、1000機集めたら願い事が叶うんです!」
「どういうこと?飛行機をどうやって集めるの?」
「いや、
「???」
真夜中の窓越しでの会話は、閑静な住宅街に響き渡っていたらしく、
ワンワンと犬が鳴き「静かにして下さい!」とご近所からクレームが入った。
スンジョン姉さんは手を振りながら、ミエに別れの挨拶をする。
パタンと閉じられた窓を見ながら、ミエは一人こう呟いた。
「みんなしてそう言われても・・?」
スンジョン姉さんも、スンジョン姉さんのお母さんも、
ミエの両親も、決まってミエにこう言った。
彼と仲良くしてやってくれ、と。
ミエは空を見上げながら、少し途方に暮れるのであった・・。
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第二話③でした。
話題のデュオバック↓
良い椅子ですね!ただお値段が5万ウォン〜30万ウォンと少しお高めとか。
新しいインテリアに憧れるミエちゃんの気持ちわかるなぁ〜
第二話④に続きます