前期の続き
岸派集合。
岸駒 巌上双鶴図 全体が薄き緑の中に、おとなしそうな鶴が二羽。実際には崖の上。
岸駒 白蓮翡翠図 リアル。濃いわ。長崎風。敗荷ぽい。
岸駒 富士山図 ごく上部のみ。
岸駒といえば虎なんだけど、出ないなと思ったら後期に登場。待ちましょう。
岸連山 竜虎図 薄墨でグレー。これもペンタブのグレーぽい。竜は昇り、虎は吠える。
岸竹堂 群鳥図 白い表皮の幹に細枝に鳥たちが集う。キツツキも働く。これは制作年代が書かれていないが、明治の制作かもしれない。たいへん近代日本画的な作品。
幸野楳嶺 舟鉾図 わいわいにぎやかな様子。お囃子の人々も可愛い。周りの群衆もよく描けている。傘さしてはる人も多い。
これはほんまにリアルな京都の人の描く絵ぇですな。
幸野楳嶺 雪中清水寺 これまたリアルな風景描写。リアルいうてもリアリズム絵画ということではなく、正しい描写というくらいの意味。先の祇園祭の舟鉾もせやし、これも「ああ、清水やなあ」というのがどこから見てもわかる。
白い中にどーんっと本堂があり、しかも無人。
塩川文麟 柳汀飛蛍図 薄暗い中、柳が静かぁに揺れて…蛍の淡い光がブゥンと浮かぶ。
谷口香嶠 賊兵襲多治見国長邸図 群像図。しかも慌ただしい中での様子。一人一人の表情も丁寧に描き分け。イゃー大変や、というのがよくわかる。
この群像図のリアルさ、いいなあ。
鈴木松年 朝陽蟻軍金銀搬入図 これは「ふつう」かどうか。要するにアリの群れが集まってうじゃうじゃ…こういうのを見ると冨樫義博「HUNTER×HUNTER」のキメラアントの最後らへん、「人間の底すら無い悪意(進化)を」のコマを思い出すよ…
あとはやっぱり小泉八雲「安芸之介の夢」かな。
土佐光起 花籠図 「秋」の植物が集まる。菊、ススキ、カエデ、そして朝顔。
田中訥言 嵐山図 相当なロング。それにしてもコロナのせいでマジでこの絵のように人がいないんよね。
張月樵 花鳥図 珍しくタンチョウヅルではなくマナヅルが描かれている。一羽が立ち尽くす。あれだわ、テオ・アンゲロプロス「コウノトリ、たちずさんで」ぽいな。
原在正 七草図 手前にタンポポ、流れを挟んだ対岸にナズナなど。七草というても他の草花も咲き、春らしい良さがある。
橋本長兵衛(初代) 仙人図*6幅のうち、前・後期3幅ずつ異なる図を展示 まずは琴高仙人、鉄拐、なぜか列子もいる。あれ、わたしが見間違いなのか。
曽我二直庵 岩上鷹・柳枝鷹図 岩の上から飛ぶぞーっなのと、柳に止まれるんかキミ、な鷹たち。腹の毛が見える構図も面白い。
岸恭 四季花卉図屛風 まるで花同士が左右に分かれての花軍(はないくさ)のよう。
緑青、白緑といった色も含まれつつ、フクジュソウにタンポポにツクシの春の野草も咲き乱れ、他方水連も見受けられるという。
取り合わせ・配置・色彩がとても興味深い。
狩野探信 紅葉賀図 あら珍しや、源氏絵。カラフルでよろしい。
原在中 関羽図 長床に座る。漢詩の書かれた背景を少し拾う。「春王三月」から始まっていた。
岸竹堂 華厳滝図 墨絵。どーーーーーーっ…どーーーーーっ…
そういえば藤村操どぼん事件は竹堂の死後六年後の明治36年か。この年にその影響受けた鏡花「風流線」が始まってだね…やめろ。
浮田一蕙 十界曼荼羅図 青大黒もいる。ずらりと神仏並ぶ。日蓮もいてはる。
最後の最後に濃いのを出してきたね。
中島来章 三国志武将図屛風 暑苦しい、と感じたなあ。シーンは「馬跳檀溪」。詳しくはこちら 孔明に会いに行く前。演義「先主跳澶渓」の回だな、たぶん。人形劇でもいいシーンでした。
狩野永岳 山水図屛風 そしてこの白い絵がその隣にあることで、清涼感を演出。白い光が差し込んできたかのよう。
後期も楽しみなのだが、さてどうなることやら…
ところで今回のおまけのワークショップは水墨画入門虎の巻 虎の巻といえばふつうはあれだけど、今回は虎の絵だったという、ね。
わたし色塗りしました。こやつです。目の色を手本と逆にしたら長崎風になったかな?
