青リンゴ観察日記

韓国漫画「世紀末青リンゴ学習塾」観察ブログです。
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第一話⑥

2021-01-06 | 第一話〜第三話

<離れ行く少年を見て>

ミエに向かって振る少年の手は、見る間に遠くなる。

何度も何度も、同じような光景を目にして来た。

それは同時に、ミエが逆の立場になることは無いという事実を表してもいた。

[可哀想だけれど、ファン・ミエはこの街を離れることは出来ない]

そしてここから、1998年韓国での教育の在り方が語られることになる。

[他の地域では成された高校平準化だが、この地域では成されていない]

新聞では今日も、日々変化して行く教育界のルールが紙面を賑わせていた。

自律性重要視され‥
教育界今年どのように変容するか   序列化放置により‥中学生受験地獄から着手

<高校平準化>とは一体何か。

<高校平準化>

学生の過度な競争と学習負担、高校の序列化をなくすために高校入試を廃止する方針。

1970年代に始まり、90年代には全国の多くの地域で活発に施行された

つまり、<高校平準化>が適用された地域では、高校受験をせずとも進学出来るのだ。

けれどファン・ミエの住むこの地域では適用されない。

[と、なると]

[じき中三になるファン・ミエは希望高校に行くために、強制的に受験生とならなければならない]

熾烈化する競争と開く学力格差は、過去のものでもなんでも無い。

1998年を生きるファン・ミエにとっては、その全てがリアルなのだ。

[これから1年間は、死ぬ気で勉強に没頭する日々を送らなければならないのだ]

去り行く少年が脳裏にこびりつく。

ミエは思わず、心の底からの気持ちを一人声に出した。

「アイツ・・マジでうらやましい!」

そして家に帰ったミエは、両親に向かって直談判をした。

 

<小細工>

「私も!引っ越したい!」

「ソウルに!」

「平準化してるとこならどこでも!」

どどん!と迫力のある談判をしたミエであったが、それを受けた両親の反応は冷ややかであった。

変わらず二人はミエの前で会話を交わす。

「週末なのにまた出勤なのね。ミエ!お父さんに「行ってらっしゃい」しなさい!」

「行ってらっしゃい!」 「仕方ないさ。ミエ、帰りに鶏の丸焼き買って来てやろうか」

「フライドチキンで!」

勢い良く父を送り出したミエと犬を抱っこする母の前で、パタンとドアが閉まった。

ゆっくりと母が振り向く。

「つべこべ言わずに勉強しなさい?」

ミエは言い返した。しかし母も負けていない。

「したくない!」それじゃダメでしょ!」

「引っ越しなんて冗談じゃ無いわよ!アンタがお金稼いで来てくれるの?

それにそのボサボサ頭なんとかしなさいよ!」

直談判を無下にされたことに加え、髪までボロクソに言われて、ミエはチッと舌打ちをして部屋に帰った。

引っ越しが無理となると、本格的にこの未来がリアルになるということだ。

<受験生になるミエ>

その未来が嫌すぎて、ミエは一人プルプルと震えていた。

[まだ中学生なのに受験なんて、本当に嫌だ]

高校三年生でもあるまいし悔しい、と一人打ちひしがれるミエ。

しかも両親には彼らなりの理想があり、特に母親は燃えていた。

「目標は三国高校!*都内5位以内の学校「なんでだよー!」

いや、母親だけじゃなかった。

いつも穏やかな父も父で、燃えていたのだった。

「ミエ、お父さんの知り合いの学校の先生がなぁ、模擬試験の問題集をこんなにくれたんだ!」

ドンッと音を立てて、問題集はミエの机の上に置かれた。分厚い本が六冊余り。

「昨年と一昨年のだが、問題は大差ないから。頑張って取り組むんだぞ〜?またもらって来てやるからな!」

ミエ自身はまだ中二なので、中三の問題集をこんなに持ってこられたところで解けるわけがないのだ。

目の前いっぱいに積まれた問題集のように、ミエの目前が閉塞感でいっぱいになる。

 

「うわああああああああ!!!!」

「ぬああああ!うおおおお!ふおおお!あああ!」

ミエは趣味の一つである縄跳びを跳びまくりながら、溜まったストレスを吐き出していた。

何回も何十回も跳び、くたくたになったミエは、その場に足を投げ出して座る。

見上げた空に光る星は、数えられる程しかない。

夜空には無数に星があるはずなのに、ミエの目にはたった数個しか映らない。

[どうしよう]

[超えなきゃならない人生の正念場]

ミエは、その重要性を分かってはいたが、未だ覚悟が出来ないでいた。

確実に来るであろうそのリアルは、まだ遠いところにある。

下を向いた途端、バサッと前髪が目に入った。

目ぇ痛っ

あーもう

ボサボサ頭にイライラしている、こんな些細な一コマが今のミエのリアルだ。

秋の風はだんだんと冷たくなり、もう10月も後半になろうとしていた。

 

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第一話⑥でした。

教育界のルールが変わる、その節目の時代にファン・ミエはいたんですね。

確かに受験勉強しなくていいなら引っ越ししたいですよね・・

小さい頃から友達が引っ越しして行くのを何度も見てたら、

自分の環境が変わることにもハードルが低くなるのかも、です。

さていよいよ次回、少し物語が動きます!

 

第一話⑦へ続きます〜