三月一日、韓国は三一節(サミルジョル)の祝日。
[このようにマジで忙しいミエだったが]
色々と多忙なミエも、始業前の最後の1日ということで一人街を歩いていた。
口笛を吹きながら、上機嫌のミエ。
ジリン
すると、近くで自転車の音が聞こえた。
振り返ったミエの目に、彼の姿が映る。
[一方、実際にあの子と顔を合わせることはほとんどなかった]
彼はミエには気付かぬまま遠くなる。
リアルな世界の端と端で、彼と彼女の接点はなかなか繋がらない。
<これからなくなるもの>
「ただいま〜!」「ご飯は?」「食べて来た!ムンク〜!」
帰るなりミエは、飼い犬・ムンクに手を伸ばす。
「チューは!」
ムンク(3)オス♂シーズーミックス
ムンクにおかえりのチューを要求したミエだったが、ムンクはスルーして行ってしまった・・。
そんな折、電話が鳴った。
「ミエ、電話出て!」「うん!」「走らないの!」
「もしも・・」ツーツーツー
「え?!」
ピッ
電話は出るなり切れてしまった。
その旨を母親に伝えると、母は顔を顰める。
「ったく絶対壊れてるわ!」「私のせいじゃないよ〜」
電話機は相変わらず調子が悪いようだ。
その夜、ミエはラジオを聴きながら勉強していた。
薬局のCMは終わり、
続いてラジオのパーソナリティが話題の”ファイアボーイズ”を紹介する。
ファイアボーイズ に若干冷め気味のミエは、聞きながら大きな欠伸をした。
教科書の内容も、ミエの日常からは遠く、つまらなかった。
このまま横になったら、寝てしまいそうだ・・。
ミエは起き上がると、久しぶりに空を見ようと双眼鏡を持って窓を開けた。
「ふんふんふ〜ん♪」
お向かいの家からは、掃除機のような音や家具などを動かしているであろう音が、
しきりに聞こえて来ていた。
大掃除かな?
ミエは双眼鏡を覗き込み、二つのレンズを空高く上げる。
「星、一つだけよく見えるな」
「あれ何の星だろう?」
街の明かりで、名前も知らないたった一つの星しか見えない。
ミエは五年前に見たあの星空を思い出した。
記憶の中の夜空をなぞっていると、居間から母の声が掛かる。
「ミエー、リンゴ食べなさーい」「あー・・」
ジリン、
不意に聞き覚えのある音がして、ミエは思わずレンズをそちらに向けた。
ドン!
「うわっ!?」
突然目の前にいるかのように、少年の姿がレンズのすぐ向こう側に見えた。
ミエは驚きのあまり、タンスの上で尻餅をつく。
ズンッ
その衝撃で、ガタが来ていたタンスはメキメキと歪んだ。
グラッ、とバランスが崩れる。
ミエがそんなことになっていようとは露ほども知らぬ少年は、自転車を引いて歩いている。
ミエの視界はまるでスローモーションのようだ。
名も知らぬたった一つの星が、ミエのことを見ていた。
ブゥン
[うちにあるものはことごとく古くなっているから]
先ほど読んだ道徳の教科書の一節が蘇る。
遠い世界の物語だと思っていたそれと、ミエの今がシンクロした。
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第二話⑤でした。
さすがスンキ様・・だんだんと色々な伏線が張られているのが分かって来ますね。
少し謎を残して進んでいく、そしてそれが全然不自然じゃない。。
あ〜〜やっぱりスンキ様は天才じゃ〜〜〜(滾るオタク)
そして最後のブゥン、チートラの仮想世界への入り口を思い出してドキドキしました^^
次回第二話⑥に続きます★