『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想175  我らが共通の友

2015-05-26 23:58:12 | 小説(海外)

読書感想175  我らが共通の友

著者      チャールズ・ディケンズ

生没年     1812年~1870年

出身国     イギリス

出版年     1864年~1865年

翻訳者     間二郎

邦訳出版社   (株)筑摩書房

邦訳出版年   1997年

 

☆感想☆

テムズ川に浮かんだ死体を一隻のボートが引き揚げる。顔は判別できない状態だが、持ち物から南アフリカから到着したばかりのジョン・ハーマンと判明する。ジョン・ハーマンは塵芥処理業者として成功した父親の莫大な遺産を相続するために帰国したのだ。ジョン・ハーマンの死体は損傷が激しく、他殺の疑いが濃厚だったが、加害者も加害の証拠もなく百ポンドの懸賞金がかけられた。父親のハーマンの遺産は、ジョン・ハーマンに代わって、長年忠実な部下として働いてきたボッファ氏が相続した。そのボッファ氏のもとに秘書にしてくれという男が現れる。

たくさんの人が登場する。死体をテムズ川から引き揚げる仕事をしているジェス・ヘクサム、その娘のリジー、息子のチャーリー。弁護士のモティマー・ライトウッド、その友達の弁護士ユージン・レイバーン。チャーリーの恩師のブラドリー・ヘッドストン。ジョン・ハーマンの遺産相続の条件になっていたある女性との結婚。その当事者ベラ・ウィルファー。上流階級を目指す金の亡者たちなど。

 この著作がディケンズの最後の完結作とある。いろいろな人間関係の欲と愛とが複雑に絡み合って劇的な結末に向かう。しかし殺人犯については推定有罪のようで落ち着かない。二つの純愛が実を結びハッピーエンドを迎える。全編を通じて著者の貧しい人々に対するまなざしが優しい反面、拝金主義の中産階級に対する批判は手厳しい。それと拝金主義の権化のように見なされていたユダヤ人の老人の高潔さを描くことで、このように謂われなき偏見と差別の対象になっている人々にも著者は温かいまなざしを注いでいる。

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