臨済宗南禅寺派圓通寺

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仏さまの知恵

2020-09-14 | Zazen
 
「悲智円満」という仏教の言葉があります。仏さまの知恵はやさしいばかりでなく、ときには厳しいこともあります。そのような表情を感じるのは奈良、興福寺運慶作の(薬師)如来像です。江戸時代に西の金堂が焼け落ちてお釈迦さまの頭部だけが残りました。この仏像の表情は神秘的です。頭だけが焼け残ったという由縁を含めて不思議な存在です。近年になって古文書の研究から運慶の作だと分かったのだそうです。興福寺の国宝館にあるこの首だけの像は背筋がぞっとするような美しい表情です。

仏像の姿だけではなく、お堂のなかの荘厳や境内の建物、庭園、木立、境内の外、借景の山々、鳥の声などあわせて仏さまの智慧を表現しています。仏教寺院で神聖な場所は塀の中だけではありません。塀の外の世界を含めて清浄世界で、ずっと大きく広がっていきます。

京都、南禅寺の庭園を例にとれば、青い空と白い雲、東山の山々、大玄関の屋根、庫裡の建物が波のように重なって見えます。塀の外と内側の石庭が続いているような感じがします。南禅寺方丈庭園は江戸時代初期の作です。この時代の庭園は明るく開放感があります。背景の山々と瓦の屋根、木造建築はよく似合います。これがもし鉄筋コンクリートの建物だったなら風景にとけ合いません。

慈悲の実行をともなって仏さまの智慧です。だれかのために一生懸命に何か仕事をすれば相手に喜んでもらえます。「ありがとうございます」と感謝されれば自分も嬉しいです。仕事に限らず何かをいっしょにして共に協力できたときの達成感は大きな喜びです。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
と、お互いに頭を下げる。あるいは合掌をすれば、お互いの関係に垣根はありません。


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