鈴木エイト氏が、「安倍元首相がUPF大会にビデオメッセージを送ったことの謝礼で( UPFジャパンが)5000万円を支払った」発言で、UPFジャパンが後藤徹さんに敗訴した鈴木エイト氏を名誉毀損で訴えています。
その裁判の控訴審に、私も弁護士徳永大明神とともに参加することになりました。
その訴訟の概要と意義を私から説明します。
(先日UPしたものの改訂版です、だいぶ論旨をスッキリさせました)
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UPFジャパンは、本件訴訟が大きな社会的意義を有することにつき、総論的に説明する。
第1 総論
全ては数発の銃弾から始まった。
安倍暗殺事件直後、鈴木エイト氏は、
「安倍氏と統一教会の裏取引・ズブズブの関係を『明確な論拠』をもって語れるのは私だけ。私を押し上げて下さい。」
と自らを強烈に売り込んだ。
大衆の興味を自らに惹き寄せるために、「裏取引」「ズブズブ」「明確な論拠」という耳目を集める「吊り」(餌・罠)を仕掛けたのである。
この罠に惹き寄せられた大衆がエイト氏を押し上げ、エイト氏は家庭連合批判の急先鋒としてメディアの寵児のように脚光を浴びた。
エイト氏による批判に沿って、政府・裁判所は家庭連合の解散へ向けて動いている。
しかし、そもそも「吊り」にすぎなかった「裏取引の明確な論拠」は存在しない――大衆とメディアは、罠に引っかかった、つまりエイト氏に騙されたのである。
本訴訟では、このエイト氏の欺罔によって如何にUPFジャパンの社会的評価が低下したかを検証する。
第2 でっちあげの「から騒ぎ」
エイト氏が仕掛けた「裏取引」は、でっちあげの「から騒ぎ」であった。
1 家庭連合と関連団体
安倍事件後、エイト氏は「裏取引・ズブズブの明確な論拠」を餌にして大衆・メディアの注目を集めた。
エイト氏が言う「裏取引」とは、反社会的な家庭連合が、警察の庇護を受けて捜査を防止するという政界への「裏工作」のことである。彼がこの「裏取引」の「明確な論拠」をいつまでも示さないことに対し、批判が強まっていた。
そんな中、満を持してエイト氏が繰り出したのが「安倍氏がUPFへのビデオメッセージで5000万円を得た」という発言であった。
「数分のビデオで5000万円」という法外な印象が「裏取引」へ関与したという悪印象を強め、家庭連合とその「フロント団体」たるUPFジャパンの社会的評価をさらに貶めた。
挙句の果てに、家庭連合は政府・裁判所からも反社会的であると思われて解散に瀕している。
2 から騒ぎ
ところが、エイト氏は、世論を強く反家庭連合に導く嚆矢となった「裏取引の明確な論拠」を一切示さない。
つまり大見得を切った「明確な論拠」が存在せず、エイト氏が「吊り」として掲げた裏取引・ズブズブ論はでっち上げの「から騒ぎ」にすぎなかったのである。
「から騒ぎ」でリンチに遭うように反社会的と非難された家庭連合は、創設60年で刑事犯罪は存在せず、民法709条責任を負った判決も2つしかなく、最近11年は1つの不法行為もしていない。
そのため、安倍事件前、政府・裁判所は計3度も家庭連合に対する解散命令請求を否定していた。
安倍事件後の狂騒に乗ったような解散命令請求は「戦後最大の宗教迫害」と批判されているところ、非難の端緒となった「裏取引」が架空のでっちあげであった-----つまり家庭連合への強い非難はハッタリに基づく「から騒ぎ」にすぎなかった。
このでっちあげの陰謀論によりUPFジャパンの社会的評価が甚しく低下したことは、歴史に深く刻まねばならない。
3 エイト氏の「ジャーナリズム」
本訴訟では、安倍事件後にエイト氏が高らかに吹聴した「裏取引・ズブズブの明確な論拠」という「罠」の実体が皆無であることを再確認する。
これにより、でっちあげの「から騒ぎ」を仕掛けてUPFジャパンに甚大な被害を与えたエイト氏のジャーナリズムを問い質す。
裁判所におかれては、このような流れの総論的な「森」をご勘案の上で、本件各事実の「木」を吟味いただきたい。
第3 「ズブズブ」論
エイト氏は、家庭連合やUPFジャパンに対し、政府と「裏取引」してきた「ズブズブ」の関係があると非難した。