続いてコレクション展をみる。
動物絵の可愛いのを集めた―コーナーから。
一宮長常 紅蔦手長猿図 びっくりした。蔦だけは紅色であとはほぼ薄墨、そして群がる群がる丸顔の手長猿たち。猿まみれ。あの蔦よくちぎれないね。波の上の木。よく水に落ちないものだ。
ちょっと違うけど、猿の群生するのって「アギーレ 神の怒り」ラストの筏を思い出すんだよなあ。
立原杏所 蚕豆雛鳥図 二羽がちょこちょこひょこひょこ…
狩野探信 遊狗図 白蒲公英、黄色蒲公英、菫。シジミチョウが飛ぶ。そこにハチワレのわんこ、カツギ柄かな、可愛いのが三匹ころころ。
鍛冶橋の七代目の方。二代目やない方。天明から天保の人。やまと絵も学んだそう。
つまりこのわんこは応挙のわんこを見たあとの目で描いてる可能性もあるわけやな。
応挙 時雨狗子図 1767 どう見ても笑ってる二匹のわんこ。可愛い喃。
松村景文 猫図 枝垂桜の下の親子猫。黒のハチワレ母猫と茶系のハチワレの子猫。
蝶々もいる。吉祥図としての面もあるわけだ。猫と蝶とで。
この母猫の目がとても妖しい。景文の絵でこんなにも妖艶なのを見たのは初めて。
岸岱・景文 日に兎図 コラボ。岱の満月の下、耳の長いウサギがびょーんっと跳ねる。景文のウサギ、威勢がいいな。
森一鳳 豆兎図 豆花らしきものが生える中、丸々と肥えたウサギが見上げる図。
明治の油彩画をみる。
松本民治 東都今戸橋乃夜景 月下の両岸。家々の灯りは暗い。明治なので行灯からランプに変わったかもしれないが、まだまだ暗い。
安藤仲太郎 芍薬 絵より先に額縁が気になった。木彫でチョコクッキーの貼りついたような大きい額縁だった。
芍薬はピンクのが一輪。
この二人は知らないが、他に川村清雄、五姓田義松、久米桂一郎、黒田清輝、中澤弘光らの風景画が並ぶ。
石川寅治 老武者 1895 もう髷も結えない。平安末期くらいの人か。
鹿子木孟郎 ショールをまとう女 日露戦の後くらいの。この時代確かにこのスタイルは流行っていたようだ。
青木繁 少女群舞 よくよくみればこれはリボンに袴の女学生スタイル。「運命」とはまた違うのだよ…
明治の「浪漫」を感じるのはやっぱり青木繁。かれは大正、昭和の人ではない…
児島虎次郎、正宗得三郎のパリの風景画もある。ルクサンブール公園にノートルダム。
パリ、魅力的な時代の。
この後から洋画ではあるが、本当の意味での日本人の描く油彩作品が登場する。
三岸好太郎 六甲風景 1934 めちゃくちゃリアル。青い山と雲と。あー、もうほんまに六甲。
小絲源太郎 杏の丘 いかにも小絲の木花。赤が濃い。
石井柏亭 牡丹 1927 手前に絢爛な牡丹を配置し、奥に公園らしき風景を。浮世絵風な構図。
梅原龍三郎 台湾風景 1933 赤い柱がとても明るい。梅原の台湾は明るくて暑そうでいい。不快ではない暑さがいい。
鈴木保徳 公園建設(新京) 1936 満州。都市建築の真っただ中。ベンチに座りながらその様子を眺める人。
この絵と同じ構図の写真を先年JCII フォトサロンで見た。
偽物の国家のための建築。
・こどものすがた
子供を描いた絵が並ぶ。
古いところでは印藤真楯の男児と女児の遊ぶ様子のものもあり、有島生馬のモダンな三人姉妹が別荘の庭で遊ぶ様子もある。
新しいのは山本麻友香のペンギンの服を着た子らの様子が可愛い。
この人は以前から好きで、湖に坊やとシカがいる絵などが大好き。今回も出ていた。久しぶり。
嬉しいわ。
牛島憲之の風景画もふわふわ。その浮遊感がとても好き。戦時中から晩年まで一貫して変わらない。
春昼 とても気持ちよさそう。
貝焼場(午後) カラフルで可愛いのよな。
五月 1938年ということを考えると、この登り窯は江戸時代からのかなと思ったり。可愛い。
戦後になっても可愛い。
麦秋の道 全体が植物のカラーのようにも見える。わたしはカラー好きだな。
もう本当にふわふわふんわり。心地いい。
後期が開催されるかどうかたいへんビミョーな状況なのだが、前期だけでもこうして楽しませてもらえてよかった。
