さてここで、ミエが育って来た環境について振り返ってみることにしよう。
タイトルはこれである。
<特に記憶に残る思い出もない>
・・少々不安だが、行ってみよう・・。
[ファン・ミエがこの場所で育って行く間に]
[いつも近所には友達がいたが]
蘇る幼少期の記憶の断片には、いつも近所に住む友達の姿があった。
けれどずっと同じメンバーというわけではなく、入れ替わりが激しいのも一つの特色だったようだ。
「あたし引っ越すの〜〜」 「やだよ〜〜」
一人、また一人といなくなる。
「〇〇くんが転校することになりました。素敵な旅立ちになるようにみんな挨拶してください」
「元気でなーー!」「えーんえーん」
ちなみにここでみんな泣いているが、特に仲の良い子でなくても、
転校する時はみんなで泣くという風習だったらしい。
「バイバイ!」 「手紙送り合おうね、絶対だよ!」 「うん!!」
まだメールも無い時代だ。
ミエは可愛い便箋を使って、去り行く友達にせっせと手紙を書いた。
幼稚園、小学校と、何人の友達を見送っただろう。
そしてそれは、中学校になっても続くことになる。
「あたし引っ越すんだー」 「あんたも?!」 「ミエ、ポケベル持ってないよね?」
「うん・・」「んじゃ手紙書くね」「うん・・」
[一人また一人とこの地を去って行き]
ミエの部屋には、去って行った友達から送られて来た手紙がクリップに留められとってある。
「これまとめてあるけど何なの?早く捨てなさいよ!」「え?これ手紙だよ!捨てないよ!」
「アンタこれの存在忘れてたでしょ!捨てな!」 「す、捨てないよ?」
母にはそうは言ったものの、ミエが手紙のことを、
そしてそれを送って来た友達のことを忘れていたのは事実である。
[いつしか手紙のやり取りもしなくなって久しい]
一抹の寂しさも感じるけれど、今の環境が当たり前のミエにとっては、
友達が去って行くというのはむしろ日常の出来事なのだ。
「おい!」
ミエが顔を上げると、向かいの家の少年が車に乗っている。
「俺、ホントに行くかんな?!」
「元気でな〜」
少年は窓から手を振って、ミエの元を去って行った。
”となりの初恋はランキング1位”の中の主人公は泣いていたけれど、
ミエはただキョトンと見送るだけだった。
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第一話⑤でした。
何だか時代を感じる回でしたね。移動遊園地っぽい木馬?とかでかいトランポリンとか、
韓国では「あ〜あったあった」的な懐かしアイテムなのかな?
手紙捨てられないあるあるは、すごく身近に感じましたが
第一話⑥に続きます!