1 「ズブズブ」とは「裏取引」のこと
エイト氏は、安倍事件直後の令和4年7月12日に3つの「吊り」X投稿をして、家庭連合と安倍元首相との「裏取引」疑惑を「ズブズブの関係」と表現した。
本件訴訟の地裁判決14頁でも、「裏取引」と「ズブズブ」を同列のものとして認識されている。
2 「裏」取引の意味
「裏」の一文字には、日本語として強い違法性と反社会性が込められている。
単なる不当や不適切な関係を「裏」取引とは表現しない。
「裏」と言うからには、「人には言えず、表に出せない」という犯罪性ないしは極めて反社会的な意味が込められている。
例えば、「裏社会」「裏ガネ」「裏口入学」「裏ビデオ」など、「裏」が付く言葉はいずれも単なる不当・不適切に留まらない「違法ないし反社会的」であるという意味を色濃く蔵している。
3 ロビイングは適法
しかし、宗教団体による政治への関与は民主政における正当な政治参加の手段であり、違法でも反社会的でもない。
実際、家庭連合及びその関連団体による政治との関わりにつき、安倍事件後、単に接点があったことを超え、違法ないし非難される関係が国会や捜査機関により問題とされたことはない。
4 小結
このように、エイト氏は、正当なロビイングをしていたにすぎないUPFジャパンや家庭連合に対し、「ズブズブ」「裏取引」の関係があると過度に誇張した扇情的な非難を向けていた。
これはリベラル陣営による政府批判のプロパガンダとして広く活用され、UPFジャパンや家庭連合の社会的評価を著しく貶めた。
第4 ズブズブ・裏取引の「明確な論拠」
エイト氏が吹聴したズブズブ・裏取引の「明確な論拠」と思われたのが、UPF大会のビデオメッセージで安倍氏が5000万円を受領したというエイト氏発言であった。
1 エイト氏しか語れない「明確な論拠」はなかった
宗教を「いじる」ことを標榜するブログのブロガーであるエイト氏は、家庭連合信者を「ダニ」「ゴキブリ以下」と蔑み揶揄する「カルトいじり」を楽しんでいた。
彼が家庭連合に正式な取材を申し入れたことは一度もなく、彼にしか得られない重要な情報はなかった。
そのエイト氏は、暗殺4日後に
「統一教会と安倍晋三元首相のズブズブの関係を明確な論拠で語ることができるのは私以外にいません。」
と強烈な自己アピールをしておきながら、自分以外には語ることができないはずの「明確な論拠」を一向に示さなかった。
そのため、安倍晋三元首相や家庭連合を支援する層からは、エイト氏の欺瞞的な自己宣伝に対して強い批判が向けられていた。
2 本件名誉毀損発言が「明確な論拠」だった
このように、エイト氏の過度に自己顕示的なプロパガンダに強い批判が向けられる中、エイト氏が満を持して披露した特ダネが世間の耳目を集めた。
「裏取引の明確な論拠」に相当するその特ダネが、UPF大会へのビデオメッセージの謝礼で安倍氏が5000万円を受領したという本件名誉毀損発言であった。
殊に、安倍氏に5000万円が支払われた「確たる情報があります」との発言は、大きな信憑性をもって世間に響いた。
数分のビデオメッセージの報酬として5000万円という高額な金額を支払ったという事実は、家庭連合信者から巻き上げた金銭を法外な「ヤミ金」に利用したUPFジャパンは反社会的だ、という強い印象を一般人に与えた。
第5 「最後の大きなピース」で幕引き
ところが、エイト氏は、この「裏取引の明確な論拠」を示さず、その「論拠」の説明責任を免れるための幕引きを図った。
1 「最後の大きなピース」 -朝日新聞記事
令和5(2023)年9月、統一教会(当時)の徳野会長(当時)が安倍氏と選挙協力につき平成23(2011)年に面談していたことが朝日新聞に掲載された。
エイト氏は、この面談を、政府と家庭連合との裏取引疑惑を解明するための「最後の大きなピース」と表現し、この記事の掲載前後に重ねて強調した(9/8X、9/30朝日新聞)。
「統一教会と安倍晋三元首相のズブズブの関係を明確な論拠で語ることができるのは私以外にいません」とエイト氏が必死に自己アピールしておきながら、「最後の大きなピース」を埋めたのがエイト氏ではなく朝日新聞であったことは、大きな拍子抜けであった。
