ドンッ!
その衝撃に、母は思わずりんごを取り落とした。
家の外では、変わらず少年が自転車を押しながら歩いている。
バンッとドアが開いて母が駆け込んで来た。
「なっ何?!何事?!」
「うう・・おかぁさぁぁん」「あらららららら!」
歪んだタンス、倒れている娘。
母は血相を変えて駆け寄った。
「大丈夫?!怪我はない?!」「おかぁさぁん〜〜」
「見せてごらん!」「いたい〜〜」「一体どうしたのこのタンスは?!」
「オンボロだからだよ〜!グスングスン」
「やだこれどうなって・・」
そう言って母が引き出しに手を掛けた時だった。
嫌な予感がすでに漂っている。
「あらま!」
ドサドサッ、と服に紛れて色々出て来た。
二人の時が止まる。
夥しい数の雑誌、雑誌、雑誌・・。
「あ・・これは・・少しずつ隠してたやつ」
ヒィィィ
身の危険を感じたミエが、必死に雑誌を隠そうとする。
母はゆっくりと低い声で、娘の名を呼んだ。
「フ ァ ン ミ エ ・・・」
「いやこれは違っ・・お母さん、これは売ろうと思って集めた・・っ
お母さんちょっ・・ちょっと待っ・・」
その日ファン家には、母の雷が落とされたのだった・・。
「またこんなもん買ってぇぇぇ〜〜〜!!!もう何回目よ?!」
「ダメーーーっ!!」
「なんで出さない?!お金の大切さを全く分かってない!!」
「ただいま・・なっなんだなんだ?!ちょっ・・落ち着け落ち着け!!」
「全部出しなさい!絶対これ全部燃やすからね!!」
「これは売ろうと思って集めたんだよ!今は見てないんだったら!」
「うわぁぁぁ〜〜〜ん!!」
母の雷の後には、ボロボロになった雑誌の山しか残されなかった。
ミエは泣きながらゴミを捨てに行かされた。
「グスングスン」
母はブチ切れ、父はそんな母をなだめて幾分罰を軽くしてくれた。
「今回だけは手加減して没収にしたげるわ!高校受かったら返すんだから聞き分けなさい!
なんでお小遣いでこんなゴミを買うのよ!!」
「ミエ、お父さんが守ったぞ!」
「もうこのゴミ捨てて来なさい!ついでにムンクの散歩もして来てよ!」
そう言われ、泣く泣くムンクを連れてミエはゴミ捨てに行かされたのだった。
「うわ〜〜〜んひどいよぉぉ!何すんだよお母さん〜〜〜
お小遣い貯めて必死に集めたのに〜〜〜」
ゴミ捨て場に近づくと、ムンクがゴミに向かって鼻をクンクン言わせた。
「ムンク!そればっちいよ!」
ムンクを連れて、泣きながら歩く夜の道。
見上げた空には、満月が浮かんでいた。
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第二話⑥でした。
ミエちゃん、なんだかんだファイアボーイズ 好きだったんですね
あんなに引き出しに隠して・・泣けて来ます
次回で第二話最後です。
第二話⑦に続きます
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