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小さいアルミニウムの弁当箱から、きちんと四角になった固く冷たいご飯の塊りを、箸で適当な大きさに分けて口に入れる。その最高の昼食への反感が、ここPXではちょっとやそっとのことではなかった。<o:p></o:p>
店員の昼食について特別な制限はないが、大部分が外食をするので、昼食のための特別な施設がない、ここでは弁当箱を持ってあわてふためくのは、ほとんど副収入が全然ない韓国物産売場の店員だった。同じ建物の中で同じようなことをしながら、私達と彼らとは取り扱う商品の国籍が違うぐらいだが、生活も違った。<o:p></o:p>
私は2階の一角にベニヤ板で四方を仕切って作った店員休憩室の隅で素早く昼食を済まし、ぞくぞくする体のまま一生懸命に冷水でうがいをした。きまり悪いキムチの匂いがついていたからだった。<o:p></o:p>
休憩室も名前は休憩室だが長い木の椅子に鏡が一つかかっているだけで、少しの間化粧を直すとかお掃除の小母さん達が服を着替えるとかの場所に過ぎなかった。<o:p></o:p>
「これはがまん」<o:p></o:p>
非常に大きい鞄を肩に担いで入ってきたダイアナ金が、チューインガムを一つ差し出して、自分も一つくちゃくちゃ噛み始めた。<o:p></o:p>
「もう昼食食べたようね。今日はミス李に何か素敵なものを食べさせてあげようと思ったの・・・」<o:p></o:p>
「何を」<o:p></o:p>
私は、こういう困った場合に、卑屈にならないように座り込めば込むほど、社交に長けていないせいで、せいぜい仏頂面にしか見えなかった。<o:p></o:p>
「私と話をしない?」<o:p></o:p>
〈見るまでもなく、またそのことだろう〉<o:p></o:p>
私は嫌悪感が突然込み上げても、わざと泰然としたふりをして、チューインガムを吐いてチリ紙に丸めた。<o:p></o:p>
「また来た時・・・今は返信をしなければならないのでね」<o:p></o:p>
彼女はもう一度色縞模様の包装紙を破って、二つの輪の指輪のようになったキャンディを素早く私の口に突っ込んだ。舌をつぼめる酸っぱい味を楽しみながらも、気分はやはりほろ苦かった。<o:p></o:p>
彼女と私は、おかしいことに互いに似ている弱点を通して、偶然に知り合った仲だ。<o:p></o:p>
彼女は私が聞くところによれば、米国の女性のように上手に英語を話しながら、少しも読んで書くことが出来ないと言う。私は上手ではないが読んで書きながらも、自分たちの肖像画部として必要ないくつかの言葉以外には、全くしゃべる自信がなかった。<o:p></o:p>
数日前、絵を捜しに来た米兵が難癖をつけ始めた。自分の恋人と絵がまったく似ていないとだだをこねるので、すぐにお詫びしてもう一度描き直そうと言ってみたが、それに対して彼の興奮してむやみにしゃべる声は、全くわからなかった。私は絵描きの前での体面もあったりして、わかったふりでお茶を濁そうとしたが、結局トンチンカンなやりとりをしたようなもので、彼はこらえきれずにそうだそうだと言って声を張り上げた。私は困ったあげく、思わず嗚咽が喉まで込み上げてきた時に、奇跡のようにダイアナ金が現れたのだった。<o:p></o:p>
彼女はハイヒールの音も傲慢に現れ、わずか数語で嘘のようにきれいにその腹の立つ米兵を説得して帰らせ、私を軽蔑するようにまた少し気の毒そうに見下したのだ。<o:p></o:p>
私はどさくさまぎれにありがとうという挨拶をしてしまって、恥辱を少しでも挽回しようと苛立ったあまり間抜けにも、私が実際は無知ではないと、学校で習った英語と実際に使う英語がとても違っていて、時々難しさを感じるだけだと、暗にほのめかした。彼女が私の言葉に興味を感じたように見えるや、更にE大の英文科に在学中だったが戦争のせいでああだこうだと言って、思いもよらない嘘まで加えてしまった。<o:p></o:p>
彼女は大げさに驚いて<o:p></o:p>
「まあ・・・どうして、あなたと私はこんなに似ているのかしら?」<o:p></o:p>
「何がですか?」<o:p></o:p>
「あなたの目はずっと開いていても言葉が不自由、私は口は立て板に水だけど残念なことに文盲なのよ。面白い? でしょ?」<o:p></o:p>
何が面白いのかめんくらったまま、私は彼女から帰国した彼女の恋人の手紙を代読して返信の代筆を引き受けるようになったのだ。<o:p></o:p>
結局、私はこうして思いもよらない嘘の対価を厳しく支払わされた。<o:p></o:p>
彼女の言葉によると、こんなことぐらいしてくれる子供はざらにいるけれど、その方面にすれていて狐のように目ざとく口が軽いことが好ましくないけれど、私こそはふさわしい適任者だというのだった。<o:p></o:p>
この世界で一番愛するダイアナで始まる大変悲しい報告を訴える手紙を読んでいる間、彼女は絶えずやすりの刃で長く美しい手の爪を磨き、口からは変な声を出し、チューインガムをかんでいた。手の爪を見る目は、濃いまつ毛に向かって別の表情が窺われるが、目の下の皮膚が垂れ下がっているのは、彼女の隠れた年齢を語るようで哀れであった。<o:p></o:p>