2 エイト氏の「逃げの方便」 -「最後の大きなピース」に値しない
この拍子抜けは、エイト氏の「逃げの方便」として説明できる。
エイト氏が「最後の大きなピース」と誇張した徳野-安倍会談は、当時は反社会的と思われていなかった宗教団体と政党が協議したというだけのことであり、創価学会と公明党との関係に擬するまでもなく、何ら民主政を歪めるものではない。
実際、この会談に同席した羽生田光一議員に対し何ら処分は行われていない。
しかも、共産主義に対峙する点で安倍家は祖父の岸元総理時代から家庭連合と思想を共にしており、安倍氏が家庭連合と接することは驚きに値する事実でもなかった。
それゆえ、エイト氏が、この記事を「裏取引」疑惑の「最後の大きなピース」と表現したのは、ニュース価値を大きくかけ離れた誇大な評価であった。現に、この会談の意義を他の大手メディアは大きく取り上げていない。
こう振り返ると、被控訴人による「最後の大きなピース」発言は、これ以上「明確な論拠」を説明する責任から免れ、自己への批判の幕引きを図りたいというエイト氏の姑息な「逃げの方便」であった。
第6 「明確な論拠」の忘却
エイト氏がこうして逃げの幕引きを図った直後に解散命令請求裁判が始まったため、「明確な論拠」は提示されないままである。
1 解散命令請求
「最後の大きなピース」とエイト氏が誇大評価した朝日新聞記事から間もない令和5(2023)年10月13日、文科省は家庭連合に対して解散命令請求を申し立てた。
安倍事件後、「政府と裏取引をするズブズブの家庭連合に解散命令請求が下されるべきか」につき過熱した報道が行われていたところ、その争点に終止符が打たれた。
解散の当否は主に「著しく公共の福祉に反することが明らか」な行為の有無で決せられ、家庭連合と政治との関係ではない。
そのため、エイト氏が高らかに誇示した「裏取引の明確な論拠」については、世間・メディアの関心から遠のき、論じられぬままである。
2 「から騒ぎ」は続く
本件原審でエイト氏が5000万円授受の証拠を出さなかった以上、エイト氏が騙った「自分にしか語れない明確な論拠」は何もなかったと断じざるを得ない。
「明確な論拠」はハッタリにすぎず、エイト氏が自己を必死に「押し上げて」もらって家庭連合を非難した「裏取引・ズブズブ」論には実体がなく、でっち上げの陰謀論にすぎないことが判明した。
しかし、これで話は終わりではない。
この空疎な「ズブズブ陰謀論」に翻弄されて解散命令請求その他の誹謗中傷を受けている家庭連合とその関連団体にとっては、「明確な論拠」があると言いつつ何も示さなかったエイト氏の信用性については、いつまでも強く弾劾する必要がある。
この3年の「から騒ぎ」の実体が明らかになれば、抗告審で係属中の解散命令裁判にも以下のように影響し得る。
そもそもエイト氏が構築してきたストーリーは、「本来は解散すべき犯罪・反社会的集団たる家庭連合が、安倍首相と『裏取引』をして庇護を受け捜査を免れていたために今まで生き延びてきたものの、同氏が暗殺されることによりその庇護がなくなり、解散命令請求ができるようになった」というものであった。
この「ストーリー」にメディア・政治が呼応し、安倍事件以後、警察、法務省、消費者庁は電話相談窓口を設置するなどして家庭連合を立件する案件を探したものの、徒労に終わった。
そこで政府は、宗教法人法の解釈を変え、刑事事件ではなく民事不法行為でも解散命令請求できる解釈変更を行い、解散命令請求を行った。
この法解釈は最高裁も追認したものの、2009年の家庭連合のコンプライアンス宣言以後に不法行為が激減している中、東京地裁は和解や示談をも強引に不法行為と認定して解散命令を下した。
かように、エイト氏の欺瞞に起因して、法解釈に無理な皺寄せが生じ、日本の法の支配すら危ぶまれている。
第7 まとめ
以上のとおり、本件訴訟は、エイト氏が掲げた「罠」に起因する「から騒ぎ」を総括し、エイト氏の名誉毀損発言によりどれだけ酷い人権侵害が生じたかを問い質すという大きな社会的意義を有する。