岸派集合。
岸駒 巌上双鶴図 全体が薄き緑の中に、おとなしそうな鶴が二羽。実際には崖の上。
岸駒 白蓮翡翠図 リアル。濃いわ。長崎風。敗荷ぽい。
岸駒 富士山図 ごく上部のみ。
岸駒といえば虎なんだけど、出ないなと思ったら後期に登場。待ちましょう。
岸連山 竜虎図 薄墨でグレー。これもペンタブのグレーぽい。竜は昇り、虎は吠える。
岸竹堂 群鳥図 白い表皮の幹に細枝に鳥たちが集う。キツツキも働く。これは制作年代が書かれていないが、明治の制作かもしれない。たいへん近代日本画的な作品。
幸野楳嶺 舟鉾図 わいわいにぎやかな様子。お囃子の人々も可愛い。周りの群衆もよく描けている。傘さしてはる人も多い。
これはほんまにリアルな京都の人の描く絵ぇですな。
幸野楳嶺 雪中清水寺 これまたリアルな風景描写。リアルいうてもリアリズム絵画ということではなく、正しい描写というくらいの意味。先の祇園祭の舟鉾もせやし、これも「ああ、清水やなあ」というのがどこから見てもわかる。
白い中にどーんっと本堂があり、しかも無人。
塩川文麟 柳汀飛蛍図 薄暗い中、柳が静かぁに揺れて…蛍の淡い光がブゥンと浮かぶ。
谷口香嶠 賊兵襲多治見国長邸図 群像図。しかも慌ただしい中での様子。一人一人の表情も丁寧に描き分け。イゃー大変や、というのがよくわかる。
この群像図のリアルさ、いいなあ。
鈴木松年 朝陽蟻軍金銀搬入図 これは「ふつう」かどうか。要するにアリの群れが集まってうじゃうじゃ…こういうのを見ると冨樫義博「HUNTER×HUNTER」のキメラアントの最後らへん、「人間の底すら無い悪意(進化)を」のコマを思い出すよ…
あとはやっぱり小泉八雲「安芸之介の夢」かな。
土佐光起 花籠図 「秋」の植物が集まる。菊、ススキ、カエデ、そして朝顔。
田中訥言 嵐山図 相当なロング。それにしてもコロナのせいでマジでこの絵のように人がいないんよね。
張月樵 花鳥図 珍しくタンチョウヅルではなくマナヅルが描かれている。一羽が立ち尽くす。あれだわ、テオ・アンゲロプロス「コウノトリ、たちずさんで」ぽいな。
原在正 七草図 手前にタンポポ、流れを挟んだ対岸にナズナなど。七草というても他の草花も咲き、春らしい良さがある。
橋本長兵衛(初代) 仙人図*6幅のうち、前・後期3幅ずつ異なる図を展示 まずは琴高仙人、鉄拐、なぜか列子もいる。あれ、わたしが見間違いなのか。
曽我二直庵 岩上鷹・柳枝鷹図 岩の上から飛ぶぞーっなのと、柳に止まれるんかキミ、な鷹たち。腹の毛が見える構図も面白い。
岸恭 四季花卉図屛風 まるで花同士が左右に分かれての花軍(はないくさ)のよう。
緑青、白緑といった色も含まれつつ、フクジュソウにタンポポにツクシの春の野草も咲き乱れ、他方水連も見受けられるという。
取り合わせ・配置・色彩がとても興味深い。
狩野探信 紅葉賀図 あら珍しや、源氏絵。カラフルでよろしい。
原在中 関羽図 長床に座る。漢詩の書かれた背景を少し拾う。「春王三月」から始まっていた。
岸竹堂 華厳滝図 墨絵。どーーーーーーっ…どーーーーーっ…
そういえば藤村操どぼん事件は竹堂の死後六年後の明治36年か。この年にその影響受けた鏡花「風流線」が始まってだね…やめろ。
浮田一蕙 十界曼荼羅図 青大黒もいる。ずらりと神仏並ぶ。日蓮もいてはる。
最後の最後に濃いのを出してきたね。
中島来章 三国志武将図屛風 暑苦しい、と感じたなあ。シーンは「馬跳檀溪」。詳しくはこちら 孔明に会いに行く前。演義「先主跳澶渓」の回だな、たぶん。人形劇でもいいシーンでした。
狩野永岳 山水図屛風 そしてこの白い絵がその隣にあることで、清涼感を演出。白い光が差し込んできたかのよう。
後期も楽しみなのだが、さてどうなることやら…
ところで今回のおまけのワークショップは水墨画入門虎の巻 虎の巻といえばふつうはあれだけど、今回は虎の絵だったという、ね。
わたし色塗りしました。こやつです。目の色を手本と逆にしたら長崎風になったかな?
続いてコレクション展をみる。
動物絵の可愛いのを集めた―コーナーから。
一宮長常 紅蔦手長猿図 びっくりした。蔦だけは紅色であとはほぼ薄墨、そして群がる群がる丸顔の手長猿たち。猿まみれ。あの蔦よくちぎれないね。波の上の木。よく水に落ちないものだ。
ちょっと違うけど、猿の群生するのって「アギーレ 神の怒り」ラストの筏を思い出すんだよなあ。
立原杏所 蚕豆雛鳥図 二羽がちょこちょこひょこひょこ…
狩野探信 遊狗図 白蒲公英、黄色蒲公英、菫。シジミチョウが飛ぶ。そこにハチワレのわんこ、カツギ柄かな、可愛いのが三匹ころころ。
鍛冶橋の七代目の方。二代目やない方。天明から天保の人。やまと絵も学んだそう。
つまりこのわんこは応挙のわんこを見たあとの目で描いてる可能性もあるわけやな。
応挙 時雨狗子図 1767 どう見ても笑ってる二匹のわんこ。可愛い喃。
松村景文 猫図 枝垂桜の下の親子猫。黒のハチワレ母猫と茶系のハチワレの子猫。
蝶々もいる。吉祥図としての面もあるわけだ。猫と蝶とで。
この母猫の目がとても妖しい。景文の絵でこんなにも妖艶なのを見たのは初めて。
岸岱・景文 日に兎図 コラボ。岱の満月の下、耳の長いウサギがびょーんっと跳ねる。景文のウサギ、威勢がいいな。
森一鳳 豆兎図 豆花らしきものが生える中、丸々と肥えたウサギが見上げる図。
明治の油彩画をみる。
松本民治 東都今戸橋乃夜景 月下の両岸。家々の灯りは暗い。明治なので行灯からランプに変わったかもしれないが、まだまだ暗い。
安藤仲太郎 芍薬 絵より先に額縁が気になった。木彫でチョコクッキーの貼りついたような大きい額縁だった。
芍薬はピンクのが一輪。
この二人は知らないが、他に川村清雄、五姓田義松、久米桂一郎、黒田清輝、中澤弘光らの風景画が並ぶ。
石川寅治 老武者 1895 もう髷も結えない。平安末期くらいの人か。
鹿子木孟郎 ショールをまとう女 日露戦の後くらいの。この時代確かにこのスタイルは流行っていたようだ。
青木繁 少女群舞 よくよくみればこれはリボンに袴の女学生スタイル。「運命」とはまた違うのだよ…
明治の「浪漫」を感じるのはやっぱり青木繁。かれは大正、昭和の人ではない…
児島虎次郎、正宗得三郎のパリの風景画もある。ルクサンブール公園にノートルダム。
パリ、魅力的な時代の。
この後から洋画ではあるが、本当の意味での日本人の描く油彩作品が登場する。
三岸好太郎 六甲風景 1934 めちゃくちゃリアル。青い山と雲と。あー、もうほんまに六甲。
小絲源太郎 杏の丘 いかにも小絲の木花。赤が濃い。
石井柏亭 牡丹 1927 手前に絢爛な牡丹を配置し、奥に公園らしき風景を。浮世絵風な構図。
梅原龍三郎 台湾風景 1933 赤い柱がとても明るい。梅原の台湾は明るくて暑そうでいい。不快ではない暑さがいい。
鈴木保徳 公園建設(新京) 1936 満州。都市建築の真っただ中。ベンチに座りながらその様子を眺める人。
この絵と同じ構図の写真を先年JCII フォトサロンで見た。
偽物の国家のための建築。
・こどものすがた
子供を描いた絵が並ぶ。
古いところでは印藤真楯の男児と女児の遊ぶ様子のものもあり、有島生馬のモダンな三人姉妹が別荘の庭で遊ぶ様子もある。
新しいのは山本麻友香のペンギンの服を着た子らの様子が可愛い。
この人は以前から好きで、湖に坊やとシカがいる絵などが大好き。今回も出ていた。久しぶり。
嬉しいわ。
牛島憲之の風景画もふわふわ。その浮遊感がとても好き。戦時中から晩年まで一貫して変わらない。
春昼 とても気持ちよさそう。
貝焼場(午後) カラフルで可愛いのよな。
五月 1938年ということを考えると、この登り窯は江戸時代からのかなと思ったり。可愛い。
戦後になっても可愛い。
麦秋の道 全体が植物のカラーのようにも見える。わたしはカラー好きだな。
もう本当にふわふわふんわり。心地いい。
後期が開催されるかどうかたいへんビミョーな状況なのだが、前期だけでもこうして楽しませてもらえてよかった。